DUNLOPが“もみ殻由来シリカ”を用いたEVカート用レインタイヤを発表

ニュース カート JAFWIM

2025年9月25日

住友ゴム工業株式会社が東京都江東区のシティサーキット東京ベイでDUNLOPのサステナブルタイヤの紹介と、女性のモータースポーツ活動応援企画「DUNLOP Enjoy Motorsports Women’s Challenge」のイベントを開催。併せて10月のピンクリボン月間を前に、乳がんの早期発見・早期治療を推進する「ピンクリボン運動」の発信も行った。

 9月14日、全日本カート選手権 EV部門 第5戦/第6戦の熱戦が繰り広げられたシティサーキット東京ベイでは、同時開催でDUNLOPのイベントが行われた。サーキットの入場ゲート前にはDUNLOPタイヤを装着する競技車両が展示され、DUNLOPタイヤの技術力をPR。その脇に設けられたDUNLOPブースには、ピンクリボン運動を象徴するピンクの幟がたなびいていた。

全日本ラリー選手権 第7戦の久万高原ラリーに参戦する及川紗利亜選手のDL WPMS GRヤリスDATを始め、GR86やVITA、EVレンタルカートまで、DUNLOPタイヤを履くモータースポーツ車両をブース前に展示。

 このイベントの目玉のひとつとなったのが、サステナブル原材料比率を高めた新商品のEVカート専用ウェットタイヤのお披露目だ。全日本カート選手権 EV部門では2023年の最終戦以来、同社製のスリックのサステナブルタイヤがワンメイクタイヤとして採用され、参戦ドライバーたちに好評を得ている。

 今回お目見えしたのはそのウェットタイヤ版で、スーパーGTのGT300クラスで優勝したタイヤとともに誇らしげに展示されていた。このウェットタイヤについて、同社モータースポーツ部・開発担当の佐藤洋平氏と、タイヤ事業本部・材料開発本部の鳥田一哉氏に話をうかがった。

「現在EV部門で使われているスリックタイヤとは仕様がまったく違うウェットタイヤとなりまして、新しい材料を使って開発しました」と佐藤氏。新たに採用された材料のひとつが、もみ殻を原料とする“もみ殻由来シリカ”だった。

「シリカの原料のひとつとなるケイ素は米のもみ殻にも比較的多く含まれています。もみ殻自体は燃焼することによってエネルギーを回収利用し、その後に残ったもみ殻灰を使ってシリカをつくる技術がすでに開発されています」と鳥田氏は語る。

 このウェットタイヤの開発にあたって重視されたのが、「レーシングタイヤですので、性能は従来のウェットタイヤから絶対に落とさないことでした。例えばコンパウンドなら、従来のW15と同等以上のところを狙って開発しています」と佐藤氏が教えてくれた。今回のレースでこのウェットタイヤが実戦投入される機会はなかったのだが、テストによってその狙いが達成されていることは確認されている。

 こうして生まれたEVカート専用サステナブルタイヤのサステナブル原材料比率は、従来のウェットタイヤでは15%だったものが、約49%に高められたという。この値は、現在使用されているスリックのサステナブルタイヤの43%を大きく上回るものだ。今後の全日本カート選手権 EV部門でこのタイヤが実戦デビューを飾る日が、今から楽しみだ。

2023年から全日本カート選手権 EV部門に供給されているスリックタイヤ。サステナブル原材料比率43%となっている。
新たにサステナブル原材料比率が49%まで高めたカート用のウェットタイヤを開発し、この会場で初公開された。
トレッド面にはもみ殻を原料とする植物由来のシリカを採用。欧州ではもみ殻シリカを使用した商品がすでに販売されているという。
タイヤの製造工程で発生するゴム片や使用済みタイヤの粉砕処理品、廃ペットボトルなど、さまざまなサステナブル原材料のサンプルを展示。
スーパーGT 第4戦のGT300クラスでは、DUNLOP装着車全車両に資源循環型カーボンブラック採用タイヤが投入され、このタイヤで優勝も遂げている。
住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 モータースポーツ部の佐藤洋平氏と、材料開発本部 材料第四部の鳥田一哉氏。

 会場では報道関係者を対象に、ゲストドライバーとともに体験イベントが催された。まず、シティサーキット東京ベイを忠実に再現したシミュレーターでタイムアタックを行い、続いてEV部門のレースの合間にコースで実際のレンタルカートN35に搭乗してタイムアタックし、バーチャルとリアル双方のタイム差の少なさを競う大会が行われた。

 その後、DUNLOP Enjoy Motorsports Women’s Challengeの一環として、入場ゲート前に展示されていた競技車両をコースに入れてデモンストレーション走行とフォトセッションを実施。コンパクトなカート用サーキットで四輪モータースポーツ車両が走る光景を、来場者たちは興味深げな目で見つめていた。

及川紗利亜選手や永井歩夢選手も交じり、報道関係者が参加するバーチャルとリアルのタイムチャレンジイベントが行われた。
DUNLOPブース前に展示されていた車両がシティサーキット東京ベイをデモ走行。

 イベントの締めくくりとなったのが、17時過ぎから屋内施設で行われたステージイベントだった。まず、同社の技術スタッフがサステナブルタイヤの発表と技術説明を披露。続いて「DUNLOP Enjoy Motorsports Women’s Challenge」のトークショーとピンクリボン運動の告知が行われた。

 壇上には佐藤久美選手、及川紗利亜選手、瀬イオナ選手、永井歩夢選手の女性レーシングドライバー4名がゲストとして上がり、華音氏を司会進行役としてトークショーを開始。クルマを好きになったきっかけ、ここまでのキャリアを築くために努力してきたことなどを、朗らかな口調で語り合った。

シティサーキット東京ベイのステージでは、レースの合間を縫って、メディア向けに新製品に関する技術説明が行われた。
女性のモータースポーツ活動を応援する「DUNLOP Enjoy Motorsports Women’s Challenge」のトークショーでは、女性の参加拡大を狙った意見が発表された。

 こうして幕を閉じたイベントは、住友ゴム工業株式会社のモータースポーツの普及・発展にかたむける思いと、社会的使命実現への高い意欲を、改めて実感させるものだった。

PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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