各クラスで若手が大活躍! 全日本ラリー選手権 第2戦は若手ドライバーの健闘が光った

レポート ラリー

2024年4月19日

全日本ラリー選手権 第2戦「ツール・ド・九州2024 in 唐津」が、佐賀県唐津市周辺を舞台に4月12~14日の日程で開催された。JN1クラスはシュコダ・ファビアR5を駆る新井大輝/松尾俊亮組がトップを譲らない安定の走りを見せてフィニッシュ、久々の勝利を挙げた。

2024年JAF全日本ラリー選手権 第2戦「ツール・ド・九州 2024 in 唐津」
開催日:2024年4月12~14日
開催地:佐賀県唐津市
主催:GRAVEL、FMSC

 昨年、長雨の影響により唐津市浜玉町の山間部で大規模な土砂崩れが発生し、例年ラリーに使用していた林道も被害を受けたが、行政と主催クラブの連携によって、なんとか今年の開催に漕ぎつけることとなった。とくにこれまでこのラリーで数々のドラマを生んできた林道三方山線は、リエゾン区間にまだ土砂崩れの爪痕が残り、当時の甚大な被害の状況がうかがえるほどだ。

 2日間で行われるラリーは、両日ともに3か所のSSをサービスを挟んで2回ずつ走行する。このラリーではお馴染みの三方山を縫うように走る複数の林道を新たなレイアウトでつなげたステージや、九州のラリーでは珍しい高速ステージ、20年前に一度きり設定されたステージ、2月に降った長雨の影響により路面のほとんどが苔に覆われた難ステージなど、それぞれ特徴のあるSSが用意されている。大会期間中の天候は、2日間とも晴れときどき曇り。早朝はやや冷え込んだものの、両日とも最高気温が25度付近まで上がるコンディションとなった。

佐賀県唐津市郊外のボートレースからつ内駐車場にサービスパークが置かれ、ここを拠点にラリーが展開された。
ボートレースからつイベントホールで行われた開会式セレモニー。冒頭では数々のラリー競技における日本選手権大会を主催した故・七田定明氏に黙祷が捧げられた。
開会式では唐津市の峰達郎市長が挨拶を務め、選手たちを激励。
今大会にはFIAスポーツ環境持続可能性委員会のパスカル・ジラード氏が訪れ、日本のラリー競技の環境対応に関する実態調査を行った。開会式では選手の前で挨拶、サービスパークでは各役務の視察を行い、セレモニアルフィニッシュではプレゼンターを務めた。
これまで唐津神社で祈祷やセレモニアルスタートが行われてきた唐津のラリー。今大会では、その唐津神社と「やまの休憩所・天の川」にPC(パッセージコントロール)を置き、観客や地域住民にとってラリーが身近に感じられる取り組みが行われていた。
SS8とSS10のリエゾンでは”蕨野(わらびの)の棚田”を通過するコースが選ばれた。この蕨野の棚田は唐津市相知町の蕨野地区にある現役の棚田で、「日本の棚田百選」や棚田では全国初となる「重要文化的景観」に選定されている。
WRCを始めとした世界選手権等の大会では報道陣向けのインタビューエリアが設けられているが、今大会では日本のラリーの振興を目的とする団体であるJRCAの協力によりサービスパークの一角に「メディアゾーン」が開設され、クラス上位選手のインタビューや写真撮影の機会に利用されていた。
サービスパークはさまざまな飲食店や展示車両で賑わっており、JAFブースでは俊敏性測定ゲーム「クイックアーム」を実施するなど、子供から大人まで楽しめる催しを行っていた。

JN1クラス

 JN1クラスは、SS1(MIKAERINOTAKI 1)で奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリスラリー2)がスタートからわずか1kmでコースオフするというハプニングが起きた中、開幕戦2位の新井大輝/松尾俊亮組(シュコダ・ファビアR5)がSS1から快走した。初日に設定された6本のSS中、5本のSSでベストタイムをたたき出し、2番手に40.2秒の差をつけて初日を折り返す。

 初日2番手には、開幕戦優勝の勝田範彦/木村裕介組(トヨタ・GRヤリスラリー2)がつける。SS1からSS3(SAYO LAKE 1)までのセクション1は、ターボのリストリクターが不調をきたしてクラス4番手と苦戦を強いられたが、サービスで修復した後はSS4(MIKAERINOTAKI 2)でベストタイム、SS5(AMANOGAWA 2)とSS6(SAYO LAKE 2)はトップと僅差のセカンドタイムをマークし、順位を押し上げてくる。3番手は一時2番手で快走を見せた福永修/齊田美早子組(シュコダ・ファビアラリー2 EVO)。

 ラリー2日目は新井大輝/松尾組と勝田/木村組、さらにレグ離脱して2日目にリスタートした奴田原/東組が、三つ巴の勝負を展開する。SS7(MIKAERINOTAKI Reverse 1)からSS11(AZAMENKOSE 2)まで0.1秒を競う僅差の勝負が展開されたが、初日のマージンを活かした新井大輝/松尾組が、最終SS(MIKAERINOTAKI Reverse 2)でマイナートラブルを防ぐためにペースを落とす余裕を見せ、新井大輝選手はJN1クラスでチャンピオンを獲得した2020年以来となる優勝を果たした。2位は勝田/木村組、3位には福永/齊田組がそれぞれ入賞した。

JN1クラス優勝は新井大輝/松尾俊亮組(Ahead Skoda Fabia R5)。
2位は勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS Rally2)、3位は福永修/齋田美早子組(OSAMU焼肉ふじ☆CTE555ファビア)。
JN1クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位の勝田/木村組、1位の新井大輝/松尾組、3位の福永/齊田組。

JN2クラス

 路面温度が極端に低かった開幕戦で苦戦を強いられたJN2クラスの三枝聖弥/船木一祥組(スバル・WRX STI)が、SS1からベストタイムを連発。SS5こそ開幕戦を制したTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(TGR MCC)の山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)に0.1秒差のベストタイムを奪われたものの、5本のSSでベストタイムをマークし、2番手の山田/藤井組に43.1秒差のマージンを築き、初日を折り返した。

 2日目も三枝/船木組がトップを守りきり、今年で26歳になる若手ドライバーが全日本初優勝を飾った。2位にはTGR MCCの山田/藤井組が入賞。3位は開幕戦の三河湾ラリーでは初日の終盤までクラストップに立ちながらも、初日の最終SSでコースアウトしてリタイアとなったTGR MCCの大竹直生/藤田めぐみ組(トヨタ・GRヤリス)が、SS8(WARABINONOTANADA 1)から4連続ベストタイムという猛プッシュを見せ、初日4番手から順位をひとつ上げて表彰台をつかんだ。

JN2クラス優勝は三枝聖弥/船木一祥組(名古屋スバル ラック DL WRX)。
2位は山田啓介/藤井俊樹組(FITEASYソミック石川GRYARIS)、3位は大竹直生/藤田めぐみ組(GR YARIS GR4 Rally)。
JN2クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の三枝/船木組。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

TGR MCC1位は山田/藤井組、2位は大竹/藤田組、3位はKANTA/保井隆宏組。

JN3クラス

 JN3クラスは、ラリー序盤は開幕戦2位の長﨑雅志/大矢啓太組(トヨタ・GR86)がリードするものの、SS4で開幕戦を制した山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)が一気に逆転。その山本/立久井組を初日の最終ステージとなるSS6で長﨑/大矢組が一気に逆転するという好勝負が展開された。

 2日目に入ると、ペースが上がらない山本/立久井組に対し、長﨑/大矢組が徐々にリードを広がる展開となり、「とくにレグ2は、次戦の久万高原に向けても良い感触をつかむことができました」という長﨑/大矢組が今季初優勝を飾った。2位に山本/立久井組、3位には2日目の終盤にベストタイムを重ね、激しく追い上げてくる曽根崇仁/竹原静香組(トヨタ・GR86)を振り切った上原淳/漆戸あゆみ組(スバル・BRZ)が入賞した。

JN3クラス優勝は長﨑雅志/大矢啓太組(NTP NAVUL GR86)。
2位は山本悠太/立久井和子組(SammyK-one ルブロスYHGR86)、3位は上原淳/漆戸あゆみ組(埼玉スバル・DL・KYB・シャフトBRZ)。
JN3クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の長﨑/大矢組。

JN4クラス

 開幕戦で4年ぶりに全日本優勝を飾った高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)が、この第2戦でも好調をキープしたJN4クラス。「唐津は得意なラリーなんです」と、2006年大会と全日本タイトルを獲得した2007年大会を連覇している高橋選手は、SS2でトップに立つと、その後は一度もトップの座を譲ることなく、開幕2連勝を果たした。

 2位は、レグ1を終えて「2日目は下りのSSが多いので、下りで勝負します」と語っていた西川真太郎/本橋貴司組(スズキ・スイフトスポーツ)が、その言葉どおり初日に9.4秒あったトップとの差を2日目は2.5秒差まで詰め寄ったところでラリーをフィニッシュ、僅差の表彰台となった。3位には一時はクラス2番手につける快走を見せた地元の黒原康仁/松葉謙介組(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

JN4クラス優勝は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)。
2位は西川真太郎/本橋貴司組(スマッシュDLモンスターitzzスイフト)、3位は黒原康仁/松葉謙介組(itzz YH TCSR AN スイフト)。
JN4クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の高橋/箕作組。

JN5クラス

 JN5クラスは今年で28歳になる全日本フル参戦2年目の河本拓哉/有川大輔組(マツダ・デミオ15MB)がSS1から快走。「クルマのセッティングは昨年と大きく変わっていませんが、全日本ラリーを経験することで少しずつ乗りこなせるようになってきました」という河本選手が、一度もトップの座を譲ることなく、昨年の第4戦久万高原ラリーに次ぐ全日本2勝目を挙げた。

 2位には、「サスペンションのスプリング変更が裏目に出て、アンダーステアに苦しみました」という開幕戦ウイナーの松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)が入賞。3位は上りのSS主体となったレグ1に苦しんだ大倉聡/豊田耕司組が獲得した。

JN5クラス優勝は河本拓哉/有川大輔組(DL・クスコ・WM・TWR・OTSデミオ)。
2位は松倉拓郎/山田真記子組(DL☆Gセキネン鹿ソニックラブカヤリス)、3位は大倉聡/豊田耕司組(AISIN GR Yaris CVT)。
JN5クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の河本/有川組。

JN6クラス

 昨年から9連勝中を記録するJN6クラスの天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・アクアGRスポーツ)が、このラリーでも2位以下を寄せつけず、開幕2連勝を達成。ラリー終盤はフロントサスペンションにマイナートラブルを抱え、「いつリタイアしてもおかしくない状況で、ペースを落とさなければならなかった」と言いながらも、2位に1分以上の差をつける独走だった。

 2位にはベテランの清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリスHV)が入賞、3位は三方山のステージを得意とし、このラリーには2輪駆動部門時代からスポット参戦している九州のベテラン、山北研二/塩濱浩之組(トヨタ・アクア)が獲得した。

JN6クラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DLアクアGR SPORT)。
2位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)、3位は山北研二/塩濱浩之組(バーテンダー03常磐産業DL翔恵龍アクア)。
JN6クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の天野/井上組。

フォト/CINQ、大野洋介、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

※掲載内容に不十分さがあったため、修正して再公開しました。

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