独自のクラス分けで争われる東北ジムカーナ、SATW-2クラスを制したのは5年ぶりに復帰の関勝哉選手

レポート ジムカーナ

2023年4月7日

真夏の全日本選手権に向けて始動する東北、地区戦でもSUGOスペシャリストが大活躍の予感⁉ 今シーズン復帰の関勝哉選手がいきなりの優勝で幕明けした東北ジムカーナ選手権は、4月2日にスポーツランドSUGO国際西コースで行われた。

2023年JAF東北ジムカーナ選手権 第1戦
2023年JMRC東北ジムカーナシリーズ 第1戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第1戦
「2023年 ENDLESS CUP ジムカーナ」

開催日:2023年4月2日
開催地:スポーツランドSUGO国際西コース(宮城県村田町)
主催:SSC

 桜前線が北上するように、東北地区のジムカーナ選手権も4月上旬にいよいよ開幕戦を迎える。その開催の口火を切る舞台となったのはスポーツランドSUGO国際西コースだ。ブレーキ部品製造販売において国内最大手メーカーであるエンドレスの協賛を得て、エンドレスカップとして開催された。

 2023シーズンにおける地方選手権は各地区で独自のクラス区分が採用されており、東北地区もまた独自のクラス区分で開催される。全日本選手権への橋渡しとなるPN車両クラスは、使用タイヤの制限など基本的には全日本規定に従うが、PN1クラスだけが1600㏄未満の車両まで参戦が許される。

 一方、独自につくられたSATWは、TW(耐摩耗性能)280以上のタイヤを使用するSA車両が参戦可能なクラス。そのため、東北地区のSATWクラスではシバタイヤが主流となっており、SATW-2クラスにおける装着率はなんと80%を超える勢いとなっている。また、B・SC車両で争われるBSCクラスが設立され、前輪駆動&後輪駆動、4輪駆動という駆動方式で分かれ、2WDクラスと4WDクラスが設けられた。

 今回のスポーツランドSUGOは、2023年の全日本ジムカーナ選手権が開催されるコースでもある。シーズンオフには西コースの一部が改修され、向かって左奥の島の手前にある三叉路の部分が大きく舗装された。これにより、電気式駐車ブレーキが装着されたP・AE車両によるPEクラスでも、十分に余裕を持ったパイロンセクションが可能となった。

コース全体についた傾斜が特徴的なスポーツランドSUGO国際西コース。本番前に公開練習1本が用意された。
45分という短めの慣熟歩行でこの長いコースの暗記が必要で、エントラント同士で相談する様子が随所で見られた。
新しく新設された区間には8の字が設定された。緩やかな勾配のあるターンセクションにエントラントの技術が試される。
エンドレスカップを盛り上げる、エンドレスレディの緒方来夏さんがマーシャルカーのスタートフラッグを担当。
国際西コースを2つに分けることで走り甲斐のある長めのコース設定に。属性の異なるターンセクションを3つ織り交ぜたテクニカルなコース。

PN3クラス

 今大会最初のクラスとなったのが、1500㏄以上のPN車両で争われるPN3クラス。このクラスはスイフトと86/BRZの一騎打ちとなっている。1本目にトップタイムをマークしたのは、ダンロップβ11を装着したBRZをドライブする成澤裕太選手だ。

「今年からβ11を履いて感覚がすごく良かったんですよね。路面温度が低くてもしっかりグリップしてくれて、いい感じに走れました」と走行後に自身の走りを振り返る。しかし、春のSUGOは朝と昼の路面温度差が激しく変化するのが特徴で、今大会もその差は10度以上。昼の慣熟歩行を終えるころには完全に2本目勝負の様相を呈してくる。

 そんな中、一気にタイムを上げてきたのは、唯一1本目で成澤選手と同じ40秒台をマークしていた巻口洋平選手だった。コースの渡り区間では車輪を浮かせるほど激しく踏み込み、圧倒的な勢いでタイムを削り取る巻口選手。成澤選手の1本目のタイムを大きく上回る38秒台をマークしてターゲットタイムを更新する。

 それに負けじと成澤選手も2本目をスタート。中速コーナーが続く前半セクションでは巻口選手を上回る勢いを見せるものの、後半セクションに入ると徐々にフロントが逃げ出してしまい、トラクションがかけられない状態に……。ターンセクションでもタイムを落としてしまい、コンマ5秒及ばず無念の2番手タイム。巻口選手がうれしい開幕戦優勝を果たした。

「朝イチの練習走行ではスタートして50mでいきなりスピンしてしまって、今日はどうなるかと思いましたが、なんとか勝てました。この路面温度だとタイヤが発動する温度にはまだ達していない気がしますが、2本目の後半セクションはまずまずだったかと思います」

「ただ、ターンセクションでミスもあったのでもっと改善できると思います。新しく設けられた8の字は勾配が弱いので逆にターンはしやすかったですね。今年は2017年以来のシリーズチャンピオンを目指して頑張りたいと思います」と巻口選手。第2戦以降も激しいトップ争いが期待されるクラスだ。

PN3クラス優勝は巻口洋平選手(QUICK BS スイフト)。
PN3クラスの表彰式、左から2位の成澤裕太選手、1位の巻口選手、3位の池沢広行選手。

SATW-2クラス

 SATW-2クラスは今大会最多の12台を集めた。80%を超えるエントラントがシバタイヤを装着する中で、横浜ゴムとミシュランを選択する選手が混在するクラスでもある。1本目のターゲットタイムを早々に記録したのは、地区戦5年ぶりの復帰となった関勝哉シビックだった。

 関選手はイケイケの走りでひとり39秒台に突入すると、後続の選手はそのタイムを塗り替えることすら叶わず。だが最終ゼッケンのS2000を駆る阿部崇治選手が意地を見せ、「本当は4輪ともミシュランで走ろうかと思ったんですが、リアにシバタイヤを持ってきて車なりに走って良く踏めていました」という言葉通り、コンマ2秒差で関選手をかわして折り返す。

 運命の2本目は路面温度が上がり、関選手が38秒台に突入する。そして最終ゼッケン阿部選手の2本目、中盤までは肉薄のタイムで追いかけるが、最終セクションで痛恨のシフトミス。それでもなんとか阿部選手も38秒台に突入するが、コンマ2秒差で関選手が逃げ切って優勝を果たした。

「1本目は路面温度が低くてちょっと無理かなと思ってぬるい走りになりました。2本目はコースの渡りもしっかり踏めていましたし、ターンもきちんと決まりましたし、2009年ぶりの優勝で本当にうれしいですね。今年は久々にチャンピオンを獲りたいです」と関選手。今シーズンのこのクラス、関選手と阿部選手のふたりの熱き対決となりそうだ。

SATW-2クラス優勝は関勝哉選手(ツールARシバProμシビック)。
SATW-2クラスの表彰式。左から4位の豊本将希選手、2位の阿部崇治選手、1位の関選手、3位の清水直人選手、5位の市川公司選手、6位の飯塚信男選手。

SATW-4クラス

 少し寂しい3台による争いとなったSATW-4クラスは、佐柄英人選手が2位以下を1秒以上突き放すトップタイムで優勝。「冬の間に練習していたときのグリップ感とは全然違って、リアが食っちゃうんで厳しかったですね。1本目はタコ踊りをしてしまったんで、2本目は無難にいった感じです。ここはリア駆動車に適したコースなんで、とにかくいつも通り冷静に走るように心がけました。今年は近くのサーキットだけの参戦予定ですが、出場する大会は全て優勝したいですね」と佐柄選手は走行後に今大会の感想を語ってくれた。

SATW-4クラス優勝は佐柄英人選手(DLレイズマルイCLランサー)。
SATW-4クラスの表彰式、左から2位の小野敦史選手、1位の佐柄選手、3位の熊谷香選手。

BSC-2WDクラス

 名だたるベテランがズラリと揃うBSC-2WDクラス。4月から関東に転勤が決まったベテラン宍戸政宏選手が1本目から気を吐いた。2番手につける上野健司選手のロードスターがコンマ差で迫ってくるも、これをいなして優勝を手にした。

「1本目は久々の新品タイヤで、ターンでのミスが少し目立ちましたが、タイヤがミスを補ってくれた感じですね。2本目はそれを修正しようとしたんですが、最後のドーナツターンでパイロンが目の前にきてしまって、それを避けようとしてタイムダウンしてしまいました。今年は地元のSUGOだけの参戦になると思いますが、今シーズンもしっかり走りたいと思います」と宍戸選手はコメント。タイトル争いは激化しそうな予感だ。

BSC-2クラス優勝は宍戸政宏選手(BSササキSPMインテグラWM)。
BSC-2クラスの表彰式。左から2位の上野健司選手、1位の宍戸選手、3位の熊谷駿選手。

JMRC東北ジムカーナシリーズ 2クラス

 1000㏄未満の1クラスが不成立だったため、1000cc以上の前輪駆動の車両で争われる2クラスは混走となった。優勝は亡き恩師への想いを込めて走ったというコペンの木村文哉選手で、格上のマシンを相手に一歩も引けを取らない走りで勝利をつかみ、喜びを爆発させた。

2クラス優勝は木村文哉選手(DsportHWコペンADMS)。
2クラスの表彰式。左から2位の伊藤研選手、1位の木村選手、3位の吉田友明選手。

JMRC東北ジムカーナシリーズ 6クラス

6クラス1位は堀野克之選手(ダイハツCCソニカ)。

 主催クラブである菅生スポーツクラブの大谷保志代表は「今年、全日本ジムカーナを控えているので、自分の中にいくつかあるコースレイアウト案のひとつを実際に試してみました。2ペダル用の大きな弧を描くような車両のために、カートコースでもターンができるように新設したスペースも機能していました。今回は8の字にしましたけど、オーバルターンにしても使えると思います」

「距離的には1分30秒ほどの長いコースだったので、選手の皆さんも走り甲斐のあるコースを楽しんでもらえたと思います。コースジムカーナは脱輪の判定が難しいんですが、こういった設定なら運営もスムーズにいけるんだと確信できた大会でしたね」と大会を統括してくれた。

菅生スポーツクラブの代表を務め、本大会の組織委員長および競技長も務めた大谷保志氏。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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