東日本ラリー第3戦のBC-2、26台の激戦は上原淳/漆戸あゆみ組が全体トップで優勝!

レポート ラリー JAFWIM

2024年6月20日

開幕からスノーラリーが2戦続いた2024年JAF東日本ラリー選手権。5月18~19日に2024シーズン初のターマックラリーとなる「ネコステ山岳ラリー2024」が第3戦として行われた。ネコステラリーチーム(NECOSTE)が主催するラリーといえば、本格的なシーズンインを告げるラリーとして例年4月に行われてきたが、今季は約1カ月遅れの5月第3週に開催となった。

2024年JAF東日本ラリー選手権 第3戦
JMRC関東ラリーカップ
群馬ラリーシリーズ第1戦
ネコステ山岳ラリー2024

開催日:2024年5月18~19日
開催地:群馬県富岡市周辺
主催:NECOSTE

 ラリールートはここ数シーズンの例に倣い、今季も群馬県南西部のエリアに設定され、SSは8.8kmのShionosawa tougeと14.9kmのYokura touge、ふたつのステージが設定された。

 名称からも知れるように、ステージはいずれも峠越え。Shionosawa はスタート後、4km程は上りが続き、トンネルを抜けた後は下りに転じる。上り区間の路面は良好だが、下りは舗装が一部で剝がれたラフな路面に変わる。Yokuraは途中、稜線沿いのフラットで見晴らしのいいセクションを走るが、その前後の上りと下りは傾斜がきつい。特に後半の下りは急勾配が続き、ブレーキ泣かせのセクションとなる。

 ラリーはセクション1でShionosawa、Yokuraの順で1本ずつを走り、セクション2ではShionosawa、Yokura、Shionosawaと3本を走ってフィニッシュという設定だったが、タイムスケジュールに遅れが生じたために最後のSS5、Shionosawaはキャンセルとなった。それでも4SSの合計47.4kmと、地区戦としては走り甲斐のある距離が用意された。なお今回の一戦は、全国でも屈指の人気を誇るJMRC群馬ラリーシリーズの開幕戦との併催とあって、総参加台数は67台を数えて賑わいを見せた。

峠を越えるステージふたつを2本ずつ、4SSで競った「ネコステ山岳ラリー2024」。ツイスティなことはもちろん、峠越え故にアップダウンが激しく、同じステージ内で路面状況も大きく変わる難ステージがクルーたちを待ち受けた(左)。サービスが設けられ、スタートとフィニッシュの舞台となったメイン会場は、丹生(にゅう)湖駐車場が担った。周辺は、春には桜、夏はひまわりの名所としても知られている(右)。

2024年JAF東日本ラリー選手権 第3戦BC-1クラス/
群馬ラリーシリーズ1クラス

 東日本BC-1/群馬1クラスは12台が参戦した。SS1 Shionosawaでは菅原英剛/宮川武志組が2番手以下をキロ1秒近く突き放す走りを見せて、ベストタイムをマークする。菅原/宮川組はSS2 Yokuraでも渡辺謙太郎/箕作裕子組を2.1秒引き離して再びベストを奪取。渡辺/箕作組に11秒のマージンを築いてラリーを折り返した。

「1ステ(セクション1)でハイペースをキープできた感じはあったので、そのペースを崩さないように走りました」という菅原/宮川組は、薄暮のSS3 Shionosawaでも再び後続に大差をつけて3連続ベストをマーク。ナイトステージとなった最終のSS4 Yokuraは、「乗り切れないところがありましたね」とサードベストで上がるが、それまで築いた大量のマージンを守り切って快勝した。

「Shionosawaの後半が思った以上にガレていたので、ノートにコーションを入れまくってガチ抑えで走ったのが、結果的に良かったと思います。ああいう所でいっちゃうタイプなので(笑)」とは菅原選手。「去年からサイズを変えたタイヤに合わせて、オフの間にガッチリ足回りを決めてきたのが好タイムに繋がりました。ただ完全なナイトになったSS4は、夜が苦手ということもあり、タイムが出せなかった。その辺りは今後の課題ですね」と、ラリーを振り返った。

 SS4では後藤英隆/菅野総一郎組が、「夜は遅いんだけど…」と言いつつもベテランの貫録を見せて、菅原/宮川組を22.6秒もぶっちぎる圧巻のベストタイムをマーク。ACDが不調になるなど、今回の一戦は車両トラブルに泣いた渡辺/箕作組を一気に抜き去って2位を獲得。渡辺/箕作組は2.5秒差の3位に甘んじることになった。

東日本BC-1/群馬1クラスはSS1から三連続ベストタイムを奪った菅原英剛/宮川武志組(Group4 MS YHランサー)が優勝。2024シーズンのJAF東日本ラリー選手権に初参戦でノーポイントに終わった、第2戦の雪辱を晴らした。
今季の地区戦初参戦となった、2023シーズンのBC-1ランキング5位の後藤英隆/菅野総一郎組(CMSC福島Sマジックランサー)はBC-1/1の2位に終わったが、SS4で圧倒的なベストをマークして速さを見せた(左)。ディフェンディングチャンピオンのドライバー、渡辺謙太郎選手とコ・ドライバーの箕作裕子選手のクルー(dirtroadランサー)は車両トラブルに苦しみながらも3位に入り、ポイントを持ち帰った(右)。
BC-1/1で表彰を受けた上位6クルー。左から優勝した菅原/宮川組、2位の後藤/菅野組、3位の渡辺/箕作組、4位の宇野学/宇野平組(プロμモティーズYHオザキ ランサー8)、5位のHYOMA/石原淳組(FaithCraft YH GRヤリス)、6位のドライバー、津田宗一郎選手(コンペ★3939ランサー)。コ・ドライバーの奥田龍馬選手は欠席した。

東日本BC-2クラス/群馬2クラス

 東日本BC-2/群馬2クラスは26台がエントリーと、一大激戦区となった。SS1でベストを奪ったのはネコステのラリーでは常連ともいえる、2024年JAF全日本ラリー選手権のJN-3クラスにも参戦する、上原淳/漆戸あゆみ組のZD8型スバルBRZ。AE111型トヨタ・カローラレビンを駆る田辺紘一/八巻慎太郎組を10秒差の2番手に下してまずは貫録を見せる。

 距離が長くなったSS2では田辺/八巻組と、藤田勝正/阿部拓哉組のZC33S型スズキ・スイフトスポーツが約6秒差で食らいつくが、上原/漆戸組が連続ベストで上がりトップでサービスに戻ってきた。

 各車、ヘッドライトをつけての走行となったセクション2に入ると、SS3で前走のSS1から12.3秒もタイムを上げる快走を見せた多田稜平/松尾俊亮組のZN6型トヨタ86が、上原/漆戸組を4.3秒差で下すベストをマーク。多田/松尾組は最終のSS4でも上原/漆戸組を0.1秒差で下して連続ベストをマークするが、セクション1の遅れが響いて、優勝には23.7秒届かず。しかし2位に順位を上げてフィニッシュした。田辺/八巻組は多田/松尾組から5.4秒遅れの3位でラリーを終えた。

「この辺のラリーは4回くらい出てるけど、普通に走っても完走できない(笑)。全部リタイヤ続きだったけど、今回初めて完走できました」とは、優勝した上原選手。「大事を取ってコーナーは攻めずに直線だけ踏みました。セッティングは全日本のままだけど、クルマの動きは非常にいいので、もうちょっとだけ微妙な所を詰めようかと思っています」と3週間後に控える、同じ群馬県が舞台となる全日本の第5戦「モントレー2024」を見据えていた。

 一方、地区戦勢では最上位をゲットした多田選手は、「最初がスロースターター過ぎましたね(笑)。オフの間に仕様を変えた部分があったので、感覚を合わせるのに時間がかかってしまいました。ただ2ステ(セクション2)は結果を出せたと思うので、上原さんとの差を分析して全日本のオープンクラスで一度、腕試ししたいと思います」と、今後に意欲を見せていた。

今回のラリーで最激戦クラスとなった東日本BC-2/群馬2クラスは、上原淳/漆戸あゆみ組(サイタマスバル・ダンロップ・カヤバ・シャフトビーアールゼット)がSS1・2で奪った連続ベストで築いたマージンを活かして優勝。JAF全日本ラリー選手権でも活躍している速さを見せた。
BC2/2の多田稜平/松尾俊亮組(BBRC&IFニシオ86)は2位となったが、2ループ目となったセクション2で2SSともベストを奪う猛追を見せた(左)。セクション1を2番手で折り返した田辺紘一/八巻慎太郎組(きつねの嫁入り♪白愛主義☆レビン)は多田/松尾組に逆転を喫して3位フィニッシュとなった(右)。
26台がエントリーしたBC-2/2は上位8クルーが表彰された。後列左から優勝した上原/漆戸組(漆戸選手は代理。)、4位の藤田勝正/阿部琢哉組(メープル越後姫 炎スイフト)、5位の山田一雄/大泉和幸組(ラッシュDLウェッズKYBスイフト)、6位の田部井翔大/小坂典嵩組(クスコWM DL千明自動車 暁家BRZ)、7位の石城健司/露木明浩組(BRIGシャフトLAMPY-J 86)、8位の桜井一裕/白水順一組(IRS・ラッシュスイフト)。前列左から、2位の多田/松尾組と3位の田辺/八巻組。

東日本BC-3クラス/群馬3クラス

 東日本BC-3/群馬3クラスも参加20台と、BC-2/2に続く人気ぶりを見せた。セクション1で飛び出したのは、細谷裕一/蔭山恵組のNCP13型トヨタ・ヴィッツと田井勇次/山川雅英組のダイハツ・ストーリアX4の2台。SS1は田井/山川組が1.9秒差で細谷/蔭山組を振り切ったが、SS2では細谷/蔭山組が0.2秒差で田井/山川組を抑えてラリーを折り返した。

 接戦が予想されたセクション2では細谷/蔭山組が、ほぼ完全なナイトステージになったにも関わらずSS3では前走のSS1から7.5秒もタイムアップ。SS4でもSS2から7.6秒もタイムを削り取り、いずれのSSもタイムダウンに終わった田井/山川組との差を30秒に広げて優勝をさらった。

 長年履き慣れたラリータイヤから、今季はハイグリップのスポーツラジアルタイヤに換えて優勝した細谷選手は、「道がラフな区間もあったので、1ステはタイヤに慣れるためもあって様子見した部分もあったけど、2ステはタイヤの感触を掴めたので、クルマとタイヤの限界を使い切る走りはできたと思います」とコメント。

 さらに「昨年の最終戦でクラッシュした記憶が残ってて、実は最初は怖さもあったんですよ。だけど1ステが終わってみたらコンマ差の勝負になってたので、“怖いなんて言ってる場合じゃない!”って(笑)。2ステはいい感じで集中できたのが良かったです」と、胸を撫で下ろしていた。

 一方、2位の田井選手は、「タイヤをサイズアップしたことで確実にコーナリングスピードが上がったことが、タイムに繋がっていました。Shionosawaはクルマ的に厳しい所もあったけど、Yokuraは特にフラットな区間は2本とも渾身の走りができたと思ったので、SS4は絶対、タイムを上げられたと思ったんですけどね…」と悔しさを滲ませていた。

東日本BC-3/群馬3クラスはスノーラリー2戦を欠場していた細谷裕一/蔭山恵組(メープルYHDXLMotys毒苺ヴィッツ)が、今季の地区戦に初参戦。SS2から三連取して逆転優勝を果たし、ディフェンディングチャンピオンの強さを見せた。
勝利を挙げた2023シーズンの第7戦以来の地区戦参戦となった、BC-3/3の田井勇次/山川雅英組(DBP-DXL-YHストーリア)はセクション1をトップで折り返し、セクション2で細谷/蔭山組に逆転を喫したが、2SSともに2番手タイムで食らいつき、2位を獲得した(左)。昨季は群馬ラリーシリーズに参戦していた遠藤政幸/藤波誠一組(BRIGシャフトLAMPY-J ND)がSS1から三連続で3番手タイムをマークして、3位に入った(右)。
BC-3/3は左から優勝した細谷/蔭山組、2位の田井/山川組、3位の遠藤/藤波組、4位の佐藤慧/福村幸則組(G4 MS ADVANヤリス)、5位の岩見涼平/石丸勝一組(YHコマツ銀ヴィッツ)、6位の栗原智子/平井孝文組(小山SP・BRIG・あひるのヤリス)の6クルーが表彰を受けた。

東日本BC-4クラス/群馬4クラス
オープンクラス

 BC-3/3と同様に、トップ2台が抜け出した展開となったのが東日本BC-4/群馬4クラス。ATやCVTなどのミッションを積む車両を対象とするクラスだ。セクション1は、長丁場のSS2を制した谷口いずみ/明治慎太郎組が首位で折り返すが、SS1でベストを獲った森田昭彦/森田宏子組が0.6秒差で続き、ナイトステージとなるセクション2で逆転を期した。

 その注目のSS3では、「サービスで減衰を調整したら動きがシャキッとするようになった」という森田昭彦/森田宏子組のトヨタ・ヤリスがこの日2度目のベストを奪取して逆転。一方、谷口/明治組は大きくペースを落として、優勝争いから後退してしまう。結果、SS3で速さを見せた森田昭彦/森田宏子組が逃げ切って優勝を決めた。

「ナイトラリーが当たり前の時代にラリーを始めた人間なので、夜は苦にならないんです。昼間の方が余計なものが見えてかえって怖いです」と苦笑した森田明彦選手。さらに「ヤリスCVTも今年で3年目なんで、新しい世代のクルマにようやくドライバーの方が合わせられるようになってきました(笑)。見えてきたものがあったので、オフの間に足回りを見直したら、クルマがかなり動くようになったんです。それがやっぱり一番大きいですね」と勝因を振り返った。

 4台の参戦に留まったこのクラスだが、3位に入った戸塚章紀/大坂礼子組もSS1ではベストから0.2秒差で食らいつくタイムを出した。今回の一戦に関してはナイトステージが、まさに明暗を生んだ形となったが、次戦以降は少数精鋭の戦いが見られるかもしれない。

 なおOPENクラスでは、全てのSSでベストをマークする走りを見せた内藤晃/須藤浩志組が、2後続を2分以上引き離してトップでフィニッシュした。

少数精鋭による戦いとなった東日本BC-4/群馬4クラスは、森田明彦/森田宏子組(日本新車センター・YH・G4ヤリスCVT)がSS3で獲ったベストで築いた大きなマージンを活かして優勝した。
SS2でベストを獲ってBC-4/4のトップに立った谷口いずみ/明治慎太郎組(ネッツ群馬ジースパイスCVTヤリス)はベストから1分近い差が開いたSS3での走りが響き、2位となった(左)。SS1と3で2番手タイムをマークした戸塚章紀/大坂礼子組(こうめちゃんレーシングヤリスCVT)が3位を獲得した(右)。
BC-4/4の表彰は左から、2位の谷口/明治組と優勝した森田明彦/森田宏子組、3位の戸塚/大坂組の3クルーが受けた。
オープンクラスの内藤晃/須藤浩志組(レインボーコマツGRヤリス)はSSが進む度にどんどん2番手以下との差を広げていき、全てのSSでベストを獲ってフィニッシュした。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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