北海道ラリー地区戦開幕戦は、高速ステージでホットバトルが展開!

レポート ラリー JAFWIM

2023年2月17日

今年のJAF北海道ラリー選手権は、2月5日、伝統の一戦ブリザートラリーで開幕した。

2023年JAF北海道ラリー選手権第1戦
2023年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第1戦
2023年XCRスプリントカップ北海道第1戦
2023年北海道スノーチャレンジカップ第2戦
北海道ブリザードラリー

開催日:2023年2月5日
開催場所:北海道千歳市、安平町
主催:AG.MSC北海道

 今年のJAF北海道ラリー選手権は全6戦で争われる。開幕から2戦はスノーラリーで、約3か月半のインターバルを経て、6月からシリーズは再開。10月の最終戦まで4戦が行われるが、その内3戦はグラベルラリーとなる予定で、7月の第4戦のみミックス路面でのラリーとなる。6月以降の4戦はすべて林道コースを走るラリーとなりそうだ。

 北海道の地区戦ラリー開幕戦は1月に行われるのが通例だったが、今年は2月第1週まで待ってのシリーズ開幕となった。ラリーの拠点となったのは例年同様、新千歳モーターランドで、敷地内のふたつのコースと、林道の計3本のSSを走るスタイルは今年も踏襲され、まず新千歳はバイクコース0.90kmとカートコース0.80kmを45分のサービスを挟みながら2本ずつ走行する。

 その後、クルーは2度目のサービスを経た後にモーターランドを後にして林道コースへ移動。今回は2.13kmの林道を2回走行して、再びモーターランドに戻ってゴールという設定だ。KASUGAと名付けられたこのステージは、今回初めて設定されたコースで、見通しのいい緩やかなコーナーが連続する好ステージ。最速のRA-1クラスの上位陣のアベレージスピードは80km/hに迫るという超高速のSSとなった。

当日は40台を超えるエントラントがラリーの拠点となった新千歳モーターランドに集結。2023年の北海道のラリーシリーズも本格的に動き始めた。
SS1、SS3は新千歳モーターランドのバイクコース0.90kmを使用して行われた。
SS2、SS4は新千歳の本コースであるカートコース等を使用して0.80kmのSSを設定した。
今年初めて設定されたKASUGAステージ。WRCラリースウェーデンを彷彿とさせるハイスピードなコースが用意された。

 8台のスノースペシャリストが集ったRA-1クラスは、まず3番ゼッケンでスタートした藤澤和弘/岩淵亜子組がバイクコースのSS1でベストタイム。続くカートコースのSS2ではタイトル防衛を期す関根正人/松川萌子組がベストを獲る。再びバイクコースに戻ったSS3ではGRヤリスで初のスノーラリーとなった松波克知/佐野公彦組がベストタイムをさらって、ラリーは予想通りの混戦となる。

 カートコースのSS4では大学時代にこの北海道でラリーの腕を磨いた和氣嵩暁/高橋芙悠組がベストを獲って4人目の勝ち名乗りを挙げるが、SS2で3番手以下を大きく突き離すタイムをマークしていた関根組と藤澤組が頭ひとつ抜け出して、林道ステージに向かった。

 SS5を前にしてのオーダーは関根組が0.9秒、藤澤組をリードしていたが、このステージで藤澤組は関根組を1.9秒差で下す渾身のベストタイムを叩き出して逆転に成功。続く最終のSS6では、藤澤組が最終コーナーで大きく挙動を乱してタイムロスするが、ベストを獲った関根組に0.9秒差の2番手でゴール。この結果、何と0.1秒という僅差ながらも首位を守った藤澤組が約1年半ぶりとなる勝利を飾った。

「SS5は雪質が良かったのでイメージ通りに走れて、我慢の走りになる新千歳で溜まったストレスを発散できました(笑)。SS6はツルツルで危ない所もあって難しかったですけど、ともかく踏まないとダメだと思って攻めました」と藤澤選手。「クルマも高速コーナーでリアが大きな動きをしないような仕様になっているので、それも当たりましたね。ただやっぱり一番の勝因は、新千歳で関根さんに食らいついて行けたことだと思います」と話した。

 一方の関根選手は、「林道は最後の上りのストレートが自分のクルマにはきつかったけど、それを言い訳にはしたくない。詰めが甘かったということでしょう」と0.1秒差で勝ち星を逃したラリーを振り返った。GRヤリスでのブリザードラリー初優勝を狙った松波選手は6本中4本でサードベスト以上の走りを見せたが、SS2で禁断のバックギアを使ったことが響いて5位でゴール。「GRヤリスのポテンシャルを林道に合わせ切れなかった。でもセッティングを詰めて、もう少し安定した動きに持っていければ、行けると思います」と次戦以降のリベンジを誓っていた。

トップ2台のマッチレースとなったRA-1クラスは藤澤和弘/岩淵亜子組(GセキネンインプレッサWRX-STI)が0.1秒の僅差で初戦を制した。
RA-1クラス優勝の藤澤/岩淵組。
関根正人/松川萌子組は僅差の2位(左)。若手の和氣嵩暁/高橋芙悠組が3位に入った(右)。
RA-1クラス表彰。前列左から4位俣野実/伊勢谷巧組、5位松波克知/佐野公彦組、6位金藤公人/宇野祐哉組。後列左から2位関根正人/松川萌子組、優勝藤澤和弘/岩淵亜子組、3位和氣嵩暁/高橋芙悠組

 RA-2クラスは、昨年、ヴィヴィオでシリーズチャンピオンを獲得した谷岡一幸/岸田勇人組が序盤から絶好調。新千歳のSSすべてでベストタイムをマークして、2番手の近藤太樹/中村真一組のミラージュに15.5秒の大差をつけてラリーを折り返す。しかしSS5では近藤組が猛反撃を開始。谷岡組を6.2秒突き放す2WD勢最速のタイムを叩き出して、最終SSに望みを繋げたが、そのSS6で近藤組はスタックした前走車をかわす際に大きくタイムロス。「その後もリズムを崩してしまった」と連続ベストは果たせず、このSSで5度目のベストを奪った谷岡組が逃げ切った。

 連覇に向けて幸先の良いスタートを切った谷岡選手は、「林道では負けると思いましたが、セッティングも新千歳に振っていたので、そこでヴィヴィオのメリットを生かしてタイムを稼げればと思っていました。ただ今日は、特に2周目からは滑ったので、ともかく抑えて走りました」と想定通りの展開に笑顔を見せた。一方の近藤選手は、「林道で逆転しようと思ってSS5は踏みちぎったんですが、足りませんでしたね。でもようやく3年ぶりにラリーに復活できたので、今年は地区戦の初優勝を狙って行きたいです」と、来たるグラベルラウンドを見据えていた。

RA-2クラスは前半でリードを築いた谷岡一幸/岸田勇人組(タイヤ館ビィワークスヴィヴィオAKT)が優勝。
RA-2クラス優勝の谷岡/岸田組。
林道SSで速さを見せた近藤太樹/中村真一組が2位(左)。坂本直毅/東郷純一組は3位を獲得した(右)。
RA-2クラス表彰。左から2位近藤太樹/中村真一組、優勝谷岡一幸/岸田勇人組、3位坂本直毅/東郷純一組。

 RA-3クラスは昨年のチャンピオン、藤田幸弘選手のデミオは不参加。ただしグラベルラリーからは復帰という情報もパドックでは流れていたため、“鬼の居ぬ間”にポイント加算を狙うライバル達のバトルが注目された。

 SS1は山之内一真/山之内愛組のヴィッツがベストを獲るが、SS2から岡直貴/松井浩二組のデミオが3連続でベストを奪って首位に浮上する。山之内組は7.5秒差の2番手で折り返したが、岡組の速さは林道に入っても衰えず、ここでも連続ベストをマーク。最終的に15.9秒までマージンを広げて快勝した。

 岡選手は長くランサーでダートトライアルに参加した経験もあるだけに、「林道のハイスピードも問題なく走れました。新千歳の2周目やSS6は滑りましたが、元々そういう路面に合わせてきたので、しっかり走れました。去年は夏の足回りのままで走ったんですけど、今回はちゃんと冬用の柔らかい足回りにしてきたのでツボにハマってくれましたね」と会心の一戦を振り返った。一方、2位争いは4位までの3台が1.7秒差にひしめく大接戦となったが、SS6で岡組に0.9秒差で喰らいついた井土正高/飛谷しのぶ組が、山之内組を逆転して2番手をゲットした。

RA-3クラスは5本のSSを制した岡直貴/松井浩二組(Pガレ・OKA・キムデン・デミオ)が快勝した。
RA-3クラス優勝の岡/松井組。
井土正高/飛谷しのぶ組は最終SSで2位へジャンプアップ(左)。山之内一真/山之内愛組は僅差の3位でラリーを終えた(右)。
RA-3クラス表彰。左から2位井土正高/飛谷しのぶ組、優勝岡直貴/松井浩二組、3位山之内一真/山之内愛組。

 JMRC北海道TEINラリーシリーズのジュニアRA-1クラスは、北倉裕介/宗方さおり組が大量リードで折り返して林道ステージに臨んだが、最終のSS6でスタックしてしまい、リタイヤ。SS5で北倉組を凌ぐスピードを見せていた原田直人/西川悠介組に優勝が転がり込んだ。ジュニアRA-2クラスとRA-3クラスはともに1台のみの参戦となったが、RA-2は小野寺浩史/小野寺由起子組が、RA-3では伊勢谷渉/三木敦組がそれぞれ完走を果たして優勝を飾った。

Jr.RA-1クラスは原田直人/西川悠介組(5ナンバーインプレッサ低出力)がサバイバルな展開となった開幕戦を制した。
Jr.RA-1クラス優勝の原田直人/西川悠介組。
Jr.RA-2クラスはタイトル防衛を狙う小野寺浩史/小野寺由起子組(GセキネンDLゆきかぜシマモンスイフト)が優勝。
Jr.RA-2クラス優勝の小野寺浩史/小野寺由起子組。
Jr.RA-3クラスは今季からこのシリーズに参戦する伊勢谷渉/三木敦組(ヴィッツ)が優勝。
Jr.RA-3クラス優勝の伊勢谷渉/三木敦組。

 ひと足先に1月に開幕したJMRC北海道スノーチャレンジカップは今回で第2戦を迎え、新千歳の4本のSSで勝敗が競われた。7台が参加したAWDクラスは、後半調子を上げてSS3、SS4と連続ベストをマークした橘礼太/渡邊雄矢組が優勝。2WDクラスは12台が参加する激戦区となったが、すべてのSSでベストタイムをマークした渡部康太/渡部麗組が開幕戦に続いて今回も勝利をさらった。

Clsd-AWDクラスは橘礼太/渡邊雄矢組(Soda'sfactory HILUX YH)が優勝。
石橋伸之祐/渡辺雄治組が2位(左)。ヴィヴィオで参戦の菊地紀秋/伊藤貴弘組が3位に入った(右)。
Clsd-2WDクラスは渡部康太/渡部麗組(今年も冬期限定スイフトスポーツ)が全SSベストの速さを見せて快勝。
スイフトが1-2のClsd-2WDクラスは川西皓樹/夏目裕貴組が2位(左)。島田勝正/森田和行組のエッセは3位を獲得(右)。

XCRスプリントカップ北海道も2年目のシリーズが開幕。
注目のXC-2クラスのバトルは惣田政樹組のキャミに軍配!

 2年目を迎えたXCRスプリントカップ北海道も、今回、開幕を迎えた。今年のシリーズも昨年と同様に北海道地区戦と全日本ラリー選手権の北海道ラウンドに併催される形で計6戦が行われる。

 今回の一戦を含むスノーラリー2戦の後は7月に開催される全日本戦であるARKラリーカムイが第3戦となり、その後は全日本のラリー北海道を挟んで地区戦2戦と併催。10月の地区戦最終戦でシリーズは閉幕する予定だ。昨年、2クラスを制覇したCUSCO RACINGは第2戦からの参戦を表明しており、今回は不参加となったが、参加車種は顔触れが一新し、新たな展開を予感させてくれる一戦となった。

 XC-2クラスは昨年の第2戦にスポット参戦して優勝した惣田政樹選手が1年ぶりの参戦を果たし、マシンもランドクルーザーからキャミへ変更してきた。もう一台は昨年、JAF中部近畿ラリー選手権にシリーズ参戦し、侮れない速さを見せた愛知の揚村悠選手のエクリプスクロスが、「今年は低μ路でマシンを磨いていきたい」と、はるばる北海道へ駆けつけた。

 ラリーは対照的な展開となり、新千歳の4本のステージは、小回りの利く惣田政樹/猿川仁組のキャミが完全制覇したが、林道の2本のステージは揚村悠/笠井開生組が連続してベストタイムを奪取。しかし新千歳で築いたマージンを守った惣田組が15.7秒差で揚村組を抑えて優勝した。

 札幌市内でクロスカントリーカーを扱うショップを営み、自らもオフロードレースに参戦してきた惣田選手は、「ランクルはファミリーカーも兼ねていたので、何かとつらい時もあったので、今年はたまたま会社に置いてあったキャミを競技専用で作ろうと思ったんです。でもクルマができたのが昨日の夜だったので、今日はおっかなびっくりで運転しました」と苦笑しながら一日を振り返った。

「冬の大会は、特殊な路面を走るので正直、クルマはあまり関係ないと思っています。グラベルは乗ってみないと分からないけど、車格は軽自動車なんで、面白いと思いますよ。シリーズは全戦追いたいと思ってますが、まずはもう少し乗り込みたい。乗ってみたいという人がいれば、貸し出すのも可能なので、声を掛けて下さい」と今シーズンを展望した。

 一方、揚村選手は、「林道は普通に速く走れましたけど、新千歳のステージは何もできなかった感じがあるので、ちょっとセッティングを真剣に考えないといけないですね。グラベルは耐久性等の心配な要素もありますが、今日の感じを見る限りでは、ハイスピードはそれなりに走れるんじゃないかと思っています」と、スノーのデビュー戦を総括した。中部近畿戦で見せたスピードがどのような形でまたグラベルで再現されるのか、楽しみなところだ。

XC-2クラスは約1年ぶりの参戦となった惣田政樹/猿川仁組(ジオランダーS・Fブラットレーキャミ)が優勝した。
XC-2クラス優勝の惣田/猿川組(左)。低μ路でのラリーは初挑戦となった2位揚村悠/笠井開生組のエクリプスクロスが2位を獲得(右)。
XC-2クラス表彰。左から2位揚村悠/笠井開生組、優勝惣田政樹/猿川仁組。

 一方、今年から新設されたXC-3クラスは1台のみの参戦となったが、日本を代表するオフロードドライバーである塙郁夫選手がライズを持ち込み、注目を集めた。XCRスプリントカップは初参戦となった塙選手は、「こういうラリーを安く楽しめる形を提案したかったので、ライズにしてみました。普通に考えればジムニーなんでしょうけど、人気があってなかなか納車されないですしね(笑)。定年退職したけど、また若い頃のようにモータースポーツをやりたいという人や、若い夫婦の方々にもアウトドア感覚で遊んで楽しめるクルマだと思います」と、参戦へのいきさつを語ってくれた。

「今日は電子制御デバイス等の確認も兼ねて走りましたが、デバイスがあるなら、あるなりの走りもできるし、林道もそこそこのタイムは出せたと思います。初心者の方はABSも積極的に使った方が走りやすいでしょうね。実はラリーレイドにも出られるように、ロールケージはFIA規定に沿って作っているんです。コンパクトなSUVは世界的に人気なので、色んな楽しみ方ができれば、と思っています」と塙選手。次回の参戦は全日本ラリーカムイの予定とのことで、また話題を呼ぶことは間違いないだろう。このシリーズのグラベルラウンドも楽しみな展開になりそうだ。

SUVで気軽に参戦できるのもこのシリーズの特徴。XC-3クラスは塙郁夫/塙雄大組(トヨタライズ)が優勝。
XC-3クラス優勝の塙郁夫/塙雄大組。

フォト/加藤和由、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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