ネーミングライツSS登場の群馬ラリー第3戦で石城健司/露木明浩組が総合二連勝!!
2025年8月7日

群馬ラリーシリーズ第3戦「ネコステ山岳ラリー2025」が、7月12・13日に群馬県神流町を拠点として開催された。2025シーズンの群馬ラリーは10月第1週に開催される最終戦まで全5戦のカレンダーが予定されている。すでに2戦が終了しており、第2戦から3週間のインターバルを経て、今回のネコステ山岳ラリーがシリーズ折り返しの一戦となった。
JMRC関東ラリーカップ
群馬ラリーシリーズ第3戦
ネコステ山岳ラリー2025
開催日:2025年7月12~13日
開催地:群馬県神流町周辺
主催:NECOSTE
春に開催されるかたちがすっかり定着していたネコステ山岳ラリーだが、今季は夏に開催時期を移動。ここ数シーズンは南牧村や富岡市などに置いていたヘッドクォーター(HQ)も、主催する埼玉県のJAF加盟クラブ、ネコステラリーチーム(NECOSTE)の本拠地により近い神流町に移された。
SSには3つのターマックステージが用意され、NECOSTE主催のラリーではお馴染みの“八倉(ようくら)”、“橋倉”に加え、“坂丸線”が久々に復活した。3.95kmの八倉は今季のJAF全日本ラリー選手権 第4戦「MONTORE 2025」でもその一部が使われた林道だが逆走で使用し、これまたNECOSTE名物のジャンピングスポットが待ち受ける名物ステージだ。八倉のゴールから1.7kmのリエゾンを経てスタートするのが6.64kmの橋倉で、こちらは下り基調のステージとなる。
HQにもほど近い山間部を走る9.3kmの坂丸線は今回最長のステージだが、森の中を縫うように走るため八倉、橋倉と比べると陽が届く区間が少なく、苔なども生えたスリッピーな路面が所々で待ち構える。今回のラリーではこの3本のSSを3ループする設定だったが、最終SS9となる予定だった坂丸線が路面状況の悪化のためキャンセルとなり計8本のSS、50.37kmで勝負が争われた。
それでも、一日で50kmを超えるSSを走るという設定は全日本のターマックラリーにも匹敵するもので、県戦としては異例ともいえる長距離のSSが設定されたラリーに、クルーたちは果敢にアタックした。なお坂丸線は医療従事者としても知られる全日本JN3クラスでも戦うドライバー、“ウー先生”こと上原淳氏がスポンサードする“川越救急クリニックStage”の名が冠されたSSとなった。
天候は終日、好天がキープされたが、ラリー2日前に埼玉県西部で線状降水帯による激しい降雨があった。今回のラリーで使用したステージでの被害はなかったものの、場所によっては湿り気を含んだ路面が残るというコンディションの中、ラリーはスタートした。

クラス1
クラス1は、排気量2500ccを超える4WD及び排気量区分なしのRRN車両が対象となる。群馬ラリーの各クラスで装着できるタイヤとホイールは、2025年JMRC関東地区ラリー統一規則で定められている。
ともに東北・関東地区を代表するラリードライバーである、渡辺謙太郎選手と上原利宏選手が駆る2台の三菱・ランサーエボリューションが接戦を展開した。いずれも今季、群馬ラリー初参戦となった2クルーは、SS1“Youkura up1”で渡辺謙太郎/厚地保幸組が上原利宏/郷右近孝雄組に0.8秒差をつけるベストタイムをマークするが、SS2“Hashikura down1”では上原利宏/郷右近組が渡辺謙太郎/厚地組を3.6秒差で下して逆転する。
しかしSS3“川越救急クリニックStage1”では、渡辺謙太郎/厚地組が6.9秒差で上原利宏/郷右近組を下して再逆転し、ベストの応酬となる。2ループ目に入ると前戦を制した後藤英隆/菅野総⼀郎組が首位を争う2台を横目にSS4“Youkura up2”、SS6“川越救急クリニックStage2”でベストを奪う走りを見せるが、1ループ目での遅れが響き、トップの2台に約40秒の遅れをとって3番手で折り返す。
一方、優勝争いはSS6で渡辺謙太郎/厚地組が上原利宏/郷右近組に8.3秒の遅れを取とり、それまでのマージンを吐き出すどころか、逆に2.4秒の先行を許してサービス後のセクション2で逆転を期すことになった。渡辺謙太郎/厚地組はセクション2最初のSSとなったSS7“Youkura up3”で、上原利宏/郷右近組を5.3秒差で下して首位を奪還。SS8“Hashikura down3”でも5.1秒差をつけ、トータル8秒のリードでシーソーゲームに決着をつけた。
優勝した渡辺謙太郎選手は「坂丸線(川越救急クリニックStage)は、まさに“Dirt Road”でしたね。SS6は抑えてもいないし、ミスってもいないので、なぜタイムが出なかったのか分からないんです。ただ最後の2本は3ループ目ということもあって道にも慣れて、タイヤの感じも良かったので楽しく走れました」と、所属チーム名も絡めて語った。
一方、2位の上原利宏選手は「3ループ目は渡辺選手と同じタイヤに変えて勝負賭けたんですけど、渡辺選手を本気にさせちゃったみたいですね(笑)。同じタイヤを履いて勝てなかったのだから、これは実力差というしかないでしょう。SS9を走れたとしても、SS3では負けてますからね。逆転できたかどうかは分からなかったと思います」と長丁場のラリーを振り返った。



クラス2
1500ccを超える2WD及び1500ccを超え2500ccまでの4WDが競うクラス2は、前戦で総合優勝を果たした石城健司/露木明浩組が駆るトヨタ86がSS1でベストを奪い、上々のスタートを切る。しかし山田一雄/石垣晴恵組もZC33S型スズキ・スイフトスポーツを操り全くの同タイムで並んで2クルーが一歩抜け出す。SS2で石城/露木組が山田/石垣組に5.5秒差をつけると、SS3では11.1秒の大差で下して一気にリードを広げた。
2ループ目のSS4、SS5では山田/石垣組がコンマ数秒差で石城/露木組に食らいつくが、SS6では石城/露木組が再び15.7秒差をつけるベストをマーク。川越救急クリニックStageを2回立て続けでブッちぎりの総合ベストとなるタイムであがった石城/露木組がそのまま逃げ切った。
若かりし頃に群馬ラリーでウデを磨いた元全日本ラリードライバー王者の石城選手は、長いブランクを経て2024シーズンからこのシリーズでラリーに復帰した。長丁場の川越救急クリニックStageでスーパーベストを出せたことについては、「長いSSの方が走っている間に昔、全日本を走っていた頃の感覚がちょっとずつ思い出せてきて、リズムが掴めるようになりました」と明かした。
続けて「ただ、群馬戦はたくさん走れるのが楽しいので参加しているのですが、正直一日で50kmを走る今日のような設定にはまだ体がおいつかなくて、最後の2本は疲れが出てしまいました(笑)」と、3ループ目のSS7とSS8は山田/石垣組にベストを譲った。それでも二戦連続で総合優勝も飾り、かつて全日本を制した貫禄を見せた。
川越救急クリニックStage以外の二つのステージでは石城/露木組と肩を並べるタイムを出した山田選手は、「いろんなパッケージをラリー中も試してみて大外れもしなかったけど、大当たりもなかったんですが、特に坂丸線は石城選手のペースについていけませんでした。やれることはやったけど、技量も経験もまだ足りないということなんだと思います」と語るも、石城/露木組に次ぐ総合でも2位のタイムでフィニッシュし、クラス2のレベルの高さを示した。




クラス3
1500ccまでの車両及び1600cc以下で2006年以降登録のRPN車両が対象のクラス3。前戦優勝の細谷裕一/蔭山恵組が駆るトヨタ・ヴィッツが序盤から三連続ベストマークして40秒以上のマージンを築き、ラリーの主導権を握る。
その後、細⾕/蔭⼭組はSS4とSS5も連取するが、SS6ではSS5で細⾕/蔭⼭組に1秒差のセカンドベストをマークしていた梅村佳樹/渡辺竜成組がドライブする三菱・コルト ラリーアートVersion-Rが5.9秒細⾕/蔭⼭組に競り勝って、今回のラリー初ベストをマークする。しかし細谷/蔭山組は3ループ目となるSS7、SS8では再びベストを奪ってリードを拡大。最終的に50.6秒の大差を梅村/渡辺竜成組につけて、二連勝を飾った。
大きな勝負所となった川越救急クリニックStageについて、「超難しい路面でしたね。土曜のレッキでは濡れてたけど、今日は乾いているだろうなんて気持ちでコーナーに入ったら裏切られちゃうような感じで、特に2ループ目は滑って大変でした」と、細谷選手といえども苦戦したステージだったようだ。
続けて「八倉、橋倉だけだったらいつものセットで走れたと思うけど、坂丸線はさすがに厳しいと思ったので今回はちょっとセットを調整しました。タイヤもフロントは新品で走りました」と川越救急クリニックStage対策が功を奏した様子だ。
一方、SS6で細谷/蔭山組を下した期待の若手、梅村選手は「スーパードライ路面用のラリータイヤを選んだおかげで、荒れた路面でも踏んでいけました」と、2位獲得のポイントを明かした。




クラス4、オープンクラス
クラス4は排気量区分なしのAE車両と、2500cc以上で車両重量2t以下の4WD以外のAT(自動変速機)車両で競う。いりえもん/川⼝達也組のコルトVersion-R CVTが全SSでベストを獲得する圧巻の走りを見せて、開幕戦に次ぐ勝利を飾った。
今季、JMRC東北ラリーシリーズや2025年JAF全日本ダートトライアル選手権のPNE1クラスに参戦中のいりえもん選手は、グラベル仕様のままのコルトVersion-Rで今回のターマックラリーに参戦してきた。
「今年はCVTのトラブルが続いたこともあって、今回はまずクルマを労わりつつ、完走することを目標として走りました。ターマックでもコルトの素性の良さを確認できて、色々なデータも取れた有意義な一戦でした。今年はこのクルマで様々なことに挑戦するのがテーマなので、シーズン後半も複数のカテゴリーの大会に出る予定です」と、いりえもん選手は語った。CVTのコルトVersion-Rが持つポテンシャルに、確かな手応えを掴んた様子だった。
オープンクラスは川名賢/横山慎太郎組がフォード・フィエスタをドライブして独走するが、リタイアを喫してしまう。SS1から2番手タイムを連発していた髙萩風馬/竹澤義則組がトップに浮上し、そのままフィニッシュした。


フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]