FIA-F4鈴鹿は野村勇斗選手が連続ポール・トゥ・ウィンを決めポイントリーダーに

レポート レース

2024年6月7日

全7大会・14戦で競われるFIA-F4地方選手権の第2大会が、5月31日〜6月2日に鈴鹿サーキットで開催された。直前に発生した台風1号の接近によって天候の悪化が心配されたが、木曜日と金曜日に設けられた専有走行こそ一時雨に見舞われたものの、その後台風が温帯低気圧になった土曜日からの公式スケジュールは、ドライコンディションでの走行になった。第1大会で生じた車両トラブルも、対策部品の供給によってクリアになって、よりイコールコンディションでの勝負が繰り広げられた。

2024年FIA-F4選手権 第3戦/第4戦
(2024 SUPER GT Round.3内)

開催日:2024年5月31日~6月2日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:KSCC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

予選

 専有走行で赤旗中断が相次いだことから、チャンピオンクラスの予選ではほとんどのドライバーが計測開始と同時にコースインしていく中、あえて一呼吸置いてからコースインしたのが、野村勇斗選手と第2戦のウィナー森山冬星選手。1周が長い鈴鹿で、また気温も高めだったこともあって、早々とアタックし始めるドライバーも多い中、このふたりは入念にウォームアップを実施。その結果、ベストタイムとセカンドベストタイムともに野村選手がトップとなり、2戦連続のポールポジション(PP)が決定した。

「鈴鹿はクリアで走りたかったので、作戦としては(コースインのタイミングを)ずらしていきました。ウォームアップで2周することを練習の段階から決めていたので、狙いとしても良かったです。鈴鹿は抜きにくいコースでもあるので、スタートが非常に重要です。まずはきっちり決められるようにします」と野村選手は、予選の手応えと決勝での狙いを、こう語っていた。

 一方、森山選手はベストタイムこそ野村選手のチームメイトの洞地遼大選手に準じたものの、セカンドベストタイムでは順位を入れ替え、第3戦は3番手、第4戦は2番手から決勝に臨むことになった。「あんまりスリップを使うつもりはなかったので、間隔を空けて走りました。アタックを少しミスしているので、野村選手にはかないませんでしたが、しっかりポイントを獲れるよう決勝では頑張ります」と森山選手。

 インディペンデントクラスでは、今季初FIA-F4となる鳥羽豊選手が計測2周目にトップに浮上。しかし次の周に、同じく今季初FIA-F4の今田信宏選手が逆転してトップに立つ。その後は今田選手とチームメイトのDRAGON選手がシーソーゲームの様相に。最後の最後に今田選手がトップタイムを記すも、セカンドベストタイムではDRAGON選手がトップ。ふたりでPPを分け合うことになった。鳥羽選手は第3戦を3番手、そして第4戦をKEN ALEX選手に続く4番手からのスタートとなった。

「最終ラップまでプッシュして、トップを取り返せました。が、走りとしてはちょっと課題ありという感じです」と今田選手。一方、「最後にお互いタイムが上がったのは燃料が減って軽くなってきて、さらに路面にラバーが乗ってきたから。いずれにしても僅差でいい勝負でした。決勝は抜きにくい鈴鹿なので、スタートで2コーナーまでに前に出れば、基本的には抜けないと思うんですね。そこしかチャンスはないと思います」と、DRAGON選手は決勝への展望を語っていた。

チャンピオンクラス第3戦と第4戦のPPは野村勇斗選手(HFDP with B-Max Racing)。
インディペンデントクラス第3戦PPは今田信宏選手(JMS RACING with B-MAX)。第4戦のPPはDRAGON選手(B-MAX TEAM DRAGON)。

第3戦 決勝

 第3戦の決勝は11周、もしくは30分間の戦い。早朝に行われた予選同様、天候に恵まれたものの路面温度は20度近く上昇していた。PPは野村選手で、2番手は洞地選手。フロントローの壁をなんとしてでも崩したい3番手の森山選手の傍に並んだのは新原光太郎選手だ。この4人の中で鋭いダッシュを見せたのが新原選手で、森山選手をかわしたばかりか洞地選手にも迫らんばかりの勢いを見せた。5番手には清水啓伸選手が、そして佐藤凛太郎選手がひとつ順位を上げて6番手で続く。

 トップグループが通過した直後のS字で一台がストップしたため、さっそくセーフティカー(SC)が導入される。先導は2周に及ぶも、鈴鹿でのリスタートは誰もが慣れたものだからか、上位に順位変動はないまま、周回が重ねられていく。5周目になると野村選手と洞地選手、そして新原選手と森山選手が、それぞれ一騎討ち状態になった。

 しかし、ただでさえ抜きにくいと言われる鈴鹿。第2世代の新型車両は、背後に着くとダウンフォースが抜ける感覚が増したと言われる中、仕掛けようにも仕掛けられない状態が続いた。そしてデグナーでストップした車両を回収するため、またしてもSC導入に。最小限の先導で済むも、リスタートは再びオーバーテイクのチャンスにはならず。

 最後まで野村選手は洞地選手を、新原選手は森山選手を背後に置いたままフィニッシュ。その結果、野村選手が優勝を飾ることとなった。「スタートをしっかり決められました。2回のSC明けも去年から何回も経験していたので、そこも落ち着いてできたので、本当にうれしいです。明日も今日のように頑張ります。引き離せなかったのは洞地選手のペースが良さそうだったので、チームメイトですからデータも見ながら詰められるところは詰めて、明日はもっと盤石で勝てるよう、頑張ります」と2023シーズン、スポーツランドSUGOでの第9戦以来の勝利を挙げた野村選手は語った。

 そして「鈴鹿はダウンフォースが抜けてしまうので、富士とは違って全然かわしにいけなくて、ちょっと悔しいです。明日に向けてデータを見ながらセッティングを微調整して、明日はどうすれば抜けるかしっかり考えてレースしたいです」と語るのは2位の洞地選手。

 3位で初の表彰台獲得となった新原選手は、「スタートが良かったという点では自分でも満足していますが、レースペースがトップ2と比べて劣っているので、そこはクルマの問題と自分の問題両方があるので要改善ですね。初めて上った表彰台から今までお世話になった方々の顔が見られて良かったです」と反省と喜びを込めたコメントをくれた。

 インディペンデントクラスは、3番手からスタートの鳥羽選手がエンジンストールで遅れたのに対し、今田選手とDRAGON選手がしっかり決めて、さっそく一騎討ちを繰り広げる。だが、「スタートで何台か(チャンピオンクラスに)ストール車両がいるだろうなと思ったら、やっぱりいて、混乱をうまく抜け切れて良かったですね。そこからは鈴鹿ですし、普通に走っていれば、そうそう抜かれることはないので、守るように走りました」と語る今田選手が、シナリオどおりの展開でまず1勝。

 対して2位だったDRAGON選手は、「スタートしかチャンスはないと思っていたし、始まってみるとやっぱりそこだけでした。正直、今田さんに対して勝負を仕掛けるところまで近づけなかったです。明日は逆になってくれればいいなと思っています」と語っていた。3位は第2戦のウィナーKENTARO選手が獲得した。

第3戦チャンピオンクラス優勝は野村選手。
第3戦での着実な走りを次戦につなげられるか野村選手に注目が集まった。
2位は洞地遼大選手(HFDP with B-Max Racing)、3位は新原光太郎選手(YBS Verve 影山 MCS4)。
第3戦チャンピオンクラス表彰の各選手。
第3戦インディペンデントクラス優勝は今田選手。
2位はDRAGON選手、3位はKENTARO選手(Baum Field F4)。
第3戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

第4戦 決勝

 土曜日の天気予報では、日曜日は未明から雨が降ると伝えていたが、これが外れてくれた。決勝レース第4戦のスタート進行前に、わずかに雨が降ったものの、グリッドに全車並べられるころには路面は乾いたことで、ウェットタイヤを選ぶ車両は1台もなかった。スタート直後の争いは、トップ3の野村選手、森山選手、そして洞地選手の順はそのままながら、6番グリッドから佐藤凛太郎選手が、そして8番グリッドから新原選手が素早く飛び出し、3人に続いて1コーナーを駆け抜けていった。

 1周目を終えた段階では、トップの野村選手から長い列ができていたが、次の周にはトップ争いが三つ巴に変わっていく。3周目に森山選手がファステストラップを記録して、序盤の勢いでは勝ったものの、やはりオーバーテイクまでには至らない。逆に終盤に入って森山選手のペースが鈍り始めたのを洞地選手は見逃さなかった。8周目の1コーナーでアウトから被せていくも、ここはガードラインをしっかりトレースした森山選手。

 その攻防が、野村選手には福音になった。「ここだ!」とばかりにスパートをかけて、後続のふたりを振り切ったのだ。森山選手と洞地選手のバトルは最後まで続くも、ポジションが入れ替わることはやはりなかった。

 だが、激しかったのが4番手争いだ。佐藤凛太郎選手を新原選手が激しく攻め立てて隙をうかがう。そして5周目の1コーナーで、新原選手が一気に前に。この後、新原選手は逃げていったのに対し、佐藤凛太郎選手のペースが上がらない。次々と襲いかかってくるライバルを抑え切れず、9位でレースを終えることになった。

 連勝を飾った野村選手は、これで一躍ランキングのトップに浮上。「スタートは昨日と同じように決められましたし、最後までペース良く走れました。この2連勝でチームとしても勢いづくと思うので、これからもこの調子で行けるように頑張ります」とコメント。

 そして2位でゴールの森山選手もランキングは2番手に。「ファステストラップを獲れたのはポジティブな部分ですしバランス的にはすごく良かったんですが、最後にペースが上がらなかったのは何なのか、データを見てエンジニアさんと話をして、次の富士と鈴鹿で対処できるようにします。金曜日までの悪い流れからここまで来られたのだから、2位で終われたのは自分にとって自信になります」とレース後に語っていた。

 3位は「鈴鹿はペースが良くてもちょっと抜けないです。厳しかったです」と、悔しそうに語った洞地選手が獲得。そして「まずスタートから調子に乗れたのが良かったと思います。8番手からのスタートでしたから、ひとりずつ抜いていくだけのペースがなかったので、スタートでうまくクラッチを合わせられたのがすごく大きかったと思います。予選でもっと前の方を獲れていたら、また違った順位での争いに絡めたかもしれないので、そこは反省点ですね」と振り返った新原選手が4位でゴールした。

 インディペンデントクラスでは、スタートで今田選手がDRAGON選手の前に出るが、「このまま行けばまた勝ちだと思ったのですが、2コーナーで行き場がないぐらい渋滞していて、ちょっと左に押し出された感じになって」と、今田選手は苦しい展開になった。これに対し、DRAGON選手は「ストールしたチャンピオンクラスのクルマに引っかかって、やられたなって思っていたんです。でも絶対チャンスあるからって、ずっと見ていたんですよ。そしたら今田さんが詰まる方向に行ったので、ここしかないってインに行って」と、トップに躍り出る。

 さらに今度はスタートを決めた鳥羽選手を加え、三つ巴のバトルが繰り広げられるが、鳥羽選手は5周目のNIPPOコーナーで「今田さんの後ろにつけましたがダウンフォースが抜けちゃって、グラベルにリアを落としてしまいました」と、順位を落としてしまう。

 最後まで今田選手とのトップ争いは続いたものの、「自分がミスせずSCさえ入らなければ逃げ切れるって思って走りました」と今季2勝目を挙げたDRAGON選手。さらに言葉を続けた。「鈴鹿でSCが入らなかったのは初めてです」と。調べてみると、2023シーズンは14戦すべてSCが導入され、最後に導入されなかったのは2022年富士スピードウェイでの第6戦。鈴鹿では2020シーズンの第6戦以来で、その年にDRAGON選手は出場していなかったから、その記憶はまったく正しかったことになる。

第4戦チャンピオンクラス優勝は野村選手。
鈴鹿大会での連勝で野村選手はポイントリーダーに躍り出た。
2位は森山冬星選手(HELM MOTORSPORTS F4)、3位は洞地選手。
第4戦チャンピオンクラス表彰の各選手。
第4戦インディペンデントクラス優勝はDRAGON選手。
2位は今田選手、3位は中島功選手(Rn.SHINSEI.MCS4)。
第4戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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