関東ジムカーナ第7戦、橋本恵太選手が4連覇確定のPN2で細井大輝選手が初優勝!

レポート ジムカーナ

2026年7月30日

2026年JAF関東ジムカーナ選手権 第7戦が7月12日に筑波サーキットのジムカーナ場で開催された。関東地区戦は佳境を迎え、今回の一戦でチャンピオンが確定したクラスも出た。PN2クラスは細井大輝選手が地区戦初優勝を果たす一方で橋本恵太選手が4連覇を確定、PN5クラスでも大脇理選手が二連覇を確定させた。

2026年JAF関東ジムカーナ選手権 第7戦
2026年JMRC関東オールスターシリーズ第7戦
2026年JMRC全国オールスター選抜 第7戦
スピリッツテクニカルジムカーナ

開催日:2026年7月12日
開催地:筑波サーキット ジムカーナ場(茨城県下妻市)
主催:T-SPIRIT

 JAF全日本ジムカーナ選手権の舞台も担う筑波サーキットは鈴鹿サーキットと富士スピードウェイに次いで1970年、日本で3番目に誕生したサーキットである。二輪レースも盛んに行われる総延長約2kmのコース2000、全日本を開催する約1kmのコース1000、1985年にオープンしたジムカーナ場などの設備を備える。

 コースごとに特徴が大きく異なるが第7戦は、最もテクニカルな設定をつくることができるジムカーナ場が舞台となった。面積は8679m²で台形状の広場、最も長いストレートを設定したとしても3速に一瞬入るかどうかと、コンパクトなサイズが特徴。今回の一戦のように、関東のジムカーナらしいスパルタンなフルパイロンコースが設定されることも多く、ターンの技量がタイムに如実に表れる。まさに第7戦は、“関東No.1ターンマイスター”を決める一戦と言っても過言ではない。

 そんな筑波ジムカーナ場で今回の一戦を主催するのは、“スピリッツ太郎”こと熊倉俊夫代表が率いる埼玉県のJAF加盟クラブ、モータースポーツサークルスピリッツ(T-SPIRIT)。レイアウトはハイレベルな関東のドライバーをも悩ませる、非常にテクニカルな設定となった。ほぼすべてのターンに進入、あるいは脱出時の規制が設けられ、そのシチュエーションもそれぞれ異なる。当然ながら単純にサイドターンができるだけでは攻略できず、それぞれのターンに合わせた進入速度や向き、脱出、そしてトラクションのかけ方が求められる。

 元全日本ドライバーで、現在はMCとしても活躍する大原史行氏は第7戦のレイアウトについて「サイドターンができた、できないだけで決まってしまうのはあまり面白くないですよね。これだけターンのバラエティを増やして規制も多くあることで、ターンはできて当然、その中でもどれだけ優れているかが重要だと思います。特にこのコースでは、トラクションをしっかりかけられる選手が強いでしょうね。非常に筑波らしいコース設定だと思いますし、関東シリーズを通じても、これだけしっかりとターンさせる大会はないんじゃないですかね」と語った。

 一見するとフラットに見える筑波ジムカーナ場だが排水効率を考慮して、路面には緩やかな傾斜がついている。また、ドリフトにも利用されていることから路面が激しく傷んでいる場所もある。今回の一戦のレイアウトでは、そうした路面の微妙な変化も考慮したうえでパイロンが配置された。

 地区戦の有効ポイントは全10戦のうち7戦のため、今回の一戦でチャンピオンが確定するクラスも生まれた。さらに残り3戦のうち2戦は、スペシャリストが顔を揃える長野県のさるくらモータースポーツランドでの開催。第7戦で勝負を決める意気込みで挑んだチャンピオン候補も少なくなかった。

王座争いの流れを大きく左右する、筑波サーキット ジムカーナ場での2026年JAF関東ジムカーナ選手権の第7戦には、総勢94名ものドライバーが参戦した。
コース図を渡されたドライバーたちは慣熟歩行が始まる前からパドックの端に立ってコースを観察、ライン取りを研究していた。
覚えるだけでも難儀する複雑な設定に加え、ターンをどれだけ速く正確に回り、立ち上がれるか。そんな究極のターン技術が問われるシビアなレイアウト。僅かな路面変化を正確に捉え、いかにトラクションをかけられるかも勝敗の決め手となった。
スタートフラッグを振ったのは株式会社セラメタのキャラクター、摩摺セラに扮した山城カオルさん。
今回の一戦では、スポーツランドSUGOで7月3~5日に開催されたS耐チャレンジ第2戦のSC-Qクラスに参戦した、FCR58 SAKAE-MS PROBOXが展示された。“公団ちゃん”と呼ばれるカラーリングのトヨタ・プロボックスと並ぶのは、第7戦を主催した埼玉県のJAF加盟クラブ、モータースポーツサークルスピリッツ(T-SPIRIT)の熊倉俊夫代表(右)とKYOJO VITAに参戦中の関亜由美選手(左)。

PNATクラス

 ここまでの王座争いをリードするのは林幸照選手だが、勝ち星では第5戦から復帰した大川裕選手も2勝を挙げて並ぶPNATクラス。第4戦から参戦を開始した工藤憲司選手も優勝1回と2回の2位と、着実にポイントを伸ばしている。拮抗した戦いを繰り広げる中、第7戦にはGRヤリスで全日本PN5クラスでの優勝経験を持つ山口栄一選手が、スズキ・スイフトスポーツのAT車両で参戦。出場すれば必ず台風の目となる実力者の登場で、王座争いはさらに混沌とした様相を呈した。

 第1ヒートを制したのは、全日本PNATクラスでも好調をキープする大川選手だった。多くのドライバーが苦戦する最終テクニカル区間では小回りが利くスイフトの特徴を生かしながら、サイドブレーキを引く箇所をON、OFFで明確に割り切ったラインを選択。最後のパイロンではその判断を一瞬誤るような場面があったものの、1分14秒248のトップタイムを記録して折り返した。

 そして勝負の第2ヒートかと思われたが、大川選手を含めてトップタイムを上回るドライバーは現れない。工藤選手はかろうじて1分15秒台に飛び込んだが、それでもトップに届かず。クラス最終ゼッケンの林選手はパイロンペナルティを犯して大きくタイムを失い優勝争いから脱落、大川選手が今季3勝目一番乗りを果たした。すでにシリーズ成立となる3戦が争われたPN/AE1クラスでもシリーズ首位に立つ大川選手は、2つのクラスでチャンピオン確定に一歩近づくこととなった。

 大川選手は「比較的、前輪駆動に有利なコースだったこともあり、なんとか勝てました。昨日、奥伊吹(モーターパーク)を走ってからこちらに来たので不安もありましたが、2本目はちょっと欲をかいてしまったのが悔やまれます。最終戦は全日本みかわ(ハイランドパークみかわジムカーナ場)と重なってしまうので残り2戦を勝って、欲張ってJAFカップも獲って三冠とか…… 夢がありますよね!」と意欲的に話した。

PNATクラス優勝は大川裕選手(XPセラメタSEIJOスイフト)。
PNATの2位は山口栄一選手(南街エムエムスイフト80)、3位は工藤憲司選手(身延☆GR86AT)。
PNAT表彰の各選手。

PN1クラス

 PN1クラスでは今季、2000シーズンA1クラス王者の矢島融選手と、2018シーズンPN2以来の王座を狙う片山誠司選手による王座争いが繰り広げられている。シリーズ首位の片山選手と矢島選手の差は8ポイント。だが、この重要な一戦で片山選手を思わぬトラブルが襲った。トヨタ・ヤリスのサイドが異常を起こし、第1ヒートの走行を途中で切り上げることになったのだ。

 片山選手は第2ヒートに向け、BSC1クラスの澤平直樹選手たちの力も借りながら、懸命に修理を進めた。しかし、作業を終えて再びスタートラインへ車両を運ぶことができたとしても、大きな壁が立ちはだかる。全日本PN1クラスでも王座争いを繰り広げるベテランの矢島選手だ。

 ヤリスとは思えないほどの迫力ある走りと大胆なライン取り。そして、フロントタイヤを押しつぶしてサイドウォールまで削りながら走る独特のドライビングスタイル。スムーズかつローレジスタンスな走りが良しとされるこのクラスでは、異質とも言える走りが矢島選手の特徴だ。

 セオリーを度外視した走りを見せる矢島選手は、自らの走りが正解であることをタイムで証明してきた。もちろんそのスタイルは今回の一戦でも健在。前日に全日本第6戦の舞台となる奥伊吹で練習し、夜通しで筑波に駆けつけたとは思えない鋭い走りで、自ら第1ヒートで記録したトップタイムをさらに0.429秒短縮し、1分12秒993をマーク。そのタイムを聞いた最終の片山選手に、大きなプレッシャーをかけたに違いない。

 片山選手は応急的な修理によってスタートラインには立つことができたものの、車両は本調子ではない。効かないサイドを補うため、進入方法やサイドを引くタイミングを変更するなど、自らの引き出しを駆使してターンを攻略していく。だが、ターンのたびに矢島選手との差は広がり、1秒843の遅れをとった。それでもライバルたちを抑えて2位を獲得、大きなトラブルを抱えながらも王座争いでは最少失点で第7戦を切り抜けた。

 今季負けなしの5勝目を記録した矢島選手は「両ヒートともテールスライドしてしまい、修正が多かったですね。2本目はとっ散らかっていたので、タイムダウンしたと思いました。ヤリスは運動エネルギーを使うことを意識して、コーナーにマシンを放り込むように走るのも一つの手だと思っています。昨年から自分のスタイルに戻したことが良かったですね。今年でさるくらでの公式戦が最後になるので、楽しんでこようと思います。地区戦チャンピオンを獲れたら20年ぶりのことなので、頑張ります」とオリジナルのスタイルを武器に、全日本とのダブルタイトル確定への意欲を語った。

PN1クラス優勝は矢島融選手(DLBRIG和光ヤリスITO)。
PN1の2位は片山誠司選手(AZUR YH S+ヤリス)、3位は高橋秀明選手(DLノアウイルS+Pナスヤリス)。
PN1表彰の各選手。

PN2クラス

 PN2では、絶対王者的な存在感を放つ橋本選手がすでに4勝を挙げ、チャンピオン確定を目前としている。今季はタイヤを変更して走りのスタイルも変えてきた橋本選手に、死角はないものと思われた。事実、第1ヒートをトップタイムで折り返したのも、橋本選手だった。

 ただし、シリーズ上位陣の多くがパイロンペナルティでタイムを失っており、勝負の行方は第2ヒートにかけられた。中でも、全日本PN5で戦う若林隼人選手に師事する若手ドライバー、細井選手は素時で橋本選手を上回るタイムを出しており、逆転の可能性を十分に感じさせていた。

 第2ヒートは続々と自己タイムを更新するドライバーが現れたが、橋本選手のターゲットタイムには届かない。だが、一気にその壁を突破したのは細井選手、橋本選手も「彼の方が僕よりもしっかりタイヤをタテに使えてましたね」と称賛する走りを見せた。ターンセクションの旋回速度やパイロンへの進入精度では橋本選手が勝る場面もあったが、それを補って余りある鋭い立ち上がりでタイムを伸ばし、トップタイムを塗り替えた。

 橋本選手は2位以上が決まりチャンピオンを確定させたが、勝利に向けて一気に緊張が高まった。今回の一戦のレイアウトは、僅かな遅れの積み重ねが大きなタイム差につながる。決して大きなミスをしたわけではない橋本選手だったが、まさかのタイムダウン。この結果、関東若手筆頭株で台頭著しい細井選手が念願の地区戦初優勝を手にした。

「1本目はクルマの感触も良くて、最後の最後でパイロンタッチをしてしまったのが悔しかったですね。2本目もつまらない走りはしたくないと思い、『パイロンタッチで負けてもしょうがない』という気持ちでいったのが良かったです」と、細井選手は振り返った。続けて「師匠の若林選手の特徴でもある、繊細なアクセルワークを心掛けました。残り3戦も自分ができる限りのことをやって、一つでもいい成績で終われればと思っています」と、残る3戦への意気込みも語った。

PN2クラス優勝は細井大輝選手(DLミツバXPロードスター犬)。
PN2の2位は橋本恵太選手(BSXPLロードスターFWG)、3位は杉崎匠選手(DL123ioロードスター)。
PN2表彰の各選手。
2026年JAF関東ジムカーナ選手権PN2クラスチャンピオン 橋本惠太選手
「タイヤが変わったことで難しいシーズンになると思いましたが前半戦から成績は残せてきたので、良いシーズンだったと思います。なんとか4連覇も達成でき、次のタイヤは何にするか迷っていますが、来年もPN2クラスで5連覇を目指します」

PN4クラス

 今季も激戦のPN4クラスでは開幕第1戦と第3戦をベテランの大坪伸貴選手、第2戦と第4戦を大塚健二選手、第5戦と第6戦を徳冨太一選手が制し、3選手とも有効ポイントではほぼ横に並ぶ。三つ巴の戦いは、今回の一戦で誰が今季3勝目を挙げて一歩前に出るのかに注目が集まった。

 この勢力図を大きく動かしたのが、青木康治選手だった。第1ヒート中盤までのターゲットタイムは1分13秒台で、多くのドライバーがここに集中していたが青木選手がブレイク、一気に1分12秒728へと上げた。続く徳冨選手はターンセクションの処理に苦しみ、タイムを伸ばせない。ラスト前に登場した大坪選手は、素時では青木選手を上回ったもののパイロンペナルティを犯す。そして、最終の大塚選手は青木選手に0.043秒届かず2番手となり、勝負は第2ヒートへと持ち越された。

 迎えた第2ヒートは、時折霧のような雨が落ちる不安定なコンディションで始まった。路面はまだドライを保っているものの、いつ雨が本降りになり、ウェットへ急変してもおかしくない状況だ。少しでも早くスタートしてタイムを残したいが、走り終えたドライバーからは「グリップしないわけではないが、なんかヌルヌルするような感じになってしまった」との声が相次ぐ。路面温度は急上昇していないが、タイムを伸ばすドライバーは僅かだった。

 この難しいコンディションの中では、青木選手が第1ヒートで記録したターゲットタイムは非常に高い壁となった。自身もそのタイムを上回るべく攻撃的なアプローチで1分11秒台を出したかに見えたが、パイロンペナルティ。しかし、その走りからはトップタイム更新の可能性を十分に感じさせた。一方、対照的なアプローチを見せたのが大坪選手だった。やや引き気味で落ち着いた進入スピードから、ヌルっと回り込む独特のターン。派手さはないものの無駄がない走りで、トップタイムを0.631秒塗り替えた。

 そして、注目を集める中でスタートしたのが、パイロンターンを得意とする大塚選手。だが、「しっかり速度を落とさなければいけなかったところを、落としきれなかったです」と語ったようにターンからの脱出で遅れをとってしまい、「地力の差が出てしまいました」と悔しさをにじませた。これまでターンで勝負を決めてきた名手だけに、3位は本人にとっても想定外だったに違いない。この結果、大坪選手が第7戦を制してチャンピオン確定に向けて大きく前進した。

 大坪選手は「1本目はサイドがロックしなくて、2本目は思い切り引いたら、クルッと回ってしまいました。でも、前半区間でしっかり速度を乗せることができたので、勝ち切れたんだと思います」と勝因を語った。続けて、「最終戦には出場できないので、北海道から助っ人を呼んで助けてもらおうと思います(笑)」とコメント。王座争いは残る3戦で一層激しさを増しそうだ。

PN4クラス優勝は大坪伸貴選手(DLマンパイ・PON屋BRZ犬)。
PN4の2位は青木康治選手(MPアクティブS+DL昴BRZ)、3位は大塚健二選手(DLブルガレ・コサリックBRZ)。
PN4の表彰。左から2位の青木選手、1位の大坪選手、3位の大塚選手、4位の林太郎選手(KYBセラMフジミGR86)。

PN5クラス

 埼玉県のショップ、ALPHAが事務局を務める東京都のJAF加盟クラブ、チームエスティーピー(STP)所属のベテランたちを中心にハイレベルな戦いを繰り広げるPN5は、大脇選手がすでに5勝を挙げて二連覇確定に王手をかけて第7戦を迎えた。

 第1ヒートをトップで折り返したのは、やはり大脇選手だった。2番手につけた新井範正選手との差は僅差ながら、今回の一戦も大脇選手が勝利を手にするかと思われた。しかし、その予想を覆したのが、これまで幾度となく大脇選手に肉薄するタイムを刻んできた新井選手だった。第2ヒートでは自己タイムを0.763秒短縮する、1分10秒074でターゲットタイムを更新。その直後の出走だった大脇選手は、自らのタイムが破られたことを知らないままスタートする。果敢に攻めたが、徐々に遅れをとってまさかのタイムダウン。

 大脇選手は「ターンが全然ダメでした。昨日は気にならなかったんですが、ターンでしっくりこなかったんですよね」と、悔しそう。しかし、2位でもチャンピオンを確定させたその顔は、どこか嬉しそうだった。

 一方、勝利を挙げた新井選手は「2年ぶりの優勝です。1本目、中間までは高いギヤで走ってタイムを稼いできたのが良かったので2本目もそれを踏襲しつつ、ターンを修正しながら精度を上げていった結果だと思います」と勝因を分析。続けて、「筑波は以前から相性の良いサーキットですが、大脇選手にいつもやられていたましたが、きっと彼の失敗もあって勝てたんだと思います。つくるま(サーキット那須)でもう1度勝ちたいですね」と喜びを語った。

PN5クラス優勝は新井範正選手(ADVANリジットαGRヤリス)。
PN5の2位は大脇理選手(ADVANリジットGRヤリス)、3位は勅使河原誠選手(XPエフェクトGRヤリス)。
PN5表彰の各選手。
2026年JAF関東ジムカーナ選手権PN5クラスチャンピオン 大脇理選手
「最後は締まらなかったんですが、シリーズとしてはそれなりに順調に勝てたシーズンでした。もちろん、厳しい大会もありましたが、ALPHAの中村(誠司)社長をはじめチーム員の皆さん、そしてジムカーナを続けることを許してくれる奥さんのおかげだと思っています」

PN6クラス

 PN6クラスではマツダ・ロードスターRF使いによる、アツい一騎討ちが繰り広げられている。山﨑輝男選手が3勝を挙げてシリーズ首位に立つ一方、金粕雅史選手が2勝して追う展開となっている。第1ヒートは多くのドライバーが1分15秒台に留まる中、一人飛び抜けた1分13秒924をマークしたのがZC6型スバル・BRZの深谷洋選手。いずれ、このタイムもクラス後半のトップ2によって塗り替えられるかと思われた。だが、金粕選手と山﨑選手はともにミスコースでタイムを残せなかった。

 波乱は第2ヒートにも待ち受けていた。それまでなんとか持ちこたえていた雨雲が、深谷選手のスタート直後から路面を濡らし始めたのだ。かろうじてドライで走り切った深谷選手だったが、フロントガラスに落ちる雨粒に集中力を削がれたのかタイムダウン。

 続いてスタートした山口晃一選手もなんとかドライのうちに走り切り、2番手を奪取。その後、非情にも路面は確実に濡れ始めたが、タイムを残せていない金粕選手には可能な限りアタックするしか選択肢はない。まだグリップ感は残っているものの明らかにフロントの入りは鈍くなり、果敢に攻めた金粕選手だったが深谷選手のタイムには届かず2番手止まりとなる。

 そして、最終の山﨑選手も中間タイムは大きく遅れ、この路面状況ではさすがにここまでか……。周囲の誰もがそう思っただろう。しかし、勝負は最終テクニカルセクションでひっくり返る。すべてのターンで距離を稼ぐことよりもトラクションを重視した、ヌルっとした滑らかなターンを披露。ここでそれまでの遅れを一気に取り戻して1分13秒681をマーク、ターン一本勝負で第7戦を制した。

 チャンピオン確定に王手をかけた山﨑選手は「インターバルの間にポツポツと雨がきていたのがすごく気になっていたんですが、スタートした瞬間の食いつきは悪くなくて、『イケるのかな?』と思いました。でも、フロントの入りが徐々に悪くなっていて、タイムアップは難しいかと思っていました。でも引っ掛かりもなく、ロードスターの良いところを引き出せて勝てたのは嬉しいですね」と振り返った。続けて、「さるくらは自分が地区戦で初めて勝ったサーキットなので、サーキットコースのつくるまと合わせて勝ちにいきたいと思います」と、次戦以降への意気込みを語った。

PN6クラス優勝は山﨑輝男選手(ITOSPM♂ロードスターRF)。
PN6の2位は深谷洋選手(若林自動車ローリングBRZ)、3位は金粕雅史選手(アルボーコサ犬XPロードスター)。
PN6の表彰。左から2位の深谷選手、1位の山﨑選手、3位の金粕選手、4位の山口晃一選手(iOBPS身延ロードスターRF)。

PN7クラス

 ここも激戦のPN7クラスでは、岡野博史選手がクラス転向に伴いタイヤメーカーを変更、セットアップに苦しみながらも今季4勝としっかり結果を残している。そんな岡野選手から勝利を奪った一人、遠藤裕和選手が急成長。トムスオクヤマS1Dを駆った元全日本Dクラス王者の遠藤毅志選手を父に持ち、今季は第2戦の優勝以降トップ3を逃さず、シリーズ2番手につけて王座を争う。

 第1ヒートから、この二人による一騎打ちの様相を呈した。まず、沼上洋司選手が1分14秒17でターゲットタイムを記録すると、遠藤裕和選手は大きく上回る、1分12秒989と驚異的なタイムをマークする。続いて出走した岡野選手は1分13秒135と遠藤裕和選手には届かず、2番手で第1ヒートを終えた。

 第2ヒートではPN6から降り出した雨が路面を徐々に濡らし、タイムダウンするドライバーが続出。その一方で、難しい路面状況をものともせずタイムを伸ばすドライバーもいた。松川文昭選手もその一人で、3番手に順位を上げた。

 霧雨が続く小康状態の中、注目の遠藤裕和選手がスタート。第1ヒートでミスを犯した右奥のターンでは進入をしっかり抑え、安定した走りを見せる。この後の走者は“パイロンの魔術師”とも称される岡野選手。特に後半のテクニカルセクションでは逆襲も予想されるため、かかるプレッシャーは大きい。だが、遠藤裕和選手は中間タイムでしっかりとマージンを築いてフィニッシュ。トップタイムをさらに更新する1分12秒379を叩き出した。

 次の岡野選手はこのタイムを知らずにスタートを切った。第1ヒート後に「今日の路面とコースに、うまくセットを合わせ切れてないんですよね」と不安を口にしていたが、路面状況が急変したことで、その不安はより大きくなった。

 ここまではセットアップの違和感をテクニックで補ってきたが、ターンが連続するこのレイアウトでは、セットアップの影響がより顕著に表れる。グリップ感を探りながら走ったが、秒単位で変化していく路面状態に完全に対応することは難しかった。中間タイムでは遠藤選手に肉薄したものの、テクニカルセクションで大きく遅れて2番手タイム。結果、ターンでも差をつけた遠藤裕和選手が優勝を飾った。

 遠藤裕和選手は「父からはいつも叱られていますが、今日はしっかり勝つことができました。テクニカルはいつも練習しているので、今回のコースもそれほど苦もなく走れました。1本目も2本目も外周区間でミスはありましたが、ターンを止めることなくトラクションをかけ切れたことが良かったと思います。さるくらは一度も走ったことがないのですが、全力で挑みます」と、意気込みを語った。王座争いは次戦以降に持ち越され、急成長を続ける遠藤裕和選手がどこまで岡野選手に迫れるのかも注目だ。

PN7クラス優勝は遠藤裕和選手(天竜GR86)。
PN7の2位は岡野博史選手(RIGID BRZ)、3位は松川文昭選手(FWG XPL SSS BRZ)。
PN7の表彰。左から2位の岡野選手、1位の遠藤裕和選手、3位の松川選手、4位の沼上洋司選手(G天竜BPSスバルBRZ青S+)。

BSC1クラス

 開幕4連勝と好調なスタートを切った齋藤寿選手が、そのまま独走するかに思われたBSC1。しかし、第2戦から3戦連続で2位に甘んじてきた服部義野選手が第5戦と第6戦を連勝。二強が王座を争う中迎えた第7戦だったが、結果は意外な展開となった。

 その主役となったのが、全日本ドライバーでもある澤平選手だ。第1ヒートから驚異的な速さを披露し、2番手の服部選手を0.997秒引き離すタイムで圧倒する。一方、ここでしっかりポイントを積み重ねたい齋藤寿選手はパイロンペナルティを犯し、王座争いにも影響しかねない展開となった。

 迎えた第2ヒートの路面はウェットと呼ぶにはまだドライの期待感も残る、何とも表現しづらいコンディションだった。澤平選手は路面温度の低下にセットアップを合わせきれずタイムダウン。トップタイムが圧倒的なだけに、焦点は誰がこのターゲットタイムに近づけるかへと移った。だが、多くのドライバーは第1ヒートのタイムを大きく更新できずに進んだ。3番手の中島裕選手もタイムアップを果たしたものの順位は変わらず。2番手の服部選手もタイムを伸ばしたが、僅か0.06秒の更新に留まった。

 そして、最終の齋藤寿選手はまさかのWパイロンペナルティで7番手から順位を上げられず。第1ヒートのタイムを守り切った澤平選手が第7戦を制した。「天気が不安定で、路面温度にセットアップできないまま走ることになってしまいました。練習不足も結構あったので、自分がクルマに合わせることができていなかった部分もありますね。2本目も路温とタイヤを合わせ切れないままタイヤが引っ掛かってしまい、満足な走りができなかったのは残念です。さるくらと自分のクルマは相性が悪いので、つくるまに出てJAFカップの出場権を獲得したいですね」と澤平選手は語った。齋藤寿選手と服部選手に澤平選手が加わることで、さらに予断を許さない王座争いになりそうだ。

BSC1クラス優勝は澤平直樹選手(エフェクトボレロBBRスイフト)。
BSC1の2位は服部義野選手(YHテックMSRICインテグラ)、3位は中島裕選手(WAKO'S植村インテグラDL)。
BSC1表彰の各選手。

BSC2クラス

 今季5戦目の成立となったBSC2クラスでは、ケータハム・スーパーセブンを駆る斎藤達也選手が3勝を挙げてシリーズをリードする。しかし、スピードパーク新潟での第6戦ではマツダ・RX-7を操る地元勢、小林純選手に敗れた。斎藤達也選手がリベンジの筑波とするのか、それとも小林選手が再び挑戦を跳ね返すのか、第1ヒートから白熱した。

 先手を取ったのは小林選手。1分11秒744と圧倒的なタイムを記録し、後続にプレッシャーをかける。シリーズ2番手の徳武銀河選手をもってしても、このタイムには及ばない。最終の斎藤達也選手は、小林選手に約0.1秒差まで迫ったもののパイロンペナルティ。第2ヒートでの追い上げを余儀なくされた。

 第2ヒートを前に路面はハーフウェットとなり、小林選手によるトップタイムが更新されないまま、斎藤達也選手がスタート。ところが、蹴り出しに神経を集中させるスーパーセブンにとって、この路面状況はあまりにも過酷。激しいテールスライドで動揺したのか、最後のターンでは一瞬、判断が止まったような場面も見られた。果敢に走り切った斎藤達也選手だったが、タイムは小林選手に僅か0.028秒届かず2位に終わった。

 斎藤達也選手のリベンジを阻止した小林選手は「今日のポイントは、8の字で弱シフトロックを使ってスライドさせたのがドンピシャで決まったことが勝因ですね。スーパーセブンに勝ち越していけるように、最終戦とつくるまは参戦したいと思います」と語り、鮮やかなターンで今回の一戦を制した。両者による“真のセブン対決”は、終盤戦までまだまだ続きそうだ。

BSC2クラス優勝は小林純選手(まこねんコサ犬サカモトRX-7)。
BSC2の2位は斎藤達也選手(コサ犬ケントSスーパー7UPS)、3位は徳武銀河選手(芭蕉BSテックロードスター犬)。
BSC2表彰の各選手。

Dクラス

 ハイパワー4WDとフォーミュラカーが争う異種格闘技戦が見どころのDクラス。開幕戦は千葉真一選手が勝利したものの、同じく三菱・ランサーエボリューションIXを駆る大澤勝紀選手が第3戦から4連勝を飾って王座争いをリードする。フォーミュラカーのMS02を武器に1勝を挙げている関谷光弘選手らが、大澤選手を追う展開となっている。

 地元の筑波で勝利を手にしたい千葉選手は、第1ヒートで1分10秒143と全クラスでトップのタイムを叩き出し、ライバルを圧倒。第2ヒートに入っても、千葉選手のタイムを覆すドライバーは現れなかった。第1ヒートでトラブルに見舞われた最終の大澤選手も、手負いのランエボIXを労わりながらの走行となり2位に終わった。

 優勝した千葉選手は「筑波を走るのは1年10カ月ぶりでちょっと心配だったんですが、昨日の練習でしっかり走れたので、イケるかもしれないと思っていました。テクニカルは自信があるので、そこで決めてやろうと思っていきました。残り3戦は厳しいと思いますが、ここで勝てたのが嬉しいですね」と、茨城中央サーキットでの開幕戦に続き、地元での今季2勝目を手にした喜びを語った。

Dクラス優勝は千葉真一選手(CI犬BGブレイブDLランサー)。
Dの2位は大澤勝紀選手(フォースDLコルトSPランサー)、3位は関谷光弘選手(DL☆MTM飯田店MS02)。
D表彰の各選手。

PHOTO/鈴木あつし[Atsushi SUZUKI] REPORT/鈴木あつし[Atsushi SUZUKI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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