酒井仁選手がOK部門 第7戦で4勝目、伏兵デグチャリョブ・ティモフェイ選手が第8戦で初優勝!
2025年10月15日

国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権 OK部門の2025シリーズ第7戦/第8戦が10月4~5日、岐阜県瑞浪市のフェスティカサーキット瑞浪で開催。断続的に降り続く雨の中、第7戦では酒井仁選手が今季4勝目を獲得。第8戦ではデグチャリョブ・ティモフェイ選手がポール・トゥ・ウィンで初優勝を飾った。
2025年JAF全日本カート選手権 OK部門 第7戦/第8戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第7戦/第8戦(ラウンドシリーズ1)
2025 AUTOBACS GPR KARTING SERIES
開催日:2025年10月4~5日
開催地:フェスティカサーキット瑞浪(岐阜県瑞浪市)
主催:フェスティカサーキット瑞浪、GPR
5大会・全10戦で行われる全日本カート選手権 OK部門の2025シリーズはいよいよ終盤戦に突入し、今回を含め2つの大会を残すのみとなった。第7戦/第8戦の舞台は日本における高速ロングタイプのカートコースの先駆けとなったフェスティカサーキット瑞浪だ。
全長1177m、最大直線長145mのフェスティカサーキット瑞浪のコースはスリップがよく効き、コーナーの組み合わせによって頭脳的な戦いが要求される箇所も多い。レースでは毎回オーバーテイクシーンや大集団によるバトルシーンが頻発する。


全日本カート選手権 OK部門 第5戦/第6戦

OK部門の参加は15台。決勝の周回数は第7戦が20周、第8戦が24周だ。10月初旬まで続いた異常な暑さはようやく去り、サーキットは涼しい秋の空気に包まれた。ただし天候は思わしくなく、決勝前日の朝に降り出した雨は決勝日も断続的に降り続いた。その雨は朝方に一旦止み、タイムトライアルが始まるころには路面に白く乾いた部分が現れてきた。タイムトライアルのタイヤチョイスは全車スリックだ。
ここで最速タイムを叩き出したのは中野駿太選手だったのだが、中野選手は複数回の黄旗無視によるペナルティで全タイムを抹消されることに。代わって第7戦のポールとなったのは、ポイントリーダーの酒井仁選手だ。0.003秒差の2番手は澤田龍征選手。3番手に酒井龍太郎選手がつけた。
それに続いたのは同タイムを記録した三村壮太郎選手と皆木駿輔選手で、セカンドベストタイムの優劣で三村選手が4番手、皆木選手が5番手となった。ウェットタイヤ装着の公式練習でトップタイムをマークしたデグチャリョブ・ティモフェイ選手はコース外走行のペナルティでベストタイムを抹消され、6番手となっている。

第7戦の前に行われたレースの最中、止んでいた雨が再び降り出し、第7戦はしっとりと濡れたコースで全車ウェットタイヤを履いてのレースになった。スタートでは澤田選手が出遅れてイン側列のマシンが躍進、酒井龍太郎選手が2番手に、皆木選手が3番手に浮上。皆木選手はさらにオープニングラップで酒井龍太郎選手をパスして2番手に上がった。
ポールから好スタートを切った酒井仁選手は競り合う後続との間隔を広げ、1周で0.7秒ほどのリードを築いた。ホームコースともいえる瑞浪で酒井仁選手のスピードは際立ち、皆木選手以下をぐんぐんと置き去りにしていく。10周目、酒井仁選手のアドバンテージは5秒弱にも達した。
その後方で強烈な追い上げを展開する1台のマシンがあった。スタートでポジションアップを果たせなかったティモフェイ選手だ。2周目に6番手へポジションを戻したティモフェイ選手は、前を行くマシンを次々と抜き去り、7周目には僅差で2番手を競い合う皆木選手と酒井龍太郎選手の真後ろまで上がってきた。
10周目、ティモフェイ選手は酒井龍太郎選手をかわして3番手へ。さらに皆木選手と3度にわたるポジションチェンジを繰り広げ、17周目に2番手へ浮上した。この時、酒井仁選手とティモフェイ選手の間隔は約4秒。酒井仁選手は第8戦に向けたタイヤ温存ですでにペースを抑えていたが、残り4周で届く距離ではなかった。酒井仁選手は両手でナンバー1サインを示してチェッカーをくぐり、今季4勝目を遂げた。
そこから3秒強の後れでゴールラインをまたいだティモフェイ選手だったが、2回のプッシングで6秒加算のペナルティを受け、結果は4位に。繰り上がりで皆木選手が2位、酒井龍太郎選手が3位となった。5位は単独走行の三村選手。第3戦のデビュー以来たびたび光る速さを見せてきた手塚大雅選手が、9番グリッドから自己最上位の6位でフィニッシュした。





第7戦のベストタイム順で決まる第8戦のスターティンググリッドは、ティモフェイ選手がポール、酒井仁選手が2番手に。グリッド2列目には酒井龍太郎選手と皆木選手、同3列目には三村選手と手塚選手が並んだ。第8戦を前に雨はほぼ止んだが、コースは全面ウェットコンディションのまま。レースは今度も全車ウェットタイヤを装着しての戦いだ。
ティモフェイ選手は初ポールからのスタートをミスなくこなしてトップのままでレースを開始した。その後ろでは酒井龍太郎選手が2番手に、皆木選手が3番手に上がり、さらに手塚選手が皆木選手をかわして3番手を奪った。酒井仁選手は5番手に下がってオープニングラップを終えている。
出遅れを取り戻すべく先を急ぐ酒井仁選手は3周目、皆木選手と手塚選手を次々と抜き返して3番手までポジションを戻した。ただし、ここで酒井龍太郎選手と酒井仁選手の間には1秒以上の間隔が空いてしまった。チャンピオン争いの渦中にある皆木選手は、手塚選手を再逆転して4番手を行く。
トップをひた走るティモフェイ選手を、酒井龍太郎選手は0.4秒前後のギャップで懸命に追う。2台はこの間隔のまま、ヒリヒリとした追走劇を延々と続けていった。レースが終盤戦に入ると、このトップ争いに酒井仁選手がひたひたと接近してくる。残り6周、3台はついに等間隔で一列に連なった。
しかし、痺れるような戦いが続くレースに、これ以上のドラマはもう起こらなかった。17歳のティモフェイ選手はミスなく24周を走り抜き、2024年最終大会のOK部門デビュー戦以来初めての優勝を飾った。続いて酒井龍太郎選手と酒井仁選手がフィニッシュ。そこから13秒ほど後れて皆木選手が4位のチェッカーを受けた。手塚選手は5位入賞で自己最上位を更新。6位には澤田選手が入った。
暫定ポイントランキングは、酒井仁選手が154点で首位をキープ。2番手に147点の皆木選手が、3番手に128点の酒井龍太郎選手が続く。チャンピオン候補はこの3人に絞られた。残すは11月15~16日、鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)での第9戦/第10戦のみ。2024年に同部門の王者となった酒井涼選手に続くべく、酒井仁選手は弟と兄で2年連続の戴冠という偉業に挑む。





ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第7戦/第8戦(ラウンドシリーズ1)

同時開催されたジュニアカート選手権ラウンドシリーズ1の第7戦/第8戦。11台が出走したジュニア部門は、今回も坂野太絃選手のワンサイドゲームとなった。開幕戦から全勝街道を突っ走る坂野選手は、レースウィークの専有走行と公式練習では中段の位置に甘んじていたのだが、ウェットコンディションのタイムトライアルでは2番手の林樹生選手に0.281秒の差をつけるトップタイムをマーク。

半乾きの路面でスリックタイヤを履いてのレースとなった第7戦では、1周目から独走態勢を築くと後続を4秒以上引き離して7勝目を果たした。2位は5番グリッドからオープニングラップに2番手へ躍進した新橋武選手。2024年のジュニアカデット部門王者が、ようやくポテンシャルを発揮して初表彰台をゲットした。その後方では大集団のバトルが展開され、井ノ瀬喜仁選手が熱闘を制して自己最上位の3位に入賞した。




ウェットレースに変わった第8戦でも坂野選手の優位は変わらず、またも1周目から後続を大きく引き離して開幕8戦全勝を達成、2戦を残してチャンピオンを確定させた。2位は4番グリッドから2ポジションアップの飯田一仁選手。3位の北中一季選手も2ポジションアップの表彰台獲得だった。





ジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門 第7戦/第8戦(ラウンドシリーズ1)

ジュニアカデット部門には今季最多の18台が出走した。第7戦では全車スリックタイヤ装着でレースが始まったのだが、終盤戦に入ったところで雨が降り始め、先頭を走っていた北村紳選手がコースアウトを喫してレースを終えてしまう。これでトップに立った水口壱晴選手を、小林尚瑛選手が激闘の末に下して初優勝を飾った。水口選手はあと一歩で勝利を逃すも、デビュー戦で大活躍を演じての2位入賞。3位にはポイントリーダーの阿部瑠緯選手が入った。




ウェットタイヤでのレースに変わった第8戦では、今大会デビューの加納康裕選手が9番グリッドからぐいぐいと追い上げ、残り2周でトップに立って逆転優勝を果たした。2周目からトップの座を守り続けてきた北村選手は、惜しくも勝利を逃したが2位フィニッシュで今季2度目の表彰台へ。小林選手が最終ラップに順位を上げて3位を獲得した。
8戦を終えてのポイントリーダーは168点の阿部選手。久田朱馬選手が153点で2番手に続き、最終大会でのチャンピオン争いはこのふたりで競われることとなった。




Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第7戦/第8戦

GPR KARTING SERIESのシリーズ戦として同時開催されたShifter第7戦/第8戦には8台が参加した。タイムトライアルではホームコースに凱旋の平手晃平選手がトップタイムをマークしたのだが、ポールについた第7戦のグリッドで平手選手はエンジンがストールして発進できず、グリッドの最後尾に下げられてしまった。
2番グリッドの中里龍昇選手を実質的なポールとして始まった第7戦では、2023年のチャンピオン安堂祐選手が4番グリッドから1周目でトップに立ち、ほぼ2年ぶりの復帰戦を勝利で飾った。2位は8番グリッドから挽回の伊藤聖七選手。中里選手は3位でこのレースを終えた。




続く第8戦は、この大会最大の盛り上がりとなった。46歳の松田次生選手が、スタートでトップに立った16歳の伊藤選手を追い詰め、抜き去り、引き離して独走優勝を飾ったのだ。車検場でマシンを降りた松田選手の下には、若き日のカート時代を共に過ごした旧友たちが次々と祝福に訪れる。松田選手のカートレースでの優勝は1996年に鈴鹿サーキット南コースで開催されたCIK/FIAアジアパシフィック選手権iCA部門の勝利以来、実に29年ぶりのことだった。
2位は伊藤選手。それに続いてゴールしたのは5番グリッドから浮上の平手選手だったのだが、今季久々にカートレースに復帰した平手選手は規則が昔と変わっていることに気づかず、レース中にティアオフシールド(捨てバイザー)を捨ててしまい無念のヒート失格に。代わって49歳の佐藤奨二選手が3位表彰台に立ち、ベテランドライバーたちの活躍が光る一日となった。




PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAF スポーツ編集部[JAFSPORTS]