2025年のF1第3戦・日本グランプリは鈴鹿サーキットに26万6000人が来場! 王者の意地を見せたマックス・フェルスタッペン選手がポール・トゥ・ウィンで今シーズン初勝利!!

レポート レース

2025年4月14日

2025年のFIAフォーミュラ1世界選手権シリーズ第3戦・日本グランプリが、4月4~6日にかけて三重県の鈴鹿サーキットで開催され、3日間合計で26万6000人もの来場者数を集めた。これはF1鈴鹿開催が再開されて以来過去最多となり、大きな盛り上がりを見せた。

2025 FIA Formula 1 World Championship Round3
2025 FIA FORMULA 1 世界選手権シリーズ 日本グランプリレース
Formula 1 Lenovo Japanese Grand Prix 2025

開催日:2025年4月3~6日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
オーガナイザー:SMSC

鈴鹿サーキットを舞台に開催されるF1日本グランプリ。春開催に変更されて2回目となった今大会は、第2戦中国GPの2週間後、4月4~6日にシリーズ第3戦として開催された。
3月27日にOracle Red Bull Racing移籍が発表された角田裕毅選手。今年の日本グランプリの中心は間違いなく角田選手で、事前のファンイベントから大きな期待が寄せられた。
鈴鹿サーキットに駆けつけた観客は、公式日程初日の金曜は6万人。土曜は9万1000人、日曜は11万5000人を集め、3日間合計で2009年以降では最多となる26万6000人を数えた。

金曜午前には平川亮選手がBWT Alpine F1 Teamでプラクティス1を走行

 FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)シリーズのなかでも、伝統ある一戦として知られる鈴鹿サーキットでのF1日本グランプリ。開催時期が春に移って2回目を迎えたが、今回は大会1週間前に角田裕毅選手のOracle Red Bull Racing移籍が発表され、日本のF1ファンは大いに盛り上がった。その影響もあってか、鈴鹿サーキットには木曜日から多くのファンが駆けつけて、ピットウォーク・イベントは大盛況。開幕前から早くも熱気に包まれた。

 さらに4日(金)に行われたプラクティス1では、今年の1月にBWT Alpine F1 Teamリザーブドライバーに就任した平川亮選手が出走することにもなっていた。平川選手にとっては、昨年の最終戦アブダビGP以来2度目となる”FP1出走”だが、慣れ親しんだ鈴鹿が舞台ということで、順調にチームが示すプラクティス・メニューをこなしていった。

 平川選手は最終的に24周を走り、1分29秒394で12番手につけた。同じアルピーヌのピエール・ガスリー選手よりも速いタイムを記録したことも大きな話題となった。

 無事出走を終えた平川選手は「セッション前は緊張していましたけど、ヘルメットを被ってクルマに乗り込んでからは集中できていました。鈴鹿をF1で走ったという実感は湧いていないですけど、しっかりと与えられたことはこなせたことには非常に満足しています。最初はクルマに慣れるのに大変でしたけど、ソフトタイヤでの2回目のアタックは完璧ではないけど良いタイムを刻めて、結果もすごく良かったと思います」と語る。チームからの評価も高かったようで、自信に満ちた表情をしていた。

角田裕毅選手のレッドブル・レーシング加入という大ニュースもあり木曜から大勢の来場があった。スプーンコーナーにはファンゾーンが新設されアクティビティも拡充していた。
1月にBWT Alpine F1 Teamのリザーブドライバー兼テストドライバー就任が発表された平川亮選手。慣れた鈴鹿でのプラクティス1走行が実現し、金曜午前の話題をさらった。
ジャック・ドゥーハン選手の7号車に乗車することとなった平川選手。最終的にピエール・ガスリー選手の走行タイムを上回る1分29秒394を計測し、ポテンシャルの高さを示した。
「鈴鹿をF1で走った実感は湧いていませんが……」と語りつつも精力的にテストメニューをこなした平川選手。ソフトタイヤで臨んだアタックでは良いタイムを得られたとのこと。
KYOJO CUPと全日本ラリー選手権を戦う平川真子選手と世界ラリー選手権を戦う勝田貴元選手、そしてFIA F2選手権を戦う宮田莉朋選手が駆け付け、坪井翔選手の姿もあった。

波乱含みのプラクティス。赤旗中断が相次いで、走り込みが困難に…

 そんな中で、金曜午前のプラクティス1は、ランド・ノリス選手(McLaren Formula 1 Team)がトップタイムを記録して順調に終わったが、午後のプラクティス2は波乱の展開となった。開始7分のところでは、ジャック・ドゥーハン選手(BWT Alpine F1 Team)が1コーナーで大クラッシュを喫し、セッションが約23分、中断する事態となった。

 再開後は各車がテストメニューをこなすべく周回を重ねたが、今度はフェルナンド・アロンソ選手(Aston Martin Aramco F1 Team)がデグナーカーブでコースオフ。2度目の赤旗が出された。さらにセッション終盤にはコースサイドの芝生が相次いで燃えるというアクシデントが発生し、プラクティス2では合計4度もの赤旗中断に見舞われた。

 この芝生の火災は土曜午前のプラクティス3でも2回起きるという事態に。原因は正確にはわかっていないものの、走行中のマシンから発生した火花が芝生に落ちて火災のきっかけを作ったのではないかと関係者の間では言われている。金曜は湿度42%、土曜午前は湿度37%と乾燥しており、風も強かった。この事態を受けたFIAは、対策として金曜の夜と土曜の予選前に芝生への散水を実施したが、土曜午後の予選でもQ2の途中に130Rの内側で同様のアクシデントが起き、セッションが中断される一幕もあった。

 例年の鈴鹿では見られなかったこれらの事態の影響もあり、プラクティス・セッションでは、各車とも十分な走り込みができないまま、土曜午後の予選を迎えることとなった。

 15時から予選セッションがスタート。まず、予選Q1から速さを見せたのは、今シーズン絶好調のマクラーレン勢だった。プラクティス2とプラクティス3では、ノリス選手とオスカー・ピアストリ選手がワン・ツーのタイムを記録。ここ日本グランプリでもライバルチームを一歩リードする様相を呈し、この流れは予選セッションでも変わらなかった。

 Q1、Q2ともにノリス選手がトップタイムを記録すると、Q3最初のアタックでピアストリ選手が1分27秒052を記録。これは、2019年にセバスチャン・ベッテル選手(当時フェラーリ)が叩き出した1分27秒064のコースレコードタイムを更新するタイムだった。対するノリス選手もペースを上げていき、最終アタックでは1分26秒995をマーク。鈴鹿の予選セッションでは、前人未到となる1分26秒台の戦いとなっていた。

 このままマクラーレン勢がフロントローを独占するかと思われたが、その後方でアタックに入っていたマックス・フェルスタッペン選手(Oracle Red Bull Racing)が限界ギリギリの走りを披露。130R手前のセクター2計測地点ではノリス選手に遅れたものの、最終セクターで挽回して1分26秒983を計測。フェルスタッペン選手が逆転で今シーズン初のポールポジションを奪取して、鈴鹿では4年連続となるポールポジション獲得となった。

 フェルスタッペン選手が最後の最後に驚愕の逆転劇を成し遂げた。今シーズンの序盤2戦と、今大会のプラクティス・セッションの結果からは誰も予想できなかった展開を目の当たりにした観客たち、そして関係者も息を呑み、鈴鹿サーキットは大歓声に包まれた。

「予選中はとにかく状況を少しでも改善しようと頑張っていた。最終ラップはどのコーナーも全力で走って、コースアウトせずに1周維持できるか分からなかったけど、本当に良かった。シーズンの始まり方を見れば、とても予想外だったと思う。そして、チームにとっても素晴らしい結果となった」と語るフェルスタッペン選手は喜びを爆発させていた。

金曜午前のプラクティス1では、ランド・ノリス選手が1分28秒549のトップタイムを計測。
プラクティス2ではジャック・ドゥーハン選手が1コーナーでクラッシュを喫してしまう。
4度の中断を経て、1分28秒114のベストタイムを計測したのはオスカー・ピアストリ選手。
土曜午前のプラクティス3では、ノリス選手が1分27秒965、ピアストリ選手が1分27秒991でワン・ツーのタイムを計測。27秒台は2名のみでマクラーレン勢の好調ぶりを示した。
開幕2戦で連続表彰台を獲得しているジョージ・ラッセル選手。プラクティス3では僅差の3番手、プラクティス1でも2番手タイムを計測しており、予選での活躍が期待された。
予選Q1では1分27秒943、Q2では1分27秒502でQ3進出を果たしたフェルスタッペン選手。Q3ではノリス選手の1分26秒995を最後の最後で破り、驚愕の1分26秒983を叩き出した。
プラクティスでは下位に沈んでいたフェルスタッペン選手が快進撃を見せた予選Q3。ノリス選手が2番手でフロントローに並び、ピアストリ選手が3番グリッドを獲得した。

驚愕のQ3でポールを獲得したフェルスタッペン選手が王者復権の走り!

 注目の決勝日は朝から会場周辺で渋滞が起きるほどの賑わいで、公式発表では11万5000人が鈴鹿サーキットに来場。こちらも2009年以来となる記録更新となった。天候は、土曜までは晴天に恵まれたが、土曜の夜から日曜の午前中にかけて雨が降り続き、決勝が始まる日曜午後の段階では、雨は上がったものの路面の一部に濡れたところが残っていた。

 12時には恒例のドライバーズパレードが行われ、13時にはスターティンググリッドの正式版が発表。13時20分には各車がレコノサンスラップに入り、ドライタイヤを装着してスターティンググリッドに整列。市川團十郎・市川新之助氏による歌舞伎「連獅子」舞踊と、航空自衛隊中部航空音楽隊演奏による清水万里子1等空士のナショナルアンセムなどのスタートセレモニーを経て、いよいよ14時過ぎに53周の決勝レースが幕を開けた。

 ポールポジションのフェルスタッペン選手は好スタートを切ってトップを維持。そこにノリス選手とピアストリ選手らマクラーレン勢が続いた。ノリス選手はペースの良さを武器に序盤からフェルスタッペン選手の攻略を目指したが、抜きにくいコース特性とDRSゾーンが一つしかないこともあり、なかなかチャンスを作れずにいる。上位争いはフェルスタッペン選手を首位として、膠着状態のまま中盤戦に突入していった。

 例年の日本グランプリであれば、2ストップの戦略を採るチームがほとんどだが、今年は東コースの路面が改修されたことでタイヤへの負担が軽減されており、また、雨上がりの路面ということで後半にかけてコンディションが良くなっていく傾向もあったため、最終的にミディアムからハードにつなぐ1ストップ作戦が主流となった。

 上位勢の動きとしては、5番手を走っていたジョージ・ラッセル選手(Mercedes-AMG PETRONAS F1 Team)が19周目にピットインしたのを皮切りに活発となり、20周目にピアストリ選手が入って順位を堅守。翌21周目にはフェルスタッペン選手とノリス選手、シャルル・ルクレール選手(Scuderia Ferrari HP)がタイヤ交換を行った。

 これが唯一の逆転のチャンスと目論んでいたノリス選手は、ピット出口でフェルスタッペン選手と並走する気概を見せたものの逆転はできず。フェルスタッペン選手が先頭のままレース後半に突入した。後はコース上でチャンスを見出すしかないノリス選手は、ペースを上げてフェルスタッペン選手の背後に近付こうとする。ピアストリ選手も良いペースで周回し、時よりファステストラップを更新しながらチームメイトに近付いていった。

 この展開はフェルスタッペン選手にとって「ずっとミラーにオレンジのマシンが2台映っていたよ」と語るほど、プレッシャーとなっていた様子。しかし、予選と同様に、限界まで攻め続けながらもミスのない走りを披露し、ノリス選手にチャンスを与えなかった。

 一方、後方で光る走りを見せたのが、今季メルセデスからF1デビューを果たしたアンドレア・キミ・アントネッリ選手だった。予選6番手からスタートすると上位集団のなかでは一番遅くまで第1スティントを引っ張る戦略に出た。これにより、F1史上最年少となるラップリーダーの記録を塗り替えて注目を集めただけでなく、31周目のピットストップ以降で履いたハードタイヤでペースをぐんぐん上げていき、50周目には1分30秒965でファステストラップを記録する活躍を見せた。

 最終的にトップ3はスタート順位と入れ替わることなく、最後まで緊迫した状態でチェッカーフラッグを迎えた。フェルスタッペン選手が後続に1.423秒差でレースを制し、今シーズン待望の初優勝を飾るとともに、今年でパートナー関係が解消されるHondaと迎える最後の日本グランプリに華を添える結果を残した。

「すごく楽しいレースだった。基本的に限界まで攻めていたけど、予想よりペースは良かった。昨日ポールポジションを獲って、トップからスタートできたことが功を奏したよ」とはフェルスタッペン選手。2位にはノリス選手、3位にはピアストリ選手が入るも、予選Q3でライバルに逆転されたことが明暗を分けたと、悔しそうな表情を見せていた。

 そして、日本期待の角田選手は予選Q2敗退が響き、14番グリッドからスタートして12位でフィニッシュ。レース後には悔しさを語るも「このクルマで初めてレース距離を走ったなかで色んなことが学べましたし、毎周違うことが起きて、クルマの理解はかなり深まったと思います」と、新天地での初陣となった今大会を前向きに捉えていた様子だった。

 ドライバーチャンピオンシップはノリス選手が62点で首位を走り、フェルスタッペン選手が61点を数えて2位に浮上した。3位はピアストリ選手ということで、コンストラクターズチャンピオンシップは、依然としてMcLaren Formula 1 Teamが首位に立っている。

プラクティスや予選セッションで発生した芝生火災は、コースマーシャルがコースサイドに散水を行うことで対策。これは雨上がりの日曜でも、決勝レース直前まで行われた。
スタートセレモニーでは、市川團十郎・市川新之助氏による歌舞伎「連獅子」舞踊が披露され、航空自衛隊中部航空音楽隊演奏による清水万里子1等空士の国歌独唱も行われた。
他車のペナルティにより繰り上がった14番手のスタートグリッドへ向かう角田選手。通過するそれぞれのスタンドでは、詰めかけた観客から期待を込めた声援が贈られていた。
曇り空に覆われた鈴鹿の日本グランプリ決勝、14時に53周のレースがスタートした。全車トラブルなくグリッドを離れ、フェルスタッペン選手が辛くもホールショットを決めた。
レース序盤はフェルスタッペン選手にノリス選手、ピアストリ選手が続く展開。20周目にはピアストリ選手がピットに入り、続いてフェルスタッペン選手、ノリス選手が入った。
ある意味唯一のチャンスであったピットでの逆転を逃したノリス選手は、後半もフェルスタッペン選手を追う展開。結局、マクラーレンの2台は王者を捉えることができなかった。
終盤まで大きな順位変動のなかった日本グランプリ。トップチェッカーを受けたのはフェルスタッペン選手。ポール・トゥ・ウィンを飾り、4年連続で日本グランプリを制した。
「ずっとバックミラーにオレンジ色のクルマが写っていた」とプレッシャーの大きさを振り返ったフェルスタッペン選手。Hondaのホームレースで起死回生の今季初勝利を挙げた。
東コース再舗装の影響もあり”1ピット”展開となった今大会。ノリス選手とピアストリ選手はオーバーテイクが難しい鈴鹿での一戦を「予選の結果がすべてだった」と振り返った。
2位:ランド・ノリス選手(McLaren Formula 1 Team)4号車
3位:オスカー・ピアストリ選手(McLaren Formula 1 Team)81号車
4位:シャルル・ルクレール選手(Scuderia Ferrari HP)16号車
5位:ジョージ・ラッセル選手(Mercedes-AMG PETRONAS F1 Team)63号車
6位:キミ・アントネッリ選手(Mercedes-AMG PETRONAS F1 Team)12号車
今大会の最高名誉総裁・彬子女王殿下が昨年に続いて鈴鹿サーキットに臨場され、表彰式では、優勝したフェルスタッペン選手にグランプリトロフィーを下賜された。
今季の世界選手権は、優勝者にはFIAモハメド・ベン・スレイエム会長からメダルが贈呈されているが、今大会では日本のASNであるJAF坂口正芳会長がメダル贈呈を代行した。
鈴鹿では53周に渡って一進一退の攻防を演じたフェルスタッペン選手とノリス選手、ピアストリ選手。王者復権を予感させる勝利となったものの、表彰台獲得を称え合った。
ドライバーズチャンピオンシップは今大会2位のノリス選手が首位につけ、フェルスタッペン選手は今回の優勝で、ノリス選手から1ポイント差のランキング2位に浮上した。
角田選手は母国グランプリでの初陣を12位で終えている。Oracle Red Bull Racingのコンストラクターズ・ランキングは、マクラーレンとメルセデスに続く3位となっている。
チーム代表のクリスチャン・ホーナー氏とHRC渡辺康治代表。Honda F1初優勝から60年かつRed Bullとのラストシーズンである母国グランプリを、最高のカタチで締めくくった。

サポートレースはポルシェ・カレラカップ・ジャパン(PCCJ)とフェラーリ・チャレンジ・ジャパン(FCJ)が開催。FCJでは、小山美姫選手が2戦連続ポール・トゥ・ウィン!

土曜のPCCJレース1は、1コーナーからクラッシュが起きる波乱。再開後に2番手スタートの卜部和久選手がトップに立ちそのまま優勝。2位は伊東黎明選手、3位はIKARI選手。
PCCJレース2は卜部選手が好発進するも、度会太一選手と伊東選手、木村偉織選手の2番手争いが激化し、木村選手が卜部選手をも抜いて優勝。2位は卜部選手、3位は伊東選手。
土曜のFCJレース1は、ポール・ポジションの小山美姫選手が序盤から後続を引き離す好走で優勝。2位は植松忠雄選手、3位は最終周での激しいバトルを制した猪爪杏奈選手。
日曜のFCJレース2は、雨が降るウェット路面での戦い。長いSC先導の後に小山選手がスタートを決め、追いすがる猪爪選手を抑えて優勝。2位は猪爪選手。3位は植松選手。
フェルスタッペン選手が予選から驚愕の走りを見せ、決勝でも強さを見せた今大会。急転直下の角田選手は苦しい初陣となってしまったものの、日本グランプリは無事閉幕した。

PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI]、竹内英士[Eiji TAKEUCHI]、ホンダモビリティランド[Honda Mobilityland] REPORT/吉田知弘[Tomohiro YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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