FP-3部門のタイトル争いは最終大会で決着! 山代諭和選手がチャンピオン確定に

レポート カート

2025年10月1日

9月20~21日、岡山県和気町の中山カートウェイで、全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門の2025シリーズを締めくくる第9戦/第10戦が行われた。FP-3部門では國岡光貴選手が両レースを連勝するも、山代諭和選手が第9戦の2位フィニッシュでチャンピオンを確定させた。

2025年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 第9戦/第10戦
開催日:2025年9月20~21日
開催地:中山カートウェイ(岡山県和気町)
主催:株式会社山陽スポーツランド

 5大会・全10戦で行われる全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門は、今季も中山カートウェイでシリーズを締めくくる大会が行われた。中山カートウェイは今シーズンの開催地の中で最西端に位置するサーキットだ。全長740mの比較的コンパクトなコースゆえ、周回数に影響し、体力面でも厳しい戦いとなることが予想される。

 ドライバーたちはこのハードなコースで予選15周/決勝30周の長い戦いを、第9戦、第10戦と一日で二度繰り返すこととなった。決勝日の空模様は絶好の快晴。しばらく前までの猛暑は去ったのだが、陽射しは強くまだ汗がにじむような暑さで、ドライバーの体力を奪っていった。

全日本カート選手権 FP-3部門 第9戦/第10戦

 FP-3部門は出走5台でレースが行われた。そのうち2名は同部門初参戦なのだが、徳岡大凱選手は今シーズンの全日本カート選手権 EV部門で公式練習のトップタイムをマークした期待の新鋭、石田馳知選手はジュニアカート選手権で17戦の参加実績があり、レギュラー参戦組にとってはどちらも油断できない存在だった。

 また今回は出走5台ということで、ポイント獲得圏内は予選/決勝とも3位までとなる。ひとつのミスがポイント圏外陥落につながる可能性があるという状況だ。ここまで勝ち抜いてきたポイントランキング上位者であっても気を抜く隙のない大会と言える。

 チャンピオンシップは、ここまで8戦4勝で224点を獲得した山代諭和選手がポイント争いをリード、2勝で213点の國岡光貴選手が暫定ランキング2番手につけている。新チャンピオンの権利を持っているのは、このふたりのみ。レースはコース上の戦いだけでなく、ポイント上での戦いにも注目が集まることとなった。

山代諭和選手と國岡光貴選手の両名がチャンピオンの可能性を残して最終大会に臨むことに。

 まずタイムトライアルで34秒173のトップタイムを叩き出したのは、千葉県から遠征してきた國岡選手。未体験の中山に事前練習なしで臨み、2番手の山代選手に0.1秒以上の差をつけてみせた。3番手の徳岡選手はROTAX MAX Challengeのレースで育ったドライバー。中山のレースが初めてなら、この部門でワンメイク指定されているヤマハKT100Sエンジンでレースをすることも初めてなのだという。

 続く第9戦の予選は思わぬ展開で幕を開けた。ポールの國岡選手がスタートで山代選手に先行されると、その直後の2コーナーで徳岡選手にもパスされて3番手に後退してしまったのだ。1ポイントも取りこぼしたくない國岡選手に対し、山代選手はこの機を生かして前半で1秒弱のリードを築いた。

 しかし、折り返し点でようやく徳岡選手を抜き返した國岡選手は、みるみる山代選手に追いつき始める。そしてラスト3周のバトルを制しトップに戻ってゴール、決勝のポールと貴重な予選ポイントを手に入れた。2番手は山代選手、3番手は徳岡選手だ。

 第9戦の決勝にもまさかの事態が待ち受けていた。徳岡選手のエンジンがグリッド上で始動せず、走ることなくレースを終えてしまったのだ。スタートでは再び山代選手がトップを奪って1コーナーへ。だが、國岡選手は2周目に山代選手を抜き返すと、9周目から徐々にリードを広げ始め、12周目にはアドバンテージを1秒以上に広げて独走態勢を確立した。

 一方、山代選手は石田馳知選手に真後ろまで迫られてタンデム走行が続いている。ベストタイムをマークしながらトップをひた走る國岡選手。その独り旅を阻むものは、もういなかった。フィニッシュの瞬間、國岡選手は右手を高々と挙げて勝利を宣言した。

 山代選手は石田選手を後ろに従えたまま、國岡選手から2秒強後れて2位でゴールした。これで山代選手の上位8戦の有効ポイントは245点に到達。残る第10戦で國岡選手が予選、決勝とも1位を獲っても243点にしか届かない。この瞬間、山代選手のチャンピオンが確定。石田選手は全日本のデビュー戦で3位表彰台を獲得だ。

FP-3部門 第9戦優勝は國岡選手(ガレージC)。
國岡選手は予選の時点で自分にペースがあることを把握し、「決勝のスタートで順位が下がったときもぜんぜん焦りませんでした。トップに戻って独走になってからは、ミスしないように意識してひらすた走るレースでした。ゴールしたときはホッとした気持ちでしたね」と勝利を強く確信していたと明かした。
2位は山代選手(quaranta sei YRT with GEMINI)、3位は石田馳知選手(SUPER CREW'S with ZEAL・WM)。
FP-3部門 第9戦表彰の各選手。
山代選手がFP-3部門のチャンピオンを確定させた。

 レースの先行きを不透明にするドラマは第10戦の予選でも続いた。徳岡選手が3番グリッドから好スタートを決め、オープニングラップでトップを奪ったのだ。ポールから2番手に下がった國岡選手は、4周目に山代選手にも先行を許して3番手に後退した。

 初めてづくしの大会とは思えない走りで徳岡選手が堂々と先頭の座をキープ。そのまま走り切って決勝のポールを獲得した。山代選手は國岡選手と何度かポジションを入れ替え、残り3周の再々逆転を成功させて2番手でゴール。國岡選手は3番手となった。

 2025シリーズ最後のレースである第10戦の決勝でも、幕開けで戦況が動く。山代選手がスタート直後の2コーナーで徳岡選手を逆転してトップに立ったのだ。2番手に下がった徳岡選手には國岡選手がチャージをかけるが、徳岡選手はラインを変えてこれに応戦。背後で攻防が続くのを利して、山代選手は5周で2秒弱ものリードを築き上げた。

 その山代選手を、5周かけて徳岡選手を攻略した國岡選手が急速に追い上げる。10周目に山代選手が後ろを振り返ったとき、アドバンテージは1秒を切っていた。13周目、ついに國岡選手が山代選手の真後ろへ。そして折り返し点を過ぎた17周目、バックストレッチ先の4コーナーで國岡選手がトップを奪う。

 ここから國岡選手は2番手以降を一気に突き離して独走へ。山代選手は3番手を競い合う石田選手と徳岡選手に追いつかれて接近戦に巻き込まれた。すると19周目、山代選手の姿がコース上から消える。突然のエンジントラブルでストップ。チャンピオン確定のお披露目レースとなるはずだった山代選手の第10戦決勝は、無念のリタイアに終わった。

 國岡選手はチャンピオンの栄冠を奪われた鬱憤を晴らすかのように疾走を続け、3秒以上のリードを築いてチェッカーをくぐって2連勝、山代選手に並ぶ今季4勝目を遂げた。徳岡選手はゴールの瞬間まで延々と続いた石田選手とのバトルを制して2位を獲得。石田選手は3位フィニッシュで2戦連続の表彰台に立つこととなった。

FP-3部門 第10戦優勝は國岡選手(ガレージC)。
「ドライバーとしてはやれるだけのことをやったレースでした」と國岡選手。シリーズに関しては「山代選手の方が一枚上手でしたね。今日は僕が一番速いことは分かっていたので、タイヤのエア圧を低めにして、前半は苦労するだろうけれどできるだけ順位を落とさずていねいに走ることを心がけていました」とコメント。
2位は徳岡大凱選手(KM Tech)、3位は石田選手(SUPER CREW'S with ZEAL・WM)。
FP-3部門 第10戦表彰の各選手。

全日本カート選手権 FS-125部門 第9戦/第10戦

 11台が参加したFS-125部門では、前回の第7戦/第8戦で酒井龍太郎選手が7勝目を挙げ、すでに2年連続のチャンピオンを確定させている。その酒井選手にタイムトライアルで緊急事態が起こった。タイムトライアルの計測時間の序盤でまさかのコースアウトとなったのだ。

 その後、酒井選手は走行を再開したものの、1周すると車検場にマシンを入れてアタックを打ち切った。これにより酒井選手のタイムトライアルは9番手だ。ブレーキの不具合を覚えたようで、スペアシャシーからブレーキシステムを移植する作業に取り掛かり、続く第9戦の予選をキャンセル、決勝を最後尾から戦うことになった。

 予選をトップで終えたのは、タイムトライアルの最速タイムをマークした元田心絆選手。後ろに続くチームメイトの片岡陽選手に逆転のチャンスを与えないまま15周を走り切って決勝ポールを獲得した。大集団の競り合いとなったセカンドグループでは、森谷永翔選手が頭に立って3番手でゴール。その真後ろに続いた木幡直生選手が4番手だ。

 第9戦の決勝は、元田選手のワンサイドゲームとなった。スタートで森谷選手と5番グリッドの小熊孝誠選手が2番手、3番手に上がり、片岡選手が4番手に下がると、元田選手は1周目から後続を突き離して3周で1秒以上のアドバーテージを獲得。そのリードを周回ごとに広げていった。

 元田選手の後方では、酒井選手が逆襲の狼煙を上げていた。酒井選手は3周で5台一列のセカンドグループに追いつくと、着々と順位を上げて12周目に2番手へ浮上する。このときトップを行く元田選手の姿は4秒近くも前方だったが、レースはまだ18周も残っている状況。果たして大逆転はなるのか……。

 ところが元田選手と酒井選手のギャップは、3秒強まで縮まったところで接近が止まり、18周目以降は逆に差が開いていった。酒井選手は第10戦にタイヤを残すことを考えて無理な追い上げを断念したのだ。こうして追われるプレッシャーがなくなった元田選手は、23周目にリードをストレート1本分に広げる。

 元田選手はその後も背後のギャップを拡大。そして圧倒的な独走でトップゴールを果たした。全日本デビューとなった第1戦/第2戦で迫真のトップ争いを演じて大きな注目を浴びた後、苦しいレースが続いていた期待のルーキーが、ついに初優勝をつかみ取った瞬間だった。

 一方、酒井選手は3番手以降を引き離し、単独走行で2位フィニッシュ。服部颯空選手が残り2周で森谷選手を逆転して3位を獲得した。

FS-125部門 第9戦優勝は元田心絆選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)。
スタート前は緊張していたという元田選手は「始まる前にいろいろイメージをしたことがうまくいきました。1年かけてやっと優勝できて、すごくうれしいです」と破顔。「決勝ではタイムを落とさないように集中して走りました。酒井選手が最後尾のグリッドになったことは、半分安心できて、半分はバトルしたかった気持ちでした」
2位は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は服部颯空選手(C.O.B-kart)。
FS-125部門 第9戦表彰の各選手。

 第10戦の予選に入ると、元田選手はそれまでの飛び抜けた速さこそ影を潜めたものの、トップの座を最後までキープして2戦連続の決勝ポールを手に入れた。2番手は片岡選手、3番手は本間詠吉選手。酒井選手にはいつものずば抜けた速さはなく、6番手のゴールに留まった。

 今季を締めくくる第10戦の決勝。先頭をキープして発進した元田選手に続いたのは、スタートを決めた本間選手だ。このヒートでの本間選手はスピードが光り、元田選手に0.5秒ほどの差で食らいつきながら3番手以下を引き離していく。

 レースが後半戦に入った17周目、挽回を続けていた酒井選手が3番手に上がり、1秒近くあった先頭集団とのギャップをぐいぐいと削り取っていたのだ。23周目、元田選手、本間選手、酒井選手の3台はついに一丸となった。

 このヒートでの三者の実力は拮抗。酒井選手は特性の異なる本間選手の走りに手を焼き、なかなか攻略のチャンスを見つけられない。それでも残り5周でなんとか本間選手の前に出た酒井選手だったが、残り2周で元田選手に仕掛けに行った隙を突かれて、本間選手に抜き返された。

 これでレースは決着。元田選手はトップを明け渡すことなく30周を走り切って2連勝、ランキング2位確定でシリーズを締めくくった。キレた速さを披露した本間選手は、今季最上位の2位フィニッシュで表彰台を獲得。酒井選手は3位で1年間の戦いを終えた。

FS-125部門 第10戦優勝は元田選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)。
「勝つために1年間努力してきたけれどなかなかうまくいかなくて、それを最終的にまとめることができて良かったです」と2連勝の元田選手。「後ろから追われるレースはキツく、酒井選手の音がみるみる近づいてきてちょっと焦りました。一瞬だけバトルになりましたが、そこで勝てたことがうれしいです」と締めた。
2位は本間詠吉選手(K.SPEED WIN)、3位は酒井選手(ミツサダ PWG RACING)。
FS-125部門 第10戦表彰の各選手。

 同時開催が予定されていたジュニアカート選手権ジュニア部門/ジュニアカデット部門(ラウンドシリーズ2)の第9戦/第10戦は、両部門とも成立に至らなかった。今季6戦が行われたジュニア部門では、4勝を挙げた織田大和選手がチャンピオンに確定。ジュニアカデット部門は今季の開催が2戦に留まり、選手権も成立とはならなかった。

ジュニア部門は本大会も不成立となったことで、6戦が選手権として成立。これに伴い、スポーツランドSUGOで開催された第6戦終了時点までさかのぼり、織田大和選手のチャンピオン確定となった。

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、JAPANKART、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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