フォーミュラリージョナルのもてぎでの三連戦は、全てウィナーが異なる熱戦に!

レポート レース

2023年7月31日

2023年JAFフォーミュラリージョナル選手権の第9~11戦と、2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権の第5戦、2つのJAF地方選手権が7月22〜23日にモビリティリゾートもてぎでの「2023もてぎチャンピオンカップレース第3戦」にて開催された。折しも関東地方は梅雨が明けたばかりで、両日コンディションに恵まれ…… というより、連日のように続く猛暑の中での戦いとなった。

2023年JAFフォーミュラリージョナル選手権 第9戦・第10戦・第11戦
2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第5戦
(2023もてぎチャンピオンカップレース第3戦 内)

開催日:2023年7月22~23日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド(株)、M.O.S.C.、SCCN

2023年JAFフォーミュラリージョナル選手権 第9戦・第10戦・第11戦

 第8戦までに3勝を挙げてランキングのトップをひた走る小川颯太選手の前に、この三連戦では強力なライバルが立ちはだかった。前週の2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の第10戦で初優勝を飾ったばかりの、エンツォ・トゥルーリ選手がスポット参戦を決めたのだ。金曜日に行われた2回の専有走行では、そのトゥルーリ選手がいずれもトップ。小川選手との好勝負が期待された。

予選Q1、Q2

 土曜日に開催された予選は15分間の計測で2回行われ、Q1のベストタイムが第9戦の、セカンドベストタイムが第11戦の、そしてQ2のベストタイムが第10戦のグリッドを決定した。

 Q1で先頭を切って走行を開始したのは小川選手。計測1周目からトップに立つも、実際のアタックは3周目から。いきなり専有走行のタイムを上回り、その後も短縮し続けていく。終盤に入って、一旦トゥルーリ選手の逆転を許すも、ラストアタックで再逆転。ベストタイムもセカンドベストタイムもトップで、小川選手はまず第9戦と第11戦のポールポジション(PP)を決めた。

 Q2でも小川選手は先頭でコースイン。今度は計測2周目からアタックを開始して一度もトップを明け渡さず、PPを獲得した。「練習でフロントウイングが外れるトラブルがあって、走行時間が少なかった分、予選ではあえて決勝に向けたセットにして。まぁ『行けるな』っていうのもあったので、ミスなく走れて、とりあえず3レースともポール獲れたので良かったです」と小川選手は予選での走りを振り返った。

ここまでも8戦中、2番手タイムだった第4戦を除く7戦でポールポジションを獲得している小川颯太選手(Bionic Jack Racing)。ツインリンクもてぎでも3戦連続でPPを獲得する速さを見せた。

第9戦

 3戦とも16周で競われた決勝、まず第9戦は予選同様、土曜日のうちに行われた。スターティンググリッドで小川選手の横に並んだのはトゥルーリ選手で、3番手につけたのは小川選手のチームメイト、スポット参戦の奥住慈英選手だ。スタートは苦手と自称する小川選手だが、この時は完璧。逆にトゥルーリ選手が出遅れ、奥住選手が2番手に躍り出た。

 そのまま逃げ続けた小川選手、リードが2秒にまで広がってからは、ペースをコントロールする余裕さえみせていたかに見えた。しかし、実際にはそうではなく、電気系トラブルでシフトダウンがしにくくなっていて、ペースを上げようにも上げられなくなっていたのだ。

 トラブルに苦しむ小川選手は8周目の5コーナーでオーバーラン。この時はリードを失ったとはいえそのまま走り続け、しばらくするとまた奥住選手を離していた。しかし、12周目のV字コーナーでトラブルは再発。今度はグラベルに囚われの身となり、小川選手は今季初のリタイアを喫してしまう。

 これで労せずしてトップに立ったのが奥住選手だ。後ろにいるのは、追い上げてきたトゥルーリ選手。奥住選手が2番手を走行中に背後まで迫られたものの、固いガードに痺れを切らせたのか、トゥルーリ選手はビクトリーコーナーで足を落として遅れをとっていた。そこでついた差を奥住選手はしっかり守り抜き、トップでフィニッシュした。

 2022シーズンまでJAF FIA-F4選手権を3シーズン戦いながら、最高位は3位が一回。失ったフォーミュラのシートを再び取り戻した奥住選手は、貴重なチャンスで勝利という最高の結果を残した。

「フォーミュラでは初優勝になります。今まで頑張ってきて、ついていなくて結果が残らないことも多かったんですが、今回のレースは運も味方してくれて、なんとか優勝できたので、すごく嬉しいです! でも、実力としたら1割ぐらいで、ペースも悪かったし、タイヤの使い方もまだあんまりで。足りていない課題も明確に見えてきたので、改善してきたいです」と語る奥住選手の言葉は、すべて本音であったはずだ。

岡山国際サーキットでの第6戦から参戦を果たし、第7戦では3位、第8戦では4位とデビュー直後から上位に顔を出していた奥住慈英選手(Bionic Jack Racing)。3番グリッドからスタートでエンツォ・トゥルーリ選手(TOM’S FORMULA)をかわして2番手に上がり、漁夫の利を得るかたちとはいえトップに立つとトゥルーリ選手の追撃を許さず、参戦4戦目にして表彰台の頂点に立った。
トゥルーリ選手は、父がFIAフォーミュラ1世界選手権で1勝を挙げ、トヨタでの活躍も知られている元F1ドライバーのヤルノ・トゥルーリ、という二世ドライバー。慣れない車両だったこともあったか、スタートで出遅れるものの追い上げて2位でシリーズデビュー戦を終え、速さを見せた(左)。後方から追い上げてきたトゥルーリ選手とバトルを展開したリアム・シーツ選手(Sutekina Racing)。トゥルーリ選手にはかわされてしまったものの3位を獲得し、リタイアに終わったランキングトップの小川選手とのポイント差を詰めた(右)。
フォーミュラリージョナル第9戦の表彰台には左から2位のトゥルーリ選手、優勝した奥住選手、3位のシーツ選手が登壇した。

第10戦

 第10戦もPPは小川選手で、トップ3はトゥルーリ選手、奥住選手の順。それぞれスタートは無難に決めて、ポジションキープでレースを開始する。3人ともしばらくは様子をうかがいながら周回を重ねるが、予選と決勝を通じて4セット使えるタイヤのうち、最もコンディションの良いタイヤを使っていたトゥルーリ選手が、中盤からファステストラップの連発で小川選手に揺さぶりをかける。

 しかし、度重なるプレッシャーにも小川選手が屈しなかったため、トゥルーリ選手は最後の勝負どころに全てを賭けた。ファイナルラップの90度コーナーでインを刺し、接触するも前に出たトゥルーリ選手。しかし小川選手も諦めず最後のビクトリーコーナーで並んで、フィニッシュラインまでの短いストレートで、本当に最後の最後の勝負を仕掛ける。

 その差、0.01秒! 僅かながらも前に出た小川選手が先にチェッカーフラッグを受け、今季4勝目をマーク。「ただ逃げるのも面白くないので、見ている側にドキドキのレースを見せてあげようと思って(苦笑)。90度(コーナー)では当てられたのか、当たっちゃったのか分かりませんが押し出されてしまいましたが、その後にしっかり抜き返したんで僕は楽しかったです」と、小川選手は緊迫したバトルを振り返った。

フィニッシュライン間際まで、手に汗握る優勝争いをトゥルーリ選手と繰り広げて今季4勝目を挙げ、ランキングトップを走る小川選手。ファイナルラップでかわされる絶体絶命のピンチから大逆転の展開にも「楽しかったです」と、強心臓ぶりを見せた。
2戦連続の2位に終わり、あと一歩シリーズ初優勝に届かなかったトゥルーリ選手。しかし、ファイナルラップでの一発逆転に賭けてフィニッシュライン目前までトップに立ち、魅せる走りを見せた(左)。3番グリッドから二連勝を狙った奥住選手だったが、ポジションキープの3位。しかし、2戦連続でポディウムフィニッシュを果たした(右)。
フォーミュラリージョナル第10戦の表彰台に上がったのは、左から2戦連続2位のトゥルーリ選手、優勝した小川選手、3位に入った第9戦を制した奥住選手。

第11戦

 フロントロウに並んだのは前2レース同様、小川選手とトゥルーリ選手ながら、3番グリッドにはリアム・シーツ選手がつけ、奥住選手は4番グリッドとなった第11戦。グリーンシグナルの点灯に最も早く反応したのは小川選手だったが、その後の加速に優ったトゥルーリ選手がホールショットを奪った。遅れずに続いた小川選手ながら、仕掛けた5コーナーでまたも接触して5番手に後退。

 一方、トップのトゥルーリ選手だが、引き離すまでの余力がタイヤに残っておらず、4台を従えてトレイン状態で周回を重ねていく。しかし、それが許されたのは9周目まで。10周目のビクトリーコーナーでシーツ選手が前に出て、さらに次の周の3コーナーでは小川選手もトゥルーリ選手を抜いて2番手奪取。その間にタイヤを残していたシーツ選手が逃げ、今季2勝目をマークした。

「激しいトップ争いを長い間続けたけど、ようやくトップに立ってからは僕のクルマがいちばん速かったから、後ろを引き離して勝つことができました。チームの週末を通してのハードワークとサポートに感謝します」とシーツ選手。ランキングでも前戦でひらいた、トップの小川選手との差を詰めることとなった。

3番グリッドから手堅くスタート決め、オープニングラップで2番手に浮上したシーツ選手。9周目にトゥルーリ選手を抜きトップに立つと、抑え込まれる間に温存したタイヤを活かし、3秒以上まで差を広げて今季2勝目。残る5戦での逆転チャンピオンに望みをつないだ。
第11戦ではここまでの2レースのようにホールショットを獲れなかった小川選手だが、トップ奪還に失敗して落とした順位を挽回して2位を獲得。王座争いでは、この一戦を制したシーツ選手からの追い上げを最小限にとどめた(左)。第9戦とは逆に、シーツ選手に追われるトゥルーリ選手。タイヤが厳しかったこの一戦はシーツ選手、さらに小川選手にもかわされたが3位を獲得。3戦連続の表彰台登壇を果たして才能の一端を見せた(右)。
フォーミュラリージョナル第11戦の表彰台に登壇した3選手。左から2位の小川選手、優勝したシーツ選手、3位のトゥルーリ選手。

マスタークラス

 40歳以上のドライバーが競うマスタークラスは、2名がエントリー。文字どおり一騎討ちとなり、第9戦と第10戦は近藤善嗣選手がスタートに出遅れるも、そのつどYUKI選手から逆転を果たす。だが、第11戦は一度もトップを明け渡さずに、三連勝を飾った。

「スタートは下手なんです。(併せて参戦している)FIA-F4でも下手で、いつも2台ぐらい抜かれちゃうんです(苦笑)。(車両を)レンタルしているので、次の富士は出られないかもしれませんが、その後のSUGOも含め、出られる限りまた頑張ります」と近藤選手は語ってくれた。

今季は少数精鋭による争いが続いているマスタークラス。第6戦から参戦した近藤善嗣選手(Rn-sports)がこの三連戦で三連勝を達成、ランキング2番手のYUKI選手(NILZZ Racing)との差を拡大する速さを見せた。

2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第5戦

 ここまでの4戦はいずれもダブルヘッダー開催で、もてぎでの第1戦・第2戦は池田拓馬選手が、そしてスポーツランドSUGOでの第3戦・第4戦は豊島里空斗選手が二連勝。しかし豊島選手はもてぎに出場しておらず、池田選手もSUGOでは第3戦をリタイアしており、ポイントランキングの上位は拮抗状態にあった。

予選

 そんな中、PPを獲得したのは椎橋祐介選手。0.101秒差で、シリーズ初のフロントロウを獲得した中澤凌選手が続いた。

「ベストが出てから、『さらに』っていうのがなくて、とりあえず(タイムを)キープしようと3周ぐらいしたんですが、その後引っかかっちゃって。行ければ行こうと準備していたんですが、やっぱりダメでした。決勝は序盤のペースはまわりよりいいはずなので、みんなキツくなる終盤の3周で、そこでどう踏ん張れるかが課題だと思います」と椎橋選手は決勝を睨んだ。

予選の序盤、4周をまわったところでベストタイムを叩き出した椎橋祐介選手(FG&SW NMSP KKS II)は、更なるタイム更新はならず。しかし、椎橋選手のタイムを超えるライバルも現れず、第2戦以来となるPPを獲得した。

決勝

 10周の決勝は椎橋選手が好スタートを切るも、抜くまでには至らなかったが中澤選手も加速が良く、両者はピタリとついて離れず。1周目を終えた段階で、早くも一騎討ちの様相を呈するようになる。

 その後ろでは池田選手と池内比悠選手、内田涼風選手、磐上隼斗選手、そして豊島選手が一列縦隊。3周目の3コーナーで内田選手が池内選手をかわした勢いで池田選手にも迫り、そこからのほぼ1周をサイド・バイ・サイド状態に。ようやく内田選手が前に出たのは6周目の90度コーナーながら、そのバトルの激しさゆえに前の2台からは大きく離されてしまう。

 一方、トップ争いも熾烈を極め、長らく続いたテール・トゥ・ノーズ状態から9周目の1コーナーで中澤選手が前に出るも、椎橋選手は5コーナーで抜き返せば、90度コーナーでは再び中澤選手が先頭に。

 勝負はファイナルラップまで続き、1コーナーで椎橋選手が抜いていくが、4コーナーで中澤選手がまた前に出て勝負がようやく決着、0.228秒差で中澤選手が椎橋選手を振り切ってシリーズ初優勝。そして3番手争いも、9周目の3コーナーで池田選手が前に出たが、ファイナルラップのV字コーナーで内田選手が再逆転、表彰台の一角に食い込んだ。

「後ろを引き離してから抜きたかったので、前半は無理していませんでしたが、後半は思うようにいきました。練習で(FIA-F4に参戦中の)荒川(麟)さんに、このクルマに乗ってもらって、走り方教えてもらったり、僕に合った良いクルマを作ってくれたチームのおかげです」と感謝する中澤選手。第4戦では3位を獲得、調子を上げていたドライバーが一気に躍進を遂げた。

 この一戦は4位だった池田選手が依然ランキングトップながら、内田選手が2ポイント差にまで迫り、さらに中澤選手も3位に急浮上し、その差は10ポイント。チャンピオン争いもまた、最後まで熾烈を極めそうだ。

このシリーズでは予選最高位の2番グリッドからのスタートながら、「前半は無理していませんでした」とクレバーな走りで2番手につけていた中澤凌選手(ZAP FOCS 10VED)。ラスト2周は一転、椎橋選手と抜きつ抜かれつのホットバトルを繰り広げて見事に逆転する力を見せて、シリーズ初優勝を果たし、王座争いにも名乗りをあげた。
第1戦では3位を獲得するも、PPスタートだった第2戦は9位と調子を落とし、スポーツランドSUGOでの第3戦は6位で第4戦は5位と復調の兆しを見せていた椎橋選手。土壇場で中澤選手に逆転を喫したが、今季最高位の2位を獲得(左)。優勝争いに負けず劣らずの熱戦を繰り広げた3位争いは、ランキング2番手の内田涼風選手(群馬トヨペットRiNoA ED)が制してポイントを伸ばした(右)。
もてぎ・菅生S-FJ第5戦の表彰台には、左から2位の椎橋選手、優勝した中澤選手、3位の内田選手が上がった。
一騎討ちの様相となった、36歳以上のドライバーによって競われるジェントルマンクラスでは、クラス2番手からスタートした柴田泰知選手が逆転を果たして、クラス優勝を遂げた。

フォト/髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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