中部・近畿ラリー期待の若手クルー中嶋健人/白川和樹組が第4戦DE-1で地区戦初優勝!
2025年9月17日

2025年JAF中部・近畿ラリー選手権のシリーズ4戦目となる「丹後半島ラリー2025」が、8月23・24日に開催された。今季の丹後半島ラリーも京都府北部の京丹後市がホストタウンとなったが、道の駅丹後王国「食のみやこ」にヘッドクォーターとサービスパークが置かれた。甲子園球場約8個分の広大な敷地を持つことで知られ、丹後あじわいの郷と呼ばれていた時代には、JAF全日本ラリー選手権の一戦「ラリー丹後」のギャラリーステージも行われた実績も持つ施設が拠点となった。
2025年JAF中部・近畿ラリー選手権 第4戦
2025年JMRC近畿SSラリーシリーズ第2戦
丹後半島ラリー2025
開催日:2025年8月23~24日
開催地:京都府京丹後市周辺
主催:OECU-AC、FERIAS
今回のターマックラリーで用意されたスペシャルステージ(SS)は、ラリー丹後でも名物ステージとして知られた「大内線」と「奥寄線」の2本。前半は「大内線Reverse」5.24km、「奥寄線Reverse」4.3kmの順で2回ずつ走り、給油を挟んだ後はその逆走となる方向で「奥寄線」4.42km、「大内線」5.16kmの順で1回ずつ走ってフィニッシュという設定だ。
両ステージとも丹後半島の山中、標高の高い地帯を縦に貫き道の性格も似て、道幅も広いために中高速のドライビングが楽しめる。特に大内線は日本三景のひとつとして知られる天橋立を眼下に望むなど、ロケーションにも優れたステージだ。
今季は近畿地区で開催される全日本は奈良での「YUHOラリー飛鳥」に移ったため、これまで全日本と地区戦で2度走る機会があった丹後半島のステージが1回のみに減ったことが影響したか、今回のラリーは2024シーズンから18台増となる73台がエントリー。相変わらずの人気ぶりを証明した。

DE-1クラス
DE-1クラスは、GDB型スバル・インプレッサWRX STIをドライブする中嶋健人/白川和樹組がSS1“大内線ReverseⅠ”で、2番手の吉浪和也/杉本直美組が駆るGRヤリスに5.3秒差をつけるスタートダッシュを決めてトップに立つ。
吉浪/杉本組はSS2“奥寄線ReverseⅠ”で中嶋/白川組に1.5秒競り勝つと、SS3“大内線ReverseⅡ”では0.1秒差で中嶋/白川組に食らいつき、2度目の奥寄線ReverseとなったSS4では0.6秒差で再び中嶋/白川組を下し、3.3秒差まで詰めてサービスに戻ってきた。
しかし、仕切り直しのSS5“奥寄線”では中嶋/白川組が吉浪/杉本組を4.1秒差で下してリードを大きく広げた。最終のSS6“大内線”で中嶋/白川組はベストで締め括ってトータル7.8秒までリードを広げて優勝を果たした。吉浪/杉本組に続く3位には、SS2でベストを奪った宮本雅彦/鈴木眞由美組が、伊藤淳郎/杉原慶彦組との新旧三菱・ランサーエボリューション対決を最終SSでの逆転で制して表彰台の一角に入った。
地区戦3季目の中嶋選手は24歳、期待の新鋭だ。昨季まではZC6型スバルBRZを操ってDE-2クラスにエントリーしていたが、今季から乗り換えたインプレッサで念願のラリー初優勝を飾った。「今回は前回より幅広のタイヤを履いて、まずはフィーリングを掴もうと思ってスタートしたんですが、SS1からタイムが出たので、その後は危ない場面もありましたが(笑)、グリップ感とクルマの動きに徐々に慣れつつペースを上げられた感じです。道が広かったので、ラインどりなどの面で昔やっていたレーシングカートの経験も活かせたと思います」と、会心のラリーを振り返った。
一方、2023シーズン以来となるラリー復帰の一戦で2位を獲得した吉浪選手は、「以前、奥寄線は今日で言うとSS2、SS4の方向で走るのが苦手だったんですが、なぜか今日はタイムが出て、じゃあ得意だったSS5の方向もイケるんじゃないかと思ったらダメだったんです(笑)。ちょっと原因が分からないので、次回までには対応したいですね」と、無念の表情を見せていた。
中嶋選手は岐阜県高山市の出身。今季は生まれ育った地で10月に開催される、全日本第8戦「第52回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2025」のオープンクラスへの参戦も見据える。「実は今回もロスしたり、ドライビングもミスが多くて課題は山積みなんですけど、長い距離を走ることで色々な経験を積んでいければと思っています」とのこと。伝統のラリーに挑み、一気にスキルアップを狙う。


DE-2クラス
18クルーがエントリーしたDE-2は昨季、5戦中3勝を挙げてチャンピオンを獲得した下口紘輝選手が、全日本コ・ドライバーとして知られる安藤裕一選手と組んで、地区戦に今季初参戦してきた。
その下口/安藤組が操るZN8型GR86はSS1でベストを獲って順調なスタートを切る。しかし、SS2では関東地区から遠征してきた石城健司選手と、全日本ではJN-2クラスの小泉敏志選手のコ・ドライバーを務める村山朋香選手のクルーが下口/安藤組に0.7秒競り勝ち、0.4秒差に迫る。全国有数の激戦シリーズとして知られるJMRC群馬ラリーシリーズで二戦連続総合優勝達成中の石城選手は、初参戦のラリーで元全日本チャンピオンの速さをいきなり見せつけた。
その後もトップ2クルーによるマッチレースとなるが、SS3とSS4は下口/安藤組がともに0.4秒の僅差で石城/村山組を下して、1.2秒のマージンを築いてサービスに帰還する。しかし、石城/村山組はSS5で下口/安藤組に0.1秒差で食らいつき、最終SSに逆転の望みをつなげた。
だが、ここで石城/村山組が駆るZN6型トヨタ86のマフラーにトラブルが発生、これも影響して3.7秒の水を開けられて万事休す。下口/安藤組が最終的に5秒差で石城/村山組を振り切って、中部・近畿勢の牙城を守った。トップ2から大きく差が開いてしまったが、GR86をドライブする中野敬太/森井康貴組が続き、新旧86勢がトップ3を占めた。
今季前半は全日本JN3クラスに参戦した下口選手は、「ドライになるとなかなか上位陣のペースについていけず、特にモントレーでは惨敗したので、来季に向けての走り方やノートのつくり方の課題を確認したくて今回、参戦しました」と経緯を明かした。
続けて「石城選手とは毎回、僅差だったのでそれなりにシビれましたが(笑)、あくまで今回は自分の走りと向き合うことが一番だったので、それほど勝負は意識しませんでした。ただし走り方については、ラリーをとおしてアップデートできたと思います」と手応えを語った下口選手の今季後半の参戦予定は未定だそうだ。「ただ、モントレーの借りを返したいので、群馬戦に出るかもしれません(笑)」と、笑顔で語った。
一方、石城選手は「気持ち良く走れそうで、気持ち良く走ってしまうとダメな、難しい道でしたね。ずっと中高速のコーナーが続くような道は群馬戦にはないので、セッティングも合わせられなかった。速度がのるコースと聞いていたので、同じくハイスピードな群馬の大前須坂線をイメージしたセットを一応、今回は持ち込んだんですけど、全然、違いましたね(笑)。でも楽しく走れました」と激戦を振り返った。


DE-5クラス
中部・近畿ラリー最大の激戦区として知られるDE-5クラスは、今回も26クルーがエントリーと、人気沸騰のクラス。王座争いでは、石城選手と同じく関東在住で、全日本ドライバーチャンピオンに2度輝いている明治慎太郎選手と、コ・ドライバー坂口元弥選手のクルーがマツダ・デミオを操り開幕二連勝と、なみいる中部・近畿の強豪達を抑えている。
明治/坂口組は今回のラリーも絶好調。SS1で優勝候補の一角、伊藤祐悟/船木淳史組を5.3秒差の2番手に従えると、SS2でも2秒差で伊藤/船木組を抑えてリードを広げる。明治/坂口組は2ループ目のSS3とSS4も連取して独走態勢に入る一方、伊藤/船木組はペースを上げることができず、2番手争いに巻き込まれた。SS4終了時では2番手の伊藤/船木組から5番手の小土橋宏紀/牛田啓太組までが1秒の間にひしめく超接近戦となる。
明治/坂口組のスピードは、逆走となったSS5とSS6でも衰えずにベストを連取。全6SSを全て制する圧巻の走りで優勝を飾った。注目の2位争いは、SS5で明治/坂口組に1.5秒差に迫るセカンドベストタイムをマークした小川由起/木村裕介組が、SS6でも再び2番手であがって田中佑樹/中島秀一朗組を土壇場で逆転、今季最上位をマークした。
明治選手は「開幕戦はちょっとオーバーステア気味で走りにくくて、第2戦もブレーキの調子が今一つだったので、今回は色々と対策して臨んだ一戦でした」と明かした。更に「今回のラリーは正直、あまり好きなタイプの道ではないんですが(笑)、対策した甲斐あってクルマが思ったとおりの動きをしてくれたので、SS1から踏めた感じですね」と勝因を語った。
熾烈な2位争いを制した小川選手は、「今まで“初心者仕様”だったヤリスが今回からレベルアップされた仕様になって、ロール剛性が上がって四輪の接地感も凄く上がったんです。それが自分には運転しやすかったのがタイムに繋がった感じです。最終SSは順位のこととかは一切考えずに、自分がイメージした走りをすることに集中しました」と、会心の走りを振り返った。


DE-6クラス
DE-6クラスは横山慎太郎/市橋真由子組が6本のSS全てを制する速さを見せて、横山選手は第2戦に次ぐ今季2勝目をマークした。開幕第1戦を制したHARU/浦野純乃介組は、亀石典/中根達也組に先行されて3番手を走る苦しい展開となった。しかし、亀石/中根組のリタイアによって2番手に浮上してその座を守ってフィニッシュ、最終第5戦で逆転チャンピオン確定を期すことになった。3位には全日本JN3クラスのドライバー、長﨑雅志選手がコ・ドライバーを務めた江端健斗選手が駆るヤリスが入賞した。
昨季の丹後半島ラリーでは、このクラスにエントリーした小川選手に続く2位で終えた横山選手は、「高速コーナーが続く丹後半島ラリーはCVTの強みを生かせるラリーなので、正直、上のクラスも見据えたタイムを狙っていました」とのこと。実際、DE-5で2位の小川選手から僅か1.1秒落ちで3位タイに匹敵する、DE-6としては破格のタイムでフィニッシュしており、「コースとの相性の良さを確認できて楽しく走れました」と、納得の表情を見せた。


チャレンジクラス、2025年Women’s Rally Cup
チャレンジクラスは全日本JN2クラスで戦うドライバー、最上佳樹選手と吉原將大選手もエントリーする豪華ラインナップでバトルが展開されたが、吉原/石田裕一組が前評判どおりに総合トップとなるタイムで走り切った。
今季から始まった女性ラリーストが対象の2025年Women’s Rally Cup、ドライバー部門ではDE-5の小川選手とDE-6のHARU選手、DE-2では洪銘蔚選手、チャレンジはJu Ya選手が20ポイントを獲得。コ・ドライバー部門はDE-6を制した市橋選手とDE-1の杉本選手、DE-2の村山選手とDE-5のKAZU選手が20ポイントを得た。
王座争いでは小川選手とHARU選手が同点でドライバー部門トップに並ぶ。コ・ドライバー部門では、今回のラリーはDE-5でリタイアとなった渡部世李香選手と、欠場した大貫明日香選手に加えて、市橋選手が60ポイントでトップに並んだ。




フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]