三村壮太郎選手2連勝! 2025シーズンの全日本カート選手権 EV部門がいよいよ開幕
2025年5月30日

バッテリーと電気モーターで駆動するEVレーシングカートでチャンピオンシップを展開する全日本カート選手権 EV部門の2025シリーズが5月25日、人気観光地のお台場に位置するシティサーキット東京ベイ(東京都江東区)で開幕。第1戦、第2戦とも最年長34歳の三村壮太郎選手が優勝を飾った。
2025年JAF全日本カート選手権 EV部門 第1戦/第2戦
開催日:2025年5月25日
開催地:シティサーキット東京ベイ(東京都江東区)
主催:RTA、TOM’S
2024年に都市型サーキットであるシティサーキット東京ベイ(CCTB)での大会開催や、四輪レースのトップチームなどをオーナーとするチーム制の採用といった新機軸を導入して大幅リニューアルを果たした全日本カート選手権 EV部門。誕生から4年目を迎えた2025シリーズは、1大会2レース制を採用してさらなるバージョンアップを遂げた。
レースフォーマットは、タイムトライアル(TT)の結果で12名のドライバーを6名ずつA/Bの2グループに割り振り、それぞれで決勝を行うというもの。1デイ開催で2レース制ゆえに、このTT→決勝の流れを1日2回行うこととなる。
シリーズポイントは完走全車に付与されることになり、決勝Aグループ1位から6位に25点~15点が、同Bグループの1位から6位に14点~9点が与えられる。年間ランキングは全8戦中有効6戦での集計で決定。昨シリーズでは決勝Bグループは基本的にシリーズポイントを得られなかったが、今季は決勝Bグループの結果も年間ランキングに影響するものとなったわけだ。
また特別規則書の公示で、各チーム2名のドライバーが獲得したポイントを合計した「チームポイント」が、当選手権のオーガナイザーによって独自に設定されることが公表された。これはレースに新たな戦いの構図をもたらすものになりそうだ。


ドライバーズブリーフィングに続いて行われた開会式では、2025シリーズのスタートに当たって実施されるさまざまな施策が明らかにされた。当選手権を主催するトムスカートクラブの谷本勲代表の口からまず語られたのは、このシリーズが「未来のF1ドライバーを目指す青少年の登竜門」だと位置づけが明確にされたことだった。
その方向性の推進策として、次回の第3戦/第4戦からは個別レースの賞典がメディア対応講習、フォーミュラカー構造講習などプロドライバーを育成するための講習会費用になる。また、トムスが当選手権に供給するワンメイク車両”TOM’S EV KC-22”のイコールコンディションを強化するため、各選手の使用車両を全大会第2レースの順位に基づきリバースして供給することになった。
さらに、今季はオートバックスが当選手権の冠スポンサーに就くことも公表され、開会式の壇上には谷本氏に続いて株式会社オートバックスセブン・モータースポーツ推進プロジェクトの幅田智仁氏が上り、これからレースに臨むドライバーたちにエールを送った。


レースのレギュレーションや運営にも新たな改善策が施された。ひとつは、コース内に停止したマシンの排除を迅速化するため、EV KC-22が有するバック機能の使用が認められたことだ。これはオフィシャル指示の下でのみ使用が認められる。今までほとんど使うことのなかったバック機能の確認・習熟のため、TTでは走行後にこの機能を試す時間が設けられた。
加えて、スタートの合図に用いられるレッドライト(消灯でスタート)が、今まで大きなLEDパネル全面の点灯→消灯でスタートとなっていたものが、モニター上に円形のライト5つを順番に点灯していき、その全消灯でスタートする方式に変更された。


レースのインターバルを利用した一般参加イベントは今季も開催されており、今回の大会では10分間1,000円でレースと同じスカイトラック(屋外)を走れるレンタルカート走行会と、ライトニングトラック(屋内)を使用した参加無料のキッズカート体験会が行われ、多くの参加者を集めていた。また、昨シーズンも好評だった決勝ヒート前のグリッドウォークも継続実施されている。
公募によるオーディションとドラフト会議を経て2025シリーズのドライバーに決まった12名は、この部門の参加経験者がふたりしかいないフレッシュな面々。全日本の最上級カテゴリーに参戦中の者がいれば、全日本初参戦の者もいて、その顔ぶれは実にバラエティに富んでいる。12台のマシンはすべてチームカラーにラッピングされてコース上に出そろい、サーキットに華やかな雰囲気をもたらしていた。


第1戦タイムトライアル
大会前夜に降った雨は朝方に止み、公式練習の時点で路面には白く乾いた部分も表れ始めた。すべての公式セッションは、全車スリックタイヤを装着しての走行だ。公式練習後のTTは各車1台ずつコースインして1周のタイムアタックを行う形式となっている。
路面の一部に黒く湿った部分が残った時間帯に行われた第1戦のTTでは、出走順が後になるほどコースコンディションが好転していくことは明らかだった。さらに言えば、オーバーテイクが困難とされるこのコースでは、TTの出走順はレースの結果そのものを大きく左右するファクターだった。
その出走順を決める抽選(第1戦、第2戦ともこれを採用)で最終出走の12番目を引き当てたのは、大会前日の練習走行でも全セッションで最速タイムをマークして絶好調にある34歳の最年長ドライバー三村選手だった。一方、2024シリーズに2度の表彰台経験があり三村選手がもっともマークしていた中井陽斗選手は、1番目の出走のクジを引いてしまった。
そして多くの関係者の予想どおり、第1戦のTTでトップタイムをマークして決勝Aグループのポールを獲得したのは三村選手。そのタイム24秒711は、2番手のルーキー寺島知毅選手に0.287秒もの大差をつけるものだった。3番手は野澤勇翔選手。真っ先にコースインした中井陽斗選手は9番手のタイムに留まり、決勝Bグループを3番グリッドからスタートすることになった。

第1戦決勝
決勝は全ヒート20周。最初に行われた決勝Bグループでは、中井陽斗選手がスタートで2番手に上がり、5周目に先頭を行く徳岡大凱選手もパスすると、みるみるリードを広げてチェッカーを受けた。中井陽斗選手はフロントフェアリングのペナルティで5秒加算となったのだが、それでも1位の結果に変わりはなかった。2位は中井陽斗選手に続いて徳岡選手の前に出た豊島里空斗選手。ポールスタートの徳岡選手は3位でこのレースを終えた。

続いて行われた決勝Aグループは、三村選手の独壇場となった。先頭の座を守ってスタートした三村選手は、1周で後続を0.6秒ほど引き離すと、そのリードを3周で1秒へ、5周で2秒へと拡大。ゴールまで無敵の独走を続け、昨年第1戦以来の2勝目を飾った。2位は5周目に寺島選手を攻略した野澤選手。中井陽斗選手の弟、悠斗選手も中盤に寺島選手の前に出て、EV部門のデビュー戦で3位表彰台を獲得した。




第2戦タイムトライアル
第2戦のTTでは路面が完全に仕上がっており、出走順の有利不利はほぼなくなった。ここで24秒560のトップタイムを叩き出したのは、またも三村選手だ。そして、2番手は中井陽斗選手。ふたりのタイム差はわずか0.024秒だった。決勝Aグループは、第1戦の2レースの1位同士がフロントローに並んでの直接対決だ。

第2戦決勝
先に行われた決勝Bグループは、一時5台が一丸に固まって競り合う熱戦となった。このヒートをポールから発進した寺島選手は、中盤に大和田夢翔選手の先行を許したものの、これを1周で抜き返すと、その後はトップの座を守り抜いて1位となった。大和田選手はスタートのポジションアップを生かして2位でフィニッシュ。中西凜音選手が最終ラップに徳岡選手を逆転して3位となった。

この日の最後を締めくくる決勝Aグループには、手に汗握る戦いが待っていた。まずは三村選手が好ダッシュを見せた中井陽斗選手を抑えて先頭のままスタート。そこに中井陽斗選手がピタリと続き、5周目の2コーナーでするりと三村選手のインに潜り込んで前に出た。やがて2台は3番手以下を引き離し、一騎討ちへと突き進んでいく。中井陽斗選手は第1戦で三村選手と競り合うことを許されなかった悔しさを晴らすかのように、力強くトップをひた走っていった。
中井陽斗選手の真後ろで静かにチャンスを待っていた三村選手が動いたのは、レースが終盤戦に入った15周目。2コーナーでライバルのインを突いてトップの座を奪い返した。だが、三村選手は逃げ切りを許されない。2台一丸で迎えた最終ラップ。1コーナーに進入するストレートエンドで、中井陽斗選手が三村選手のインに並び、その前に出た。真っ先にチェッカーを受けたのは中井陽斗選手だった。
しかし、ドラマはこれで終わらなかった。激闘を制し、ギャラリーの大きな拍手を浴びながら車検場に入ってきた中井陽斗選手のマシンは、無情にもフロントフェアリングの先端が垂れ下がっていた。5秒加算のペナルティだ。これでウィナーは入れ替わり、三村選手が2連勝を果たす結末となった。手にしたはずの初勝利を失い4位に降格となった中井陽斗選手には、小高一斗選手が持っていたコースレコードを更新してCCTB最速ドライバーの栄誉を得たことが、せめてもの救いだっただろうか。
2位は中盤から単独走行を続けた野澤選手。スタートでポジションアップの岡澤圭吾選手を抜き返した中井悠斗選手が3位に入賞し、トップ3は第1戦と同じ顔触れになった。





PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART、TOM’S、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]