天候に翻弄された鈴鹿の全日本カート選手権、2022年OK部門チャンピオンはDragoCORSEの小田優選手に確定!

レポート カート

2022年11月18日

国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権OK部門の2022シリーズが三重県・鈴鹿サーキット南コースで終結。小田優選手(Drago CORSE)が第9戦で4勝目を挙げ、2022年のチャンピオンに確定した。ウェットコンディションに変わった第10戦では、田中風輝選手(MASUDA RACING PROJECT)が独走で初優勝を飾っている。

2022年JAF全日本カート選手権OK部門 第9戦/第10戦
開催日:2022年11月12~13日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC

 ここまで4つのサーキットで8戦を行ってきた全日本カート選手権OK部門は、シリーズ最後の地、鈴鹿サーキット南コースでの大会を迎えた。OK部門ではこれまで3社のタイヤメーカーがひとつの大会に的を絞ったスペシャルタイヤを投入し、熾烈なタイヤ開発競争を繰り広げてきた。だが、そのうちふたつのメーカーがこの年限りでのカートタイヤ事業からの撤退を発表。多くの話題を提供してきたタイヤウォーズは、今回の2戦をもって終わりを告げる。

 そんな歴史の転換点となる大会にエントリーしてきたのは、最大出走台数ちょうどの34台。2017年、2018年の同部門チャンピオンで、現在は四輪のトップカテゴリーで活躍する佐藤蓮選手(Drago CORSE)も、かつてのパートナーであるヨコハマタイヤのユーザーとしてスポット参戦してきた。

 第8戦までを終えてのポイントリーダーは、3勝を挙げて198点を獲得した17歳のルーキー小田優選手(Drago CORSE)。それに続くのが、ともに1勝で191点の佐野雄城選手(BirelART Access Racing)と172点の金子修選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)。他に140点の三村壮太郎選手(Rosa Drago CORSE)と138点の堂園鷲選手(ENERGY JAPAN)がチャンピオン候補に名を連ねている。

 大会は2デイ制で、初日にタイムトライアルと第9戦の予選が、2日目に第9戦の決勝と第10戦の予選・決勝が行われる。周回数は第9戦・第10戦とも予選が12周、決勝が24周だ。

タイヤメーカー3社が鎬を削る全日本カート選手権最高峰のOK部門。チャンピオンシップを争う選手たちとは異なる、各社のプライドをかけた戦いが繰り広げられている。
2017年と2018年のOK部門チャンピオン・佐藤蓮選手が最終戦に降臨。そして佐藤選手が所属するスーパーフォーミュラのTEAM GOH監督の山本雅史氏も会場を訪れた。昨年も最終戦にスポット参戦して勝利を挙げただけに、現役ドライバーには手ごわい存在となった。
最終戦鈴鹿大会を前にチャンピオン候補は5名。左からランキング順に小田優選手、佐野雄城選手、金子修選手、三村壮太郎選手、堂園鷲選手が、鈴鹿サーキット南コースで雌雄を決する。

OK部門第9戦

 タイムトライアルでは、ヨコハマタイヤを履く最年少14歳のルーキー加藤大翔選手(PONOS HIROTEX RACING)が44秒417のトップタイムをマークして、ふたつの予選のポールを手中にした。超ハイグリップのスペシャルタイヤは今季限りで姿を消すため、このタイムは鈴鹿南コースのコースレコードとして永く残るものとなるはずだ。

 44秒516の2番手はブリヂストン・ユーザーのベテラン三村選手。3番手には同じくブリヂストン勢の野澤勇翔選手(bbR.チームエッフェガーラ)、4番手には今季でカート卒業の清水啓伸選手(Drago CORSE)がつけた。注目の佐藤蓮選手は6番手、小田選手は7番手、佐野選手は10番手、金子選手は11番手、堂園選手は13番手だ。

 15時50分開始の第9戦予選は、思わぬハプニングで始まった。グリッドスタートで堂園選手のエンジンがかからず、無念のDNSに。これで堂園選手は、タイトル戦線からも脱落することとなった。

 レースの序盤戦は、スタートで順位を上げた野澤選手が加藤選手を追う展開。やがて2番手が佐々木選手に変わり、折り返し点では佐々木選手が加藤選手に仕掛けた間隙をついて、三村選手が先頭に躍り出た。計時システムの不具合でレースは13周目まで行われたのだが、規則どおり12周目終了時点の順位がこのヒートの結果となった。

 トップは三村選手、2番手は佐々木選手。ベテランふたりが翌日の決勝のフロントローに並ぶこととなった。3番手は野澤選手、4番手は12番グリッドから浮上の山田杯利選手(Drago CORSE)。加藤選手は5番手に。チャンピオン候補たちは、佐野選手が6番手、小田選手が7番手、金子選手が10番手だ。

幼少期からのライバル関係である佐々木大樹選手と三村選手が、活躍目覚ましい若手やルーキーたちを抑え、第9戦のフロントローを獲得する。

 一夜明けて決勝日の朝、サーキット上空はどんより曇っている。いつ雨粒が落ちてきてもおかしくない天候だが、レースはなんとかドライコンディションを保ったまま9時25分の開始時間を迎えた。そして始まった第9戦決勝には、思わぬ展開が待っていた。

 スタートでは野澤選手が2番手に上がって三村選手の真後ろに。そこに佐々木選手も続いて、3台で序盤の先頭集団を形成した。24周のレースが折り返し点を過ぎると、レースを牽引してきた三村選手がペースを維持できなくなり、トップは野澤選手、佐々木選手へと移り変わっていく。さらに18周目、好調の山田選手がトップの座を引き継いだ。

 そんな先頭集団に、他を圧倒するスピードで割り込んできた選手がいた。最後尾スタートの堂園選手だ。堂園選手は予選ヒートの12周分残っているタイヤの力も借りてみるみるポジションアップ。そして20周目、ついに山田選手もパスしてトップに躍り出る。最後は後続を引き離し、堂園選手が右拳を上げてチェッカーをくぐった。

 だが、堂園選手の33台抜きの2勝目は幻に終わった。追い上げの最中にプッシング行為があったとしてペナルティを課されたのだ。実力伯仲の大接戦の中で10秒を加算された堂園選手は、一気に15位へと沈んだ。

 代わってウィナーとなったのは小田選手だった。予選でタイヤ温存に徹したことも功を奏して、後半戦にぐいぐいと順位を上げ、残り3周で山田選手もかわして2番手でゴール。このルーキーらしからぬ冷静なレース運びが、結果的に4勝目をもたらした。

 2位は、やはり後半戦のポジションアップに成功した清水選手。山田選手は最終ラップに5番手まで順位を下げたが、8台抜きで4番手ゴールの渡部智仁選手(Rosa Drago CORSE)がフロントフェアリングのペナルティを受けたため、3位に繰り上がって今季初の表彰台に立つこととなった。

 4位~6位には三村選手、野澤選手、佐々木選手と序盤の先頭集団組が続く。佐野選手は8位、金子選手は11位。この結果、三村選手と金子選手からはタイトル獲得の可能性が消え、チャンピオン候補は小田選手と佐野選手のふたりに絞られた。

「予選で少しドロップしてしまったけれどなんとか持ちこたえて、そこでタイヤを残していたことが決勝の最後に効いたのかなと思います」と勝因を語る小田選手。「(このレースウィークに)雨では走っていないので、ドライの方が良かったですね。最終戦を勝って終わりたいので、次は2位のゴールじゃなくて1位で帰ってきたいと思います」とコメント。
2位は清水啓伸選手、3位は山田杯利選手。
第9戦表彰の各選手。DragoCORSEが1-2-3フィニッシュを飾った。

OK部門第10戦

 10時30分過ぎ、いよいよ鈴鹿南コースに雨が降り始めた。11時45分に始まる第10戦の予選は、本降りの中のウェットレースに。するとレースの様相が一変した。このコンディションにウェットタイヤがマッチしたダンロップ・ユーザーたちが圧倒的な速さを披露することに。

 25番グリッドから発進した洞地遼大選手(PONOS HIROTEX RACING)がトップ、田中選手が21番グリッドから2番手、24番グリッドの小林利徠斗選手(bbR.Super Racing Junkie!)と26番グリッドの井本大雅選手(CUORE)が3番手、4番手でゴールしてトップ4を占めた。ヨコハマタイヤ・ユーザーは加藤選手が5番手、渡会太一選手(Drago CORSE)が8番手になってダンロップ勢に続いている。

 一方、ドライコンディションで他を凌駕していたブリヂストン・ユーザーたちは苦境に立たされ、9番手の渡部樹選手(Team KOSMIC Racing)が最上位。小田選手は22番手、佐野選手はリタイアに終わってともにポイントを伸ばせず、この時点で小田選手の戴冠が確定した。

第9戦決勝とは打って変わって、路面コンディションはドライからウェットに。第10戦の予選ではダンロップ・ユーザーがトップを占める波乱の展開の幕開けとなった。
予選終了時点でチャンピオンが確定した小田選手は「開幕戦から幸先のいいスタートを切ることができて、シリーズ中盤には自分の実力不足が出るレースもあったんですが、最終戦でチャンピオンを獲ることができて良かったと思います。チャンピオンになれた要因は、まず速さがあったこと。それと、今年は本当にチームに助けられて、最初は何も分からない状態から親切に全部教えてもらえました。チームが勝たせてくれたんだと思います」と語った。

 2022シリーズ最後のレース、第10戦の決勝は15時25分に始まった。ここで強烈なスタートダッシュを見せたのが田中選手。スタート直後の1コーナーでトップに立つと、3周で他を2秒近くも引き離してみせた。やがて6番手スタートの皆木駿輔選手(CROC Promotion)が2番手に、井本選手が3番手に浮上。洞地選手は序盤戦で4番手に後退したが、タイヤが温まってからは前の3台とほぼ等しいペースで走っている。トップ4がやや間隔を空けて周回を続ける展開だ。

 OK部門の決勝では、周回遅れになりそうな選手は自らピットロードに入ってレースを終えなければならない。各車のペースに大きな開きがある中、レース中盤からはピットロードに向かうマシンが続出する。そんな状況でも田中選手は集中力を切らすことなく周回を続け、ゴールへとひた走っていく。そして、ついにチェッカー。第8戦時点でランキング26番手に埋もれていた16歳が、後続を1秒以上引き離して24周を走り切り、大一番で2年目の初勝利を果たした。

 単独走行でフィニッシュした2位の皆木選手も3位の井本選手も、今季初表彰台。ローリング中にスピンを喫して最後尾からのスタートとなった渡会選手が、8位まで挽回してヨコハマタイヤ勢の最上位に。加藤選手は9位に終わったが、目を見張るスピードでOK部門に驚きをもたらしたルーキーイヤーを、ブリヂストン勢に続くランキング7位で終えた。

 チェッカーを受けたのは34台中11台のみ。タイヤがコンディションにマッチしなかったブリヂストン勢は周回遅れ排除の規定で続々とレース終了を強いられ、最後まで走り切ったのは堂園選手ひとりだった。

「OK部門に上がって2年間、今までずっと苦労したきたけれど、スペシャルタイヤ最後のレースで優勝できて本当にうれしいです」と、レースを終えて笑顔を見せる田中風輝選手。「これもチームのおかげです。決勝前から勝てる手応えがあったので、スタートでトップに出て逃げ切ろうと思っていました」と、周回遅れを続々とピットロードに送り出す好走を見せて優勝した。
2位は皆木駿輔選手、3位は井本大雅選手。
第10戦表彰の各選手。ダンロップ・ユーザーが表彰台を独占した。

 複数のタイヤメーカーがスペシャルタイヤを投入して開発競争を繰り広げてきたOK部門の歴史は、これで幕を閉じた。2023年、新たなフェーズに入ったOK部門は次なる歴史への一歩を踏み出すことだろう。

モビリティリゾートもてぎ北ショートコースで開幕した2022年のOK部門は、鈴鹿サーキット南コースで最終戦を終えた。2023年も新たな選手の登場や、手に汗握るバトルが展開されることに期待したい。

フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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