リーグ2年目が開幕! “新生”名古屋OJAが初戦を制す

レポート Eスポーツ

2026年3月23日

JAF公認Eモータースポーツ国内リーグ「UNIZONE」の2026年シリーズ開幕戦が3月7日に開催された。UNIZONE独自のフォーマットとして昨年好評を博した、各チームの拠点からオンラインでシミュレーターをつないで競技を行う“HOME & HOME”形式が開幕戦から採用され、チーム体制を変えて参戦したディフェンディングチャンピオンの名古屋OJAが初戦を制した。

UNIZONE e-Motorsport LEAGUE 2026 Rd.1
開催日:2026年3月7日
開催地:岩手馬コレーシング:ビッグルーフ滝沢 1F ホワイエ(岩手県滝沢市)、遠州ハママツモータース:サンストリート浜北 2F イベント広場(静岡県浜松市)、恒志堂レーシング北海道:Speciale Fushimi(北海道札幌市)、Saishunkan Sol 熊本:クマモトeスタジアム(熊本県熊本市)、東京ヴェルディレーシング:e-Create Space AIM SASAZUKA supported by KEIO(東京都渋谷区)、名古屋OJA:コミュファ eSports Stadium NAGOYA(愛知県名古屋市)
主催:JeMO

 一般社団法人日本eモータースポーツ機構(JeMO)が設立した、JAF公認Eモータースポーツ国内リーグUNIZONE。iRacingを使用したEモータースポーツのトップリーグというヒエラルキー構築の理想を掲げ、大会運営や関係者、各チームが手探りながら初年度となる2025年を走り抜けてきた。

 短いスプリントレースを複数回行うレースフォーマットを採用し、ファン投票によるスターティンググリッド順の決定、そして日本全国に点在する参戦チームの拠点をつないで競技を行うHOME & HOMEという独自の大会開催形式を根づかせ始めた1年だったと言えよう。

 そんなUNIZONEが2シーズン目を迎え、開幕前に発信されたチーム情報が話題となった。群馬のチームが抜けた代わりに、新たに北海道を拠点とする恒志堂レーシング北海道と、岩手県を拠点とする岩手馬コレーシングが加わったことだ。これにより2026年は1減2増の全6チームでリーグが争われる形になった。

 また参戦継続のチームにも変化があり、初代チームチャンピオンの名古屋OJAはエース武藤壮汰選手以外を一新する大胆な改革を実施。遠州ハママツモータースは他チームから新た な主力を迎え、すべてのドライバーがリアルとバーチャルの二刀流となる選手構成。ほか、昨年のチーム順位が2位のSaishunkan Sol 熊本は1選手を入れ替えるだけに留め、東京ヴェルディレーシングは前年から不変の体制とした。

一般社団法人日本eモータースポーツ機構の出井宏明代表理事が開幕宣言。「2年目のUNIZONE開幕を皆さんと一緒に迎えられることをうれしく思っています」と挨拶した。
岩手県を拠点とする新規チームの岩手馬コレーシングは、昨年のチャンピオンチームに所属していた齊藤祐太選手(左)がチームを牽引する存在に。タッグを組むのは2024年に実車のマカオGPに出場した経験を持つ小川颯太選手(右)だ。
浜松市内の飲食店をHOME & HOMEの拠点に選ぶなど、地域振興を強く意識する遠州ハママツモータース。開幕戦は小出峻選手が欠場ながら、若手の武藤雅奈選手と百瀬翔選手がチームの看板を背負う。
今季から参戦する新規チームながら、スーパー耐久などですでに馴染みがある恒志堂レーシング北海道。リアルもバーチャルも確かな実績を残す強力なメンバーを揃えてUNIZONEへ挑む。
打倒・名古屋OJAに燃えるSaishunkan Sol 熊本は、荒川麟選手がスケジュールの都合で今大会を欠場。新たに加わったWilliams EsportsのiRacingアカデミードライバーの1人でもある新谷昇馬選手(左)と、黒沢和真選手(右)との若いコンビで初戦を戦う。
ヴェルディグリーンのチームカラーで彩られた会場で統一感をアピールする東京ヴェルディレーシングは、参戦チームの中で唯一、所属メンバーを昨年から変更せずの参戦となった。木村偉織選手はスケジュールの都合で欠場。
初代チャンピオン・名古屋OJAは絶対王者・武藤壮汰選手(中央)に、昨年は群馬ダイヤモンドペガサスに所属していた小此木裕貴選手(左)が加わった。石野弘貴選手(右)は年齢制限のためRd.2以降の参戦を予定している。
2026年シーズンからシミュレーターはチームが用意したものが使用可能となった。名古屋OJAはKMR Racing製のシミュレーターを使用する。
レース実況は山中智瑛氏、解説にはスオミアッキ氏と、昨年から変わらぬ布陣だ。Eモータースポーツの知見がある両名がレースの状況を分かりやすく配信視聴者に伝えた。

予選タイムアタック

 スーパーフォーミュラSF23と富士スピードウェイの組み合わせで実施された予選タイムアタック。各チーム2名が一斉出走し、計12名の混走形式でタイムアタックが実施される。このタイムアタックの結果で当該ラウンド各レース共通のグリッドが決定されることとなる。

 新たに参戦するチームや選手たちの実力が未知数な中、やはり盤石な強さを見せたのはディフェンディングチャンピオンの名古屋OJAであった。移籍後初戦となる小此木裕貴選手は1分19秒997というタイムをマークしてトップに立つと、続く武藤壮汰選手が1分19秒830をたたき出して更新、フロントロー2台を名古屋OJAが占める結果に。

 3番手に入ったのは、名古屋OJAから新規参戦チームの岩手馬コレーシングに移籍した齊藤祐太選手。そしてSaishunkan Sol 熊本から継続参戦する、昨年ドライバーランキング3位の黒沢和真選手が4番手となり、予選タイムアタック4番手までに与えられる貴重なポイントを獲得した。

昨シーズン5戦中4戦で予選タイムアタックのトップを獲った強さそのままに、名古屋OJAの武藤壮汰選手が2026年オープニングラウンドでポールポジションを獲得。
予選初陣をエース・武藤壮汰選手の背後につける仕事ぶりを見せた小此木選手が2番手。赤いカラーリングが特徴的な岩手馬コレーシングの齊藤選手が予選タイムアタックで3番手に食い込んだ。

スプリントレース①

 予選タイムアタックと同様、富士スピードウェイとSF23の組み合わせで行われる5周のスプリントレース①。スタンディングスタートで各マシンがグリッドを離れる中、8番手スタートの小川颯太選手(岩手馬コレーシング)がホイールスピンとなり、単独クラッシュを喫してリタイアしてしまう幕開けとなった。

 最高のスタートを切ったのは、2番手スタートの小此木選手(名古屋OJA)と7番手スタートの百瀬翔選手(遠州ハママツモータース)。小此木選手はチームメイトの武藤壮汰選手を1コーナーでオーバーテイクし、トップでレースを展開していくことに成功。百瀬選手はスタートで3台を抜き、一気に4番手までジャンプアップを果たした。

 レース展開が落ち着いてくるとなかなかオーバーテイクに至らないSF23のレースということもあり、わずか5周のレースではトップ3のオーダーに変化がなかった。結果、スタートでトップに立った小此木選手が逃げ切り、オープニングラウンドのスプリントレース①で勝利を飾った。

 2位には同じく名古屋OJAの武藤壮汰選手。3位には岩手馬コレーシングの齊藤選手が入り、岩手馬コレーシングは新規参戦チームながらいきなり表彰台の一角を射止めた。

スプリントレース①は、スタートで武藤選手の前に出た小此木選手がチーム移籍後の初優勝を飾っている。

スプリントレース②

 スプリントレース②ではスタート順がリバースグリッドとなり、予選でトップ2を独占した名古屋OJAの2台はそろって最後方からのスタートだ。トップからスタートを切ることとなった加藤達彦選手(恒志堂レーシング北海道)は、蹴り出しが遅れて後退となってしまう。

 代わってトップに立ったのは、今季からUNIZONEに参戦するTGR-DC育成ドライバーの武藤雅奈選手(遠州ハママツモータース)で、2番手には兒島弘訓選手(東京ヴェルディレーシング)がつける。3番手には佐々木光選手(東京ヴェルディレーシング)が上がってきたが、1コーナーで黒沢選手(Saishunkan Sol 熊本)と接触してスピンアウトしてしまった。

 1コーナーの混戦を抜けて3番手に上がり、続くコカ・コーラコーナーで兒島選手をパスして2番手に上がってきたのは、百瀬選手(遠州ハママツモータース)だった。武藤雅奈選手と共に遠州ハママツモータースの1-2体制をオープニングラップで築くと、2周目のホームストレートで百瀬選手が武藤雅奈選手を抜いてトップに立つ。

 百瀬選手はそのまま8周を走り切り、見事スプリントレース②を制した。一方、ファイナルラップ突入時点で2番手を走行していた武藤雅奈選手だったが、後方から驚異的なペースで追い上げてきた黒沢選手と武藤壮汰選手(名古屋OJA)にダンロップコーナーでかわされ、黒沢選手が2位、武藤壮汰選手が3位を獲得している。

リバースグリッドとはいえ、6番手グリッドからわずか2周でトップに立った百瀬選手。今季の仕上がり具合を象徴させるレースを披露した。

スプリントレース③

 ファンによるSNS投票の結果がグリッド順に反映されるスプリントレース③。ここでSNS投票1位だったのが、昨シーズンはこのレギュレーションに苦しめられていた印象のある武藤壮汰選手(名古屋OJA)だった。だが人気と実力を兼ね備えた武藤壮汰選手を阻む車両は現れず、圧巻のポール・トゥ・ウィンを達成する。

 その傍ら、黒沢選手(Saishunkan Sol 熊本)と小此木選手(名古屋OJA)の2位争いは熾烈を極め、4位以下とのギャップをつくりながらも、お互いに牽制し合うスプリントレースらしいバトルを繰り広げた。最終的に黒沢選手が2位、小此木選手が3位でフィニッシュ。昨年は番狂わせが起きたSNS投票順グリッドが、今季は実力勝負に近い、ある意味で順当なリザルトになった点が興味深い1戦であった。

「皆さんの応援に応える形でSNS投票のレースで勝てたのがとてもうれしいです」と、多くの勝利を収めてきた中でも特別な1戦となったことを語る武藤選手。

スプリントレース④

 スプリントレース④からは使用車種とコースが変更される。4車種のFIA-GT3車両から使用するマシンを選択するレギュレーションとなり、その中で名古屋OJA、Saishunkan Sol 熊本、遠州ハママツモータースの3チームがポルシェ911 GT3Rを選択。

 東京ヴェルディレーシングと岩手馬コレーシングがメルセデスAMG GT3を選択し、唯一、恒志堂レーシング北海道のみフェラーリ296 GT3で参戦。コースがモンツァサーキットということもあり、RR駆動ならではのトラクション性能を誇るポルシェと、ストレートスピードに分があるAMGに人気が集中した形だろう。

 予選タイムトライアル通りのグリッド順となったレースでは、ポールポジションの武藤壮汰選手(名古屋OJA)が素晴らしいスタートを切る中、2番手スタートの小此木選手(名古屋OJA)がやや出遅れ、3番手スタートの齊藤選手(岩手馬コレーシング)がこれに並び、第1シケインで小此木選手をパスする。

 齊藤選手は勢いそのままにAMGのストレートスピードを生かして、武藤壮汰選手に対して第2シケインでインを突くがここで接触。両者ともにロスをしてポジションを下げ、トップ3は小此木選手、新谷昇馬選手(Saishunkan Sol 熊本)、黒沢選手(Saishunkan Sol 熊本)というオーダーに変わる。

 接触により順位を下げた武藤壮汰選手だったが、圧倒的なスピードでリカバリーを見せ、2周目のホームストレートまでに再びトップ争いに加わる。その動きに合わせて上手くトップに立ったのは新谷選手だった。

 小此木選手が後退して新谷選手、武藤壮汰選手、黒沢選手という順でファイナルラップに突入し、あと半周抑え切れば新谷選手のUNIZONE初優勝が見えていた。しかし、アスカリシケインでアウト側から武藤壮汰選手が新谷選手を豪快にオ―バーテイク! 開幕戦の中で最も激しいレースとなったスプリントレース④は、武藤壮汰選手がルーキードライバーに貫禄を見せる結果となった。

前半戦は様子を見ていた武藤選手だが、スプリントレース③・④と連勝を果たし昨年の勢いを取り戻してきた。

スプリントレース⑤

 最後のレースとなるスプリントレース⑤は、同じくGT3マシンとモンツァサーキットという組み合わせで、予選タイムアタック結果のフルリバースグリッドで行われた。ポールポジションからスタートする長和樹選手(恒志堂レーシング北海道)は、後方車両からのアタックを防ぎ切ってトップで第1シケインを通過。

 その後ろでは3番手スタートだった佐々木選手(東京ヴェルディレーシング)が上手く間合いを取って2番手に浮上する。中団グループでは名古屋OJAの一角、小此木選手が第2シケインで痛恨のスピン、クラッシュを喫してしまう。

 長選手と佐々木選手が抜け出し1周目が消化。2周目に入った第1シケインでAMGのストレートスピードを武器に長選手に並びかけた佐々木選手がクリーンなオーバーテイクを見せて首位を奪取。8周という決して長くはない周回数の中で、後方から追い上げを図る新谷選手(Saishunkan Sol 熊本)や武藤壮汰選手(名古屋OJA)がバトルを繰り広げたことも手伝い、トップの2台が徐々に3番手以下を引き離していく。

 このオーダーは変わらないかと思われた7周目最終コーナーで、2番手を走っていた長選手が単独のスピン。マシンのリア側を壊してリタイアとなってしまう。終始安定した走りを見せた佐々木選手が、開幕戦で苦戦気味であった東京ヴェルディレーシングに大きな1勝をプレゼントすることになった。

大勢のサポーターが詰めかける東京ヴェルディレーシングの会場は、佐々木選手の優勝で盛り上がりを見せた。

 チーム総合結果で2番手以下に31ポイント差をつけた名古屋OJAがオープニングラウンドを制したと言える。圧倒的な強さを見せる武藤壮汰選手と、時に武藤壮汰選手に勝るスピードを見せた小此木選手のタッグが、今シーズンもUNIZONEの台風の目となることを確信させた開幕戦だった。

 その一方で、新たに新谷選手を加えたSaishunkan Sol 熊本も戦闘力を増しており、スプリントレース④のような展開を見るに、2025年のような名古屋OJA一強とはまだ言い難い状況だろう。そしてリバースグリッドによるほかのチームの躍進も展開が読めず、予断を許さない状態だ。

今回はスーパーGT岡山公式テストと日程が重なり、実車と掛け持ちの一部選手の出場が叶わなかったが、次戦以降は混沌とすることが予想される。

エキシビションレース

 オープニングラウンドでは新たな試みとして、UNIZONE各チームの参加選手だけでなく、JeMOが独自に発行するUNIZONEライセンス保有者や、各チームが推薦するファンの代表者やインフルエンサーなど、最大で合計20名がエントリーできるエキシビションレースが開催された。

 iRacingの収録車種としては入門向けとされている、マツダ・MX-5カップカーを使用した岡山国際サーキット3周のレースが行われることとなり、オンライン参戦も許可されたこともあって、腕に自信のあるドライバーたちによるハイレベルな争いが繰り広げられた。

 年齢制限のためにリーグへの出場が叶わなかった名古屋OJAの石野弘貴選手や、同じく岩手馬コレーシングからUNIZONEドライバーとして登録されている岡本貴明選手らが猛追を振るう中、レースを制したのはUNIZONEライセンスホルダーの伊藤剛選手となった。

 今後もUNIZONEのエキシビションレースを通して、多くの参加者がUNIZONE、そしてEモータースポーツに触れられる機会となることを願いたい。

松井沙麗選手は東京ヴェルディレーシング拠点会場のシミュレーターからエキシビションレースに参戦。レーシングシミュレーターの設計・開発業務にも携わる兒島選手が参戦をサポートした。

会場拠点レポート「東京ヴェルディレーシング」

 e-Create Space AIM SASAZUKA supported by KEIO(東京都渋谷区)を拠点とした東京ヴェルディレーシング。昨年からHOME&HOME形式で行う各拠点の中でも、ひと際チームの統一感が熱く感じられる会場だ。ヴェルディグリーンに染まった空間は、さながらサッカーのサポーターを彷彿とさせる。

 特筆すべきは観戦に訪れたファンにも分かりやすい実況&解説が行われていること。公式配信をそのままビジョンに載せるのではなく、拠点メンバーに焦点を当てた独自のカメラ操作と、贔屓目に兒島選手と佐々木選手に注目する稲野一美氏と塩谷俊氏両MC陣の掛け合いが興味深い。応援しに来たファンの熱量の高さが感じられた。

選手入場時は会場の照明が下げられ、ファンとハイタッチしながら入場する演出も。
稲野一美氏と塩谷俊氏のコンビによる東京ヴェルディレーシングに特化した独自の実況&解説が、会場の一体感を醸成している。
競技終了後はフリーに選手にファンが話しかけることができる時間が設けられた。ファンと選手の距離が最も近いチームのひとつだろう。
会場に訪れたファンに配られた選手の「自己紹介カード」。リアルのレースでも各々のフィールドで活躍する選手が集まる東京ヴェルディレーシングだけに、チーム・自己のPRにも配慮した活動が見て取れた。

 次戦は5月16日に、同じく各チーム拠点で行われるHOME & HOME形式での開催が予定されている。もちろんYoutubeでのストリーミング配信も行われるが、選手たちと触れ合えるEモータースポーツならではの魅力を実感すべく、最寄りの各拠点会場へぜひ赴いていただきたい。

2023年全日本カート選手権 FS-125CIK部門チャンピオンの鈴木恵武選手も東京の会場に来場し、UNIZONE観戦を楽しんでいた。

PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、UNIZONE、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/岡田衛[Mamoru OKADA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

ページ
トップへ