大西康弘ランサーがオーバーオールタイムを叩き出して4WD-2クラス貫禄の勝利

レポート ダートトライアル

2023年5月6日

東北ダートトライアル選手権の第2戦が、4月23日に青森県五戸町のサーキットパーク切谷内で開催された。全7戦で争われる今シーズンは、3月26日に栃木県那須塩原市の丸和オートランド那須で開幕を迎えたが、第2戦以降は最終戦まで、今回のサーキットパーク切谷内と福島県二本松市のエビスサーキットで1戰ずつ交互に開催される。

2023年JAF東北ダートトライアル選手権 第2戦
2023年JMRC東北ダートトライアルチャンピオンシリーズ 第2戦
2023年JMRC全国オールスターダートトライアル選抜 第2戦
「2023年スーパートライアル IN 切谷内」

開催日:2023年4月23日
開催地:サーキットパーク切谷内(青森県五戸町)
主催:MSCはちのへ

 東北地区のダートトライアルで昨年と大きく変わったのがクラス分けと名称だ。これまでのS1やS2等の名称を廃止し、FR、2WD-1、2WD-2、4WD-1、4WD-2の全5クラスとなり、リア駆動車のFRクラスと、主にGRヤリスを対象とした4WD-1クラスが今年から新たに設定された。各クラスともに車両の改造範囲は問わず、同じクラスでの争いとなる。今回はFRクラスのエントリーはなく、それを除く4クラスにクローズドクラスを加えた全5クラスでの競技となった。

 コース設定は切谷内を豪快に攻める高速レイアウトが主体だが、中盤に設けられた2か所のシケインが重要な攻略要素となったようだ。また、当日は雨の心配こそなかったものの、強風が吹き荒れるコンディション。走行と風によって巻き上がった砂埃で視界が奪われる状況に悩まされる選手も多かったが、各クラスでコンマ差の接戦が繰り広げられ、白熱のバトルが展開された。

硬質路面が選手にプレッシャーを与える切谷内。テクニカルコーナーにアップダウンが加わったコースが特徴だ。

4WD-2クラス

 全日本トップランカーの大西康弘選手も参戰し、今回最多15台で争われた4WD-2クラスは、昨年のナンバー付きS2クラスのシリーズ上位陣が改造車にどこまで迫れるかも注目された。その第1ヒートでトップを奪ったのはやはり大西選手。2番手には昨年のDクラスチャンピオンで開幕戦の丸和を制した四戸岳也選手。そして3番手には今シーズンからニューマシンを投入した須藤正人選手と、3選手ともに1分23秒台で改造車が上位を占める。

 第2ヒートになると、大西選手に対し0.1秒及ばなかった須藤選手が、0.8秒のタイムアップを果たして2番手に順位を上げる。そんな中で速さを見せたのが、昨年のS2クラスチャンピオン加藤琢選手だ。第1ヒートはコース中盤で痛恨のミスコースを喫してしまいタイムを残すことができなかったが、第2ヒートの一発勝負で1分23秒台を叩き出して3番手に割って入る。

 ナンバー付き車両が表彰台の一角を占めると思われたが、4番手に落とされた四戸選手が加藤選手を0.06秒逆転。第1ヒートから順位をひとつ落としたものの、僅差で表彰台に返り咲く。上位陣がコンマ差の攻防戦を繰り広げる中、ラストゼッケン大西選手は約0.6秒のタイムダウンでゴール。今大会のオーバーオールタイムとなる第1ヒートのタイムで優勝を決めた。

「翌週の(丸和オートランド那須で開催の)全日本の練習も兼ねて出場しました。今シーズンはまだ走り込みが足りなく、今回もタイムの稼ぎどころでミスをしましたので、徐々に詰めていければと思います」と大西選手。

 その大西選手に0.1秒まで迫った2位の須藤選手は「全開で走ったのは今回が初めてに近い状態で、まだまだテスト不足なのですが、ハイブーストやローブーストの使い分け等を試せたので収穫はありました。タイム的にも大西選手に近いタイムが出せたので良かったと思います」とニューマシンの手応えも感じていたようだ。

 そして3位の四戸選手は「第2ヒートは砂埃で前が見えず、ブレーキを踏んでしまったところがありましたので、思うようなタイムアップは果たせませんでした」と、開幕戦に次ぐ連覇を逃す結果となってしまったが、改造車の面目を保つ表彰台を死守した。

4WD-2クラス優勝は大西康弘選手(YH・TEIN・AGランサー)。
2位は須藤正人選手(すとうmriクリニックランサー)、3位は四戸岳也選手(YH・MOTUL・MWランサー)。
4WD-2クラスの表彰式。左から2位の須藤選手、1位の大西選手、3位の四戸選手、4位の加藤琢選手、5位の遠藤誠選手、6位の南場淳司選手。

2WD-2クラス

 14台で争われた2WD-2クラスは開幕戦の覇者、菱谷克幸選手がトップで折り返すも、2番手には0.03秒差で武蔵真生人選手、そして3番手には武蔵選手から0.3秒差で竹村由彦選手、さらにその0.01秒差で今隆志選手が4番手と、第1ヒートからクラスラスト4台が0.4秒以内の接近戦を繰り広げる。

 第2ヒートになると、竹村選手が菱谷選手の第1ヒートのタイムを1.7秒更新してトップに立つ。続く菱谷選手はトップを奪回したいところだったが、竹村選手に0.2秒及ばず暫定2番手。そしてラス前、今選手は3秒近く自己タイムを更新し、クラス唯一の1分30秒台を叩き出し、ここでトップに躍り出る。注目のラストゼッケン武蔵選手は1.4秒ほど自己タイムを更新するも4位止まりとなり、今選手が逆転で優勝を決めた。

「第1ヒートは全然走れませんでしたね(笑)。第2ヒートは抑えるところと踏むところを意識しながら走ったのですが、ミスも結構ありました。タイム的にはあと1秒は詰めることができたと思います」と言う今選手は、開幕戦の丸和をスキップしたため今回が自身の開幕戦。やや課題を残したようだが優勝でシーズンスタートとなった。

 2位の竹村選手は「第2ヒートはちょっと頑張りすぎました(笑)。冷静に走っていれば1分30秒は切れたのではないかと思います」とコメント。そして連覇を逃してしまい3位となった菱谷選手は「第2ヒートはラインを外してふかふかの路面に乗ってしまいました。シケインも抑えすぎてしまったような気がします」と、走りを振り返った。

2WD-2クラス優勝は今隆志選手(RSトヨカワDLインテグラR)。
2位は竹村由彦選手(秋田スズキ・DL・Ω・スイフト)、3位は菱谷克幸選手(アトリエ510インテグラ)。
2WD-2クラスの表彰式。左から2位の竹村選手、1位の今選手、3位の菱谷選手、4位の武蔵真生人選手、5位の菅谷雅人選手、6位の中山祐太郎選手。

2WD-1クラス

 3台で争われるはずだった2WD-1クラスだが、第1ヒートで長曽航太選手が転倒リタイアとなってしまい、ダブルエントリーの後走、いりえもん選手も出走できなくなってしまったため、完走した猪股将大選手が優勝となった。

「実は2週間前に練習中に転倒してしまい、今回の出場はあきらめていたのですが、工藤店長から本番車を貸していただけることになり、無事走ることができました」という猪股選手。

 全日本トップドライバー工藤清美選手の正真正銘本番車両のフィットを駆っての走行となったわけだが「緊張して足が震えました。第2ヒートはベストラインを外さずに、踏めるところはしっかり踏めたと思います。このような経験ができて、回りの環境に恵まれていると実感しました」と猪股選手。表彰台の中央で笑顔で語った。

2WD-1クラス優勝は猪股将大選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。

4WD-1クラス

 4台で争われた4WD-1クラスは、伊藤久選手が両ヒート共にトップタイムで優勝となったが「ヤリスもかなり練習したのですが、今回振り返ってみても、あと1秒詰まるかどうかという感じでしたので、ランサー勢と比較しても、タイム的にはまだまだといった感じですね」と、素直に喜べない様子の伊藤選手。

4WD-1クラス優勝は伊藤久選手(RZDLフォルテRACヤリス)。
2位は太田敏明選手(ファイン自動車ヤリス)、3位は林健一選手(e投票郡山レーシングヤリスDL)。
4WD-1クラス表彰の各選手。

CL1クラス

 クローズドクラスのCL1クラスは、ダートトライアル初出場の一戸洋佑選手が優勝。「こういった賞を受けるのは小学校のときに俳句で金賞を取って以来のことで、とてもうれしいです」と、笑顔でコメント。

CL1クラス優勝は一戸洋佑選手(工藤ホンダ雪まみれミラージュ)。
2位は古川雄貴選手(TUMC☆三神峯インテグラ)、3位は橋下文夫選手(カーステージあうんスターレット)。
CL1クラスの表彰式。左から2位の古川選手、1位の一戸選手、3位の橋下文夫選手、4位の橋下聖菜選手。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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