一足早い暑さとなった十勝でのFormula Beatの二連戦は少数精鋭による戦いに!
2024年6月24日
国内では最も遅い開幕となった、十勝インターナショナルスピードウェイのシリーズ「北海道クラブマンカップレース」の第1戦が5月19日に開催された。十勝にたどり着いた瞬間、感じたのは「ここは本当に北海道なのか?」という印象。本来だったら、この時期の北海道は涼しいどころか、まだ肌寒かったりもするのだが、今回のレースウィークに関しては少々暑いぐらい。空気が乾燥していて、爽やかな風が吹いたりもするので不快感はないのだが、この時期の十勝らしからぬコンディションの下で開催された。
2024年JAF Formula Beat地方選手権 第4・5戦
(2024北海道クラブマンカップレース第1戦 内)
開催日:2024年5月19日
開催地:十勝インターナショナルスピードウェイ クラブマンコース(北海道更別村)
主催:TOSC、MSF(株)
フォーミュラ4地方選手権の時代から含めて、十勝では3回目の開催となるJAF Formula Beat地方選手権(F-Be)は2024シーズンも二連戦。2023シーズンは8月のハイシーズンに開催されたため、遠征費が大きな負担となっていたことから、今季は5月の開催に変更されたのだが、いざ蓋を開けてみるとエントリーは昨季より2台減の6台。それでも鈴鹿サーキットでの開幕戦で衝撃のデビューウィンを飾っている酒井翔太選手や、モビリティリゾートもてぎでの第3戦で久々の優勝を飾り、連勝を狙うハンマー伊澤選手ら、役者は揃っていた。しかも、完走すれば高得点が2戦分得られる、まさにボーナスステージだ!
予選
予選は1回だけ行われ、ベストタイムで第4戦の、セカンドベストタイムで第5戦のスターティンググリッドを決めるのは昨季と同じ。計測2周目からアタックを開始し、トップに立ったハンマー選手はそのままタイムを縮め続け、1周だけトップを酒井選手に譲ったものの、きっちり次の周には逆転。ベストタイムはもちろん、セカンドベストタイムでもトップに立って、ダブルポールポジション達成となった。
昨季も十勝での二連戦にエントリーしたものの、クラッチトラブルもありノーポイントに終わっていたハンマー選手は、「去年は悔しいというより恥ずかしい思いをしたので、リベンジしたいですね、頑張ります。予選は若干砂が乗ってコンディション良くないな、という感じだったんですが、慎重に走っていたらだんだんグリップが来て、それで徐々にタイムを上げることができました。決勝もちゃんと走ることを心がければ、いけると思います」と語っていた。
2番手は2戦とも「やっぱり自分のミスが大きく目立っちゃったのかな、という印象です。決勝はスタートで前に出て、なるべく抜かれないように、抜かれてもちゃんとついていって、最後に抜き返せるような展開をつくれば、と思っています」と語った、酒井選手が獲得。もちろん十勝は初体験とあって、「今まで走ったサーキットとは全然印象が違って、フルでフラットなのでアップダウンがない分、カートコースを走っているのかな、という感じです」と、初体験の感想を伝えてくれた。
3番手も十勝デビューで、今季F-Be初参戦の岩本瞬選手が2戦とも獲得した。「すごく楽しく走ることができました。楽しいサーキットでフラットですし、すごく攻められます。クルマもセットもいい感じなので、決勝も楽しみたいと思います」と、期待をふくらませていた。
4番手にはジェントルマンクラスでトップの吉田宣弘選手が2戦ともつけたが、スピンを喫してフラットスポットをつくってしまったフロントタイヤを、2本とも交換を余儀なくされたことから、第4戦は最後尾スタートに。同じジェントルマンのKAMIKAZE選手と宮本健一選手が、ひとつずつポジションを繰り上げた。
第4戦決勝
決勝は2戦とも14周の戦い。第4戦でホールショットを決めたのはハンマー選手で、予選後のコメントとは裏腹に酒井選手は出遅れてしまう。予選からミッションに不安を抱えていたKAMIKAZE選手が慎重なスタートを心がけたあまり、最後尾に後退。スタートを決めた吉田選手が、宮本選手もかわして4番手に浮上した。
1周目を終えた時点で、早くもハンマー選手は酒井選手に約1秒7の差をつける。その周こそ、岩本選手を背後に置いていた酒井選手ながら、2周目にはもう振り切ることに成功。ハンマー選手を追いかけたいところだが、しっかりペースを刻まれ、さらに離されてしまった。一方、5周目の1コーナーではKAMIKAZE選手が宮本選手を抜いて5番手に浮上。これが第4戦唯一のオーバーテイクシーンとなった。中盤からはそれぞれ単独走行となり、ハンマー選手が酒井選手に対して約9秒の差をつけての圧勝となった。
ハンマー選手は「スタートは良かったですね、まぐれです(苦笑)。まさに自分との戦いでした。次のレースも頑張ります。若干ちょっと抑えちゃったので、もっと離せるかどうか挑戦してみます」と、ひとり旅となったレースを振り返った。
対して、2位にはなったものの酒井選手は反省することしきり。「スタートですね、やっぱり。ペースも思った以上に上げられなくて、全然納得いっていないですね。次こそはちゃんと決めて頑張ります」とのことだ。そして3位の岩本選手も、「序盤からもっと行かなきゃダメですね」と、やはり反省モードだった。
ジェントルマンでは総合4位の吉田選手が優勝。「宮本さんだけスタートで抜いたけど、あとは抜けんかった。もうずっとマイペース。観光だから(笑)」とはまさに、はるか九州からの遠征ドライバーならではのコメントを残した。
第5戦決勝
1日で予選から、しかも2レースこなすのは慌ただしくもあるが、反省したり、学んだりしたことをすぐ活かせる、という点においては特効性もある。まさに酒井選手と岩本選手が、第5戦で実践してみせた。「めちゃくちゃ失敗したわけではないんですが、ふたりがうまかったですね」とハンマー選手に語らせるほど、酒井選手と岩本選手が好スタートを切って、前に出たのである。
1周目を終えてふたりに約1秒半の差をつけられたハンマー選手だったが、そこからが真骨頂。まずは3周目に岩本選手をかわし、その勢いのまま酒井選手に近づいていく。酒井選手も必死にガードを固めて逆転を拒むも、トップを守り抜いたのは5周目までだった。「ふたりとも1コーナーで抜きました」と、若いふたりを料理したハンマー選手はそのまま逃げ切り、第3戦から三連勝を達成した。「北海道まで来た甲斐がありました。このままいきたいですね、頑張ります」と、初戴冠を目指して連勝を重ねていくことを誓った。
2戦連続の2位となった酒井選手はハンマー選手を2ポイント差ながら抑えて、ランキングのトップを奪取。「スタート決まったんですけど、その後のペースが全然足りなかったです。でも、初めての十勝で楽しくレースできたので良かったです」と、これからの成長を期待させるコメントを発してくれた。そして、やはり連続3位に終わった岩本選手も「1レース目よりはなんとか。スタートは自信持てましたね。ただ、レースは体力。もうちょっと鍛え直します」と、収穫はあった様子だった。
総合4位とジェントルマンの優勝も、また吉田選手が獲得。やや離されていたとはいえ、時には岩本選手のタイムを上回っていた。「セットが前のレインのままみたいだったんですよ。全然気がつかなくて、このレースの前にようやく。でも、もうアジャストできないから、そのままいきました」と、セッティングが合わないまま戦っていたことを明かした。
さらに、「オートポリスでまた出ます。その時は見ていてください!」とクラス2連勝を飾りつつも、リベンジを誓っていた。吉田選手の後にはKAMIKAZE選手、宮本選手の順で続き、ジェントルマンも第4戦と同じ結果となった。
フォト/髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部