読めない天候がドライバーを翻弄した“まほろば決戦”。BC2クラスの若林拳人選手が感涙の4連勝を達成!

レポート ジムカーナ

2024年6月10日

全日本ジムカーナ選手権 第4戦「ALL JAPAN GYMKHANA in 名阪 まほろば決戦」が6月1~2日、奈良県山添村の名阪スポーツランド・Cコースを舞台に開催された。

2024年JAF全日本ジムカーナ選手権 第4戦「ALL JAPAN GYMKHANA in 名阪 まほろば決戦」
開催日:2024年6月1~2日
開催地:名阪スポーツランド Cコース(奈良県山添村)
主催:LAZY W.S

 2022年末に路面の大改修が行われてから2回目の全日本となる今大会には、全クラス合わせて147台のエントリーを集めた。改修前にあった凹凸やバンクがなくなり、全面がフラットになった一方で、このコースの大きな特徴となる段差が大きい縁石に対してどう対処するかが、コース攻略のひとつの鍵となる。

 ときには二輪走行に近い状態になりながらも、縁石を積極的に使って最短距離を狙うドライバーから、走行ラインから縁石を外し、走行距離は伸びても挙動を乱さずコーナリング速度を上げようとするドライバーまで、それぞれの思いでコース攻略に挑んだ。

 決勝前日の6月1日の公開練習日は天候に恵まれ、最高気温が28度と初夏を思わせる良好なコンディションとなったが、翌日の決勝日2日は、最高気温が18度と低い上に朝から灰色の雲が広がり、今にも雨が降り出しそうな天候となった。天気予報でも、朝から雨が降る予報から、11時から一時的に降る予報や午後から降る予報、中には夕方まで雨は降らない予報までさまざま。

 決勝日のコースレイアウトも、ウェットコンディションに対応すべく外周のハイスピード区間を省いたウェットコースが採用された。全日本ジムカーナ選手権は、決勝日はタイヤ1セットで2ヒートを走行する規定となっているため、とくに後半ゼッケンのクラスは第1ヒートから雨を想定したウェット用のセットアップで行くべきか、それともドライ路面を想定したセットアップで行くべきか、多くのドライバーが出走直前まで頭を悩ませる展開となった。

 実際には、第1ヒートは時折雨粒が落ちてくることもあったが、BC2クラスの後半まではドライコンディションでの戦いとなった。だが、BC2クラスの後半で強い雨が一気に降り、あっという間にウェットコンディションに変貌。BC3クラスは全車ウェットコンディションでの戦いとなったが、第2ヒートのインターバル中に雨は止み、路面はあっという間にドライコンディションへと変わった。

 PE1クラス、PE2クラスは路面の一部に濡れた区間が残ったために第1ヒートのタイムが決勝タイムとなったが、PN1クラス以降は第2ヒートのベストタイム更新ラッシュが続出。各クラスとも0.1秒を競う僅差の勝負が繰り広げられた。

ドライからウェット、そしてドライへとコンディションが変化した第4戦。それでもコンマ1秒の激しい争いとなった。
前半はテクニカルさが求められ、後半はスピードが乗る設定。縁石へのアプローチがポイントとなっている。

PE1クラス

 開幕から3連勝中のPE1クラス山野哲也選手(アルピーヌ・A110R)が、第1ヒートのホームストレートでブレーキのABS制御が不調となり、まさかのオーバーラン。第1ヒートのトップタイムは牧野タイソン選手(アルピーヌ・A110S)に0.477秒差をつけた大橋政哉選手(アルピーヌ・A110S)が奪い、山野選手はトップから13秒以上遅れたクラス最下位で第1ヒートを終えた。

 雨は止んだものの、まだコースに濡れた箇所が残る第2ヒートは、各ドライバーともタイムダウンで終わり、第1ヒートトップの大橋選手が逃げ切り今季初優勝を獲得。その中、山野選手がハーフウェット路面の第2ヒートではクラス唯一となる1分10秒台のタイムをマーク。第1ヒートのタイムで2位となった牧野選手には0.686秒届かなかったものの、第1ヒート3番手の古谷知久選手(ポルシェ・GT3RS)のタイムを0.316秒上回り、3位に食い込んだ。

PE1クラス優勝は大橋政哉選手(DLμG-LFWA110S)。
今シーズンはここまで3位入賞が2回の大橋選手。大きな1勝を手に入れ、タイトル争いに食い下がった。
2位は牧野タイソン選手(DL★Rz速心A110S)、3位は山野哲也選手(EXEDY71RS A110R)。
PE1クラスの表彰式。左から2位の牧野選手、1位の大橋選手、3位の山野選手、4位の古谷知久選手。

PE2クラス

 PE2クラスは、今シーズン若手ドライバーとのダブルエントリーでジムカーナの新たな活性化を目指し、「チャレンジPE2プログラム」を立ち上げた河本晃一選手(マツダ・ロードスターRF)が、「これまでの競技生活のなかで、ベスト3に入る走りができました」と第1ヒートでトップタイムをマーク。

 第2ヒートは全車タイムダウンに終わり、第1ヒートのタイムで逃げ切った河本選手が今季初優勝を飾った。2位は「名阪はドライ路面の経験が少ないのですが、その中で精一杯走ることができたと思います」というシリーズランキングトップの下村渉選手(トヨタ・GR86)が獲得、3位には河本選手と同じチームの有田光徳選手(マツダ・ロードスターRF)が入賞した。

PE2クラス優勝は河本晃一選手(CP2.BSロードスターRF)。
第1ヒートの1分13秒862で逃げ切った河本選手が、力強いナンバー1サインを見せて勝利の喜びを表現。
2位は下村渉選手(DLαACWPリジットGR86)、3位は有田光徳選手(BSエリアMIZUロードスター)。
PE2クラスの表彰式。左から4位の芳賀絢音選手、2位の下村選手、1位の河本選手、3位の有田選手、5位の砂田光恵選手。

PN1クラス

 第3戦を制した斉藤邦夫選手(トヨタ・ヤリス)が、第1ヒートでクラス唯一となる1分13秒台のタイムでトップに立ったPN1クラスは、第2ヒートに入ってもベストタイムが更新されず、斉藤選手自身も第2ヒートはタイムダウンに終わり、このまま斉藤選手が逃げ切るかと思われた。

 だが、クラス最終走者の朝山崇選手(トヨタ・ヤリス)が大逆転。「本来であれば第1ヒートからしっかり結果を残さなくてはいけませんよね」と謙遜しながらも、今季3勝目を獲得。2位には「前回(第3戦)の借りを(朝山選手に)返された感じ。言葉がありませんね」という斉藤選手が入賞。3位は第2戦もてぎで全日本初表彰台を獲得した長畑年光選手(トヨタ・ヤリス)が、今季2回目となる表彰台を獲得した。

PN1クラス優勝は朝山崇選手(DLETP・BPFヤリスITO)。
「第1ヒートの走りが悪すぎ、第2ヒートは改善点がたくさんありました。運良く路面が乾いてくれたのが良かったです」と朝山選手。
2位は斉藤邦夫選手(ネッツ群馬ジースパイス ヤリス)、3位は長畑年光選手(DL☆熊王☆身延AZURヤリス)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の小田雅史選手、2位の斉藤選手、1位の朝山選手、3位の長畑選手、5位の中根卓也選手、6位の井上賢二選手。

PN2クラス

 PN2クラスは、昨年シリーズ4位に入賞した古田公保選手(マツダ・ロードスター)が1分11秒356のタイムで第1ヒートのトップタイムをマーク。路面が乾いた第2ヒートに入ると小野圭一選手(マツダ・ロードスター)が1分11秒台に飛び込んでくるが、古田選手のタイムには届かず。その古田選手は第2ヒートを脱輪ペナルティという結果で終える。

 第1ヒート2番手の中田匠選手(マツダ・ロードスター)が、「第1ヒートから感触が良く、第2ヒートも集中を切らさず、スタートした瞬間からタイヤが路面をしっかり食う感覚を得ることができました」とベストタイムを更新。自身初となる全日本初優勝を飾った。2位に古田選手、3位に小野選手と、新世代ドライバーたちが表彰台に並ぶ結果となった。

PN2クラス優勝は中田匠選手(DLクスコWm小倉ロードスター)。
勝利が決まった瞬間、歓喜のあまりその場にへたり込んだ中田選手。悲願の全日本初優勝を遂げた。
2位は古田公保選手(DL505XPLロードスター)、3位は小野圭一選手(DLクスコWm軽市ロードスター)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の小林規敏選手、2位の古田選手、1位の中田選手、3位の小野選手、5位のSHUN選手、6位の箕輪雄介選手。

PN3クラス

 第1ヒートで8名のドライバーが1分11秒台にひしめき合う激戦区となったPN3クラス。第1ヒートトップの川北忠選手(マツダ・ロードスターRF)が、第2ヒートで1分10秒台に突入。さらに第1ヒートは0.018秒差で2番手だった大多和健人選手(マツダ・ロードスターRF)が、第2ヒートは川北選手を0.192秒逆転してベストタイムを更新した。

 そしてクラス最終走者のユウ選手(マツダ・ロードスターRF)も1分10秒台に飛び込んでくるが、2番手の川北選手に0.043秒届かず。わずか0.1秒を競う熾烈な戦いを制したのは大多和選手で、今季3勝目を獲得。川北選手が2位、ユウ選手が3位に入賞した。

PN3クラス優勝は大多和健人選手(熊王TMW身延牧速ロードスター)。
大多和選手は今シーズン4戦3勝と波に乗っており、シリーズポイントのアドバンテージを築いた。
2位は川北忠選手(ORC AD DLロードスター)、3位はユウ選手(BS DRONE☆ロードスター)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の野島孝宏選手、2位の川北選手、1位の大多和選手、3位のユウ選手、5位の永川悠太選手、6位の久保真吾選手。

PN4クラス

 PN4クラスは、第1ヒートでトップタイムをマークした奥井優介選手(トヨタ・GRヤリスGRMN)が第2ヒートもベストタイムを更新。第1ヒートは0.451秒差で2番手だった津川信次選手(トヨタ・GRヤリス)が「奥井選手は第1ヒートも第2ヒートも良い走りだった。自分も思わず力が入りすぎてしまいました」と第2ヒートはわずかにタイムダウン。

 結果、両ヒートでトップタイムを刻んだ奥井選手が、津川選手に並ぶ今季2勝目を獲得した。2位に津川選手、3位には第2ヒートで津川選手に0.195秒差に迫った松本敏選手(トヨタ・GRヤリスGRMN)が入賞した。

PN4クラス優勝は奥井優介選手(DLATSRSK茨トヨヤリス犬)。
奥井選手は「第1ヒートでタイムを残せたので、第2ヒートは思いっ切り攻めることができました」と振り返る。
2位は津川信次選手(DL☆BRIDE☆URGヤリス)、3位は松本敏選手(ADVICS☆TJ☆DLヤリス)。
PN4クラスの表彰式。左から4位の折茂紀彦選手、2位の津川選手、1位の奥井選手、3位の松本選手、5位の亀山伸一選手、6位の上本昌彦選手。

BC1クラス

 第1ヒートでは志村雅紀選手(スズキ・スイフトスポーツ)を筆頭に、0.112秒差で小武拓矢選手(スズキ・スイフトスポーツ)、小武選手から0.064秒差で西井将宏選手(ホンダ・インテグラ)、西井選手から0.094秒差で中山務選手(ホンダ・CR-X)、中山選手から0.023秒差で合田尚司選手(ホンダ・シビック)と、バラエティに富んだ車種が僅差で並ぶ勝負が展開されたBC1クラス。

 第2ヒートに入ると、第1ヒートトップの志村選手がベストタイムを更新してくる中、細木智矢選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第2ヒートはしっかりと修正してクラス唯一となる1分9秒台のタイムをマーク。第2ヒートの逆転で第3戦に続く2連勝を飾った。2位には、第1ヒートのパイロンペナルティで幻のベストタイムとなった久保田尊治選手(ホンダ・シビック)が、第2ヒートで志村選手のタイムを抜き入賞。3位には、第1ヒートトップの志村選手が入賞した。

BC1クラス優勝は細木智矢選手(MJTDLSWKカヤバスイフト)。
「全日本ダートトライアルから1週間しか経っていないので、第1ヒートはドライビングがダートラ仕様のままでした」という細木選手。
2位は久保田尊治選手(BSRAC渦Motysシビック)、3位は志村雅紀選手(LAILE☆カヤバYHスイフト)。
BC1クラスの表彰式。左から4位の高江淳選手、2位の久保田選手、1位の細木選手、3位の志村選手、5位の喜多治人選手、6位の小武拓矢選手。

BC2クラス

 BC2クラスは、第1ヒートでクラス後半ゼッケンの車両が走行中に突然強い雨が降り出し、フルウェットコンディションとなった。だが、第2ヒートは天候が回復してドライコンディションに。その中、昨年のチャンピオン・広瀬献選手(ホンダ・S2000)が1分8秒台にタイムを乗せベストタイムを更新してくる。

 一方で「名阪は苦手意識があります」と語っていたクラス最終走者の若林拳人選手(ロータス・エキシージ)が、オーバーオールタイムとなる1分7秒526のタイムでフィニッシュ。全クラスで唯一となる開幕4連勝を飾った。2位に広瀬選手、3位は第1ヒートをウェットコンディションで走行した藤井雅裕選手(マツダ・RX-7)が獲得した。

BC2クラス優勝は若林拳人選手(BS若自速心コ犬ZRエキシージ)。
「今回はウェットコースで外周区間がなかったのも、僕にとってはラッキーでした」とコメントした若林選手。
2位は広瀬献選手(WMマロヤBS林歯科S二千亜舎)、3位は藤井雅裕選手(BPF☆TY☆マジックRX-7)。
BC2クラスの表彰式。左から4位の野本栄次選手、2位の広瀬選手、1位の若林選手、3位の藤井選手、5位の渡辺公選手、6位の金子進選手。

BC3クラス

 第1ヒートは全車フルウェット路面での走行となったBC3クラス。仕切り直しとなった第2ヒートでベストタイムの更新ラッシュとなる中、茅野成樹選手(トヨタ・GRヤリス)がベストタイムを更新。天気予報では、再び強い雨が降ってくるという状況だったが、大橋渡選手(スバル・インプレッサWRX STI)が茅野選手を逆転、今季2勝目を挙げた。

 なお第1ヒートトップの菱井将文選手(トヨタ・GRヤリス)は、「(ドライ路面の)第2ヒートは、後半タイヤがきつかった」と茅野選手に0.024秒届かず3位となった。

BC3クラス優勝は大橋渡選手(DLプレジャーインプレッサ)。
大橋選手は「スタート前にフロントガラスにポツポツと雨粒が落ち出していたけど、集中を切らさずに会心の走りができました」と勝因を語った。
2位は茅野成樹選手(EXEDY☆SCTAヤリスDL)、3位は菱井将文選手(BS・クスコGRヤリス)。
BC3クラスの表彰式。左から4位の一色健太郎選手、2位の茅野選手、1位の大橋選手、3位の菱井選手、5位の堀隆成選手、6位の桃井守選手。

フォト/CINQ、大野洋介 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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