モータースポーツの裏側を間近で知るオフィシャル体験会を実施

レポート その他

2026年5月19日

5月6日、全日本カート選手権 EV部門 第1戦/第2戦が開催される東京都江東区のシティサーキット東京ベイで「オフィシャル体験会 in シティサーキット東京ベイ」が行われ、一般参加の19名が大会オフィシャルの中に加わってその業務を実地体験した。

オフィシャル体験会 in シティサーキット東京ベイ
開催日:2026年5月6日
開催地:シティサーキット東京ベイ
主催:JAF

 一般社団法人日本自動車連盟(JAF)主催、株式会社トムスの協力で行われたこのオフィシャル体験会は、WEBでの募集に応じた一般参加者たちに、モータースポーツ競技の安全かつ円滑な進行に欠かせないオフィシャルの仕事を実際の現場で見学・体験してもらい、競技運営の流れやオフィシャル一人ひとりの役割についてリアルな環境で学んでもらうものだ。

 18歳以上のオフィシャル未経験者であれば、モータースポーツの専門的な知識や経験の有無に関わらず誰でも応募でき、参加費用は無料だ。今回は20名の定員に対して30名を超える応募があり、抽選で参加者が決定。都合で欠席した1名を除く19名が会場に集まった。うち5名は女性。学生から社会人まで年代も職業も異なる多様な顔ぶれだ。

 集合時間は8時45分。コース脇に設けられたオフィシャル体験会の参加者専用テントで各自が受付を済ませた後、9時に説明が始まった。ここに体験会を主催するJAFモータースポーツ部の職員とともに現れたのが、スーパーGTのGT500クラスのTGR TEAM au TOM'Sでチーム監督を務める伊藤大輔氏。競技に出場する者の立場からオフィシャルの存在意義などを参加者たちに解説する役割として、この催しにやって来てくれた。

 まず伊藤氏が「レーシングドライバーたちの戦いは、オフィシャルさんたちの活躍があってのものです。今日はそれを皆さんに体験していただきます」と挨拶した後、JAFモータースポーツ部の職員からこの催しの具体的な説明が行われた。

 ここでは、JAFが公認審判員許可証(オフィシャルライセンス)を発給しており、そのライセンスにはコース委員・技術委員・計時委員の3種類があること、カートレースでは予選もレース形式で行われること、競技中のサーキットには危険が伴うので必ずオフィシャルや運営スタッフの指示に従うこと、などの話が参加者たちに分かりやすく伝えられた。

参加者は8時30分ごろからシティサーキット東京ベイに集まり始め、体験会の受付がスタート。参加誓約書に必要事項を記入し、“OFFICIAL”とプリントされたオレンジ色のビブスがそれぞれ配布される。
この体験会には30名を超える応募があったが、抽選により参加が叶ったのは募集枠の20名。老若男女問わず集まり、改めてモータースポーツオフィシャルへの関心度の高さがうかがえた。
今回はスーパーGTに参戦するTGR TEAM au TOM'Sでチーム監督を務める伊藤大輔氏がオフィシャル体験会のアンバサダーとして同席。JAFモータースポーツ部の職員たちの紹介を挟みつつ、体験会の説明が行われた。

 体験会の舞台となる全日本カート選手権 EV部門では、第1戦/第2戦それぞれに予選と決勝のヒート(レース)があり、この日は合計4つのヒートが行われる。そこで、体験会の参加者たちは4つのグループに分かれて、コースマーシャル/計時/技術/レース見学の4つのパートを順々に体験していく。

 計時では計時室で、技術では車検場で、それぞれのオフィシャルの業務を見学。コースマーシャルでは実際にコーナーポストに入り、レース旗を振る機会もある。レース見学は、JAFモータースポーツ部の職員が帯同して直々にレースを解説してくれる体験内容となっていた。

 説明会を終えた参加者たちは、9時15分から屋内施設のステージ脇で開会式を見学。真剣勝負の場に加わる緊張感が徐々に高まってくる。それが終わると、10時10分からオフィシャルたちとの顔合わせが行われた。ここでは体験会の参加者全員がコース旗を手にして、その振り方を教わる。

 経験豊富なオフィシャルたちは「カッコ良く振ることが大切なんですよ」とジョークを交えながら易々とフラッグを振ってみせるのだが、体験会の参加者たちは「なかなか綺麗に振れない」、「フラッグを振り続けるのがこんなに疲れることだったとは……」などといささか苦戦気味。レース中継などで何気なく見ていたオフィシャル旗を振る作業ひとつとっても、想像以上に大変なことだったのだと早くも実感している様子だった。

早速、開幕戦となる全日本カート選手権 EV部門の2026シーズン開会式を見学。これから体験オフィシャルとして携わる大会への理解度を少しずつ深めていった。
ドライバー&エントラントの伊藤氏と、JAFモータースポーツ部の職員が、それぞれの立場からオフィシャルとはどういう業務なのか、具体的な内容について座学を展開。
大会をオーガナイズするレーシングチームあかつきの鈴木啓三郎氏が参加者に挨拶し、実際のオフィシャルと顔合わせを行う。鈴木氏は自身の豊富な経験をもとにコースマーシャルの心構えを説明した。
コースポストに立つ前に旗振りのテクニックをレクチャー。参加者の大半は最初からうまく振ることができなかったが、実際のオフィシャルにアドバイスを受けてコツをつかんでいった。

 11時10分、いよいよ第1戦の予選が開始だ。体験会の参加者たちも各自の位置についた。参加者の1名は、スターティンググリッドに整列したドライバーたちにスタートまでの時間を伝えるカウントダウンボードの掲示役を務めることに。

 本番前に熟練のオフィシャルからカウントダウンボードの出し方をレクチャーされたときはいささか緊張気味だった参加者も、本番でオフィシャルから「笑顔でいきましょう。上手ですよ!」と励ましの声をかけられ、堂々とボードを掲げてみせた。

 無事に第1戦の予選が終わると、11時20分から早めの昼食をとりながらのお昼休憩。そして12時35分から第1戦の決勝が行われ、参加者たちはふたつめの役割の体験を終えた。

いよいよオフィシャル業務を体験することに。受付時に5人ずつ4つのグループに分けられ、1グループはヘルメット着用でコースに入り、残り3グループは計時、車検、レースの見学となった。
レースの進行を司るグリッドマーシャルの業務は、第1戦の予選と決勝、第2戦の予選と決勝でそれぞれ4名が担当。ボードの運び方や持ち方の指導を受け、緊張しながらも上手く立ち回った。
本来では立ち入ることのできない計時室で、計時オフィシャルの仕事を見学。各車の通過順や周回数を記録するなど、正確さが求められる業務を静かに見守った。
安全かつ公平さをチェックする技術の業務。走行終了時に行われる車検の様子を見ながら、技術オフィシャルの奥深さを知ることに。
第1戦の予選ヒートではAグループの参加者がコースマーシャルを体験。
第1戦の決勝ヒートではBグループの参加者がコースマーシャルを体験。
昼休みはオフィシャル全員で食事。参加者同士で体験した内容を語り合うなどコミュニケーションが図られていた。

オフィシャル体験会アンバサダー/伊藤大輔氏

「僕にとってもものすごく新鮮な体験でした。普段のレースのときからオフィシャルの重要性を感じてはいたけれど、この体験会でそれをよりいっそう実感しました。チームやドライバーの立場である自分たちとオフィシャルの方々と、同じサーキットにいても交流を深める機会はなかなかないけれど、もしかしたら未来のオフィシャルになるかもしれない方々と密に時間を過ごせたのは貴重なことでした。この体験会は素晴らしい試みだったと思いますし、可能な限り続けていって欲しいです。参加者の方々の反応も想像以上によかったように感じましたし、オフィシャルという役割に興味を持ってここに参加してくださる方々がいてうれしかったです」

JAFモータースポーツ振興委員会/谷本勲氏

「私が委員として加わっているJAFモータースポーツ振興委員会では、どうやってオフィシャルになりたい人を増やすか、どうやって世代交代を進めていくか、どうしたら気軽な形でそれができるか、継続課題としてずっと討議されてきました。そこで、会場がコンパクトで参加者のケアがしやすく、立地的にも集まりやすいCCTBで私たちTOM’Sが主催している選手権で体験会をやってみてはどうかと提案して、今回それが実現しました。不安もあったのですが、募集開始1週間で定員を超える応募がありました。まずは参加者のアンケートを精査して、効果のほどを見極めたいです。これをモデルケースに、西日本でも同様の催しが実現できればいいですね」

 大会がランチブレイクの時間に入ると、ここでイレギュラーにコースウォークが実施されることに。体験会の参加者たちは、一緒にコースに入った伊藤氏が披露するコース攻略法を聞きながら、真剣勝負が繰り広げられるサーキットを自分の足で歩いて確かめて、貴重なひとときを過ごした。

 14時5分、参加者たちは第2戦の予選でそれぞれ3つめの役割を体験。それが終わるとテントに集まり、参加者座談会が行われた。ここでは伊藤氏に続いて、サプライズゲストが登場した。全日本EV部門の大会会長である鈴木亜久里氏がテントにやって来て座談会に加わったのだ。

 マイクを手にした鈴木氏は、「僕はJAFのモータースポーツ振興委員会の委員長をやっていて、そこではオフィシャルをどう集めるかが常に議題に上がっています。ドライバーやチームはやりたい人がいるけれど、オフィシャルはなり手が少ない上に高齢化も進んでいます」とコメント。

 続けて「なので、こういう催しはすごくありがたいことですね。皆さんも、次はぜひオフィシャルライセンスを取って、オフィシャルとしてステップアップしていってくださることを願っています」と率直な心情を語った。

 続いて参加者たちが順々に発表をする場となり、自分がモータースポーツを好きになったきっかけを披露。その理由は一人ひとり違っても、同じモータースポーツを愛する仲間の”履歴”が共感を呼んでか、テントの中には徐々に和やかな空気が広がっていった。

 15時30分、この日最後のヒートとなる第2戦の決勝がスタート。体験会の参加者たちは各々4つめのポジションについた。そしてレースはオフィシャルたちの献身的な活躍に支えられて、大きなアクシデントもなく無事にチェッカーの時を迎えた。

伊藤氏の解説によるドライバー目線でのコースウォークを実施。オフィシャルの目線ではわからないコースの特徴などを知る機会となった。
座談会にはモータースポーツ振興委員会の鈴木亜久里委員長がサプライズゲストとして登場。参加者を激励する言葉を贈るとともに、オフィシャル体験会の記念に全員そろって撮影。
モータースポーツに興味を持った理由や、体験会に参加したきっかけなどを発表。参加者同士で共感できる話題で盛り上がっていた。
第2戦の予選ヒートではCグループの参加者がコースマーシャルを体験。
第2戦の決勝ヒートではDグループの参加者がコースマーシャルを体験。
熱戦を終えたばかりの上位入賞者を称える表彰式を見学。オフィシャルとして見守ったドライバーたちの雄姿に惜しみない拍手を送っていた。

 第2戦の表彰式の見学を終えた参加者たちはテントに戻り、運営スタッフの挨拶で初開催の体験会は16時30分に終了、参加者たちの一日は幕を閉じた。「競技に参加する」「競技を観る」と並ぶもうひとつのモータースポーツの楽しみ方を実際に体験した参加者たちの顔には、充実感と高揚感が浮かんでいた。

この体験会の参加記念品として全員に進呈されたオレンジ色のオフィシャルタバードは、またとない思い出の品になったのではないだろうか。

オフィシャル体験会 参加者の声

A・Mさん「こんなにたくさんの方々のお仕事に支えられている」

「2025年の暮れごろにモータースポーツのファンになって、レースのことやクルマのことを勉強していたところ、推しの選手のSNSでこの体験会の情報を見て、レースの裏側を知れば観戦がもっと楽しくなるだろうし理解も深まるだろうと思って参加することにしました」

「最初に体験したのはコースマーシャルだったんですが、それだけでも旗がいっぱい用意されていて、その都度それを選んで振っているんだということを知れましたし、自分で旗を振ってみて、みなさん振り方が上手なんだなと感心しました」

「テレビのレース中継で主に映るのはドライバーとマシンと、せいぜいメカニックさんだけれど、実際のレースはこんなにたくさんの方々の大変なお仕事に支えられているんだと分かりました。今後はフラッグを振っているオフィシャルさんにまで目がいくと思います。あと、体を使うお仕事なので若くないとできないことかと思っていたら、実は年配の方も多いことが意外でした」

W・Sさん「レースの公平さが保たれているのはオフィシャルのおかげ」

「レースが好きな夫の影響でレース観戦が趣味になりました。観ているうちにいろんな役割の方がいるんだと分かってきて、2025年の#thanksofficial キャンペーンでそのお仕事にも関心が湧いてきたところに、JAFのSNSで今回の募集を知って、面白そうだと思って応募しました」

「1回目の体験ではカウントダウンボードを出す役目をやらせてもらって、ドキドキしたけれど楽しかったです。思いもよらないお声がけだったんですが、一生の記念になると思ってやってみて、良かったです。クルマとの距離感や視点が観戦のときとはぜんぜん違うことに驚きました」

「観戦しているときのクセでつい選手に拍手を送りたくなってしまったけれど、そうもいかない真剣な立場なんですね。レースの公正さが保たれているのは、みなさんのおかげなんだなと分かりました。オフィシャルライセンスにも興味が湧いてきたけれど、私は車の運転ができないので、まずはそちらの勉強からでしょうか」

K・Tさん「モータースポーツをもっと深く知れた気がする」

「今、大学でモータースポーツ同好会を立ち上げたばかりなんです。その活動の一環で、2025年の夏に鈴鹿サーキットのことを学ぶ講演会を開いてもらったんですが、そこでオフィシャルさんが不足していると聞いて、同好会の活動としてオフィシャルもできたらいいなと思っていたところに、今回の体験会の情報を目にして参加を決めました」

「元はレーシングカートをやっていたので、フラッグを振られてジャッジをされる側の身だったんですが、振る側やジャッジする側の目線も見えて、モータースポーツをもっと深く知れた気がしますし、面白さも大きくなりました」

「今までオフィシャルさんのことをよく知らなくて、ボランティア的な仕事なのかと思っていたんですが、競技を間近で観て、競技のために動いてと、僕のような人間には天職だなって思いました(笑)。オフィシャルライセンスは今すぐにでも取りたいくらい。同好会でもこの話を広めます」

S・Tさん「技術とか計時とかいろんな役割があることを知って感心」

「本当はレースを走りたいけれど、そうもいかないので観戦でレースを楽しんでいて、何かの形でレースに関わりたいと思っていました。そうしたら、SNSでこの体験会の情報が目に飛び込んできて、観戦から一歩踏み込んだ形でレースを体験して、自分のような人が増えれば日本のモータースポーツがもっと発展するのではと思って、すぐに応募しました」

「オフィシャルというと旗を振る役目ってイメージがあったんですが、実際には技術とか計時とかいろんな役割があることを知って感心しました。普段は観られない場所でレースを観られたことも印象的でした。技術では最終コーナーが目の前の車検場にいたんですが、そのスピードには驚きました」

「一日楽しかったですし、今後もレースに関わっていきたいです。オフィシャルライセンスはぜひ取りたいと思います。レースに興味はあっても、オフィシャルを募集しているということをまだ知らない方って多いんじゃないでしょうか」

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、後藤佑紀[Yuuki GOTOU]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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