僅差の戦いとなったFP-3部門。第3戦は山代諭和選手、第4戦は國岡光貴選手が勝者に
2025年5月26日

全日本カート選手権 FS-125部門とFP-3部門の第3戦/第4戦が5月17~18日、神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)で開催。FP-3部門では、第3戦で山代諭和選手がポールから全日本初優勝を飾り、第4戦では激闘の末に國岡光貴選手が2勝目を獲得した。
2025年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 第3戦/第4戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ2)
開催日:2025年5月17~18日
開催地:神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)
主催:KSC
4月中旬に千葉県市原市の新東京サーキットで2025シリーズの幕を開けた全日本カート選手権 FS-125部門およびFP-3部門。その次なる戦いは関西の名門コース、神戸スポーツサーキットが舞台となる。神戸で全日本選手権が開催されるのは2023年以来2年ぶりのことだ。
この2年間で神戸スポーツサーキットは改良を続け、最終コーナーの立ち上がり区間に走路外走行を防ぐ目的で高さのある縁石が新設されていた。その設置場所は一部が走行ラインに関わり、ドライバーたちに新たなチャレンジを要求するものとなっている。
さらに、全ポストにデジタルフラッグが導入されたことも挙げておく。超高輝度なLEDパネルで視認性の向上が図られている。今回はデジタルフラッグ設置後初のレースということで、万全を期して通常のフラッグとの併用で使用されることになった。
大会ではいつもどおりジュニアカート選手権・ラウンドシリーズ2が同時開催される。第1戦/第2戦では不成立だったジュニアカデット部門も今回はレースが成立し、2025シリーズ最初の戦いを迎えることとなった。
決勝日前日のサーキットには朝から強い雨が降ったが、その雨は昼過ぎに止んだ。すべての公式セッションが行われる決勝日はドライコンディションとなった。初夏の爽やかな風がそよ吹く、絶好のレース日和だ。
会場にはこのサーキットをホームコースとしてカート時代を過ごして四輪レースにステップアップを果たし、この大会1週間前に行われたKYOJO CUPで3位表彰台に立った佐藤こころ選手が後輩たちの応援に来場。飛び入りでスターティンググリッドに立ち、ドライバーたちにカウントボードを掲げるひと幕もあった。




全日本カート選手権 FP-3部門 第3戦/第4戦

FP-3部門はエントリー12台のうち8台のドライバーが今季初参戦。新東京大会とは大きく入れ替わったフレッシュな顔ぶれでレースが行われることになった。タイムトライアルで48秒664のトップタイムをマークしたのは、3年目のFP-3部門に挑む15歳、山代選手だ。0.004秒差の2番手は石野弘貴選手、0.055秒差の3番手は國岡選手。上位陣のタイムは極めて僅差だ。
16周の第3戦予選では、日本選手権初参戦の三宅右真選手が4番グリッドから2番手までポジションを上げ、トップ山代選手を僅差で追う展開に。だが、残り2周で3番手の石野選手が三宅選手に接触。これで山代選手は独走となって決勝のポールを獲得した。2番手には5番グリッドからスタートした越路暢哉選手が、3番手には國岡選手が入った。三宅選手はアクシデントで順位を下げたが、なんとか4番手でゴールした。
決勝は22周。レースがスタートすると三宅選手が1周で1台ずつ前走車をかわし、2周目に2番手まで上がってくる。先頭の座をキープして発進した山代選手は、この間に約1秒のリードを築いた。関東からの遠征でこのコースでのレースを初めて経験する國岡選手は、6番手までポジションを下げた。
トップ山代選手の後方ではさらに状況が転換。最後尾から強烈な追い上げを繰り広げる石野選手が、6周目にはセカンドグループに追いつき、10周目には越路選手をパスして3番手に上がると、三宅選手のテールを捕らえて2番手争いを始めたのだ。
そんな背後での戦いを尻目に、山代選手は着々とリードを広げながら独走を続け、終盤には2番手との間に約2秒のギャップを築いた。そしてチェッカー。山代選手は左手でナンバー1サインを掲げながらフィニッシュラインをまたいだ。全日本3年目のうれしい初優勝。日本選手権ではジュニアカデット部門に出場していた2021年以来の勝利だ。
2位は三宅選手。全日本デビュー戦らしからぬ堂々たる走りを披露し、石野選手の猛追をしのいでみせた。石野選手は0.2秒弱の差で2位を獲り逃すも、9台抜きで昨年第5戦以来の3位表彰台を手に入れた。4位には越路選手が、5位には藤村太郎選手が単独走行でフィニッシュ。國岡選手はポイント獲得圏内の6位でこのレースを終えた。




第4戦の予選は山代選手と石野選手のトップ争いがスタートからゴールまで続く展開となった。ここは山代選手が先頭を守り切って2戦連続の決勝ポールを獲得し、石野選手は2番グリッドから決勝を迎えることに。3番手のゴールは三宅選手。國岡選手は4番手集団のバトルを勝ち抜き、3番グリッドからのポジションダウンを最小限に抑えて4番手でゴールした。
そして迎えた第4戦の決勝には、思わぬ結末が待っていた。スタートでは好ダッシュを決めた石野選手がトップに浮上。それを2周目に山代選手が抜き返す。ここに國岡選手と三宅選手が続き、4台は一列に連なったままゴールに向かって周回を続けていった。
この先頭集団の中で好調なペースを見せたのが三宅選手だ。三宅選手は8周目に2番手へ上がって石野選手からトップ追撃の役目を引き継ぐと、レースの折り返し点となるストレートでは一瞬山代選手の前に立つ。しかし、2連勝に闘志を燃やす山代選手はすぐ先頭に戻ると、再び真後ろに3台を引き連れラップを消化していった。
優勝争いに激闘の火が灯ったのは残り6周。三宅選手が猛アタックを開始し、石野選手を交えた3ワイドの攻防の末に山代選手からトップのポジションをもぎ取る。残り2周、今度は山代選手が胸のすくオーバーテイクでトップを奪還。そして迎えた最終ラップ。山代選手は先頭のまま最終コーナーに入ったが、そのインに突進した三宅選手が立ち上がりで山代選手に追突、山代選手が吹っ飛んだ。死闘に生き残った先頭集団の3台は、もつれ合うようにゴールへとなだれ込む。真っ先にフィニッシュラインを越えたのは石野選手。0.014秒遅れて三宅選手が、さらに0.184秒後れて國岡選手がゴールした。
しかし、車検場へと戻ってきた石野選手のマシンはフロントフェアリングが外れており、5秒加算のペナルティを受けることに。さらに三宅選手にもプッシングで10秒加算のペナルティが下った。ウィナーとなったのは3番手でゴールした國岡選手。初めて走るアウェーのコースで第1戦以来の2勝目を獲得した。さらにポイントリーダーの座もキープすることに成功した國岡選手は、最終戦までのフル参戦を決意した模様だ。
2位には3ポジションアップの藤村選手が、3位には4ポジションアップの西本達矢選手が入賞。石野選手は6位でかろうじてポイントを獲得した。なんとか7位でチェッカーを受けた山代選手はポイントこそ獲れなかったものの、今大会を通じての活躍でランキング2番手へ浮上。三宅選手は8位に終わった。




全日本カート選手権 FS-125部門 第3戦/第4戦

FS-125部門には5名の新規参入組を含む16台がエントリーしてきた。うち3名はFP-3部門とのダブルエントリーだ。そのレースでは、前回の新東京大会で2連勝した酒井龍太郎選手が、新東京大会を上回る圧倒的な速さを見せつけた。
酒井選手はタイムトライアルで2番手に0.154秒の差をつけてトップタイムを叩き出すと、第3戦の予選では1周目からの独走でトップのままゴール、決勝をポールからスタートすることに。
その猛威は決勝でも鎮まることはなかった。先頭のまま22周のレースをスタートした酒井選手は、後続を2周で1秒後方へと突き離し、唯一ラップタイムを44秒台に入れながら独り旅を続けていく。酒井選手のリードは、5周目には2秒、9周目には3秒とみるみる広がっていく。右拳でガッツポーズを掲げた酒井選手が悠々とフィニッシュしたときには、2番手は7秒以上も後方だった。
酒井選手の後方では高木彪乃介選手、片岡陽選手、元田心絆選手がセカンドグループを形成し、YAMAHA MOTOR Formula Blueの3台で2番手争いを展開した。その中でスピードに勝ったのは元田選手。予選までの不調を払拭して7番グリッドから追い上げ、2周目に高木選手を、9周目に片岡選手をパスして2番手に浮上した。
このチームメイト同士の争いに割って入ってきたのが小熊孝誠選手だ。6番グリッドからのスタートで出遅れて8番手に後退した小熊選手は、終盤にペースアップしてセカンドグループに追いつくと、残り4周で高木選手を抜き、最終ラップに片岡選手も攻略。かくして2位は元田選手、3位は小熊選手のものとなった。片岡選手は4位、高木選手は5位。FP-3部門とダブルエントリーの石野選手が、グリッドからひとつ順位を落とすもFS-125部門のデビュー戦で6位入賞を果たした。




第4戦でも酒井選手の圧倒的優位は変わらなかった。予選ではまたもスタート直後から独走して、トップのままゴール。余裕のある単独走行で決勝に備えてタイヤをケアし、さらにいくつかの走り方にもトライして、万全の状態で決勝を迎えることに成功した。
そして迎えた第4戦の決勝。ポール酒井選手の横には、全日本初参戦ながら予選で印象的なスピードを披露した真子鉄朗選手が着けている。だが、酒井選手が危なげのないスタートでトップのまま発進したのに対して、真子選手はやや出遅れて3番グリッドの小熊選手に先行を許してしまった。
1周目から独走状態を確立した酒井選手は、自らの走りに専念しながらあっという間に後続を置き去りにしていく。今度は8.7秒のリードを築いてのフィニッシュ。まさにパーフェクトな一日だった。これで昨年の開幕戦から始まった酒井選手の全日本FS-125部門における連勝記録は8に伸びた。この2年間の合計16ヒートで酒井選手が1位を獲り逃したのは1回のみという圧倒的な強さだ。
酒井選手の後方では、小熊選手と真子選手が延々とタンデム走行を続けて2番手争いを展開。残り4周となって真子選手が小熊選手の前に立ったが、3度のポジションチェンジの末に小熊選手が2位をつかみ取り、自己最上位を更新した。真子選手は逆転ならず3位フィニッシュとなったが、初の全日本チャレンジで大いに名を高める表彰台登壇だった。そこから3秒ほど離れた4番手集団では、残り5周の逆転で高木選手が自己最上位の4位でゴール。片岡選手が5位に、藤村選手が6位に入賞した。




ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ2)

ジュニア選手権のジュニア部門には開幕戦を上回る12台が出走した。その第3戦決勝では、予選で6台を抜いて2番グリッドとなった高橋聖央選手が、スタートで3番グリッドからトップに立った織田大和選手を序盤でパスすると一気に独走し、3秒以上のリードを築いてデビューウィンを果たした。
2位は後方の11番グリッドから強烈な追い上げを繰り広げた中野貴介選手。本田羽選手がポールスタートからの出遅れを挽回し、追いすがる島津舞央選手を抑え切って3位に入賞した。




第4戦では、高橋選手が2番グリッドからのスタートで3番手に後退するが、3周目に前の2台を次々と抜いてトップに浮上するとたちまち独走を始め、会心のレースで2連勝を飾った。
中野選手はこのレースでも11番グリッドから次々と順位を上げ、中盤に本田選手と島津選手の2番手争いを捕らえると、2台を攻略して2戦連続の2位入賞を遂げた。島津選手は本田選手を従えて3位でフィニッシュ。ラウンドシリーズ1を含めると今季のジュニア選手権で6戦中3度の表彰台獲得と、初年度のジュニア部門でも相変わらずの速さを披露している。




ジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦(ラウンドシリーズ2)

8台が出走したジュニアカデット部門では、下羅貴斗選手がタイムトライアルで2番手に0.4秒以上の差をつける驚愕のトップタイムを叩き出した。その勢いのまま第3戦の予選を独走で制した下羅選手だったが、決勝では田中瀧夫選手と鈴木康仁選手が真後ろに食い下がってくる。しかし、下羅選手は中盤にリードを築くことに成功すると一気に独走、そのままデビューウィンへと突っ走った。
2位は鈴木選手。レースが後半戦に入ったところで田中選手を逆転し、終盤に突き離した。田中選手は単独走行での3位フィニッシュだった。




第4戦決勝での下羅選手は、1周目から後続を引き離すことに成功。毎周0.5秒ずつリードを広げ、圧倒的な独走劇で2連勝を飾った。
それに続いてゴールしたのは鈴木選手だったが、ゴール後にフロントフェアリングのペナルティを受けて降格。田中選手が繰り上がって2位となり、ラウンドシリーズ1の開幕戦鈴鹿大会から4戦連続でジュニア選手権の表彰台をゲットした。3位は谷口大和選手。鈴木選手が4位となってチームナガオの地元勢が1~4位を独占した。




PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、JAPANKART REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]