九州ラリー後半戦の第4戦で最激戦区RH-1を津野裕宣/大庭正璽組ランエボXが制す!
2025年9月22日

全6戦が組まれている2025年JAF九州ラリー選手権は、8月30日に第4戦「グラベルマインドラリー2025 in唐津」が佐賀県で開催され、シリーズ後半戦に突入した。今回のラリーの主催は4月に2025年JAF全日本ラリー選手権 第2戦「ツール・ド・九州2025 in唐津」を主催した福岡県のJAF加盟クラブ、グラベルモータースポーツクラブ(GRAVEL)。春に全日本、夏に地区戦を開催するかたちがGRAVELでは定着しており、今季もそれに倣ったかたちだ。
2025年JAF九州ラリー選手権 第4戦
2025年JMRC九州ラリー チャンピオンシリーズ第4戦
グラベルマインドラリー2025 in唐津
開催日:2025年8月30日
開催地:佐賀県唐津市周辺
主催:GRAVEL
ラリーの拠点もこれまで同様、唐津市内に置かれたが、今季は唐津市南部、かつて炭鉱の町として知られた厳木(きゅうらぎ)地区にヘッドクォーターとサービスパークが置かれた。SSも同地区にほど近いターマックの「SAYOHIME」が設定された。
ツール・ド・九州2025でも設定されたこのステージを、今回のラリーでは2本に分けて使用。セクション1では「SAYOHIME South」4.99kmと「SAYOHIME North」6.52kmを2回ずつ走って一旦、サービスイン。セクション2は2本のステージを通しで使い、まずSAYOHIME Southをセクション1の逆走で走り、後半はSAYOHIME Northを駆け抜ける「SAYOHIME Long」11.48kmを1本走ってフィニッシュ、という設定が採られた。
これまで2日間で行っていたラリーをワンデー開催としたのも今季の特徴で、酷暑がピークに達する昼前後の時間帯にレッキを設定。気温も下がり始める15時スタートとして、参戦クルーやオフィシャルの体力面での負担軽減を図った。最終のSS5はライト点灯が必須のナイトステージとなったがコンパクトなルート設定もあって、20時前後には各クルーともフィニッシュを果たすというテンポの良いラリーとなった。
天候について、ラリー当日は雨が降らなかったが前日の夕方に雨がパラついたため、一部の路面は乾き切らないままラリーはスタート。特にSAYOHIME Northは数カ所、苔が生えた箇所もあって難しい路面も待ち受けたが、今季の地区戦は開幕から三戦連続でウェットのラリーが続いたため、待ち焦がれたドライターマックを走れたことを各クルーとも歓迎していた。

RH-1クラス
第2戦は小濱勇希/藤田めぐみ組、第3戦で吉谷久俊/古賀勝美組と、スポット参戦組が優勝をさらってきたRH-1クラス。しかし、今回のラリーはシリーズを追うレギュラークルー11組によるバトルとなった。
SS1“SAYOHIME South 1”を制したのは開幕第1戦ウィナーで三菱・ランサーエボリューションXを操る津野裕宣/大庭正璽組だったが、松尾薫/平原慎太郎組がスバル・インプレッサWRX STIを駆って0.8秒差の2番手につける。
津野/大庭組は続くSS2“SAYOHIME North 1”でも、ベストタイムを奪取。1番ゼッケンということもあり「路面の苔と格闘して大変だった」と語るも、2番手タイムでランエボIXをドライブする阪本寧/牧野瞳子組に11秒の大差をつける、圧巻の走りを見せてラリーの主導権を握る。一方、松尾/平原組はスピンを犯して津野/大庭組から16.7秒遅れの4番手タイムに沈み、苦しい展開となった。
それでも松尾/平原組はSAYOHIME Southの再走となるSS3では、津野/大庭組から1.4秒差に食らいついて2番手に浮上して反撃のチャンスを窺ったが、2度目のSAYOHIME NorthとなったSS4では津野/大庭組がやはり速く、松尾/平原組に4.2秒差をつけてリードを広げる。
ナイトステージとなった最終のSS5は、松尾/平原組が津野/大庭組に7.1秒差をつける意地のベストで締め括ったが、トータルでは16秒届かず、津野/大庭組が開幕戦に次ぐ今季2勝目をゲットした。
ツール・ド・九州2025では0カーのドライバーとしてSAYOHIMEを走行した津野選手だが、「路面のイメージが全然違いました」とのこと。続けて「ナイトステージは久々でしたが、まぁまぁ走れたと思ったつもりが、松尾選手にやられちゃいましたね(笑)。松尾選手は今日のSAYOHIME Northのような微妙なコンディションの道は速いので警戒していましたが、結果的には彼のスピンに助けられました。あれがなければ夜まで勝負がもつれたかもしれませんね。クルマがまずまずの動きをしてくれたので、コンスタントにいいタイムが出せたと思います」と、今回のラリーを振り返った。
一方、松尾選手は、「今日のラリーは全体的にギヤ比が合わなくて苦労しました。タイヤの外径なども見直した方がいいかもしれませんね。ただ、最後にベストが獲れたのは良かったので、残り2戦に繋げていきたいと思います」とリベンジを誓っていた。
なお松尾/平原組に続く3位には阪本/牧野組が入賞。今季参戦した3戦で全てトップ3フィニッシュを果たし、抜群の安定感を見せている。



RH-2クラス
RH-2クラスの王座争いは、ともにZC33S型スズキ・スイフトスポーツを駆る前田宣重/勝瀬知冬組と、黒原康仁/松葉謙介組のマッチレース。ここまでは前田/勝瀬組が2勝1敗と勝ち越している。SAYOHIMEは両クルーともツール・ド・九州2025で走行した経験があるが、この時は黒原/松葉組が2本とも前田/勝瀬組に競り勝っている。
しかし、今回のラリーで速さを見せたのは前田/勝瀬組。SS1は総合でもベストとなるタイムで12.9秒も黒原/松葉組をブッちぎり、トヨタ86を操る林大河/重富駿組が2番手につけた。SS1では6.8秒の遅れをとった林/重富組だが、SS2で前田/勝瀬組を1.6秒下してベストを奪った。
だがSS3では前田/勝瀬組が再び総合ベストであがってリードを広げると、SS4でも前走のSS2から6.2秒もタイムを詰める断トツのベストを奪って勝利を確実なものに。黒原/松葉組は最終SS5で前田/勝瀬組を5.9秒下すベストで一矢報いるも、19.4秒差をつけられる完敗となった。ただし、SS5の激走が報われて林/重富組を逆転して2位を確保したのは、逆転チャンピオン確定に向けた布石になる可能性がある。
前田選手は勝利を挙げるも「2度、側溝に落ちたし、最終SSでゴールしたらタイヤがパンクしかけていたりと、実は満身創痍のラリーでした」と明かした。続けて、「フロントだけ新品(タイヤ)を履いたのが、やっぱりSS1のタイムに繋がったとは思います。黒原選手よりワンサイズ広めのタイヤを履いたのも良かったかもしれない。コ・ドライバーとのコンビネーションも良くて、いいノートがつくれたので側溝には落ちましたが(笑)、危ない所も回避できたと思います」と、勝因を分析した。
一方、「がっつりやられちゃいましたね」と反省の弁で切り出した黒原選手。更に「全日本の時とはコンディションも違っていたので、難しかったですね。SAYOHIME North も苔に乗ってコースオフしそうになったりして、リズムが掴めませんでした」と、苦戦が続いた一日を振り返った。



RH-3クラス
RH-3クラスは全日本ドライバーでもあるベテラン、三苫和義選手がホンダ・フィットRSを駆り順当に開幕第1戦を制した。しかし、三苫選手が戦う全日本JN5クラスでは河本拓哉選手のコ・ドライバーを務める、有川大輔選手がトヨタ・ヤリスのステアリングを握って第2戦から連勝を飾り、ベテラン対若手のバトルがヒートアップしている。
今回のラリーでは有川/川野想一朗組が先行し、SS1で三苫/春日美知子組を5秒差で下すベストをマークする。「ナイトSSは走ったことがなくて三苫さんには勝てないだろう、と踏んでいたので、明るいうちにどれだけマージンをつくれるかの勝負だと思っていました」と判断した有川/川野組は、SS2でも三苫/春日組に9.1秒差をつける連続ベストをマークして、目論見どおりのラリー展開に持ち込む。
2ループ目に入ると、ペースを上げた三苫/春日組がSS3で1秒差、SS4でも1.3秒差で食らいついたが、有川/川野組が4連続ベストをマーク。ナイトステージのSS5は有川/川野組の読みどおりに三苫/春日組が10.4秒の大差で下すも6秒及ばず、2位に留まった。
三連勝を飾って王座争いでも俄然、優勢に立った有川選手は「ヤリスでは初めてドライのラリーでしたが、過去3戦の経験を活かせてタイヤのグリップを使い切れる走りはできたかな、という気はします。ノートの精度も上がったので、抑える所と攻める所を分けたメリハリのある運転ができました」と、会心の走りを振り返った。
今回、足回りの仕様を変えて臨んだという三苫選手は、「格段に良くなっているんだけど、序盤は感触を確かめつつ走ったこともあって、勝てなかった。ただ後半は動きも掴めてタイムも出せたので、残り2戦はイケると思います」と次戦からは反撃に打って出る構えだ。



RH-4クラス
注目の若手クルー、泉勇希/WATAKEN組がフィットRSをドライブして開幕三連勝と絶好調のRH-4クラス。今季初のドライターマックでの一戦では、「SS1があまりにも遅くて、気持ちが萎えかけた」と苦戦のスタートとなった泉/WATAKEN組だったが、その後は徐々にペースを上げて快走。終わってみれば全SSベストの走りで今回のラリーも優勝を飾った。女性ドライバーの上清瑞穂選手とコ・ドライバーの内藤通孝選手のクルーが、ヤリスを駆って前戦に続いて2位を獲得した。


RH-5クラス
第2戦でRH-6クラスからRH-5クラスに転向してきた、ホンダCR-Zをドライブする全日本ドライバーの中西昌人選手。今回のラリーはコ・ドライバーに豊田智孝選手を迎え、転向3戦目にして今季初優勝を果たし、「今回は無心で走りました」と振り返った中西選手は久々の優勝に笑顔を見せた。三連勝を狙った日産・リーフを駆る常慶明秀/三谷優雅組はSS3以降、中西/豊田組とほぼ互角のタイムを並べたが序盤2本でのタイムロスが大きく、今回のラリーは2位に甘んじた。



RH-6クラス
RH-6は、2022シーズン最終第7戦から参戦したラリーは15戦全て優勝を飾る速さを見せてきた、CR-Zを駆る納富瑠衣選手が敗れる波乱の展開となった。“刺客”となったのは、チーム員のGRヤリスRSのポテンシャルを計るべく、コ・ドライバーの柴田咲希選手とともに参戦した全日本JN2クラスに挑む徳尾慶太郎選手。「CVTは初めてだったけど、思ったよりも走れるんだな、と感心しました。ただ小さいクルマの限界がなかなか掴めず苦労しましたね。最後はエラーモードが出てヒヤヒヤしてゴールしたけど、勝てて良かったです」と、徳尾選手はフィニッシュ後に安堵の表情を見せた。
徳尾/柴田組から2.4秒のビハインドを背負い、最終SSでの逆転に賭けた納富/出雲正朗組は、「ブラインドコーナーで、ちょっとライトが足りないと思ったけど突っ込んでいったら砂利に乗ってしまって、側溝に右フロントタイヤを落としてしまいました」と、足回りを損傷。しかし手負いのCR-Zを何とかフィニッシュまで運び込んで、川中天兵/河嶋康史組に先を越されたものの3位を確保。トップ3の一角は射止めて、貴重な12ポイントを上乗せした。



フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]