OK部門は酒井仁選手が3勝目でポイントリーダー堅守、酒井龍太郎選手が2勝目で勝利数を追随

レポート カート

2025年9月17日

8月30~31日、全日本カート選手権 OK部門の第5戦/第6戦が開催された。APGことオートパラダイス御殿場を舞台に、第5戦では酒井仁選手が2番グリッドから今季3勝目を挙げ、第6戦では酒井龍太郎選手がポール・トゥ・ウィンで2勝目を飾った。

2025年JAF全日本カート選手権 OK部門 第5戦/第6戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ1)
2025 AUTOBACS GPR KARTING SERIES

開催日:2025年8月30~31日
開催地:オートパラダイス御殿場(静岡県小山町)
主催:APG、GPR

 GPR KARTING SERIESのOKクラスにタイトルがかけられた全日本カート選手権 OK部門。5大会・全10戦で行われるその2025シリーズは、今回の第5戦/第6戦で中間点を迎える。舞台となるAPGには2種類のコースレイアウトがあるのだが、この大会で使用されるのは全長1006mのハイスピードコースだ。

残暑が厳しい8月末の開催となった全日本カート選手権 OK部門。身体に厳しいコースであることに加え、暑さとの戦いにもなった。
一般社団法人日本カート協会の山本尚貴チェアマンがもてぎ大会に続き視察に訪れた。GPRの塚越広大レースディレクターと言葉を交わす。

全日本カート選手権 OK部門 第5戦/第6戦

 OK部門のエントリーは、前回のもてぎ大会と同じ18台。ここへ新たに加わった顔ぶれは、全日本FP-3部門の今季第2戦で優勝を果たした14歳の関口瞬選手だ。決勝日のサーキット上空は快晴。8月も終わりだというのに最高気温は34度に達し、ドライバーたちはライバルだけでなく暑さとの厳しい戦いも強いられることとなった。決勝の周回数は第5戦/第6戦とも26周だ。

 タイムトライアル(TT)では酒井龍太郎選手が唯一38秒を切る37秒886のトップタイムをマークして、第5戦決勝のポールを獲得した。これで酒井龍太郎選手は、開幕戦以来3大会連続のTTトップだ。0.138秒差の2番手は酒井仁選手。3・4番手には中井悠斗選手と皆木駿輔選手が続いた。

ポールポジション賞は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)に贈呈された。

 第5戦の決勝が始まると、序盤のペースに自信を持つ酒井仁選手がいきなり猛攻を開始、酒井龍太郎選手に絶え間なくアタックを仕掛け、2周目にトップに出ることに成功する。酒井龍太郎選手は中井選手にも先行を許して3番手に後退。この間に酒井仁選手は後続を引き離し、5周目にはそのリードを約1秒に広げた。

 レースが中盤戦に入ると、中井選手を抜き返して2番手に順位を戻した酒井龍太郎選手が反攻に転じ、酒井仁選手とのギャップをじわじわと詰めていく。15周目、2台はほぼ一丸となった。中井選手は澤田龍征選手にも抜かれてセカンドグループの戦いに巻き込まれ、トップ2から引き離されていった。終盤戦は酒井仁選手と酒井龍太郎選手の一騎討ちだ。

 酒井仁選手の真後ろに貼りついた酒井龍太郎選手は、たびたびキャブレターを調整しながらトップ奪還を狙う。しかし、そのチャンスはなかなか訪れない。そして迎えた最終ラップ。酒井仁選手がストレートで後ろを振り向くと、酒井龍太郎選手との間には一発で勝負を仕掛けられない距離が空いていた。逃げ切り成功だ。酒井仁選手は両手の拳を握ってチェッカーをくぐり、今季3勝目を遂げた。

 酒井龍太郎選手は0.388秒差の2位。セカンドグループでは中井選手が澤田選手を抜き返して3位に入り、今季3度目の表彰台を手に入れた。ルーキーの澤田選手は初表彰台こそ逃したものの、自己最上位の4位に入賞。5位の皆木選手に続き、関口選手がデビュー戦を2ポジションアップの6位でフィニッシュした。

OK部門 第5戦優勝は酒井仁選手(KF MOTORSPORT)。
「序盤に前へ出る作戦で行って、それが成功しました」と勝因を語る酒井仁選手。「龍太郎君が追いついてきたら厳しいレースになるかと思っていたけれど、だんだん自分と同じペースになってきて、これは勝ち目があるかなと思いました。ポイントランキング的にも重要だと思っていたレースで優勝できて良かったです」
2位は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は中井悠斗選手(TEAM EMATY)。
OK部門 第5戦の表彰式。左から2位の酒井龍太郎選手、1位の酒井仁選手とKF MOTORSPORTのチーム代表、3位の中井選手。
第5戦でファステストラップをマークした選手に贈られるえんてれ賞は、38.025秒を記録した酒井龍太郎選手が獲得。

 第5戦のベストタイム順で決まる第6戦のグリッドは、酒井龍太郎選手がポール、酒井仁選手と中井選手が2・3番グリッドと、上位3席は第5戦と同じ顔触れになった。4番手は澤田選手。グリッド3列目には皆木選手とテグチャリョブ・ティモフェイ選手がつけている。

 酒井龍太郎選手は、各大会で2レース目に使用が許されている前後1本ずつのニュータイヤを左側に装着。一方、酒井仁選手と中井選手は、第5戦で使用したタイヤのままグリッドについた。各者の戦略が興味深い分かれ方をする中で、第6戦の決勝がスタート。すると酒井仁選手がやや出遅れ、中井選手と皆木選手が2・3番手に浮上。皆木選手はさらにオープニングラップで中井選手をパスして2番手に上がった。

 ポールスタートの酒井龍太郎選手は、背後のポジション変動を利して2周で0.5秒ほどのアドバンテージを得ることに成功。ここからマシンにムチを入れ、そのリードを徐々に広げていく。8周目、酒井龍太郎選手と皆木選手の間隔は1秒以上に拡大した。

 7周目、酒井龍太郎選手が最大の強敵と見ていた酒井仁選手が、3番手争いの最中に最終コーナーで三村壮太郎選手とともにストップ。三村選手は再スタートを切ったが、酒井仁選手はここでレースを終えた。2番手は皆木選手の単独走行。独走状態となった酒井龍太郎選手は、自らの走りのみに集中できる状況となった。

 残り6周、酒井龍太郎選手と皆木選手の間隔は2秒を超えた。そのリードをさらに広げた酒井龍太郎選手は、両手を高く掲げて天を仰ぎながらフィニッシュ、第3戦に続くOK部門2勝目を果たした。2位は単独走行の皆木選手。そして3位に入ったのは、最後尾から発進した中野駿太選手だった。

 第5戦で3周リタイアを喫した中野選手は、4本ともたっぷり余力が残ったタイヤでファステストラップを叩き出しながら順位を上げ、15台抜きを達成している。中盤まで3番手を走っていた関口選手は、中野選手に抜かれたところから次々とポジションを落とし、4位にティモフェイ選手が、5位に澤田選手が入る結果となった。

 暫定ポイントランキングは、酒井仁選手が109点で首位をキープ。そこに107点までポイントを伸ばした皆木選手が急接近。3・4番手に89点の中井選手と86点の酒井龍太郎選手が続き、混迷の様相を見せ始めている。

OK部門 第6戦優勝は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)。
APGは地元のようなコースと言う酒井龍太郎選手ながら、昨年のOK部門のAPG大会では最上位が4位という結果に終わり、今年の大会には並々ならぬ思いがあったようだ。「第6戦でチーム全員で力を合わせたレースに勝つことができてすごくうれしいです。いいレースができました」と、うれし涙を流していた。
2位は皆木駿輔選手(Drago CORSE)、3位は中野駿太選手(Racing Square GEN)。
OK部門 第6戦の表彰式。左から2位の皆木選手、1位のミツサダ PWG RACINGのチーム代表と酒井龍太郎選手、3位の中野選手。
第6戦でファステストラップをマークした選手に贈られるえんてれ賞は、38.120秒を記録した中野選手が獲得。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ1)

 同時開催のジュニアカート選手権ラウンドシリーズ1の第5戦/第6戦。12台が参加したジュニア部門では、坂野太絃選手が今回も圧倒的な速さを見せつけた。その坂野選手は、まずTTで2番手の林樹生に0.2秒以上の差をつけてトップタイムをマークする。

ポールポジション賞は坂野太絃選手(Peak Performer with THISTLE)に贈呈された。

 第5戦ではオープニングラップに3台の先行を許したものの、すぐに1台を抜き返して3番手で2周目に突入すると、2周目に今村昴星選手を、4周目に林樹生選手をパスして先頭に戻った。ここからは坂野選手の独壇場。大集団となって競り合う2番手以下をぐいぐいと引き離し、最終的にリードを5秒以上に広げて独走勝利を飾った。

 6台一丸の接近戦が展開されたセカンドグループでは、林選手、今村選手、北中一季選手と集団を牽引する顔がたびたび入れ替わり、この熱戦を制した林選手が3戦連続の2位となった。3位の今村選手と4位の北中選手も、林選手と僅差のゴールだった。

ジュニア部門 第5戦優勝は坂野選手(Peak Performer with THISTLE)。
「1周目にポジションを落としましたが、自分に自信がありました」とは、落ち着いてレース運びをした坂野選手のコメント。「これで調子に乗らず、次のレースも頑張りたいと思います」と気を引き締めていた。
2位は林樹生選手(HIROTEX RACING with IMPUL)、3位は今村昴星選手(Vitec Racing)。
ジュニア部門 第5戦の表彰式。左から2位の林選手、1位のPeak Performer with THISTLEのチーム代表と坂野選手、3位の今村選手。

 坂野選手は第6戦で再びポールにつくと、今度はスタートに成功して1周で0.6秒ほどのリードを構築。ここからまたも後続を置き去りにして、6秒以上のリードで圧勝を遂げた。2位は序盤にセカンドグループを抜け出した今村選手。林選手が北中選手らとの接戦を制して3位に入り、4戦連続の表彰台に立った。

 これで坂野選手は開幕戦から無傷の6戦全勝。ポイント争いでも2番手以下との差をさらに広げた。次回第7戦/第8戦の結果次第で、坂野選手は今季最後の大会(第9戦/第10戦)を待つことなくチャンピオンを確定させる可能性が出てきた。

ジュニア部門 第6戦優勝は坂野選手(Peak Performer with THISTLE)。
「調子に乗らずに走るつもりだったんですが、途中で気持ち良くなっちゃいました(笑)」とおどける坂野選手は「最後の方もすごくタイムが良かったので、良いレースができたと思います」と感想を述べた。
2位は今村選手(Vitec Racing)、3位は林選手(HIROTEX RACING with IMPUL)。
ジュニア部門 第6戦の表彰式。左から2位の今村選手、1位の坂野選手とPeak Performer with THISTLEのチーム代表、3位の林選手。

ジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門 第5戦/第6戦(ラウンドシリーズ1)

 ジュニアカデット部門には16台が参加。その第5戦は、今大会で最も劇的な優勝争いが展開された。4台一列の先頭争いの中、序盤からトップの座を守り続けてきた久田朱馬選手を、残り2周で5番グリッドから浮上の阿部瑠緯選手がついに逆転。すると最終ラップ、激しく競り合う阿部選手と久田選手を、丹羽舜也選手がまとめてかわして先頭に。これを阿部選手がすかさず抜き返し、阿部選手と丹羽選手がほぼ横一線でチェッカーへ。

 結果は0.103秒差で阿部選手の勝利となった。丹羽選手は僅差で2位に終わるも、ノーポイントだった過去4戦から覚醒しての大活躍だ。3位は久田選手。やはりここまでポイント獲得がなかった鈴木秀弥選手が、先頭集団に割り込み4位入賞を果たした。

ジュニアカデット部門 第5戦優勝は阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)。
「最終コーナーのミスは良くなかったけれど……」と前置きしつつ、「お父さんやチームのみなさんのおかげで勝てました」と笑顔を見せる阿部選手。「スタートで抜くことを目標にしていたので、それができて良かったです」
2位は丹羽舜也選手(LUCE MOTOR SPORTS)、3位は久田朱馬選手(ガレージC)。
ジュニアカデット部門 第5戦の表彰式。左から2位の丹羽選手、1位のミツサダ PWG RACINGのチーム代表と阿部選手、3位の久田選手。

 第6戦では、ポールシッターの阿部選手がスタートで3番手に後退したが、4周でトップに返り咲く。そこに鈴木選手がぴたりと続き、終盤はこの2台のマッチレースに。緊迫のトップ争いは、阿部選手の勝利で決着した。第3戦の初優勝で波に乗った感のある阿部選手は、これで怒涛の4連勝だ。鈴木選手は逆転優勝こそならなかったものの、2位フィニッシュで自己最上位を更新。久田選手が3位に、丹羽選手が4位に入賞した。

ジュニアカデット部門 第6戦優勝は阿部選手(ミツサダ PWG RACING)。
序盤のポジションダウンについて「辛いバトルだったし、後ろの(鈴木)秀弥選手も速かったので緊張していました」とレース中の心境を吐露。レースを終えてからは気持ちを切り替え「次の大会でも勝ちたいです」と抱負を語った。
2位は鈴木秀弥選手(REON RACING TEAM)、3位は久田選手(ガレージC)。
ジュニアカデット部門 第6戦の表彰式。左から2位の鈴木選手、1位のミツサダ PWG RACINGのチーム代表と阿部選手、3位の久田選手。

Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第5戦/第6戦

 GPR KARTING SERIESのシリーズ戦として同時開催されたShifter第5戦/第6戦には7台が参加した。第5戦ではポールスタートの中里龍昇選手が、0.5秒ほどの差で追いすがる伊藤聖七選手を振り切って優勝。伊藤選手は2位でチェッカーを受けた。TTで3番手につけた松田次生選手は得意のスタートでまさかのポジションダウンを喫し、代わって52歳の島弘光選手が3位入賞を果たした。

Shifter 第5戦優勝は中里龍昇選手(Tony Kart R.T.J.)。
「ずっと後ろからのプレッシャーを感じていました」と伊藤聖七選手の存在を気にしていた中里選手。「1位でチェッカーを受けることができて良かったです。次も1位でチェッカーを受けたいです」
2位は伊藤選手(Ash)、3位は島弘光選手(KP-BUZZ)。
Shifter 第5戦の表彰式。左から2位の伊藤選手、1位のTony Kart R.T.J.のチーム代表と中里選手、3位の島選手。

 第5戦でファステストラップをマークして第6戦のポールとなったのは、なんと島選手。スタートにも成功した島選手は若手たちの猛攻を凌ぎ、4周にわたってトップの座を守ってみせた。そのポジションを引き継いだ伊藤選手は、後続を引き離してトップを独走し優勝を飾った。2位は中里選手。松田選手が3位フィニッシュで第2戦以来の表彰台登壇となった。島選手は4位に終わるも、殊勲賞ものの活躍で場内を大いに沸かせた。

Shifter 第6戦優勝は伊藤選手(Ash)。
「スタートではミスしてしまったけれど、なんとか優勝できました」と安堵の表情を見せる伊藤選手。次戦に向けては「瑞浪はホームコースなので、地元らしいレースをしたいです」とコメントを残した。
2位は中里選手(Tony Kart R.T.J.)、3位は松田次生選手(NEXTBIRTH wis HKC)。
Shifter 第6戦の表彰式。左から2位の中里選手、1位のAshのチーム代表と伊藤選手、3位の松田選手。

IWF25 & Rok Cup Superfinal 2025派遣選手決定

 この大会は、ジュニア部門とShifterの各ワンメイクエンジンの世界大会への派遣選手が決まるレースにもなっており、第6戦の表彰式ではその発表も併せて行われた。ジュニア部門では坂野太絃選手がIWF25(10月27日~11月1日/スペイン)に、Shifterでは伊藤聖七選手がRok Cup Superfinal 2025(10月14日~18日/イタリア)に、それぞれ日本代表選手として派遣される権利を得たことが発表され、両選手は表彰ボードを手にして誇らし気に壇上に立った。

坂野選手がIAMEの最高峰イベントであるIWF25のジュニア部門へ、伊藤選手が世界中のROKカテゴリーのドライバーが集うRok Cup Superfinal 2025のShifterへ、日本代表選手として派遣されることが発表された。

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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