二連戦となったもてぎ・菅生スーパーFJはデビュー戦の若武者が衝撃の二連勝!!

レポート レース サーキットトライアル

2023年6月1日

ゴールデンウィークは終わったばかりではあるものの、レースシーンはのんびり一呼吸とはいかず、全国各地でレースが行われる中、東北では「SUGOチャンピオンカップレースシリーズRd.1」が、5月13〜14日にスポーツランドSUGOで開催された。さまざまレースで激しく覇が競われたが、ここではJAF地方選手権のタイトルがかかった2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権の第3戦と第4戦、2023年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第1戦の様子をピックアップしてお届けしたい。

2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第3戦・第4戦
2023年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第1戦
(2023 SUGOチャンピオンカップレースシリーズRd.1内)

開催日:2023年5月13~14日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:(株)菅生、SSC

2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第3戦

 もてぎ・菅生S-FJの第3戦は、この一戦が四輪デビューとなる豊島里空斗選手がポールポジションを獲得した。計測3周目からのアタックでトップに立って、そのままタイムを更新。終盤の一伸びこそ欠いたものの、トップの座は最後まで脅かされなかった。

 2021シーズンのJAF全日本カート選手権FP-3部門でランキング2位の経験を持つ、豊島選手の誕生日は、2007年7月27日。ということは……。

「まだ15歳です。今年から限定Aライセンスが、16歳になる年になったら取れるとなったので」という豊島選手。補足すると、実際そのとおりであり、2021シーズンの実績が評価されたが、申請は4月からとされているため、3月に行われた第1戦・第2戦には出場できなかったという次第。

 予選に関しては、「途中までグリップあったんですが、後半は(タイヤの)内圧が上がり過ぎたのか、滑り始めて伸びなかったんですけど、あと前にもクルマがいて思うように自分のペースで走れませんでした。決勝は前に誰もいないので、自分のペースで走れるよう頑張ります」と語るあたり、まだまだ伸びしろはありそうだ。

 2番手は椎橋祐介選手で、3番手が内田涼風選手、そして4番手は池内比悠選手と、ここまでは開幕2戦と変わらぬ顔ぶれ。その一方で、開幕二連勝中の池田拓馬選手は「エンジンが全然吹けなくて。原因が分からなくて」と9番手に留まっていた。

スポーツランドSUGOでの二連戦から、遅れてスーパーFJデビューを飾った豊島里空斗選手(C.S.I Racing ED)。予選からルーキーらしからぬ速さを見せて、2番手に0.321秒差をつけてポールポジションを獲得した。

 予選と同じ13日に行われた決勝では、池田選手がフォーメーションラップ中にドライブシャフトの破損が原因でストップ。そのため、エキストラフォーメーションラップが加えられ、1周減の11周で競われることに。

 改めて切られたスタートでは、内田選手が絶妙のタイミングで飛び出して豊島選手を従える。対して、椎橋選手は2コーナーでコースアウト。復帰はできたが、大きく順位を落とす。この間に5番手から村田将輝選手も、豊島選手をかわして2番手に上がっていた。さらに、その直後にセーフティカーが出動。池田選手の車両回収が間に合わなかったためだ。

 SCの先導は1周で済み、リスタートでは順位変動はなし。しかし、内田選手、村田選手、豊島選手、池内選手は縦一列。さっそく動いたのが豊島選手で、3周目の1コーナーで村田選手をパス、この間にトップの内田選手もやや差を広げたのだが……。

 ファステストラップの連発で、一時は差を約0.8秒にまで広げていた内田選手ながら、5周目からは豊島選手がファステストをマークするようになり、徐々に間隔が詰まっていく。勝負が決したのは8周目。スリップストリームから抜け出した豊島選手が、1コーナーで内田選手のインを刺して待望のトップを奪った。

 それでも内田選手も遅れることなく続き、ファイナルラップの馬の背で仕掛けようとするも、自ら「狙ってはいましたが、もうポイントも落とせないので、ちょっと安パイに」と引いて、豊島選手は逃げ切りに成功。

 その結果、豊島選手は15歳9か月という最年少優勝記録を、デビューウィンとともに達成した。歴史的快挙を果たしても「スタートは失敗しました(苦笑)。最終ラップに近づかれて、馬の背でちょっと危なかったんですが、落ち着いてインを締めることができたので良かったです。自分の夢はスーパーフォーミュラのドライバー、プロドライバーになることなので、一歩近づけたと思うので良かったです、明日も頑張ります」と、レースを反省し、夢に向けて帯を締め直していた。

 豊島選手、内田選手に続く、3位は池内選手が獲得。5周目の1コーナーで村田選手をかわし、そのまま順位を守り抜いていた。また、一騎討ちが繰り広げられていたジェントルマンクラスでは、安藤弘人選手が優勝を飾った。

全日本カートとは異なるスタンディングスタートも影響したのか、スタートで順位を落とすが挽回し、見事デビューウィンを果たした豊島選手。2021シーズンはJAF全日本カート選手権FP-3部門で1勝を挙げてランキング2位、2022シーズンは全日本カートFS-125部門 東地域の第2戦で2位を獲得するなど、実績を積み上げてきたドライバーだ。
3番グリッドから抜群のスタートでトップに躍り出た内田涼風選手(群馬トヨペットRiNoA ED)。トップを奪還した豊島選手と終盤に接戦を繰り広げるも、ファイナルラップではポイント獲得を重視するクレバーな走りも見せて2位フィニッシュ(左)。池内比悠選手(群馬トヨペットTeam RiNoA ED)は4番手スタートから2戦連続で3位を獲得した。
もてぎ・菅生S-FJ第3戦の表彰台に上がった、左から2位の内田選手、優勝した豊島選手、3位の池内選手。
ジェントルマンクラスは予選クラストップの安藤弘人選手(ZAPSPEED10VED)が順位を守り、第1戦以来の優勝を果たした。

2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権 第4戦

 14日に行われた第4戦のスターティンググリッドは、第3戦のベストタイム順に決められ、豊島選手が引き続きPPを獲得。2番手は内田選手で、3番手は池内選手。第3戦で5位だった、熱田行雲選手が4番手からスタートを切る。第3戦を走らずしてリタイアとなった、池田選手はピットスタートだ。

 またしてもスタートを決めたのが内田選手。第3戦と同じく先行を許した豊島選手ながら、少しも遅れずついていく。そして今回は仕掛けも早かった。2周目の1コーナーで切れ味鋭いオーバーテイクを見せたのだ。

 そこから先は、逃げ足の速さもアピールした。7周目にはリードを2秒3にまで広げたのだが……。8周目にトップで戻ってきたのは内田選手だった。

「上りの次のコーナーでギア入らなくて、1速に入っちゃって、それを2回やっちゃって」と豊島選手にミスがあったようだ。これで1秒2のリードを得た内田選手だったが、豊島選手はまたもファステスト連発で差を詰めていく。

 そして迎えたファイナルラップでは、1コーナーでも馬の背でも仕掛けず、観念したのかと思われた豊島選手だったが、実はそうではなかった。最終コーナーでぴたりと合わせ、ストレートで内田選手に並んで、なんと0.112秒差で逆転。見事二連勝を果たす。

「抜かれた後も切り替えはうまくできましたが、最後のセクターが自分は速いのは分かっていたので、1コーナーと馬の背では行かず、ストレートで合わせようと思っていて。うまく抜けて良かったです。この後シリーズを追いかける予定ですが、TGRのスクールも受ける予定なので、筑波のような小さいコースも走って、もっと慣れていきたいと思っています」と豊島選手はファイナルラップでの逆転劇を語ってくれた。

「思ったより豊島選手、後半セクションが速いので、前半で引き離そうと思っていたんですけど、厳しかったです。悔しいですね、チャンスだったので」と無念そうに語る内田選手。3位は中澤凌選手で、2シーズン目にして初の表彰台となった。ピットスタートだった池田選手は7位フィニッシュが精いっぱいだったものの、ランキングのトップは死守。とはいえ、豊島選手と内田選手が4ポイント差で追う接戦にもなっている。なお、孤軍奮闘となったジェントルマンでは、柴田泰知選手がしっかり完走を果たしていた。

 豊島選手の最年少優勝、さらに二連勝でチャンピオン争いが混戦の気配も見せてきたもてぎ・菅生S-FJ。第4戦は2カ月以上のインターバルが空き、7月22~23日にモビリティリゾートもてぎを舞台に開催される。

第3戦に続き、スタートで内田選手の先行を許した豊島選手。一旦はトップを取り返すもシフトミスで陥落するが自分の長所を活かし、ファイナルラップの最終コーナーからストレートにかけて、劇的な逆転を果たし二連勝を達成。これからの成長が楽しみなドライバーが登場した。
第3戦に続き、豊島選手とトップを争った内田選手は2戦連続で2位に甘んじるも、ランキング3番手に上がった(左)。第3戦は7位だった中澤凌選手(ZAP FOCS 10VED)は5番手スタートから順位を上げて3位フィニッシュ、シリーズ初表彰台を獲得した(右)。
もてぎ・菅生S-FJ第4戦の表彰台に上がった、左から2位の内田選手、優勝した豊島選手、3位の中澤選手。
第3戦を制した安藤選手が不在で孤軍奮闘となったジェントルマンクラスは、柴田泰知選手(ZAP SPEED RD10V ED)が完走を果たした。

2023年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第1戦

 13日の午前11時前後にヒート1を、そして同日の最終スケジュールとしてヒート2を行なった、菅生サーキットトライアル第1戦。温度的にはヒート2の方が下がった一方で、多くのレースを経た後とあって、路面状態としてはむしろ悪化していたようだ。

 また、5月5日に開催された、JAF筑波サーキットトライアル選手権の第3戦を競ったドライバーたちも参戦。中にはサーキットをまたいで連勝を果たし、速さを見せたドライバーもいた。

 CT2クラスを制し、さらに総合トップタイムをマークしたのは、ポルシェ718ケイマンGT4の松代耕二選手だった。ヒート1の計測3周目にベストタイムを記録し、早々にピットイン。さらなる短縮をヒート2で狙い、いったんピットに戻って再度アタックするも、自己ベストには約0.2秒届かなかった。

「筑波の第2戦以来の勝利です。あの時はウェットで、車のおかげで勝ちました。ヒート2は涼しくなっていたから、タイム出るかなと思ったんですけど、路面がたぶん悪いんですね。タイヤカスもすごかったので。ちょっと消化不良ですけど、無事に帰って来られたので良かったです」と松代選手は振り返ってくれた。

CT2クラスながら、日産GT-Rを駆るCT1クラスの芦名英樹選手を0.214秒差で下し、総合トップタイムもマークして勝利を収めた松代耕二選手(718 GT4)。ポルシェ718ケイマンGT4を駆るドライバーだ。
松代選手は5月5日に開催されたJAF筑波サーキットトライアル選手権の第3戦でもCT2に参戦。筑波サーキットでは0.61秒差で2位に甘んじたが、SUGOでは優勝を果たした。

 CT1クラスでは2022シーズン、4戦全勝だったディフェングチャンピオンの日産GT-Rを駆る芦名英樹選手が優勝。

「自分の中では『いや〜、やったな』と思うけど、数字が正直ですね、難しいですね。なんで総合(トップタイムを)獲れなかったのか、データを後で見て反省しますけど、自分の中ではいったと思った時ほど、いっていないんですよね(苦笑)。特にヒート2は今、空気圧測ったら、かなり上がりきっているので、もうちょっと下げて、もうちょっと待ってから行った方が良かったかもしれません。作戦失敗でしたね。次、頑張って総合優勝狙います」と悔しそうな芦名選手。

 クラス内では圧勝も、きっちり反省するあたりが強さの秘訣か。

CT1の芦名選手(ロードアンドスカイ丸投げ→純正)は昨季の第1戦から続いていた連続総合トップタイムが4で途切れるも、クラス5連勝を達成した。
CT1の上位2選手。左からGRヤリスを駆り、北海道でジムカーナにも参戦する、2位の木村司選手(T-BOX☆北極光☆EDヤリス)、優勝した芦名選手。

 昨季のCT2チャンピオンの門馬勇人選手が、R32型日産・スカイラインGTSから今季はGR86に乗り換え、CT4クラスに転向。挨拶代わりのトップにヒート1から立つ。しかし、仕事の都合でヒート2は不出走。

「生まれて初めてSUGOを走りました」という、ZC33S型スズキ・スイフトスポーツの松橋豊悦選手がヒート2で大幅な短縮を果たすも、あと一歩及ばず「鬼のいぬ間」の大逆転は果たせず3位。ヒート1で2番手だったトヨタ86の田中洋一選手はヒート2ではタイムアップならず、2位に終わり、門馬選手が逃げ切った。

ヒート1しか走行できなかったCT4クラスの門馬勇人選手(μ86は伊達じゃない!!)だったが見事、CT4のコースレコードをマークしてクラス転向デビューウィン。総合でもGT-R、ケイマン勢に次ぐ4位のタイムを叩き出し、CT2チャンピオンは伊達じゃない速さを見せつけた。
優勝した門馬選手がヒート2不出走で表彰式に参加できなかった、CT2の上位2選手。左から2位の田中洋一選手(DXL wanwan86)、3位の松橋豊悦選手(スイフトスポーツ@N-TEC)は筑波サーキットトライアルにも参戦するドライバーだ。

 CT6クラスでは、スズキ・カプチーノの吉崎久善選手が4人のウィナーのうち、ただひとりヒート2でタイムアップ。

「筑波に引き続き、2週連続優勝です。なんとか勝てました。ヒート2で縮めた? コンマ1秒?絞り出したって感じですかね。僕はヒート1でクリアラップが全然取れなくて、路面はタイヤカスとかそこそこ出ていたので、ホント、ヒート2で絞り出してきました」と思いがけぬ展開に大喜びの様子だった。

 今季も全4戦で0.001秒を競うタイムアタックが繰り広げられる、菅生サーキットトライアル。第2戦は3カ月近い間隔が空いて8月5~6日、夏場での開催となる。

CT6クラスは吉崎久善選手(DXLカプチーノ参号機)が2ヒートとも制し、王者の貫禄を見せた。筑波サーキットトライアルでも3戦2勝を挙げ、昨季に続くSUGOと筑波の二冠達成に期待が高まる。
CT6の上位2選手は、筑波サーキットトライアルにも参戦するドライバーが占めた。左から筑波でも3戦連続トップ3で吉崎選手を追う、2位の熊本壮一郎選手(GRシュポルト千葉ヤリス)、優勝した吉崎選手。

フォト/服部真哉 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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