小雪も舞う難コンディションのなかフォーミュラリージョナルは小川颯太選手が戴冠!

レポート レース サーキットトライアル JAFWIM

2023年12月5日

2023年11月24~26日、スポーツランドSUGOを舞台に全5戦が組まれた2023 SUGOチャンピオンカップレースシリーズの最終戦となるRound 5が開催された。みちのく東北のモータースポーツの2023シーズンを締めくくる一戦は連日最高気温が10℃に達せず、時には小雪も舞った。厳しい空模様のなか、JAF地方選手権がかかるJAFフォーミュラリージョナル選手権(FRJ)とFIT 1.5チャレンジカップことJAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権(FIT 1.5)、そしてJAF菅生サーキットトライアル選手権(菅生サーキットトライアル)の王座争いが佳境を迎えた。

2023年JAFフォーミュラリージョナル選手権 第14戦・第15戦・第16戦
2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権FIT 1.5チャレンジカップ第5戦
2023年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第4戦
(2023 SUGOチャンピオンカップレースシリーズRd.5 内)

開催日:2023年11月24~26日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:(株)菅生、SSC

2023年JAFフォーミュラリージョナル選手権 第14戦・第15戦・第16戦

 FRJの最終三連戦には全9台が参戦。ランキングトップを独走してきた小川颯太選手と逆転王者をめざして最終決戦に挑むリアム・シーツ選手のほか、第9戦を制した奥住慈英選手、モビリティリゾートもてぎでの第9~11戦以来の参戦となるミハエル・サウター選手、同じくもてぎ以来の参戦で今季はスーパーフォーミュラ・ライツに足場を置いてきたエンツォ・トゥルーリ選手ら実力と速さを備えるドライバーがスポット参戦。小川選手vsシーツ選手の王座争いにどう影響するかに注目が集まった。

予選Q1・Q2

 11月最終週とは思えない陽気に恵まれた木・金曜日の占有走行でセットアップが順調に進み、車両に「今季一番の手応え」を感じていた小川選手が、翌日から始まる最終大会での連続ポールポジション(PP)、優勝、そしてチャンピオン確定への期待に胸を膨らませていたとしても無理はない。ところが土曜の朝に北から降りてきた寒気団が、期待に胸膨らませる小川選手に冷や水を浴びせた。

「(車両を)金曜日の状態のまま走らせたのが仇となったのか、15分間の予選は2度ともタイヤが発熱せず、自分の運転がまったくできなかった」と嘆いた小川選手が第14戦5番手、第15戦6番手、第16戦4番グリッドに沈んだことは、チャンピオンを争うシーツ選手にとってチャンスになるかと思われた。しかし、シーツ選手もまた急激な気温変化と強風の難コンディションに手こずり、さらには両セッションで白線カットのミスを犯したことで第14、16戦のスターティンググリッドは小川選手より後方の6番手に撃沈。第15戦は辛うじて小川選手より前の5番グリッドを得たが、小川選手との28ポイント差を、決勝3レースで逆転するのが厳しいことに変わりはなかった。

 Q1のベストタイムで第14戦、セカンドベストタイムで第16戦、Q2で第15戦のスターティンググリッドを決める予選でのフル参戦2選手のもどかしい走りとは対照的に、スポット組のサウター選手、トゥルーリ選手そして奥住選手は思い切りの良い走りで3レースの予選トップ3を独占。Q1・Q2とも1分18秒台前半のタイムを叩き出したサウター選手が3戦すべてのPPを決めたかと思いきや、Q1は白線カットでベストが削除となり、第14戦のPPはトゥルーリ選手の手に渡った。

 マスタークラスの2台、近藤善嗣とスカイ・チェンの両選手は、サウター選手が記録したトップタイムの110%に届かず予選不通過に。チェン選手は決勝出走を断念し、近藤選手も第14戦の決勝グリッドへのインスタレーションラップでクラッシュを喫し、そこで今季を終えてしまった。

エンツォ・トゥルーリ選手(TOM'S SPIRIT)はモビリティリゾートもてぎでの第9~11戦でJAFフォーミュラリージョナル選手権にデビュー、第9・10戦で2位、第11戦では3位を獲得した。それ以来の参戦となった今大会は第14戦でポールポジションを獲得し、シリーズ初優勝に向けて絶好のグリッドを得たかに見えた。
ミハエル・サウター選手(Bionic Jack Racing)もトゥルーリ選手と同じく、もてぎの三連戦以来の参戦となり、第15・16戦で初PPを獲得。幻となった第14戦も含めた全ての予選でトップタイムをマークし、速さの片鱗を見せた。

第14戦決勝

 小雪がチラつく土曜の午後、22周で予定されていた第14戦の決勝は、気温低下によるタイヤの稼働不足への懸念から、3周のフォーメーションラップを経て20周で始まった。2番手から弾丸ダッシュを決めたサウター選手を先頭に、トゥルーリ、奥住、大木一輝の各選手、そして小川選手をかわしたシーツ選手の順に隊列は1コーナーへ進入。続く2コーナーでバランスを崩した大木選手がトゥルーリ選手に接触し、アウト側に押し出されたトゥルーリ選手は車両にダメージを負ってリタイアとなり、トゥルーリ選手を押し出した大木選手とジャンプスタートと判定されたサウター選手には10秒加算のペナルティが下された。

 車両撤去のあいだ導入されたセーフティーカーが解除され、レースは5周目に再開。先頭のサウター選手はペナルティの10秒を解消すべくペースを上げて奥住選手との間隔を広げていったが、その差が4秒を超えたところでフィニッシュとなった。

「サウター選手はオールレッドの時点で動いたので、何らかのペナルティを受けることは明らかでした。ならば無理して前に出る必要もないと、タイヤを温存しながら自分のペースを守って走りました」と落ち着いたレース運びを見せた奥住選手が転がり込んだ勝利をしっかりキャッチ。シーツ選手が2位に入って逆転王者に僅かな希望をつなぎ、チャンピオン確定のためには無理をせず、安全第一のレースで確実にフィニッシュする方向に舵を切った小川選手が3位を堅守した。

3番グリッドからスタートした奥住慈英選手(SUTEKINA RACING TEAM)はスタートでのサウター選手のミスを見抜くなど、終始クレバーな走りを見せて第9戦以来となるシリーズ2勝目を獲得した。
ランキング2位からの逆転を狙うリアム・シーツ選手(SUTEKINA RACING TEAM)は5番グリッドからライバルでランキングトップの小川颯太選手(Bionic Jack Racing)をかわして2位フィニッシュ(左)。時折雪も舞った極寒の難コンディションによって、タイヤに熱も入らず苦しんだ小川選手。シーツ選手にかわされてポイント差を詰められるも、3位獲得でチャンピオン確定に前進した(右)。
第13戦の表彰台に登壇した、左から2位のシーツ選手、優勝した奥住選手、3位の小川選手。

第15戦決勝

 第15戦の決勝は日曜の午前10時半、昨日からやや上昇したとはいえ相変わらず気温10℃に届かないコンディション下でフォーメーションラップが始まった。ところがその途中、3番グリッドにつくはずのトゥルーリ選手がまさかの単独クラッシュ。その回収でレースは10分遅れとなり、今回も3周のフォーメーションラップの後に20周で争われることとなった。

 第14戦でのペナルティがトラウマになったのか、PPのサウター選手がスタートで大きく出遅れ4番手に後退。ポジション挽回をはかった2周目のSPコーナーでコースアウトを喫し、フロントウイングにダメージを負ったサウター選手はピットに戻ったところでリタイアとなった。

 2番グリッドから落ち着いたスタートでトップに立った奥住選手は、使い古しのタイヤにもめげず、ミスを最小限に留める走りで背後に迫る大木選手の攻撃をシャットアウト。高い集中力でポジションを守りきり「サウター選手が速いので、今回はボロいタイヤで2位を狙い、次の第16戦を予選で使っただけのタイヤで勝ちにいく考えでした。大木選手とはワンミスで抜かれる距離だったしタイヤもかなりキツかったんですが、なんとか頑張りました」と、二連勝をマークした。

 奥住選手の他に小川選手も古いタイヤを選択していたが、こちらは慎重に慎重を重ねる安定の走りで4位フィニッシュ。一方、優勝に僅かな希望を託し若いタイヤで勝負に出たシーツ選手は、狙ったほどのペースを出せないまま優勝を争う2台においていかれる格好で3位フィニッシュ。逆転王者の可能性をほぼ失ってしまった表彰台に、シーツ選手の笑顔はなかった。

フォーメーションラップ後にスタートが遅れるアクシデントにも動じず、冷静にホールショットを決めた奥住選手が、古タイヤを履く劣勢をしのぎきって二連勝を達成。ランキングでも王座を争う小川選手とシーツ選手に次ぐ3番手に急上昇した。
鈴鹿サーキットでの第4戦以来となる、2023シーズンのシリーズ2勝目を狙い、奥住選手を追いまわした大木一輝選手(PONOS RACING)だったが、ガードは固く2位に終わった(左)。5番グリッドながら若いタイヤを履いて必勝を期したシーツ選手だったが、3位。小川選手が4位に入り、自力でのチャンピオン確定が遠のいてしまった(右)。
第15戦は左から2位の大木選手、二連勝した奥住選手、3位のシーツ選手が表彰台に上がった。

第16戦決勝

 前戦で壊したフロントウイングを修理したばかりのサウター選手がスタートでわずかに出遅れ、2番グリッドから好発進した奥住選手がトップを奪取。だが過去2戦でたまったフラストレーションを一掃するようなサウター選手の図抜けた勢いの前には奥住選手もなす術なく、5周目の2コーナーで2台の順位が入れ替わった。

「もうレベルが違うくらい速かった。ここまでのサウター選手はこちらが頑張ればなんとか抑えられるな、という感じでしたが、今回はもう全然、抑えようがないくらいの速さが見ていてわかりました」と二連勝中の奥住選手もお手上げの速さで一気に20周を駆け抜けた、サウター選手が嬉しいFRJ初優勝を飾った。

「速かった理由? 自分でもわからない。普通に走って、ペースがすごい良かった。本当にわからない(笑)」と満面の笑顔のサウター選手。父はスイス人、母が日本人のサウター選手は片言ながら日本語でのコミュニケーションを大事にしている。「タイヤは温まらなかった。距離を走ってないから。でもウイングが直って、マシンは予選と同じだった。アリガトウゴザイマス」とチームスタッフへの感謝も忘れない。

 トップを明け渡し2番手に後退した奥住選手に、今度はこの週末まだチェッカーを受けていないトゥルーリ選手が急接近。2台はテール・トゥ・ノーズで3コーナーに進み、ここをチャンスと仕掛けたトゥルーリ選手が奥住選手のインに飛び込もうとしたが、奥住選手の守りは堅く2台はわずかに接触。バランスを崩してスピンしたトゥルーリ選手は3戦連続リタイアを喫し、持てる力を発揮することのないままSUGOを後にした。

 その後方ではタイトルを目前にした小川選手が3番手を守っていたが、タイヤの発熱を促す方向にセットアップし直したことで一気にオーバーステアが進み、最後は追い上げてきた大木選手に対抗できないまま4番手に後退。それでもきっちりチェッカーを受けてチャンピオンを確定させた。

「チャンピオンはすごい嬉しいことですが、最終戦はいろいろとしんどかったので、まだ気持ちの切り替えができてない」と表情を曇らせる小川選手。「なかなか歯車が合わず、なんとか耐えていましたが、最後の2・3周はもうブラブラでした」と苦しかったレースを振り返った。

 思えば絶好調だった木・金曜の占有走行から急転直下、まるでレースの神様にこれまで経験のない試練を与えられたような週末に、小川選手とFRJ参戦2季目で高木真一監督率いる、まだ若いバイオニック・ジャック・レーシングは翻弄されることとなった。だが、その場その場の勝負よりもチャンピオン確定という目標に意識を切り替え、達成したことは誇るべき事実だ。

「単純に僕の経験不足と引き出しが少なかった、ということだと思います。予選、決勝といろいろあった中で得たものもあった。でも解決策は見つからなかった。それはこれからのレース活動でみつける課題にしたい。この週末は、いままで勝ってきたどのレースよりも記憶に残るレースになりました」と前を向く小川選手の表情は、ようやく明るさを取り戻していた。

 その小川選手とのタイトル争いに敗れ第15戦の表彰台ではうなだれていたシーツ選手。すべてを終えてヘルメットを抜いた表情はすっきりしていた。

「最後は思い描いたようにならなくて残念だったけれど、この1年、できることを精一杯やって、経験もたくさん積んで、ドライバーとして成長できた。このレースに参加して本当に良かった。来季はまだ白紙だけど、日本で、できれば上のカテゴリーでレースを続けられるように頑張るよ」。

 そう笑顔でパドックを後にしたシーツ選手の言葉は、今季のFRJを戦ったドライバー全員の気持ちを代弁している。速さと実力を備え自分の力で未来を切り開こうとする若者たちの、シーズンを通した熱い戦いが再びみられることを心から願っている。

スタートこそ出遅れてしまったものの、奥住選手を抜いてトップに立った後は他を寄せつけない速さでトップチェッカーを受けたサウター選手。今季最終戦でのシリーズ初優勝を、見事ポール・トゥ・ウィンで決めた。
有終の美を飾るべく、最終戦で若いタイヤを投入した奥住選手はホールショットを奪ったものの、サウター選手の速さには敵わず2位に。それでもランキング3位まで上げて今季を終えた(左)。5番手からスタートした大木選手は、チャンピオンがかかる小川選手を抜く活躍も見せて3位フィニッシュ。二戦連続表彰台獲得で今季を締めた(右)。
今季最終第16戦の表彰台には、左から2位の奥住選手、シリーズ初優勝のサウター選手、3位の大木選手が登壇した。
チャンピオンに王手をかけて最終戦に臨んだ小川選手は苦しみながらも4位を守りきってシリーズ初チャンピオンを確定させた。予期せぬ厳しい天候によって苦しんだ三連戦になってしまったが、チャンピオン確定とともに積んだ貴重な経験も糧に、さらなる活躍に期待したい。

2023年JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権
FIT1.5チャレンジカップ第5戦

予選

 FIT 1.5の第5戦は土曜だけのワンデー開催。午前9時から行われた予選には5台のホンダ・フィットが出走し、ひとり1分38秒台をマークした前戦の勝者・尾藤成選手がPPを獲得した。「昨日の練習ではボロボロのタイヤで1分40秒5。今日は4本新品タイヤで一発を狙ってみたら38秒8台。このままのタイヤで決勝もいきます!」と意気軒昂な尾藤選手だったが、その決勝でまさかの落とし穴が待っていようとは.....。

 一方、尾藤選手とチャンピオンを争うオオタユウヤ選手は1分39秒313で2番グリッドを確保。「タイヤの違いだよね。あちらは前後同じコンパウンド。ウチはリアに固いコンパウンドを着けている。決勝は後半勝負だと思ってます」と不敵な笑みを浮かべていた。

参戦した5台全てがコースレコードを超えた予選のなかで、尾藤成選手(TAC ENDLESS FIT)はただ一人1分38秒台に突入し、第3戦以来となる今季2度目のPPを獲得した。

決勝

 3℃だった予選から気温は少し上がったものの、決勝スタート時の気温はそれでも7℃。寒風吹きすさぶなかフロントロウの2台はともにドンピシャリのスタートを決めたが、そこからの伸びに優る尾藤選手がオオタ選手以下を引き離しにかかり、二連勝そしてチャンピオン確定へ突っ走るかに思われた。

 ところが3周を過ぎる頃から尾藤選手の勢いが鈍り、逆に2番手のオオタ選手はファステストラップを連発しながら尾藤選手に急接近。後ろから中村義彦、横田剛そして最後尾の太田侑弥の3選手も2台に追いつき、全車テール・トゥ・ノーズ状態で迎えた6周目、最終コーナーからの登りでガクンとペースの落ちた尾藤選手の脇をすり抜けたオオタ選手がまずトップを奪った。続く7周目1コーナーの進入で中村選手が尾藤選手をパス。続けざまに順位を落とした尾藤選手は懸命の走りでポジションを取り戻そうとしたが、明らかに変調をきたしている車両にその力はなく、最終周の最終コーナーを立ち上がったところで横田選手にも先を越された尾藤選手は失意の4位フィニッシュとなった。

「突然トルクダウンしパワーが出なくなった。こんなこと初めてです」と肩を落とす尾藤選手。「スタートが決まって『よっしゃっ!』って叫んでたんです(笑)。その後でオオタ選手にじわじわ近づかれましたが、トラブルがなければ抑え切れたかと。でもアクセルを踏んでも全オフ状態ではどうしようもない。悲しくなりました」と無念の表情を浮かべていた。

 2番手スタートのオオタ選手は「序盤のペースが伸びないことは折り込み済み」とレース中盤以降の尾藤選手との勝負を覚悟していたが、ライバルに降りかかったトラブル、そして何よりタイヤの使い方を知り尽くした自身の力強い走りで今季4勝目と初のJAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権チャンピオンを引き寄せた。

 ポイント制が異なるFIT1.5チャレンジカップの王座争いが決着する2週間後の最終第6戦にむけて「だいぶ楽になりました」と余裕綽々の新王者オオタ選手だが、尾藤選手も負けていない。「クルマ自体はいい状態。トラブルの原因を突き止めて対策し、もてぎ戦は優勝して終わりたい!」と闘志をかき立てていた。

オオタユウヤ選手(ワコーズ太建ニルズ制動屋FIT)は前後のタイヤコンパウンドを変えて履き、予選よりも12周まわる決勝を重視したセッティングが見事に的中し、今季4勝目。全6戦中有効戦数4戦のJAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権を、満点でチャンピオン確定させた。
2位を獲得したのはランキング3番手の中村義彦選手(K+UP・SEEKER・MVFIT)。2020年のチャンピオンで、今季もリタイアに終わった第4戦以外の全てで表彰台に上がっている実力者だ(左)。今季シリーズ初参戦となった横田剛選手(KYC fit)は予選4番手から順位をひとつ上げて3位入賞。幸先よく表彰台に上がった(右)。
FIT 1.5第5戦のトップ3、左から2位の中村選手、優勝したオオタ選手、3位の横田選手が表彰台に登壇した。

2023年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第4戦

 3クラス計12台が参戦した菅生サーキットトライアルの第4戦は、FIT 1.5とは逆に日曜だけのワンデー開催。正午頃にヒート1、このレースウィークを締めくくる最後にヒート2が行われ、ほぼ全員が気温、路面温度とも低かったヒート1でベストタイムを記録。今季のシリーズを締めくくるこの一戦で、チャンピオンが確定していたCT1クラス以外の2クラスのチャンピオンが確定した。

CT1クラス

 2台の日産GT-Rがトップタイムを競ったこのクラスは、前戦の優勝で二連覇を決めた芦名英樹選手がヒート1でSUGOでの自己ベストを更新。「昨季はただ闇雲に走ってましたが、今季はデータの収集と分析、それからフィジカルトレーニングに日頃から時間をかけてきました」と連覇の奥義を語った。

 日々の努力を欠かさない芦名選手をしてもいまだ超えられないのが、同じヒート1でSUGOのコースレコードとなる1分29秒771を叩き出したサーキット走行の師匠、相澤真選手だ。「エンジンパワーは芦名選手とほぼ同じ。ウチはメカニックが足回りを詰めてくれて、タイヤをきれいに使えたことでタイムを稼げた。芦名さんも少し詰めたら同じどころかすごいパフォーマンスになりますよ」と語った。

 弟子の成長に目を細める相澤選手は2024シーズンもタイム狙いのスポット参戦を予定しており、「師匠にどうアプローチしていくか、そこが来季の課題」という芦名選手の師弟対決の行方が今から楽しみだ。

CT1クラスはただひとり1分30秒の壁を破る圧巻の速さを見せて、1分29秒771でコースレコードを更新した相澤真選手(ロード アンド スカイR-35 GT-R)が今季2勝目を獲得。岩手県盛岡市で歴代GT-Rをはじめ日産車を得意としているショップ「CAR FACTORY Road and Sky」を営むチューナーでもある。
今季の自己ベストタイムを更新してCT1の2位を獲得した、芦名英樹選手(ロード アンド スカイ再び丸投げ)は前戦で挙げた今季2勝目で二連覇を確定させている。2024シーズンは愛車を仕立ててもらっている師匠の相澤選手に近づくべく、密かな闘志を燃やしている(上)。3位を獲得した千葉明宏選手(松谷笑点赤いGRヤリス)は、第1戦での3位以来となるトップ3タイムをマークした(下)。
CT1で表彰を受けた、左から2位の芦名選手と優勝した相澤選手。

CT4クラス

 スズキ・スイフトスポーツを駆ってランキングトップに立つ松橋豊悦選手が、4度目のSUGO走行とは思えないリズムに乗った走りで、1分37秒527のコースレコードで優勝。2勝を挙げて最終第4戦を残して確定させたJAF岡山国際サーキットトライアル選手権の同クラスに続き、両シリーズとも初チャンピオンで二冠確定となった。

「去年12月の岡山戦が今回と同じような極寒で、空気圧などその時のデータとセットアップが活きました」と松橋選手はやりきった感に顔を輝かせたが、「レベルがちょっと図抜けている」というJAF筑波サーキットトライアル選手権のこのクラスでランキング2位に終わったことには無念の表情。「自分ではまだ伸びしろがあると思ってます。各シリーズの日程が重ならなければ、来季もできる限り挑戦したい」と、新たな課題に意欲を燃やしていた。

CT4の松橋豊悦選手は「コースレコード更新を狙ってきました」という宣言どおり、第2戦でマークした自身のレコードタイムを2.5秒以上も更新して優勝。SUGO初走行だった第1戦からの経験を集約した走りでのチャンピオン確定に、充実した表情を見せていた。
CT4の2位は、高岩良行選手(DXLクレバー22Bスイフト)が獲得。かつては三菱・ランサーエボリューションVIIを駆り、2021シーズンのB6クラスでチャンピオンに輝いた実力を持っている(左)。3位獲得の林憲孝選手(栃の木BRZ)は今季シリーズ初参戦となった前戦に続き参戦し、今季初のトップ3タイムでシリーズを締めくくった(右)。
CT4は左から、2位の高岩選手と優勝でチャンピオンを確定させた松橋選手が表彰された。

CT6クラス

 3年連続4度目のチャンピオンをほぼ手中にしていたスズキ・カプチーノをドライブする吉崎久善選手が、低温に足下をすくわれスピンするライバルたちを尻目に、タイヤを効果的に発熱させる熟練の走りで文句なしの優勝。見事チャンピオンを確定させた。

「今年はクルマが不調だった筑波の初戦以外は順調でした」という吉崎選手だが、その筑波で有効ポイント制の関係でJAF地方選手権タイトルを逃したことが今季の心残り。「筑波では(マツダ・)ロードスター勢がどんどん成長しているんです。私は絞り出してのタイムで、なかなか伸びしろがない」と弱気に見える吉崎選手だが、本心では来季もSUGOの王座を手放すどころか、逃した筑波のタイトルも獲り返す意欲満々と見受けた。

 CT4を制した松橋選手と同様、吉崎選手も日程次第では来季の参戦シリーズを絞らざるをえない可能性もあるという。「SUGO戦はサーキットでの走りだけでなく、自宅から下道を使った移動も楽しみのひとつなので」とSUGOへの参戦継続と、筑波をはじめ各シリーズの日程再調整に期待を寄せている。

サーキットトライアルのJAF地方選手権の初代チャンピオンのひとりでもある、CT6の吉崎久善選手(DXLカプチーノ参号機)は2位を2秒近く離す圧巻のタイムを叩き出して優勝。全4戦中3勝、第3戦では2位と速さを見せつけて三連覇を確定させた。
CT6の2位に入ったのは、JAF筑波サーキットトライアル選手権でも吉崎選手としのぎを削る熊本壮一郎選手(GRネッツシュポルト千葉ヤリス)。第1戦以来の2位獲得で、ランキング2位も確定させた(左)。この一戦では紅一点だった女性ドライバー、樋口美和選手(青い弾丸?マーチ)が今季2度目の3位とともに、ランキングでも3位が確定した(右)。
CT6は今季3勝目を挙げた吉崎選手が表彰された。
第4戦の表彰の後に、2023年JMRC東北サーキットトライアルシリーズの表彰も行われた。CT1は左から、ランキング2位の金川大貴選手(YHDXLDKインプレッサ)、チャンピオンの芦名選手とランキング3位の相澤選手のトップ3が表彰された。左端はプレゼンターを務めた株式会社菅生の佐々木一成代表取締役社長、右端はSUGO RACE QUEENの左からすずさんと春霞さん。
CT4は第4戦と同じく、左からランキング2位の高岩選手とチャンピオンの松橋選手が表彰された。
CT3はトップ3が表彰された。左からランキング3位の熊本選手、チャンピオンの吉崎選手、ランキング3位の樋口選手。

フォト/森山良雄 レポート/段純恵、JAFスポーツ編集部

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