全日本久万高原ラリーでJN-5河本拓哉/有川大輔組のタイトルが確定!

レポート ラリー JAFWIM

2025年10月10日

全日本ラリー選手権 第7戦の「久万高原ラリー」が、10月3~5日に愛媛県の久万高原町周辺を舞台に開催された。全8戦が組まれている今年の全日本ラリー選手権は、このラウンドと2週間後に岐阜県高山市を拠点に開催される第8戦「M.C.S.Cハイランドマスターズ」を含め、残り2戦。前戦の第6戦[RALLY HOKKAIDO」を終えた時点でJN-3、JN-4、JN-Xの3クラスはタイトルの行方が確定しているが、残るJN-1、JN-2、JN-5の3クラスはこのラウンド、あるいは最終戦が決戦の場となる。

2025年JAF全日本ラリー選手権 第7戦「久万高原ラリー」
開催日:2025年10月3~10月5日
開催地:愛媛県久万高原町周辺
主催:MAC、ETOILE、DCR

 参加台数が規定に満たなかったためにクラス不成立となったJN-4クラスを除き、5クラスが成立したこの第7戦には、オープンクラスを含め50台がエントリー。ステージは、ラリー初日に13.51kmの「大谷」と13.80kmの「大川嶺」を、サービスを挟んで2回ずつ走行。ラリー最終日となる2日目には、逆方向に2回ずつ走る計8SSが設定された。標高800〜900m付近を走る「大谷」は、アップダウンが少なく比較的フラットなステージで、直線距離は短いながらもコーナリングスピードが高い中高速コーナーと低速のヘアピンコーナーが入り交じり、全日本の中でもリタイア率が高い難ステージのひとつだ。

 一方、標高1000m付近に位置するサービスパークから標高1500mの笹で覆われた高原までつづら折りの林道を一気に駆け上がり、再び標高1000m付近まで下る「大川嶺」は、頂上の高原付近はハイスピードコーナーが連続するものの、上りも下りもタイトコーナーが連続するヒルクライム&ダウンヒルコースだ。それぞれキャラクターが異なるふたつのステージを、いかに攻略するかが勝敗の鍵を握る。

 天候は、4日のレグ1は早朝に雨が降った影響が残り、路面はハーフウェット状態。雨が止んだ午後も、一部の区間はドライ路面となったものの、霧が発生しドライバーの視界を奪う難コンディションとなった。一方、リバースステージを走行する5日は、前日と同じくハーフウェット路面と霧に悩まされるシーンが多い上に、前日のインカットにより掻き出された土や砂利が路面に散乱する区間もあり、ワンミスが命取りになるサバイバルゲームとなった。

標高が高い今大会では多くのステージで霧が発生。路面はウェットとなっている箇所が多く、難しいコンディションでの戦いとなった。そんな中でも熱心なギャラリーが多数訪れ声援を送っていた。

JN-5クラス

 JN-5クラスは、2年連続チャンピオンを狙う松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)が、SS2で山肌の壁にヒットしてサスペンションを破損して早々と戦線離脱する中、シリーズランキングトップの河本拓哉/有川大輔組(マツダ・デミオ)が快走。「SS1からしっかり戦える準備をしてきました」という河本/有川組は、SS3を終えた時点で2番手を2分以上引き離す驚異的なペースで各SSを駆け抜ける。その後も手綱を緩めない河本/有川組は2日目に入ってもペースを落とさず、最終的には2位に2分55秒9の大差をつけ今季3勝目を獲得し、自身初となるシリーズチャンピオンを確定させた。

 小川剛/山本祐也組(トヨタ・ヤリス)と、阪口知洋/野口智恵美組(日産・マーチNISMO S)が一時は1秒を争う展開となった2番手争いは、SS7のスタートから約1km地点で小川/山本組がコースアウト。「ペースノートや走りなど反省点がすごく多いラリーでしたが、最後まで走り切れたことは良かった」という阪口/野口組が2位に入賞し、同じく「上位の選手との差が大きく、色々と反省点の多いラリーでしたが、キャリアハイの3位で追われたのはすごく良かったです」という島根剛/粕川凌組(トヨタ・ヤリス)が3位となった。

JN-5クラス優勝は河本拓哉/有川大輔組(DLクスコWMタカタOTS・TWRデミオ)
2位は阪口知洋/野口智恵美組(FORVIA日産自動車大学校マーチDL)、3位は島根剛/粕川凌組(ADVICS新興K1カヤバDLヤリス。
JN-5クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の阪口/野口組、1位の河本/有川組、3位の島根/粕川組。
JN-5クラスのドライバー部門チャンピオンを河本選手が、コ・ドライバー部門チャンピオンを有川選手が確定させた。

JN-1クラス

 JN-1クラスは、2日間通して今季3勝を挙げていながら、リタイアも多くシリーズランキング4番手につける新井大輝/立久井大輝組(シュコダ・ファビアR5)と、今季未勝利ながらもコンスタントにポイントを重ねシリーズ3番手につけるヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)がマッチレースを展開。逆走となる2日目を含め両日とも「大谷」をコバライネン/北川組がベストタイムをマークし、「大川嶺」は新井/立久井組がベストタイムをマークするという、両者一歩も引かないバトルが続く。

 だが、2日目のSS5でベストを奪い首位に立った新井/立久井組が、続くSS6の約5km地点でコース上のオイルに足を取られコースオフ。コースには復帰するものの、コバライネン/北川組に再逆転を許し、6.2秒差の2番手となった。SS7は新井/立久井組がベストを奪い、コバライネン/北川組とのタイム差を4.2秒に縮めるが、反撃もここまで。最終SSとなるSS8はコバライネン/北川組がベストを奪い、今季初優勝を飾った。2位に新井/立久井組、ラリー北海道でクラッシュを喫した勝田範彦/保井隆宏組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)が3位となった。

JN-1クラス優勝はヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLO速心DLヤリスRally2)。
2位は新井大輝/立久井大輝組(YAHAGI シュコダ ファビア R5)、3位は勝田範彦/保井隆宏組(GR YARIS Rally2)。
JN-1クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の新井/立久井組、1位のコバライネン/北川組、3位の勝田/保井組。

JN-2クラス

 JN-2クラスは、初日の4SSすべてを制した貝原聖也/西﨑佳代子組(トヨタ・GRヤリス)が、2日目は初日に築き上げたマージンをしっかりと活かし、首位の座を一度も譲ることなくフィニッシュ。「今回は真っ向勝負で勝つことができたので、本当にうれしいです。セットアップも今までで一番というくらい決まっていて、高速コーナーも低速コーナーもウェット路面もドライ路面も、自信を持って走ることができました」と、うれしいJN-2クラス初優勝を飾った。

 2位には、「タイトル獲得に向け、今回の目標は2位以上で帰ってくることだったので、リスクを負って攻めるつもりはありませんでした。最終戦は、勝ってチャンピオンを決めます」という山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)が入賞。3位には、「頑張ったんですけど、前の2台が速くて。2日目は自分としても精神的に抑えてしまいました」としながらも、4位以降に1分以上のタイム差をつけた大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスDAT)が入った。

JN-2クラス優勝は貝原聖也/西﨑佳代子組(ADS多賀製作所K1カヤバGRヤリスDL)。
2位は山田啓介/藤井俊樹組(FITEASYソミック石川DLGRヤリス)、3位は大倉聡/豊田耕司組(AISIN GR Yaris DAT)。
JN-2クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の山田/藤井組、1位の貝原/西﨑組、3位の大倉/豊田組。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

 JN-2クラスに組み込まれ、若手ドライバーと女性ドライバーがGRヤリスで参戦するTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)は、SS1でトップに立ったジール・ジョーンズ/バイデン・トムソン組が、その後一度もトップの座を譲ることなくフィニッシュ。「リードを守ることに集中していたし、今年は細かい部分をまとめられないラリーが多かったけど、今回は自分のペースを発揮することができたと思う。だから、本当に最高だよ」というジョーンズ/トムソン組が、MCC初優勝を飾った。

 2位には、地元出身でグラベルラリーを得意とする岩堀巧/相原貴浩組が入賞。ラリー序盤のペースが上がらなかった大竹直生/橋本美咲組が3位だった。

JN-3クラス

 JN-3クラスは、前戦のラリー北海道でシリーズチャンピオンを確定させた山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)がSS1を制するものの、その後は「いろいろなプチトラブルが重なって、思うようにペースが上がりませんでした」とタイムが伸びない中、ベテランの曽根崇仁/小川由起組(トヨタ・GR86)が、深い霧に覆われたSS2で2番手タイムを20秒以上引き離すベストタイムをマーク。続くSS3も制し、2番手との差を41.6秒差に広げた曽根/小川組は、ラリー2日目のオープニングとなるSS5でもベストタイムをマークし、マージンを拡大。「難しいコンディションでしたが、コ・ドライバーがしっかりとペースノートをリーディングしてくれました」と、曽根/小川組が昨年のラリー北海道以来約1年ぶりとなる優勝を飾った。

 2位には、初日を終えて5.4秒あった山口清司/丸山晃助組(トヨタ・GR86)との差を2日目に逆転した上原淳/漆戸あゆみ組(スバル・BRZ)が入賞、「結果的には2日目最初のループでタイヤ選択を失敗したことが最後まで響いてしまいました。悔いが残りますね」と悔やむ山口/丸山組が3位となった。
JN-3クラス優勝は曽根崇仁/小川由起組(P.MU☆DL☆INGING☆GR86)。
2位は上原淳/漆戸あゆみ組(埼玉スバル・DL・KYB・シャフトBRZ)、3位は山口清司/丸山晃助組(エナペタルADVAN久與GR86)。
JN-3クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の上原/漆戸組、1位の曽根/小川組、3位の山口/丸山組。

JN-Xクラス

 すでに天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・RAV4 PHEV)が今シーズンのチャンピオンを確定させているJN-Xクラスは、その天野/井上組が全ステージでベストタイムをマーク。2位以降を5分以上引き離す圧倒的な速さで今シーズン7勝目を獲得した。

「路面コンディションを読むのが難しかった。ペースノートをつくるのも読むのも走るのも大変なラリーでした」という清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリスHEV)が入賞。3位には、「バッテリーの警告灯が出たり、いろいろあったラリーでしたが、完走ペースでしっかり走り切りました」という中西昌人/山村浩三組(ホンダ・CR-Z)が入賞した。

JN-Xクラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DL・RAV4 PHEV)
2位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)、3位は中西昌人/山村浩三組(YH・WM・OR・マクゼス・CR-Z)。
JN-Xクラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の清水/山本組、1位の天野/井上組、3位の中西/山村組。

PHOTO/CINQ、遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、小竹充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]  REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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