鎌田卓麻/松本優一組が雨の激戦の末3年ぶりに全日本ラリー優勝!
2026年7月28日
全日本ラリー選手権 第5戦「2026 ARK ラリー・カムイ」が、7月10~12日に北海道のニセコ町と京極町、倶知安町、真狩村、そして蘭越町を舞台に開催された。天候不良によるコース路面の悪化でSS6がキャンセルされるなど波乱含みの状況となる中、JN-1クラスの鎌田卓麻/松本優一組が雨のサバイバルラリーを制し、久しぶりの優勝を遂げた。
2026年JAF全日本ラリー選手権 第5戦「2026 ARK ラリー・カムイ」
開催日:2026年7月10~12日
開催地:北海道ニセコ町、京極町、倶知安町、真狩村、蘭越町周辺
主催:TEAM ARK
ニセコ町のニセコアンヌプリ国際スキー場を拠点とする今季のカムイは、11日のレグ1にNEW SUN RISE(3.63km)、SPRING WATER(14.84km)、OAK(4.46km)の3SSを午前と午後に各1回走行するSS総距離45.86kmの計6SSを実施。
12日のレグ2はSTREAM LONG(23.06km)とKNOLL(7.55km)をサービスを挟んで2回ずつ走行し、最後にSSS NEW POWER SENMU(0.45km)に挑むSS総距離61.67kmの計5SSが予定され、2日間でSS総距離107.53kmの全11SSで争われる予定だった。
しかし、SS6のOAK2は「豪雨によるコースコンディション悪化で競技区間の安全性が保てない」との主催者判断でキャンセルとなり、SS総距離103.07kmの全10SSで競技が行われた。予定よりも距離は短縮したがSS総距離100Km以上でグラベルのため、2026年日本ラリー選手権規定の第10条第1項第2号どおり得点係数は1.5となった。
JN-2クラスはエントリーした車両がなく不成立となったものの、全日本ラリー今季初のグラベルラリーには選手権クラスに48台、オープンクラスに2台の計50台が出場した。10日のレッキから雨模様となり、レグ1、レグ2ともに激しい量の雨が短時間に降る一方、時折日差しが差し込む不安定な天候となった。路面は終日ウェットコンディションとなり、コースに点在する簡易舗装では泥や砂利が広がって滑りやすさが増したほか、グラベルには雨水が川のように流れる深い轍が発生し、各車を苦しめた。その結果、レグ1、レグ2の合計で計16台がリタイアするサバイバルラリーとなった。
JN-1クラス
JN-1クラスには、第4戦を欠場した奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリスラリー2)、第2戦でのコースアウトによる車両修復のため第3戦と第4戦を欠場した大竹直生/橋本美咲組(トヨタ・GRヤリスラリー2)、松岡孝典/竹下紀子組(トヨタ・GRヤリスJP4)は第2戦以来、今井聡/高橋芙悠組(シトロエン・C3R5)は第3戦以来の参戦となり、今季の主力勢がほぼ顔をそろえた。
SS1では「良いテストができて、クルマが乗りやすくなりました」と語る鎌田卓麻/松本優一組(シュコダ・ファビアR5)が、新井大輝/立久井大輝組(トヨタ・GRヤリスラリー2)に1.2秒差をつけるベストタイムでトップ発進を決めた。
続くSS2では奴田原/東組が鎌田/松本組に6.5秒差をつけるベストを記録してトップを奪取。一方、SS1で2番手だった新井大輝/立久井組は、スタートから約2km地点で路面に埋まっていた石に右リアをヒット。足周りに大きなダメージを負いながら走行し、5番手まで順位を落とした。
勝負が大きく動いたのはSS3だった。激しい雨でマッドコンディションとなったこのSSで、トップの奴田原/東組が中盤でコースオフ。自力で復帰したもののベストから1分50秒6遅れの8番手タイムとなり、4番手へ後退。さらに3番手につけていた勝田範彦/保井隆宏組(トヨタ・GRヤリスラリー2)も、スタートから約2.5km地点でコースアウトしてリタイア。シリーズリーダーが早々に姿を消す波乱となった。
このSS3でベストを奪ってトップに返り咲いた鎌田/松本組に対し、新井大輝/立久井組はサービスで右リアサスペンションを修復すると、SS4、SS5で連続ベストを記録。SS3終了時点で46.9秒あった差を26.3秒まで縮め、レグ1を終えた。
レグ2も雨中の戦いとなり新井大輝/立久井組はSS7で15.7秒、SS8で1.2秒差を詰め、鎌田/松本組との差を9.4秒まで縮める猛追を見せる。この勢いで逆転かと思われたSS9はブレーキトラブルによるハーフスピンを喫し、追撃は足踏みとなった。
一方、「SS7と同じままで走ったら負けてしまいます」とサービスで話していた鎌田/松本組は、SS9で渾身のアタックを披露。新井大輝/立久井組に3秒差をつけるベストを記録し、その差を12.4秒へ広げた。SS10では新井大輝/立久井組が6.2秒差のベストを奪い返したものの、わずか450mと距離が短い最終SSは両者同タイムでフィニッシュ。その差を埋め切ることはできなかった。
「朝のステージを終えてリスクはありましたが、クルマのセットアップを大きく変更して後半のセクションに挑みました。限界まで攻めて危ない場面もありましたが、なんとか戻ってくることができました。シュコダ・ファビアR5に乗り換えて1年半、さまざまなことを学び、その努力が実ったことがうれしいです。あらためてチームの皆さんに感謝しています」と満足げに語った鎌田選手が、2023年第1戦以来となる優勝を飾った。
2位には6.2秒差で新井大輝/立久井組が入り、3位はSS3でのアクシデントから見事に挽回し「これまで出場したラリーの中でも、トップ3に入るくらい難しい路面でした」と振り返る奴田原/東組が獲得した。
この結果、鎌田/松本組がシリーズランキング首位に浮上し、新井大輝/立久井組が10.3ポイント差で2番手、今回はノーポイントに終わった勝田範彦/保井組が14.4ポイント差で3番手となった。
JN-3クラス
JN-3クラスは、シリーズランキング首位の山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)が欠場。内藤学武/大高徹也組(トヨタ・GRヤリス)はSS1、SS2を制してトップに立ったが、SS3でコースオフで優勝争いから脱落。
この結果、SS1からSS3まで着実に2番手タイムを重ねていた大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスDAT)がトップに浮上。その後はSS4とSS5、さらにレグ2のロングステージSS7とSS9でもベストを記録し、長尾綱也/尼子祥一組(トヨタ・GRヤリス)に48.4秒差をつけて今季初優勝を飾った。
「このクルマでグラベルを走るのは初めてで、生き残るだけでも大変でした。何度もコースから外れそうになりましたが、運にも助けられました。大きなトラブルなく走り切れたことが何よりです。チームの皆さんに感謝しています」と大倉/豊田組が昨年の第2戦以来となる勝利を手にした。
2位の長尾/尼子組、3位のマクリン大地/大橋正典組(スバル・インプレッサWRX STI)は、ともに全日本では初のトップ3フィニッシュを果たした。
TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup
全日本ラリー選手権ではJN-3に編入されているTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)は、SS1で米林慶晃/菅野総一郎組がベストを記録したものの、SS3でコースオフ。その後は長尾/尼子組がトップを守り続け、2日目は全5SSでベストを記録する圧巻の走りでMCC初優勝を飾った。
「ラリー・カムイは深い轍が印象にあったので、それに合わせてセットアップしてきましたが、レグ1前半は思うように合いませんでした。それでも首位を守ることができたので前向きに切り替え、レグ2ではセットアップ変更がうまく決まり、とても調子良く走ることができました」と長尾選手は満足そうに話した。
2位の三枝聖弥/木村裕介組は「抑え過ぎたり、逆に攻め過ぎたりして内容は良くありませんでしたが、2位で終えられたことは良かったと思います」と振り返った。
3位の奥井優介/藤田めぐみ組は「コースオフやインタークーラーのトラブル、エンジンが始動しない場面など、さまざまなことがありましたが、3位に入賞できたことで次へつながる結果になったと思います。後半戦も頑張ります」と手応えを口にした。
JN-4クラス
JN-4クラスは、山本悠太/竹原静香組(トヨタ・GR86)がSS1、SS2を制して快調にトップを走行。しかしSS3で前走車に追いつき、パスを試みた際にスタックしてレグ離脱となった。
これによりトップへ浮上したのは、このラリーのために前輪駆動のスズキ・スイフトスポーツを投入した上原淳/漆戸あゆみ組だった。加納武彦/萱原直子組(スバル・BRZ)が猛追し、SS7では0.7秒差まで迫ったが、その後はトップを守り切り、今季3勝目とシリーズランキング首位を獲得した。
上原選手は「クルマになかなか慣れることができませんでした。私には少し気難しいクルマでしたが、何度も止まりながらも最後まで走り切ることができて良かったです」と満足そうに話した。
2位には「レグ1はセットアップが合っていませんでしたが、徐々に改善してコントロール性が上がり、後半はアクセルを踏めるようになりました」と語った曽根崇仁/小川由起組(トヨタ・GR86)が入り、3位は「こういう難しい路面では経験豊富なドライバーが速いですね。抑え過ぎてしまったところもあり、経験の差を実感しました」と振り返る加納/萱原組が獲得した。
JN-5クラス
JN-5クラスは、最終SSを除くすべてのSSでベストを記録した松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)が圧倒。レグ1終了時点で2分10秒9、最終的には5分22秒9もの大差を築き、今季4勝目を挙げた。この結果、シリーズランキング首位の座も奪い返した。
松倉選手は「みなさんが苦戦したSS3で私も一度コースを外れましたが、なんとか復帰できました。林道ステージをすべて制することができて良かったです。ロングステージは抑え気味に走りましたが、遅過ぎるとかえって危険なので、一定のペースを保って走りました。難しいコンディションでしたが、しっかりコントロールできたラリーだったと思います」と振り返った。
2位には小川剛/山本ゆうや組(トヨタ・ヤリス)が入り、3位は三苫和義/中田昌美組(ホンダ・フィット)が獲得した。
JN-Xクラス
JN-Xクラスは、現行型のトヨタ・RAV4 PHEVをグラベル仕様に変更して臨んだ天野智之/井上裕紀子組がSS1から快走。SS3こそ海老原孝敬/蔭山恵組(ホンダ・CR-Z)にベストを譲ったものの、レグ1の5SS中4SSを制し、1分11秒の大差を築いた。
「重量のあるRAV4では、あのステージ(SS3)は本当に難しかったです。リタイア車を避けようとしただけでもガードレールに当たりそうになり、コースアウトしそうになりました」と語った天野選手だが、レグ2最初のSS7でコースアウト。「ラリータイヤのサイズ設定がなく、クロスカントリー用タイヤで挑みましたが、低μ路面では2トンを超える車重の影響が大きく、止まれませんでした」と明かし、2024年第5戦から続いていた連勝は16で止まった。
トップに浮上した海老原/蔭山組も「天野選手のリタイアで平常心を保てなくなりました。普通に走れば良いと思っても、その普通が分からなくなってしまいました」と振り返るように、SS9でギャップにはじかれてコースアウトしてしまった。
結果、出走5台中、唯一完走した清水和夫/黒木美珠組(トヨタ・ヤリスHEV)が優勝。「これまでさまざまな経験をしてきましたが、これほど難しいラリーは初めてでした。優勝できたのはクルマを壊さず、今回は攻める日ではないと考えて走ったことが良かったと思います。ラリーもレースも最後まで何が起こるか分かりません。完走することの大切さをあらためて実感しましたし、それもラリーの醍醐味だと思います」と締めくくった清水選手が、2024年の第4戦以来となる全日本での勝利を手にした。
OP-2クラス
選手権外のOP-2クラスには2台が参戦。レグ1終了時点では、星野隼人/星野杏組に51.2秒リードした伊藤暁/藪本啓介組だったが、レグ2早々にリタイアとなり、星野隼人/星野杏組はすべてのSSを駆け抜けた。
PHOTO/CINQ、大野洋介[Yousuke OHNO]、小竹充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]



