関東地区戦第7戦は“茨中”で開催。参加16台のJG2クラスは金子進エキシージが土壇場で逆転勝利!
2022年8月22日

シリーズ後半戦に突入したJAF関東ジムカーナ選手権は、7月31日に茨城中央サーキットで第7戦が行われた。
2022年JAF関東ジムカーナ選手権第7戦
JMRC関東オールスターシリーズ第7戦
JMRC全国オールスター選抜第7戦
ICCスパークリングジムカーナ
開催日: 2022年7月31日
開催場所: 茨城中央サーキット(茨城県石岡市)
主催: ICC・S
関東ジムカーナ地区戦の第7戦は7月末に、茨城県石岡市の茨城中央サーキットで開催された。全9戰で行われるシリーズの終盤戦ということで、クラスによってはシリーズチャンピオンが確定する天王山的な意味合いも帯びているだけに、注目の一戦だ。
会場となった茨城中央サーキット(ICC)は、日本初のジムカーナ専用コースとして1986年にオープンした歴史あるサーキット。JAF関東ジムカーナ選手権を筆頭に、JMRC関東チャンピオンシリーズやJMRC栃木茨城ジムカーナシリーズの一戦を担ってきたほか、初心者を対象とした茨城中央サーキット独自のイベントであるエンジョイジムカーナ in ICC、そして近年ではオートテスト等、様々なイベントが開催されている。
コースは上段、中段、下段の3面で構成されており、オープン当初は上段のみだったが、翌年にはギャラリースタンド前の中段、さらにその翌年にはコース左側の下段と、年を追うごとに拡張され、現在の形となった。この3面は全て繋がっており、路面はタイヤのスキール音の軽減やウェット時の吸水性を考慮し、全面サーキット舗装となっている。
コース設定は、スタートゲートのある下段で低速セクション、続いて上段に上がり、中高速セクション、最後に中段でスラロームや8の字ターンのテクニカルセクションを経てゴールというのが、茨城中央サーキットの一般的なレイアウトとなる。
しかし今回は上段のセクションから一度、中段のゴールライン手前まで進入。再び上段の高速セクションに戻り、最後は2か所の180度ターンと360度ターンの超テクニカルな設定が待ち受けるという、地区戦ならではの難易度の高いロングコースが用意された。




今季3勝を挙げ、ポイントリーダーに立つ幅信太郎選手を2番手の大江光輝選手が20点差で追う展開となっているJG14クラス。幅選手は、今回優勝すればシリーズチャンピオンが決まる大一番。対する大江選手は、今季は前回の筑波ラウンドでの1勝のみ。ここで2勝目を挙げてチャンピオン争いを次戦以降に持ち越したいところだ。
迎えた第1ヒート。大江選手は暫定トップに立っていた西宮章悟選手の1分31秒489を塗り替え、1分30秒759を刻み、ベストタイムを更新するが、その直後、幅選手は大江選手のタイムをさらに0.3秒上回る1分30秒452を叩き出し、第1ヒートをトップで折り返す。
コンマ差で迎えた第2ヒート。まず逆転を懸けた大江選手の走行となったが、この日は気温30度を超える猛暑日。路面温度の影響か、中間タイムは幅選手から遅れること0.6秒で、ゴールタイムも自身の第1ヒートのタイムを更新することができず、タイムダウンに終わってしまう。大江選手のタイムを聞かずにスタートした幅選手だが、この時点で優勝が決まり、ウィニングランとなった。
「昨年の秋頃にセッティングや走りが決まってきて、それを今シーズンで証明できたのが、嬉しいですね」と、その言葉を裏付ける今季4勝目を挙げ、タイトル確定となった幅選手。一方の大江選手は、「第1ヒートは、やり切れなかった所がありました。気持ちの問題ですかね。結局、気持ちの強い人が勝つんだなと思いました」と静かに戦いを振り返った。





前回の第6戦で早くもシリーズチャンピオンを確定させたのが、今シーズンはFFのスイフトで参戦しているJG13クラスの中村光範選手。唯一4位となった第3戦を除き、他は全て優勝と圧倒的な強さを見せつけてきたが、今回も第1ヒートから唯一1分30秒台をマークしてトップで折り返す。
第2ヒートでも、そのタイムを破る選手は現れず、ウィニングランとなった中村選手だが、路面的には苦しい状況ながら自己タイムを0.2秒更新。しかし、これは惜しくもパイロンペナルティを喫してしまい、ベストタイム更新とはならず。しかし第1ヒートのタイムで6勝目を挙げて、満点チャンピオンを確定させた。また中村選手は今季のシリーズチャンピオン確定で、関東地区戦では4WD、FR、FF全ての駆動方式でチャンピオンを獲得するという偉業も達成した。





JG8クラスは、ポイントリーダーの杉谷伸夫選手がシリーズ2番手の上野山肇選手に30ポイント以上の差をつけ、目下のところ独走状態。今回優勝すればシリーズチャンピオンが確定となる。その第1ヒート、杉谷選手は唯一1分29秒台の好タイムをマークしてチャンピオンに王手をかけた。
前半の2クラスに対して、JG8クラスは第2ヒートで自己タイムを更新する選手が多かったが、それでも1分30秒の壁は高く、29秒台に突入する選手は現れない。ラス前ゼッケンの上野山選手も自己タイムを0.4秒更新するも、1分30秒176にとどまり、第1ヒートから順位をひとつ上げて2位に食い込むも、チャンピオン争いからは脱落してしまった。
逆に杉谷選手はタイムダウンに終るが、それでも再び1分29秒台を刻み、安定した速さを見せてタイトル確定となった。「昨年までTW280タイヤのクラスで苦戦して(笑)、今年はJG8クラスに移りました。シリーズチャンピオンは5年振りで、ロードスターでは初なので、とても嬉しいです」と、杉谷選手は笑顔でシーズンを振り返った。





JG7クラスは、ベテランの岡野博史選手を若手の安藤祐貴選手が12ポイント差で抑えるチャンピオン争いを展開している。これまでの勝ち星は互いに3勝で、今回、4勝目を挙げて残り2戦に弾みをつけたい両選手だったが、第1ヒートをトップで折り返したのはシリーズ8番手につける山田真二選手だった。
岡野選手はタイム的にはベストタイムを刻むも、パイロンペナルティを取られ、10番手。安藤選手は途中、シフトが1速に入らないトラブルに見舞われて4番手と、第1ヒートはやや出遅れてしまう。
勝負は第2ヒートに移ったが、ここで戦況を大きく変えたのが、クラス前半ゼッケンの下村渉選手。下村選手は今年から関東地区戦に参戦し、岡野選手と同じチームに所属する新人若手ドライバー。第1ヒートの岡野選手のペナルティなしのタイムをも凌ぐ1分29秒156を刻み、一気にハードルを上げた。
そのハードルをクリアすべく、後続ゼッケンも果敢に攻めるが、ベストタイム更新のアナウンスは聞こえない。第1ヒートトップの山田選手も自己タイムを更新することができず、下村選手がトップを保持したまま、競技はラス前の岡野選手の走行に。しかし岡野選手も中間タイムで下村選手に1.4秒遅れ、ゴールタイムも伸び悩み、5番手にとどまる。
残る最終ゼッケンの安藤選手の走りを見守る下村選手。若手ドライバー同士の対決となったが、安藤選手は最終のテクニカルセクションで痛恨のミス。ターンを回り切らずに脱輪ペナルティとなってしまい、万事休す。下村選手が地区戦初優勝を飾り、波乱の展開となったチャンピオン争いは次戦以降に持ち越しとなった。
「元々レーシングカートをやっていたのですが、大学の自動車部でジムカーナを始めて、縁あってこのクルマで参戦しています。ハイレベルな選手が多いこのクラスで優勝できたのは、とても嬉しいですね」とは、喜びの下村選手。今後の活躍に期待したい。





今季2勝を挙げている高橋真二選手がポイントリーダーのJG6クラス。同じく2勝で、シリーズ2番手につける原史孝選手は今回、休戦となっており、高橋選手はこの間に高得点を加算しておきたいところだ。
しかし、第1ヒートをトップで折り返したのはシリーズ4番手につける藤田幸児選手。1分31~32秒台を推移するトップ争いの中で、唯一の1分30秒台をマークする。2番手には樫谷達朗選手が入り、高橋選手は3番手につけて第1ヒートを終えた。
第2ヒートになると大槻隆夫選手が順位をひとつ上げて3番手に浮上するが、藤田選手も自己タイムを0.1秒更新し、アドバンテージを確保する。有効ポイントの関係で3位以上でないとポイントが加算されない高橋選手は、この時点で4番手。中間タイムでは自身のタイムから0.6秒遅れとなるが、今回は中間タイムを落としてもゴールタイムを更新する選手も多く、逆転の可能性も十分考えられた。しかし、痛恨のタイムダウンに終わったため、藤田選手が逃げ切った。





ポイントリーダーは大脇理選手、シリーズ2番手は小野田了選手、そして3番手は新井範正選手と、チームSTP勢が上位を占めるJG5クラス。その中でも大脇選手は今年からGRヤリスに乗り換え、シリーズを牽引しているが、今回も第1ヒートから唯一1分27秒台の好タイムをマークして波に乗る。
続く2番手には小野田選手、3番手に新井選手と、上位陣はシリーズ順位と同じ順位で第1ヒートを折り返すが、第2ヒートでは、新井選手が0.4秒のタイムアップを果たすも、順位は変わらず3番手。小野田、大脇両選手はタイムダウンに終わったため、第1ヒートの順位のまま、大脇選手が今季3勝目を挙げた。タイトルは決まらず、上位3選手によるチャンピオン争いは次戦以降も続くこととなった。





JG3クラスは、欠場した開幕戦以降、優勝3回を含め、すべて表彰台を外さなかった石澤一哉選手が、ポイントリーダー。その石澤選手を16ポイント差で追うのがディフェンディングチャンピオンの堀井紳一郎選手。石澤選手は今回、シリーズチャンピオンを確定させる権利を得ているが、ICCは堀井選手のホームコース。ここで踏みとどまって、チャンピオン争いを継続させたいところだ。
第1ヒートは堀井選手は3番手、石澤選手はミスコースでノータイムと、ともに不本意な走りで折り返す。迎えた第2ヒート。二人にとってのターゲットタイムは、このヒートでタイムを上げた中島裕選手の1分27秒418。堀井選手は第1ヒートの自己タイムを約1.5秒更新しなければならないが、タイムアップ傾向のJG3クラスにおいては決して不可能な状況ではない。
しかし逆転に期待がかかった堀井選手は、痛恨のパイロンペナルティ。ゴールタイムは1分27秒128と、中島選手を上回っていただけに悔しい結果となった。この時点で堀井選手が4番手となったため、石澤選手は2位以上でチャンピオンが確定となる状況に。注目の石澤選手は中間タイムで中島選手を0.2秒上回ると、後半でもタイムを詰め、1分27秒047とベストタイムを更新。一発勝負を確実に決めて逆転優勝でシリーズチャンピオンを確定した。





今回最多の16台のエントリーとなったJG2クラス。昨年までとは顔ぶれも大きく変わり、全日本常連ドライバーも参加するなど激戦クラスとなっているが、その中で第1ヒートをトップで折り返したのが、シリーズ3番手につける太田代明大選手。前回の筑波ラウンドに続く連勝を狙いたいところだが、第2ヒート、太田代選手のタイムを0.2秒更新する1分30秒025をマークしてトップに躍り出たのは、中盤ゼッケンの二木達也選手だった。
後続の選手は二木選手のタイムを更新することできずに競技は進行。太田代選手もタイムダウンに終わり、二木選手の優勝が目前となったが、ここでトップタイムを塗り替えたのが最終ゼッケン、ポイントリーダーの金子進選手。第1ヒートは6番手と出遅れたが、1.6秒ものタイムアップを果たし、土壇場で逆転優勝を決めた。金子選手は今季3勝目を飾ることとなったが、シリーズチャンピオンは決まらず、残り2戦のバトルに挑むこととなった。





今シーズンから地区戦に参戦している大野航選手がポイントリーダーに立っているJG1クラスは、ベテランの高瀬昌史選手が2番手から虎視眈々とチャンピオンを狙う、というシリーズが展開されている。
第1ヒート、大野選手はミスコースを喫してしまい、ノータイム。高瀬選手がトップで折り返すが、第2ヒートではパイロンペナルティを含む大幅なタイムダウンとなり、自己タイムは更新できず。その隙を突きたかった大野選手だが、高瀬選手のタイムを抜くことはできず、今回は2位に甘んじた。
優勝の高瀬選手は「昨年エンジンブローしてしまい、今年の開幕戦ギリギリでようやく間に合いました。なので、前半戦はクルマも自分自身もセッティングが決まらなかったのですが、中盤以降は調子が戻ってきました」とコメント。これで後半戦は3連勝と完全に復調した。今回、辛うじてポイントリーダーを死守した大野選手だが、その差は有効で3ポイント。追い上げる高瀬選手を抑えることができるか、後半2戦に注目したい。





フォト&レポート/友田宏之