東日本ラリー第3戦はBC-1クラスの嶋村徳之選手が2022シーズンの雪辱を果たす!

レポート ラリー

2023年5月2日

今回のラリーでGR86がシリーズデビューとなった2023年JAF東日本ラリー選手権は、スノーラリーとして開催された第2戦から約3カ月のインターバルを経て、第3戦が群馬県南西部を開催エリアとする「ネコステ山岳ラリー2023」として行われた。また2023年のJMRC関東ラリーカップ群馬ラリーシリーズが、この一戦に併催されるかたちで開幕した。

2023年JAF東日本ラリー選手権 第3戦
JMRC関東ラリーカップ群馬ラリーシリーズ第1戦
ネコステ山岳ラリー2023

開催日:2023年4月22~23日
開催地:群馬県富岡市周辺
主催:NECOSTE

2023年JAF東日本ラリー選手権 第3戦

 2023シーズンのネコステ山岳ラリーはここ数シーズン、拠点としていた南牧村からヘッドクォーター(HQ)を新たに富岡市に移し、同市内の丹生湖駐車場にHQとサービスパークを置く総距離137.96kmのラリーとして開催された。SSはネコステ山岳ラリーの主戦場といっていい神流町、上野村、南牧村に設定されたが、今季はかつて“ラリー銀座”群馬のラリースト達に親しまれた、下仁田町のAokuraステージが20数年ぶりに復活した。

 ラリーはこの「Aokura Up」SSを皮切りに、全日本ラリーのモントレーでも使用された「Mikabo」、「Ghost Tunnel Down」の計3本のSSを、2つのセクションでそれぞれ1回ずつ走る6本、計40.14kmのSSで競われた。またコロナ禍のために設定が見送られてきたサービスも4年ぶりに復活し、58台が集った丹生湖のサービスパークもラリーの盛んな群馬らしい、かつての賑わいを取り戻した。

 東日本ラリーBC-1クラスはSS1 Aokura Up 1で1番ゼッケンの嶋村徳之/和氣嵩暁組が、2番手の渡辺謙太郎/箕作裕子組に3.9秒差をつけるベストタイムを奪って首位に立つ。続くSS2 Mikabo 1は渡辺/箕作組が3.4秒、嶋村/和氣組に競り勝ってベストを叩き出す。そしてSS3 Ghost Tunnel Down 1では、嶋村/和氣組が6.2秒差で再び渡辺/箕作組を下す2度目のベストをマークして、首位でラリーを折り返した。

 嶋村/和氣組はサービスを挟んだSS4 Aokura Up 2でも大差で渡辺/箕作組を下してリードを拡大。SS5 Mikabo 2は再び渡辺/箕作組がベストを奪うが、嶋村/和氣組の背後に迫ることはできず、嶋村/和氣組が渡辺/箕作組を最終的に16.5秒差で振り切って今季初優勝を飾った。

 2022シーズンは2位に終わったこのラリーで見事リベンジを達成の嶋村選手は、「いつもはスロースターターなんですが、今回はSS1が上りということもあって最初から踏んでいきました。初見の道の割に意外とペースノートをうまく作れたのもタイムに繋がったと思います。SS2で負けたので、SS3ではさらにプッシュして、またベストが獲れたのが大きかったですね」と会心のラリーを振り返った。

 ネコステ山岳ラリーは初走行ながらベストを2本奪い、昨季の東日本チャンピオンの貫録を見せた渡辺選手は、「自分ではそれなりに乗れていたつもりでしたけど、タイムがバラついたのは、SSの好き嫌いを(無意識に)自分で勝手に決めちゃってたのかな。でも今回は周りの方からアドバイスをもらうことができて、舗装のラリーに関して凄く気付きのあるラリーだったので次に生かしたいと思います」と巻き返しを誓った。

 優勝候補の一角だった上原利宏/郷右近孝雄組は最終SSで意地のベストタイムを奪ったが、「自分のタイヤには厳しいラリーでした」と、3位に甘んじるかたちになった。

2023シーズンの東日本ラリー初参戦となった一戦でいきなりBC-1クラスを制し、ランキング2位につけた嶋村徳之(左)/和氣嵩暁(右)組(ADVANワーク パックアールランサー)。嶋村選手は2018年以来となるネコステ山岳ラリー優勝を果たした。
渡辺謙太郎/箕作裕子組(dirtroadランサー)はBC-1ディフェンディングチャンピオンの渡辺選手の二連勝を狙うも、惜しくも2位。渡辺選手はランキングトップを守った。上原利宏/郷右近孝雄組(三菱ランサーエボリューションしち)はSS5までトップ2台を攻略できず3番手タイムが続き、最終SS6を制するも3位となった。
BC-1の上位3クルー。右から2位の渡辺/箕作組、優勝した嶋村/和氣組、3位の上原/郷右近組。

 一方、BC-2はセクション1の3本のSSが終わった段階では上位3台が0.9秒差にひしめく大混戦となるが、セクション1では3番手だった鈴木正人/春日美知子組が、「今回のラリーでGR86をデビューさせたので1ステ(セクション1)は様子見でしたが、ある程度のタイムが残せて“この走りでいいんだ”と確信できたので、セクション2はプッシュしました」とSS4とSS5で連続ベストをマークして、一気にライバルを引き離す。

 最終のSS6では東北・岩手から参戦した沼尾秀公/沼尾千恵美組のスズキ・スイフトスポーツがこの日2本目のベストを奪うが届かず、鈴木/春日組が9.8秒差で逃げ切った。

 鈴木選手は、今季もスイフトのAT車で全日本ダートトライアル選手権に参戦中のグラベルが本業のドライバーだが、「GR86はクルマが新しくてもったいないので、舗装のラリーだけ走らせるつもりです(笑)。グラベルラリーについては出るとしたらスイフトを持ち込むかどうかも含めて、いま思案中です」とのこと。今後の動向が注目されるところだ。

GR86をJAF東日本ラリー選手権のBC-2クラスに初投入し、見事デビューウィンを飾った鈴木正人/春日美知子組(スマッシュSRP商会GR86)。プッシュしたというセクション2では、SS4では5.7秒差、SS5では約4.6秒差をつけるトップタイムを叩き出し、速さを見せた。
Ghost Tunnel Downを使ったSS3とSS6を制した沼尾秀公/沼尾千恵美組(アトリエ510ふうりんトーコーΩスイフト)だったが逆転を喫して2戦連続の2位となるも、ランキングトップを堅守(左)。Sebastien Sagawa/ツネタロウ組(YH・DXLオロンドFD3S)はセクション1での5番手からセクション2では追い上げて、3位を獲得した(右)。
BC2の上位3クルー。右から2位の沼尾秀公/沼尾千恵美組、優勝の鈴木/春日組、3位のSebastien Sagawa/ツネタロウ組。

 BC-3は、昨季のチャンピオンコンビ、細谷裕一/蔭山恵組が今シーズンも絶好調。昨季までは黒色のトヨタ・ヴィッツですっかりお馴染みだった細谷選手だが、今季は同じNCP13型ながら赤色のボディに一新。「ボディをしっかり補強したことで、コーナリングスピードが格段に上がりました」という走りで全SSベストタイムを達成。2位以下に1分以上の差をつけて快勝した。

細谷裕一/蔭山恵組(メープルYHDXL毒苺ヴィッツ)は車名どおりの赤いNCP13型トヨタ・ヴィッツを駆り、盤石のラリーを展開。新旧トヨタ・ヴィッツ/ヤリス対決となったBC-3で圧勝した。
BC-3でヤリスを駆る栗原智子/平井孝文組(小山SP・BRIG・アヒルのヤリス)は2番手タイムを連発するも、細谷/蔭山組には及ばず2位でフィニッシュ(左)。NCP13型ヴィッツの柏嵜薫/野地俊平組(ののじファクトリー盆栽ガレージヴィッツ)は最終SS6で栗原/平井組と同タイムで2番手タイムをマークするも、SS5までは3番手タイムが続き、3位となった(右)。
BC3の上位3クルー。右から2位の栗原/平井組、優勝の細谷/蔭山組、3位の柏嵜/野地組。

JMRC関東ラリーカップ群馬ラリーシリーズ第1戦

 群馬シリーズClass1は、昨季もこのラリーを制している新潟の濱井義郎/本橋貴司組がSS1から後続を大差で引き離してトップに立つと、その後もベストタイムを連発。セクション2に入ってもその速さは衰えず、最終のSS6では東日本ラリー勢を抑えて総合ベストを奪取する速さを見せ、最終結果でも総合3番手のタイムをマーク、チャンピオン獲得に向けて好スタートを切った。

昨季のClass1ではランキング2位だった濱井義郎/本橋貴司組(Rasch Lancer EvoVIII YH)は2位以下を寄せつけず、6つのSS全てを制する快走で開幕戦を勝利で飾った。本橋選手は全日本ラリーJN-4クラスを二連覇中のチャンピオンコ・ドライバーだ。
Class1では小松崇/林瑛良組(ランサーitzz)が全てのSSで濱井/本橋組に続く2番手タイムをマークして2位でフィニッシュ(左)。吉田英史/吉田和広組(ALEX 幸和化工 ADVAN GDB)はSS3で3番手を奪取すると、セクション2は順位を守り抜き、3位を獲得した(右)。
Class1の上位3クルー。右から2位の小松/林組、優勝の濱井/本橋組、3位の吉田英史/吉田和広組。

 Class2でも新潟勢が速さを見せ、セクション1で2本のベストを奪った山田一雄/大泉和幸組のスイフトがトップでサービスに戻ってくる。

 インカムが故障する、というトラブルが起きながらもSS2でベストを奪った、同じくスイフトに乗る森岡大次郎/伊藤克己組は3.5秒差で山田/大泉組に食らいついて、セクション2で逆転を期した。

 しかし、トラブルが解消したセクション2ではタイムが伸びず、山田/大泉組のさらなるリードを許すことに。後半の3SSを全て制した山田/大泉組が山田選手のタイトル防衛に向け、幸先良く開幕戦の勝利を飾った。

「コ・ドライバーの大泉選手が今回が初ラリーということもあって、最初は無理せず、徐々にペースを上げていった感じですが、タイヤも合っていたし、特にセクション2ではいいタイムが出せたと思います。大泉選手がいい仕事をしてくれました」と優勝した山田選手。

 一方、2位の森岡選手は、「セクション1はインカムがまったく聞こえなかったので必死に走った分、2ステはちょっと安心してしまったのが影響したのかな(笑)。自分では乗れていたと思っていたので、なぜタイムが出なかったのか、分からないんです」と無念の表情。今季のこのクラスは、頭一つ抜け出したこの2台のスイフトを軸とした戦いになることは間違いなさそうだ。

Class2ドライバー部門のディフェンディングチャンピオン、山田一雄選手(ラッシュDLウェッズKYB スイフト)はコ・ドライバーに大泉和幸選手を迎えてSS2以外の5SSを制し、総合5位に喰い込む速さを見せて優勝。大泉選手は見事ラリーデビューウィンを達成した。
Class2でSS2を制した森岡大次郎/伊藤克己組(IRS・YH・ラッシュ・アッスルスイフト)は3つのSSで2番手タイムもマークし、2位を獲得。Class3から転向の多田稜平/松尾俊亮組(BBRC & IFニシオ86)は2番手タイムをマークした最終SS6で逆転、3位で転向初戦を終えた。
Class2の上位3クルー。右から2位の森岡/伊藤組、優勝の山田/大泉組、3位の多田/松尾組。

 “ホット・ハッチ”が集う群馬シリーズ名うての激戦区であるClass3は、今回も17台によるバトルを展開、その顔触れも12車種に分かれるなどバラエティに富んだ。

 その中、序盤でラリーリーダーに立ったのは中部・三重から三菱・コルトで遠征してきた笹岡亮佑/加藤昭文組。「危ない所も何か所かありましたが過去一番といっていいくらい踏めました」という走りでSS1、SS2を連取する。

 セクション2に入ると、「コ・ドライバーからの指示もあってペースを抑えました」という笹岡/加藤組を、「1ステで使ったギアから1段上のギアで走るようにした」という田井勇次/山川雅英組のダイハツ・ストーリアがSS4とSS5でベストを叩き出して追撃する。

 しかし、セクション1でついたビハインドは大きく逆転は果たせず。笹岡/加藤組がシリーズ初優勝を達成し、田井/山川組は2位でフィニッシュ。下りのSS3、SS6で速さを見せた鶴巻駿介/八巻慎太郎組が0.7秒差で3位に続いた。 なおOpenクラスは奥村大地/山本祐也組が優勝を飾った。

 東日本ラリー第4戦と群馬シリーズ第2戦は5月20~21日に開催のターマックラリー、「MSCCスプリングラリー2023」。群馬県みどり市が舞台となる。

昨季のこのラリーでは6位だったClass3の笹岡亮佑/加藤昭文組(カードックKRT プロアクティブ コルト)はセクション1で大きなリードを築き、セクション2はペースをコントロールする力も見せて優勝を飾った。
Class3では田井勇次/山川雅英組(DBP-DXL-YH黄狐ストーリア)がセクション1を3番手で折り返すと、SS4を制して2番手を奪取。SS5も制して2位を獲得した(左)。SS3を制してセクション2を2番手で迎えた鶴巻駿介/八巻慎太郎組(YHヤマキレーシングヴィッツ)はSS6も制するが、逆転を喫して3位となった(右)。
Class2の上位3クルー。右から2位の田井/山川組、優勝の笹岡/加藤組、3位の鶴巻/八巻組。
オープンクラスは全てのSSでベストタイムをマークした、奥村大地/山本祐也(カーショップラッシュスイフト)が制した。
群馬シリーズに参戦してきた埼玉の越生自動車大学校チームにとっても、久々にサービスを行うラリーとなった。学校のクラブ活動の一環としての参戦だが、エントリーから始まって車両メンテナンスから準備、そして当日のサービスまで、すべて学生が自分達でメニューを組んで行っている。クラブの顧問を務める兼松幸司先生は、「2020年からサービスができなくなったので、現行の4年生以下すべての学生はもちろん、私自身も昨年、赴任してきたばかりなので全員がラリーサービスは初体験になります(笑)。まず今回はしっかり完走を果たして、一年間シリーズを追いながら各自、成長していってもらえれば」と話す。今回はClass3に参戦したクラブ車のほか、関係者が参戦した2台の整備を受け持ったが、3台とも無事、完走を果たした。
フォト/田代康、佐久間健 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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