2023シーズンのS-FJ No.1ドライバーを決める一進一退の激戦を小田優選手が制す!

レポート レース

2023年12月15日

12月9〜10日にモビリティリゾートもてぎで、「2023もてぎチャンピオンカップレース第5戦」が開催された。この週末は2023年の暮れも押し迫っているというのに、日中はむしろ暖かいぐらいで、青空の下でレースが行われた。今回は2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー地方選手権/FIT 1.5チャレンジカップ第6戦と、スーパーFJ日本一決定戦をクローズアップしたい。

2023 S-FJ MASTERS(スーパーFJ日本一決定戦)
2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権FIT 1.5チャレンジカップ第6戦
(2023もてぎチャンピオンカップレース第5戦 内)

開催日:2023年12月9~10日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド(株)、M.O.S.C.、BSC

2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権
FIT 1.5チャレンジカップ第6戦

 2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権(もてぎ・菅生ツーリングカー)は、開催された全戦のうち70%のレースで獲得したポイントが有効となるシステムとあって、ここまでの5戦でオオタユウヤ選手がすでに4勝を挙げており、満点チャンピオンを確定。しかし、FIT 1.5チャレンジカップ(FIT 1.5)としては全戦有効のため、まだランキング2番手の尾藤成選手にも首の皮一枚チャンスが残されていた。

予選

 通常なら、この時期の予選はタイヤをしっかり温めてからアタックというのがセオリーだが、前述のとおり今回は季節外れの陽気にも恵まれ、計測1周目からのアタックが可能に。いきなりコースレコード更新となるトップタイムを記したのが尾藤選手。もう1周攻めていくも、これはタイムダウンで、早々にピットに戻ってきた。

「計測1周目でも問題なくいけました。1コーナーでちょっとカウンター当たっちゃっているので、少しロスしているんですけどね。天気はいいですけど、やっぱり路面温度は低かったので、ちょっと様子をうかがいつつ、思い切ってというより、少し抑えてはいました。勝って終わりたいですね。2週間前に(スポーツランド)SUGO戦ありましたけど、エンジンが不調でアクセル踏んでいるのに吹けなくなっちゃって、最後4位まで落ちてしまって。その不具合の対策はしてきたので、今のところ大丈夫そうです」と、尾藤選手はわずか3周で決めた予選の走りを振り返った。

 一方のオオタ選手だが、なかなかタイムが上がらず。計測3周目で決めるも、それでも尾藤選手のみならず、中村義彦選手のタイムにも及ばず、3番手タイム。だが、「リヤに硬いタイヤ履いていたからね、決勝に向けて」と、焦る様子はまったくなさそうだ。

スポーツランドSUGOでの前戦に続きポールポジション獲得、さらにコースレコードも更新した尾藤成選手(タック エンドレス フィット)。SUGOではトップ快走もエンジントラブルで勝利を逃し、この一戦でのリベンジに向けて絶好のグリッドを得た。

決勝

 10周の決勝では、ポールシッターの尾藤選手がスタートをそつなく決めて、1コーナーへのホールショットに成功。早くも後続を引き離しにかかり、オープニングの1周だけで約1秒3の差をつける。これに対して、中村選手とオオタ選手による2番手争いが激しく、4周目のヘアピンで順位は入れ替わるも、オオタ選手は引き離すまでには至らない。

 その間にも逃げ続けた尾藤選手は、中盤からは安定のタイム刻みで余裕を見せ、第3戦以来の2023シーズン2勝目をマーク。「スタートは個人的な課題だったんですけど、前回のSUGOから克服できて、いい感じでスタートできるようになったので、あとは10周をいかに速く走れるかを心がけて走っていましたが、うまくいきましたね」と尾藤選手は勝利を振り返った。

 そして、オオタ選手は最後まで中村選手を抑え切って2位でフィニッシュ。もてぎ・菅生ツーリングカーとFIT 1.5の二冠確定なって、「良かったです。今年はシーズン通じてクルマが調子良くて、特にアシが良かった。チームのみんなのおかげです」とチームの労をねぎらった。

尾藤選手は決勝でも完璧なレース運びでポール・トゥ・ウィン。「初めてもてぎで勝てましたし、最後を締めくくって優勝できて良かったです」と、ランキング2位でチャンピオンは逃してしまったものの、笑顔を見せた。
2位は中盤に中村義彦選手(K+UP・SEEKER・MVFIT)を攻略した、3番手スタートのオオタユウヤ選手(ワコーズ太ニルズ制動屋FIT)が獲得した(左)。フロントロウからスタートした中村選手だったが、オオタ選手の猛追には敵わず3位フィニッシュ。ランキングでも3位に確定した(右)。
表彰台に上がった、左から2位のオオタ選手、優勝した尾藤選手、3位の中村選手。
表彰台に上がれば2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権とFIT 1.5チャレンジカップの二冠確定となるオオタ選手は2位獲得で、2022シーズンは僅差で逃した二冠をしっかりと確定させた(左)。

スーパーFJ日本一決定戦

 前身のFJ1600時代を含めると、実に26回もの長き歴史を誇るスーパーFJ(S-FJ)日本一決定戦。今季はもてぎが舞台となった。エントリーはここ数年の40台超えを思えば31台と少なめだが、日本各地のサーキットを舞台とした4シリーズのチャンピオンは全員揃い、シーズン途中からの参戦ながら、いきなり大活躍をしたルーキーも数多く参戦、どうあれ激戦になるのは必至だった。今季も予選とセミファイナルはAグループとBグループに分けられ、最後にファイナルで一堂に介して競われた。

Aグループ予選・セミファイナル

 Aグループのセミファイナルは、前週に行われた2023年JAF鈴鹿・岡山スーパーFJ選手権(鈴鹿・岡山シリーズ)第7戦において、S-FJデビュー2戦目にして初勝利を飾ったばかりの迫隆眞選手がPPを獲得。その脇には鈴鹿・岡山シリーズチャンピオンの白崎凌選手が並んだ。

 スタートに出遅れてしまった迫選手は白崎選手の先行を許すも、何とか2番手に踏み留まり、激しくトップを争う。これがファイナルラップの6周目まで繰り広げられることが予想されるも、なんと5周目の1コーナーで迫選手がコースアウト。縁石に乗せすぎて足回りが損傷、舵が効かなくなったのが原因だ。

 これで5周目に元山泰成選手を抜いていた村田悠磨選手が2番手に繰り上がり、ファイナルラップには渡会太一選手が元山選手から3番手を奪取。白崎選手、村田選手、そして渡会選手の順でチェッカーフラッグが振られた。

2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第7戦でレーシングカートからのステップアップを果たした迫隆眞選手(EAGLE ERS S-FJ)。2023年JAF鈴鹿・岡山スーパーFJ選手権 第7戦で初優勝した勢いを活かしてAグループのPPを獲得したが、セミファイナルでは車両トラブルに泣かされた。
Aグループの予選でフロントロウを獲得した白崎稜選手(TAKEFIRSTスタッフリソース&QUICK羽生)は万全のスタートでホールショットを奪うと、終盤まで迫選手を抑えきってトップでフィニッシュ。激戦だった鈴鹿・岡山シリーズのチャンピオンを最終第8戦で確定させた実力の片鱗を見せた。

Bグループ予選・セミファイナル

 Bグループでは2022シーズンにJAF全日本カート選手権の最高峰、OK部門を制した小田優選手がPPを獲得。やはり今季途中からの参戦で、6戦目にしてようやく真価を発揮した感も。2番手は鈴鹿・岡山シリーズでランキング2位の田中風輝選手で、3番手は同シリーズ最終第8戦でS-FJ初優勝を飾った、やはりOK部門から上がってきた堂園鷲選手だ。

 フロントロウのふたりはともに好スタートを決めて、その後も一騎討ちでのトップ争いを繰り広げるが、小田選手のガードは固く、最後まで田中選手の逆転を許さなかった。 3番手争いは中盤から6台が連なる大激戦となったが、4周目に内田涼風選手が堂園選手を抜いて決着がつく。2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権チャンピオンの意地を見せた格好だ。

Bグループのセミファイナルは小田優選手(AUTOBACS Drago CORSE)がPPからトップを譲らずフィニッシュ。今季デビューしたS-FJではもてぎ・菅生シリーズ第7戦での3位が最高位だったが、昨季の全日本カートOK部門チャンピオンを獲得した実力の一端を見せた。

ファイナル

 そして迎えたファイナルは10周の争い。PPは小田選手で、2番手は白崎選手。その後ろには田中選手と村田選手が並んだ。好スタートを切ったのは白崎選手と村田選手。白崎選手は小田選手を抜けなかったものの、村田選手は田中選手を抜いて3番手に浮上する。

 1周目を終えた段階で、早くもトップ争いは小田選手と白崎選手の一騎討ちに。3周目の3コーナーで白崎選手が前に出るも、4周目の1コーナーで小田選手が逆転。その後も2台は離れず続く。一方、その後方でのバトルも激しく、5周目の90°コーナーで田中選手が前に。だが、その激しさゆえに渡会選手らを近づけてしまい、一時は6台で3番手が競われるまでに。

 7周目の5コーナーで小田選手が前に出れば、やり返すかのように8周目の5コーナーで白崎選手が逆転。なおも激しく続いたトップ争いの決着がついたのは、ファイナルラップの5コーナーだった。白崎選手のインを刺した小田選手ながら、立ち上がりのラインがややワイドに。接触を避けた白崎選手は完全に縁石に乗って失速。最後の勝負どころである、90°コーナーで仕掛けられない差が開いてしまった。

 それでも白崎選手は最後に0.174秒差にまで迫る意地を見せるも、小田選手が日本一決定戦という大舞台でS-FJ初優勝を飾った。「中盤にタイヤを温存していたので僕に余力があって、最後にそれが影響したんだと思います。めっちゃ嬉しい! 今後のことはまだ決まっていませんが、(FIA-)F4に行きたいですね」と小田選手。

 3位は田中選手が獲得。6周目に渡会選手に抜かれていたが、8周目に再逆転すると、その後はしっかりポジションを守り抜いていた。4位は堂園選手、5位は渡会選手で、やや間隔を置いて6位は池内比悠選手が獲得。また、40歳以上のドライバーを対象とするジェントルマンクラスでは、11位でフィニッシュした吉田宣弘選手がクラス優勝を飾った。

小田選手は予選で速さを見せてPP、セミファイナルで鉄壁のポール・トゥ・ウィン、ファイナルではバトルでのテクニックと気持ちの強さを見せて白崎選手との激戦を制して連続ポール・トゥ・ウィンと、ドライバーとして多彩な強さを発揮して日本中から集ったS-FJドライバーの頂点に輝いた。
Aグループのセミファイナルを制し、フロントロウからスタートを切った白崎選手は、10周をとおして小田選手と抜きつ抜かれつの熱戦を展開するも惜しくも2位。アツいバトルの中でも要所をおさえたクリーンな攻防を繰り広げ、技術の高さを見せた(左)。昨季は全日本カートOK部門で小田選手たちと競っていた田中風輝選手(24systemタイヤサービスM2 KK-SII)が3位を獲得。鈴鹿・岡山シリーズで2勝を挙げてランキング2位を確定させたルーキーが、熾烈な争いからスターティンググリッドの順位を守り抜いた。
ベテランドライバーが競うジェントルマンクラスの優勝はクラストップ、総合21番グリッドからスタートした吉田宣弘選手がクラストップの座を譲らず。総合順位でも11位まで上げてクラス優勝を果たした。オートポリスを主戦場にしている吉田選手は、FJ1600時代からオートポリスシリーズのチャンピオンを3回獲得している実力者だ。
表彰台に登壇したファイナルの上位3選手。左から2位の白崎選手、優勝した小田選手、3位の田中選手と、鈴鹿・岡山シリーズに参戦したドライバーが占めた。
ジェントルマンクラスの上位3選手、左から2位の太田浩選手(ミスト・セキグチ・制動屋)、優勝した吉田選手、3位の柴田泰知選手(ZAP SPEED RD10V ED)が表彰台に登壇した。

フォト/石原康、大野洋介 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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