全日本カート選手権 OK部門は酒井仁選手がタイトル奪取に向けて開幕2連勝の好発進!

レポート カート

2025年5月20日

国内カートレースの最高峰に位置する全日本カート選手権OK部門の2025シリーズが、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開幕。第1戦、第2戦とも2024ランキング2位の酒井仁選手が見事な逆転劇で優勝を果たした。

2025年JAF全日本カート選手権 OK部門 第1戦/第2戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ1)
2025 AUTOBACS GPR KARTING SERIES

開催日:2025年5月10日~11日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC、GPR

全日本カート選手権 OK部門 第1戦/第2戦

 今季の全日本カート選手権 OK部門は昨年同様にGPR KARTING SERIESの同部門にタイトルがかけられる形で、5大会・全10戦のシリーズ戦が行われる。またジュニアカート選手権ラウンドシリーズ1(ジュニア部門/ジュニアカデット部門)もシリーズ全戦で同時開催だ。

 2025年のシーズンインは5月半ばと遅めの時期。OK部門には3名のルーキーを含む17名のドライバーたちがエントリーしてきた。レースウィークの鈴鹿サーキット南コースは金曜日から雨に祟られたが、土曜日の午後から天候は回復し、すべての公式セッションが行われる日曜日は穏やかな好天に恵まれた。

 タイムトライアルで唯一47秒台をマークしてトップとなったのは、2年目のチャンピオン獲りに挑む酒井龍太郎選手だ。そして2020年のジュニアカデット部門チャンピオンで今回が全日本初レースの金子准也選手が0.096秒差の2番手に。中井悠斗選手が3番手、中野駿太選手が4番手と続いた。

ポールポジション賞は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)に贈呈された。

 18周の第1戦が始まると、中井選手が好スタートで2番手に上がり、さらに酒井龍太郎選手をパスしてトップに浮上した。対して酒井龍太郎選手はエンジンが不調をきたして大きくポジションダウン。金子選手も中団以降に順位を下げた。

 オープニングラップの25Rでは中野選手以降のポジションで複数のマシンが絡むアクシデントが発生し、状況は混乱。このハプニングを突いて一気に2番手へ上がってきたのが、タイムトライアルでセッティングが合わず13番グリッドに埋もれていた酒井仁選手だ。急浮上を果たした酒井仁選手は、セッティングの見直しも当たったマシンにも手応えをつかみ、3周目に中井選手をかわしてトップに躍進。その勢いのまま中井選手と6番グリッドから3番手に上がった松井海翔選手を徐々に引き離し、折り返し点には0.8秒ほどのリードを築いた。

 後半戦に入っても好調をキープする酒井仁選手は、リードを保ったまま18周を走り切り、ピットレーンで待ち受ける仲間たちに右拳を掲げながらチェッカーをくぐった。昨年は弟の涼選手とともにOK部門にデビューを果たし、チャンピオンに輝いた涼選手に続いてランキング2位に。そして涼選手が同部門を卒業した今季、酒井仁選手は兄弟での2年連続チャンピオン獲得に向けてこれ以上ない好スタートを切った。

 さらにこの優勝は、もうひとつの喜びをもたらした。酒井仁選手が所属するKF MOTORSPORTは、スーパー耐久シリーズなどで活躍する藤波清斗選手が立ち上げた新生チーム。酒井仁選手は12台抜きの快走で、そのチームにデビューウィンをプレゼントしたのだ。藤波チーム代表兼監督は「チーム設立が決まったのはほんの1か月前。まさかまさかの優勝です。酒井選手も速かったし、メカニックも頑張ってくれました」と感激もひとしおの表情だった。

 中井選手は2位フィニッシュで自己最上位を更新。昨年2戦にスポット参戦した松井選手が、3位入賞で初表彰台を獲得。4位には8番グリッドから追い上げた佐藤佑月樹選手が、5位には11番グリッドから挽回の横山優之介選手が入賞した。11番グリッドまでドロップした酒井龍太郎選手は、懸命のキャブレター調整でペースを取り戻し、田中照久選手に続く7位でチェッカーを受けた。

OK部門 第1戦優勝は酒井仁選手(KF MOTORSPORT)。
「新チームのデビューを優勝で飾れて、めちゃくちゃうれしいです」と酒井仁選手。「スタート前は、シリーズ戦なのでトップ5に行けたらうれしいな、くらいに思っていました。オープニングラップの25Rでトップが目の前に見えるくらいのところまで上がれて、運が良かったです」と振り返った。
2位は中井悠斗選手(TEAM EMATY)、3位は松井海翔選手(TEAM EMATY)。
OK部門 第1戦表彰の各選手。
第1戦でファステストラップをマークした選手に贈られるえんてれ賞は、48.146秒を記録した酒井龍太郎選手が獲得。

 第1戦のベストラップ順で決まる第2戦のスターティンググリッドは、酒井龍太郎選手がポール、酒井仁選手がセカンドグリッドに。2列目には金子選手と横山選手が、3列目には中井選手と皆木駿輔選手が並んだ。

 コース上のスターティングリッドに整列したマシンには、関係者から熱い視線が注がれた。OK部門は今季から1大会を1セットのニュータイヤで走り切る規則を変更。2レース目にフロント1本、リア1本のニュータイヤを使用できることになり、この“エクストラ”のタイヤを各車がどこに装着しているかに注目が集まったのだ。

 酒井龍太郎選手は右側2本を、酒井仁選手は左側2本をニュータイヤに交換と、フロントロー2台のチョイスは分かれた。他にも左フロントと右リア、右フロントと左リアにニュータイヤを投入したマシンもあり、新たなレギュレーションで発生したタイヤ戦略は非常に興味深い様相を呈していた。

 22周の第2戦は、スタートがひとつのハイライトになった。酒井仁選手が目の醒めるようなスタートダッシュで真っ先に1コーナーへと進入してトップに浮上すると、2周で1秒以上のリードを築いたのだ。その酒井仁選手を上回るペースで序盤戦を走ったのが皆木選手。1周で4番手に、2周で2番手に順位を上げるとトップとの間隔を周回ごとに削り取り、10周目には酒井仁選手を目の前に捕らえた。

 中盤戦以降のレースは、酒井仁選手と皆木選手の一騎討ちだ。逃げる酒井仁選手はOK部門2年目、追う皆木選手は8年目。この状況は、傍目には皆木選手の狙いどおりに思えた。キャリアに勝る皆木選手が巧みにタイヤをセーブしながら走り、前にはプレッシャーをかけてタイヤを使わせ、ライバルのタイヤが厳しくなった終盤に逆転……。そんな結末をイメージしていた人は少なくなかったはずだ。

 だが、酒井仁選手はその策略にハマらなかった。レースが終盤に入っても酒井仁選手はタイヤを致命的に痛めることなく、皆木選手に逆襲の機会を与えないペースで走り続ける。残り5周、皆木選手は25Rで酒井仁選手のインを突こうとするが、真横に並ぶまでには至らなかった。

 結果的にこれが皆木選手に訪れた唯一のチャンスだった。酒井仁選手は皆木選手を真後ろに従えたまま最後まで走り切り、見事な開幕2連勝を遂げた。皆木選手は0.213秒の2位だった。

 3番手争いの集団に加わっていた酒井龍太郎選手は、レースが終盤に入ったところでまたも突然の失速に見舞われて大きく後退し、OK部門初優勝はおあずけに。中井選手が3位でチェッカーを受けて2戦連続の表彰台に立った。4位は、第1戦が悔しいレースに終わった金子選手。横山選手が2戦続けて5位に入り、10番グリッドから挽回の中野駿太選手が6位入賞を果たした。

OK部門 第2戦優勝は酒井仁選手(KF MOTORSPORT)
「皆木選手に追われて、メンタル的にもペースの面でもめちゃくちゃキツかったです」とラクなレースではなかったと語る酒井仁選手。「1~2コーナーの間で仕掛けてくると思って、そこをブロックしながら走っていました。抜き返せるペースはなかったんで、ミスのないように頑張りました」
2位は皆木駿輔選手(Drago CORSE)、3位は中井選手(TEAM EMATY)。
OK部門 第2戦表彰の各選手。
第2戦でファステストラップをマークした選手に贈られるえんてれ賞は、48.287秒を記録した皆木選手が獲得。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第1戦・第2戦(ラウンドシリーズ1)

 ジュニア部門の出走は13台。昨年の上位ランカーの多くがここを卒業し、代わってジュニアカデット部門から多数の有望株が参戦してきた。そんな中で光るスピードを披露したのが、2024ランキングの最上位(4位)として継続参戦する坂野太絃選手だった。

ポールポジション賞は坂野太絃選手(Peak Performer Racing)に贈呈された。

 第1戦をポールからスタートした坂野選手は、2番手の座を競い合う北中一季選手と島津舞央選手をじわじわと引き離し、レース後半には独走状態を確立。勝てそうで勝てないレースが続いた2024年の悔しさを払拭するような快走で、ジュニア部門3年目の初優勝を成し遂げた。

 スタートからゴールまで見応えのある接戦が続いた2番手争いは、最終ラップの逆転で島津選手が先着。ジュニアカデット部門2024ランキング4位の女性ドライバーが、ジュニア部門でも高いポテンシャルを実証した。北中選手は3位に留まるも、今季の飛躍を予感させる走りを見せ、ジュニア選手権4年目の初表彰台に立った。

ジュニア部門 第1戦優勝は坂野選手(Peak Performer Racing)。
「クルマにちょっと余裕がありましたね。動きが良くてタイヤのエア圧も合っていたおかげで前半も後半も両方速くて、後ろを離すことができて良かったと思います。後ろが入れ替わったところで差を広げようと思ってプッシュして、それがうまくいきました」と坂野選手。
2位は島津舞央選手(ERS with SACCESS)、3位は北中一季選手(HIROTEX RACING with IMPUL)。
ジュニア部門 第1戦表彰の各選手。

 第2戦を4番グリッドから発進した坂野選手は、一時5番手まで後退するも、そこから前を行くマシンを次々と攻略。序盤でトップに立つと、背後に食い下がる今村昴星選手を引き離して独走に持ち込み、圧巻の2連勝を遂げた。

 坂野選手に続いて、ジュニアカデット部門からのステップアップしてきた今村昴星選手が単独走行で2位フィニッシュ。フィリピンから参戦のノコモ・アクセル選手が北中選手、島津選手とのホットなバトルを勝ち抜いて3位入賞を果たし、歓喜を爆発させながらチェッカーをくぐった。

ジュニア部門 第2戦優勝は坂野選手(Peak Performer Racing)。
スタートをうまく決めることができなかった坂野選手。「前の選手が接触しているところで詰まってトップ集団の3台と離れちゃったんですけど……」と語るも「ペースが良かったので落ち着いてレース運びをしたら1位になれました。連勝できてうれしいです」
2位は今村昴星選手(Vitec Racing)、3位はノコモ・アクセル選手(Front Row Racing & Co)。
ジュニア部門 第2戦表彰の各選手。

ジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ1)

 この大会最多の18台が出走したジュニアカデット部門は、2024シリーズからの継続参加組と新規参入のドライバーが相半ばする興味深い顔ぶれとなった。第1戦のウィナーは、昨年このシリーズに4戦のスポット参戦経験がある久田朱馬選手。ポールから発進した久田選手はスタートで5番手に後退するも、そこから急速にポジションを取り戻し、中盤に先頭へ復帰すると一気に独走して初勝利へと突っ走った。

 2位は阿部瑠緯選手。レース中盤に大集団のセカンドグループを抜け出し、最後はトップの久田選手に約0.3秒差まで迫ってみせた。3番手でゴールした小林尚瑛選手がスタート時のラインはみ出しで5秒加算のペナルティを受け、3位表彰台は4台一丸の大接戦をものにして4番手でゴールした田中瀧夫選手のものとなった。

ジュニアカデット部門 第1戦優勝は久田朱馬選手(ガレージC)。
「スタートで出遅れちゃって何台か抜かれましたけど……」と久田選手。焦らず心に余裕を持って、じっくりと抜いていくことに専念したようだ。「トップに立ってからも落ち着いて走れました。阿部選手が後ろについてきたけれど、最終ラップは絶対にブロックしようと思っていました」
2位は阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は田中瀧夫選手(チームナガオ&丹羽レーシング)。
ジュニアカデット部門 第1戦表彰の各選手。

 第2戦では、残り5周で久田選手が阿部選手からトップの座を奪ったところから、9台が目まぐるしくポジションを入れ替え合うトップ争いが勃発。マシンの大群がひと塊でゴールラインになだれ込む混戦を制したのは、これが初優勝の北村紳選手だった。

 田中選手が0.173秒差の2位フィニッシュで連続表彰台をゲット。レース中盤には10番手を走っていた原澤稜選手が、大混戦の中を縫ってポジションを上げ、3位表彰台をつかみ取った。

ジュニアカデット部門 第2戦優勝は北村紳選手(KWS Speed)。
1戦目はブレーキに不具合があって効きづらかったという北村選手は、2戦目ではしっかりブレーキが効いてうまく曲がることができ、それが勝因につながったという。「大集団のバトルは、みんな速くて苦戦しました。この波に乗ってまた1位になれるよう頑張ります」
2位は田中選手(チームナガオ&丹羽レーシング)、3位は原澤稜選手(RT WORLD)。
ジュニアカデット部門 第2戦表彰の各選手。

Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第1戦/第2戦

 GPR KARTING SERIESの一部門として同時開催されるShifterは、6段変速機構を備えた125cc水冷エンジンを使用する、ホビーカーターのハイエンドレースだ。今回の出走は10台。松田次生選手、大木一輝選手の四輪ドライバー2名もここに加わり、注目度の高い一戦となった。

 第1戦では井出七星翔選手と伊藤聖七選手がスタートからゴールまでマッチレースを展開。2024ランキング4位の井出選手が逃げ切りを果たしてウィナーとなった。OK部門から転向してきた伊藤選手は逆転勝利こそならなかったものの、ミッションカートでも高い資質を披露し、デビュー戦を2位入賞で終えた。

 トップ争いの後方では、松田選手が6番グリッドからのロケットスタートで3番手に躍進。ここに大木選手が迫ると四輪ドライバー同士のバトルが始まり、逆転に成功した大木選手が3位を獲得した。

Shifter 第1戦優勝は井出七星翔選手(RSイディアぴぃたあぱん)。
「スタートダッシュが決まって、ある程度後ろを離すことができて良かったです」とコメントする井出選手。「後ろを見たらそれほど近づいてはいなかったので、落ち着いて走ることができました」と語るも、周回数の多い第2戦のレースでの体力面で不安そうな表情を見せた。
2位は伊藤聖七選手(Ash)、3位は大木一輝選手(MOMOX KART RACING)。
Shifter 第1戦表彰の各選手。

 第2戦では序盤で約1秒のリードを得た井出選手に、折り返し点から伊藤選手が急接近。しかし、井出選手は疲労の蓄積した体にムチを入れてこのピンチを凌ぎ切り、見事2連勝を獲得した。伊藤選手は再度2番手でゴールするも、フロントフェアリングのペナルティで6位に降格。代わって大木選手が2位、松田選手が3位に繰り上がって表彰台登壇を果たし、多くの祝福を浴びていた。

Shifter 第2戦優勝は井出選手(RSイディアぴぃたあぱん)。
井出選手の不安は的中し、「体力がなくなって完全に首が折れて、ヤバいなと思っていたらどんどん乗りにくくなってきました」と振り返る。だが「なんとか抑えられました。抜きにきたときは、ここで抜かれたら抜き返す気力がないと思って意地で耐えました。しんどいレースでした」と笑顔を見せた。
2位は大木選手(MOMOX KART RACING)、3位は松田次生選手(NEXT BIRTH wis HKC)。
Shifter 第2戦表彰の各選手。

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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