SA1クラス河石潤選手、16年ぶりのチャンピオン確定

レポート ダートトライアル

2024年8月9日

8月3~4日に福島県二本松市郊外のエビスサーキット新南コース(スライドパーク)で開催された、全日本ダートトライアル選手権 第6戦「ALL JAPAN SUPER DT in EBISU」。今シーズンのラウンドはこの第6戦を含め残り3戦。各クラスのチャンピオン争いはいよいよ大詰めを迎える。

2024年JAF全日本ダートトライアル選手権 第6戦「ALL JAPAN SUPER DT in EBISU」
開催日:2024年8月3~4日
開催地:エビスサーキット新南コース スライドパーク(福島県二本松市)
主催:Team-F、SiF

 2022年にサーキット&ドリフトコースからダートトライアルコースに全面改修を行ったエビスサーキットの新南コースは、昨年末にJAFカップオールジャパンダートトライアルが開催されている。そして全日本ダートトライル選手権を開催するのは、今回が初だ。

 従来の舗装部分の一部を剥がして砕いたアスファルトの破材を利用して新たにつくられたコースは、低μながらもうねりやギャップがないフラットな路面が特徴。また、コースに敷き詰められた破材が掃け、舗装部分が顔を出すとタイヤのグリップ力が一気に上がるので、攻略が難しいコースのひとつに挙げられている。

 コースレイアウトは、新南コースの外周セクションをベースに、前半に2か所、ゴール前に1か所のパイロンセクションが設定された。このパイロンセクションを、いかにコンパクトに素早くクリアするかが、勝敗に大きく影響している。

 決勝前日の7日は、熱中症や体調不良のために公開練習をパスする選手が出るほど、真夏の太陽が路面を照りつけていた。しかし決勝日の8日は、時折雲が太陽を覆うコンディション。午後には一時小雨も降ったが、すべてのクラスで第2ヒートのタイムが決勝タイムとなった。

新南コースで初開催となった全日本ダートトライアル選手権。パイロンセクションが設けられ、コースにアレンジが加えられている。
選手から「滑る部分とグリップする部分が走行するごとに変化するため、路面の見極めが難しい」との声も聞こえた。
動態保存されたグループAラリーカーが展示され、選手からギャラリーまで注目を集めた。

SA1クラス

 今シーズン3勝を挙げている河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)がチャンピオン確定に王手をかけているSA1クラスは、このラウンドを制すると逆転チャンピオンの可能性がある古沢和夫選手(三菱・ミラージュ)が、第1ヒートのトップを奪う。

 ベストタイム更新ラッシュとなった第2ヒートは、志村雅紀選手(スズキ・スイフトスポーツ)がベストタイムを大きく更新。第1ヒートトップの古沢選手は志村選手に1.635秒届かず2位となり、2019年にジムカーナからダートトライアルに転向した志村選手が、全日本ダートトライアルでの初優勝を獲得した。また、河石選手が3位に入賞し、2008年以来16年ぶりとなる全日本チャンピオンが確定した。

SA1クラス優勝は志村雅紀選手(LAILE☆カヤバYHスイフト)。
ジムカーナとダートトライアルの“二刀流”である志村選手が、ダートトライアルで待望の初勝利を飾った。
2位は古沢和夫選手(YHテイン☆セラメタミラージュ)、3位は河石潤選手(モンスタースポーツDLスイフト)。
SA1クラスの表彰式。左から2位の古沢選手、1位の志村選手、3位の河石選手、4位の花見誠選手。
河石選手がSA1クラスのチャンピオンを確定させた。

PNE1クラス

 第1ヒートのトップを奪った葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第2ヒートでも2位以下を1秒以上引き離す走りで快走。シリーズランキングトップの小山健一選手(スズキ・スイフトスポーツ)に並ぶ今季2勝目を獲得した。

 2位は「パイロンセクションのサイドターンをもう少し練習しないとダメだね」と反省する小山選手が獲得。3位には「第2ヒートのグリップする路面をうまく使えませんでした」という鈴木正人選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

PNE1クラス優勝は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)。
第1ヒートトップだった自身のタイムをさらに4秒以上も更新、葛西キャサリン伸彦選手が両ヒートを制した。
2位は小山健一選手(ADLベリティーMSスイフト)、3位は鈴木正人選手(スマッシュSRP33スイフト)。
PNE1クラス表彰の各選手。

PN1クラス

 これまで4戦で4人のウイナーが誕生するという混戦模様のPN1クラスは、前戦の第5戦でAT仕様のホンダ・フィットからMT仕様のホンダ・フィットに乗り換えた工藤清美選手が、待望の今季初優勝を獲得。チャンピオン争いに名乗りを上げた。

 2位には第1ヒートのミスコースを第2ヒートで挽回したシリーズランキングトップの飯島千尋選手が入賞し、シリーズ2番手との差を拡大。3位は第1ヒート2番手の好ポジションにつけた若手の南優希選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、今シーズン2回目となる表彰台3位を獲得している。

PN1クラス優勝は工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。
今シーズンの工藤選手は序盤戦が不調ながら、前戦の切谷内で表彰台を獲得、そしてようやく勝利へとたどり着いた。
2位は飯島千尋選手(SPG木輪舎☆DLスイフト神速)、3位は南優希選手(DLWMクスコスノコ藤スイフト)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の奈良勇希選手、2位の飯島選手、1位の工藤選手、3位の南選手、5位の太田智喜選手、6位の本道治成選手。

PN2クラス

 PN2クラスは「新南コースに合わせたセッティングをうまくできました」という佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、両ヒートで後続を大きく引き離す走りを披露し、第5戦に続き2連勝を獲得。シリーズポイントトップに立つとともに、タイトル獲得に王手をかけた。

 2位には「第1ヒートが悪すぎたので、一度頭の中をリセットして第2ヒートを攻めました」という中島孝恭選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞。3位は「細かいターンが苦手なんです」という山田将崇選手(スズキ・スイフトスポーツ)が獲得した。

PN2クラス優勝は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
佐藤選手は前戦の切谷内からの連勝となり、シリーズランキングもトップに浮上。全身で喜びを表現した。
2位は中島孝恭選手(DLルブロスTEIN☆スイフト)、3位は山田将崇選手(AIG☆TS-S☆DLスイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から2位の中島選手、1位の佐藤選手、4位の増田拓己選手。3位の山田選手は欠席。

PN3クラス

 PN3クラスは、AT仕様のBRZで第1ヒートを制した佐藤秀昭選手が、第2ヒートでもベストタイムを更新し、今シーズン初優勝とともにPN3クラスではAT車両の初優勝を奪った。2位には、佐藤選手に0.09秒差に迫った竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が入賞。

 竹本選手のシリーズポイントランキングは2番手のままだが、有効戦数の関係で1戦分の余裕ができ、シリーズチャンピオン獲得に逆王手をかける結果となった。3位には「自分の3位入賞よりも、佐藤選手のAT車両が優勝できたことがうれしいです」という小関高幸選手(スバル・BRZ)が入賞した。

PN3クラス優勝は佐藤秀昭選手(DL・KIT・BRZ-AT)。
Team-KITで1位と3位を獲得。チーム代表の小関高幸選手(RJ2024DLKITBRZ)も佐藤選手のAT車両クラス初優勝を喜んでいた。
2位は竹本幸広選手(YH・KYB・スラパ・GR86)、3位は小関選手。
PN3クラスの表彰式。左から4位のパッション崎山選手、2位の竹本選手、1位の佐藤選手、3位の小関選手、5位の浦上真選手。6位の和泉泰至選手は欠席。

Nクラス

 第1ヒートは岸山信之選手、三枝光博選手、宝田ケンシロー選手とトヨタ・GRヤリス勢が上位を独占したNクラス。第2ヒートは「小雨が降ったことと曇り空になったことで路面温度が高くなりすぎず、タイヤの特性をうまく引き出せたと思います」という細木智矢選手がベストタイムを更新。

 宝田ケンシロー選手が0.05秒差、三浦陸選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が0.353秒差に迫るものの、細木選手がそのまま逃げ切り開幕戦以来となる今シーズン2勝目を挙げた。

Nクラス優勝は細木智矢選手(MJTDLSWKレイルランサー)。
「今回のコースはジムカーナを経験していることがすごく役に立ちました」と勝因を語る細木選手。
2位は宝田ケンシロー選手(YHオクヤマFT小松GRヤリス)、3位は三浦陸選手(YHレプソルFUACランサー)。
Nクラスの表彰式。左から4位の岸山信之選手(代理)、2位の宝田選手、1位の細木選手、3位の三浦選手、5位の矢本裕之選手、6位の三枝光博選手。

SA2クラス

 SA2クラスは、第1ヒート2番手の岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が、第2ヒートで第1ヒートトップの浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)を逆転し、待望の全日本初優勝を獲得。2位に浜選手が入賞したため、シリーズポイントでは岡本選手と浜選手が同点トップに並ぶ結果となった。

 3位には、「GRヤリスのドライビングが思いのほか難しかったけど、少しずつ上向いてきている。残り2戦のどちらかでは勝ちたいね」という北村和浩選手(トヨタ・GRヤリス)が入賞した。

SA2クラス優勝は岡本泰成選手(DLアルテックおかつねランサー)。
ベテランひしめくSA2クラスで悲願の初勝利を遂げた岡本選手。ランキングも首位タイに浮上!
2位は浜孝佳選手(XPL・ADVANランサー)、3位は北村和浩選手(MJT☆Tガレージ☆DLヤリス)。
SA2クラスの表彰式。左から4位の荒井信介選手、2位の浜選手、1位の岡本選手、3位の北村選手、5位の林軍市選手、6位の増村淳選手。

SC1クラス

 第5戦切谷内での転倒リタイアから復活を果たしたSC1クラスの鶴岡義広選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第1ヒートを制する。だが第2ヒートは「前日の公開練習から調子が良く、第1ヒートは気負ってしまったけど第2ヒートは冷静に攻めることができました」という坂井秀年選手(ホンダ・シビック)が逆転。

 坂井選手は2022年の第7戦タカタ以来、2年ぶりの全日本優勝を飾った。2位にシリーズランキングトップの山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が入賞し、2年連続のタイトル獲得に王手。3位には、第1ヒートトップの鶴岡選手が入賞した。

SC1クラス優勝は坂井秀年選手(MARKS藤井R DLシビック)。
ナンバー1サインを掲げて久しぶりの優勝の余韻に浸る坂井選手。第2ヒートで見事な逆転劇を見せてくれた。
2位は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)、3位は鶴岡義広選手(S・DL・クスコ・WMスイフト)。
SC1クラスの表彰式。左から2位の山崎選手、1位の坂井選手、3位の鶴岡選手、4位の森大士選手。

SC2クラス

 SC2クラスは亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)が、「ロスがないよう、丁寧に走りました」と、第2ヒートでベストタイムを更新して逆転優勝し、3連勝を獲得。シリーズチャンピオン獲得に王手をかけた。

 2位は「最後のターンで自分を抑え切ることができませんでした」という第1ヒートトップの上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションX)が獲得。3位には「また亀田選手にやられてしまいました。切谷内、エビスと細かいコースが続いたので、丸和とタカタではダイナミックに攻めたいと思います」という坂田一也選手(三菱・ランサーエボリューションX)が入賞した。

SC2クラス優勝は亀田幸弘選手(YH栗原オート企画インプレッサ)。
スナガワから3連勝を遂げた亀田選手がシリーズランキング首位を堅守。次戦で決めるか注目が集まる。
2位は上村智也選手(ナナハitzzYHランサー)、3位は坂田一也選手(DLグローバルランサー)。
SC2クラスの表彰式。左から4位の吉村修選手、2位の上村選手、1位の亀田選手、3位の坂田選手、5位の大西康弘選手。

Dクラス

 Dクラスは第1ヒートを6番手で折り返した田辺剛選手(三菱・ミラージュ)が、「ジムカーナの走らせ方とダートトライアルの走らせ方をうまくミックスさせることができました」と、第2ヒートで大逆転。昨年の第4戦スナガワラウンド以来となる今シーズン初優勝を飾った。

 2位には「今の時点で原因が分かっていないけど、一瞬エンジンが吹け上がらずにリズムが崩れました」という炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が入賞。「タイヤの良いところは出し切ってると思うけど、エビスのコース攻略……、難しいですね」という鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)が3位を獲得。

 また、このラウンドを制すると今シーズンのタイトルが確定する田口勝彦選手は鎌田選手に0.005秒差で4位となり、タイトル確定は次戦以降に持ち越すこととなった。

Dクラス優勝は田辺剛選手(SPヤマダTRSYHミラージュ)。
目が冴える快走を披露した田辺選手。1分25秒台の争いから抜け出し、唯一1分24秒台でフィニッシュした。
2位は炭山裕矢選手(ZEALbyTSDLミラージュ)、3位は鎌田卓麻選手(itzzオクヤマDL栗原BRZ)。
Dクラスの表彰式。左から2位の炭山選手、1位の田辺選手、3位の鎌田選手、4位の田口勝彦選手。

フォト/CINQ、大野洋介 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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