中国ジムカーナPN3、第5戦で内田敦選手が今季初優勝で王座争いは混戦に!

レポート ジムカーナ

2026年8月10日

2026年JAF中国ジムカーナ選手権は広島県に建つTSタカタサーキットで始まり、同県のスポーツランドTAMADA、そして岡山県にある備北サーキットのAコースとBコースを舞台に全8戦で開催。中国地区戦で戴冠を果たすには、ミニサーキットやカートコースといったハイスピードコースへの対応も重視され、近年はこのシリーズで好成績を残した若手スラローマーがJAF全日本ジムカーナ選手権にステップアップし、結果を残している。また地元学生スラローマーの参戦も多く、平均年齢が若いことも特徴だ。第5戦は、今季も全日本の第4戦が開催されたTAMADAが舞台となった。

2026年JAF中国ジムカーナ選手権 第5戦
2026年JMRC中国ジムカーナ チャンピオンシリーズ第5戦
2026年JMRC中国ジムカーナ チャレンジシリーズ第5戦
SLT.C PREMIUM GYMKHANA 2nd

開催日:2026年6月28日
開催地:スポーツランドTAMADA (広島県広島市)
主催:SLT.C

 今季は8戦のうち3戦がTAMADAで開催。中低速コーナー主体でコース間の渡りも多く、多彩なレイアウトをつくることができることもTAMADAの特徴だ。今回の一戦はそれらの特徴も生かした、ジムカーナの原点回帰のようなレイアウトで競った。

 設定した上程恒夫競技長は「今日は昔のジムカーナらしいコースにしました。単純なレイアウトを基本として左右の360度ターン、そして最後のスラロームと、ジムカーナの基本要素を詰め込みました。特に最後のスラロームは高速から徐々に速度を落としていきながらのスラロームで、リズムのとり方が勝負どころになるかと思っています。パイロン間の距離も何度も試行錯誤を重ねました」とレイアウトを解説した。

 コース図を受け取り、慣熟歩行に臨んだスラローマーからは「このグリップの高い場所でターンかぁ…… 厳しいぞ……」と困り顔の様子。左右のコーナーをしっかり抜けて、リアタイヤも温度が上がってきたところでの360度ターン二連発は、もう一つの勝負どころとなったようだ。

2026年JAF中国ジムカーナ選手権 第5戦の舞台となった、スポーツランドTAMADAは早朝から雨が降り出しそうな曇天。慣熟歩行の途中からは霧雨が降り出し、空の機嫌にも左右される一戦の予感が漂った。
第5戦のレイアウトはコース前半に設けられた二連続360度ターンが最初の鬼門。フィニッシュ直前のスラロームもパイロンが不等間隔で並び、最後の難所として立ちはだかった。コーナーの要所にはインカットを阻む規制パイロンも置かれ、難易度が高い設定で争われた。
今回の一戦を主催した広島県のJAF加盟クラブ、SLT CLUB(SLT.C)の上程恒夫代表がレイアウトを設定した。第5戦では組織委員と競技長、コース委員長と三足のわらじを履き、自身も2025シーズンはR2クラスに参戦した現役スラローマーだ。

 この日、北海道のオートスポーツランドスナガワ ジムカーナコースで全日本第5戦が開催されたことがエントリー数に影響があったようだが、シリーズ後半で王座争いも白熱してきたことから、パドックは熱気に包まれた。

 早朝はなんとかもっていた天候だったが、TAMADAの向こうにそびえる山の頂には重たい霧がかかり、今にも雨が降り出しそう……。そして、慣熟歩行の最中にTAMADAは霧雨に包まれ、路面は徐々にウェットに変化していった。しかし、この日の空模様は猫の目のように変わり、霧雨があがったかと思えば、高い地熱が路面の雨を蒸発させた。そこにJMRC中国ジムカーナ チャレンジシリーズの慣熟走行が重なって第1ヒートはドライ路面で始まり、誰もがウェットを想定していただけにまさかの展開となった。自らの出番を前に、タイヤの空気圧を再度チェックするスラローマーがパドックのいたるところで見られた。

 しかし、気まぐれな梅雨時のTAMADAの空は思いどおりにはいかない。R4クラスの走行中にまた霧雨がTAMADAを包むと、路面はうっすらと湿り気を帯びる。グリップに大きな影響はなさそうだが、スラローマーには確実にプレッシャーがかかる。そして、霧雨は再びあがって天候に翻弄された第5戦はドライビングスキルとともに、メンタルの強さも勝利には必要となった。

受付を済ませたスラローマーには、栄養ドリンクが配布された。前日までの準備などで残った疲れも、この一本で吹き飛ばして本番に挑んだ。
降雨の予報も出ていた第5戦、どうにかもちこたえている早朝の空模様から、第1ヒート勝負とふんだ多くのスラローマーはコースオープンとともに朝の慣熟歩行へ繰り出した。
予想を裏切るかのように、朝の慣熟歩行の途中から霧雨が降り出し、ドライバーズブリーフィングは屋根の下で実施。しかし、この霧雨も止み、第1ヒートはドライ路面で始まった。

2026年JAF中国ジムカーナ選手権 第5戦
2026年JMRC中国ジムカーナ チャンピオンシリーズ第5戦

T28クラス

 T28クラスは、UTQG表示のトレッドウェア280以上のタイヤを装着した、PN・AE・SA・B車両で競われる。西島公一選手が開幕二連勝で流れを掴んだかに思われたが、その後は請川貴裕選手と矢野淳一郎選手が勝利を挙げて王座争いは混戦に。更にトップ3を追いかける平口勝久選手の走りにも注目が集まる。

 第1ヒートの路面はほぼドライとなってはいるものの、完全に乾ききっているわけではなかった。そのために、グリップを探りながらのブレーキングとコーナーワークを強いられることに。今季はまだ未勝利の平口選手がターゲットタイムをマークすると、続く請川選手が約0.2秒差の2番手に食い込む。クラスラストゼッケンの矢野選手も同じく1分13秒台を記録して3番手に入り、約0.4秒差の中に3人がひしめく接戦となった。

 第2ヒートに逆転のイメージを抱く請川選手と矢野選手だったが、その期待を無常にも打ち砕く雨が昼の慣熟歩行の最中に落ち始めた。ダンプコンディションではあったものの、さすがにタイムアップは望めず、第1ヒートのタイムで決着となった。

 平口選手は、「いつも2本目に逆転されることが多くて、今日は雨に感謝ですね。もう、周りが猛者ばっかりなので大変です。1本目はとてもリズム良く走れました。サブロク(360度ターン)はもう少し精度を上げなくてはいけませんね。今シーズン中にもう一勝したいです!」と、今季初勝利を掴んだ走りを分析。3位でシリーズ首位を守った矢野選手との差を一気に詰め、王座争いの渦中に飛び込んだ。

T28クラスではZN6型トヨタ86を駆る平口勝久選手(おしゃれ番長86)が空の機嫌にも助けられて、第1ヒートのタイムで逃げ切り今季初優勝、王座争いに名乗りをあげた。
ホンダS2000を武器にT28のシリーズ3番手で第5戦を迎えた請川貴宏選手(鴎S二千)は2位でシリーズ首位の矢野淳一郎選手(ビルドカワカミ@タカタGR86)との差を詰めた(左)。ZN8型GR86をドライブする矢野選手は第1ヒート一発勝負で3位に終わったが、シリーズ首位は守った(右)。
T28は4位までのスラローマーが表彰を受けた。左から4位の西島公一選手(BカワカミMoty’sスイフト)、2位の請川選手、優勝した平口選手、3位の矢野選手。

RCクラス

 軽自動車のPN・AE・B車両および排気量1500cc未満で前輪駆動のPN・B車両で競うRCクラス。なお、3つのRクラスで履けるタイヤは、JMRC中国が指定したタイヤとなる。今季は元全日本スラローマーの有田光徳選手が、隠し持っていたホンダS660をお披露目。第2戦から挑むものの、KAZUYA選手の高い壁に阻まれ未勝利のまま、シリーズが進んでいる。

 このクラスもT28と同じく、勝負は第1ヒートで決まった。第2ヒートの頃に雨が降るという予報から、第1ヒートからタイムを削らなければいけないプレッシャーからかパイロンペナルティが続出。その中でも確実にアタックを敢行し、ミスも少なく抑えた有田選手がトップタイムを樹立した。

 続くS660勢の田邉慶祐選手も好走を見せるが、有田選手には届かない。そしてラストのKAZUYA選手がスズキ・カプチーノに乗り込みスタート。ストレートスピードではカプチーノが有利だが、その差を二連続360度ターンで埋めた有田選手には届かず、2位に終わった。

 優勝した有田選手は、「S660に360度ターン二連発は厳し過ぎる! 構造的にサイドブレーキの位置が……。でも、リアタイヤのサイズ落として、空気圧パンパンに入れて回しました(笑)。2本目も同じような雰囲気で走れたと思ったんですが、3秒もタイムダウンしてたんですね」と、走りを振り返った。

 S660について「実はこのクルマ、ずっと家で保管していたんですが、引っ張り出してきました。とりあえず、LSDだけ入れてね! 最終戦はロードスターで出るかもしれませんが、今年はRCクラスを盛りあげたいと思います。いやー! 本当に勝てて嬉しい!!」と有田選手は明かしつつ、新たな相棒での初優勝の嬉しさを露わにした。

RCクラスでは今季、マツダ・ロードスターからホンダS660に乗り換えてBC2クラスから転向してきた有田光徳選手(BSエリアWmRTGMS660)が4戦目にしてついにRC初優勝を挙げた。
スズキ・カプチーノを駆り、RC三連勝でシリーズ首位固めを狙ったKAZUYA選手(JIC広高WmDL吉カプチーノ)だったが、調子を上げてきた有田選手に勝利を譲って2位に留まった(左)。3位には3戦連続で田邉慶祐選手(F-TECHプロμYHS660)が入り、S660使いがワン・スリーを占めた。
RCは左から、2位のKAZUYA選手と優勝した有田選手、3位の田邉選手のトップ3が表彰台に上がった。

R2クラス

 R2クラスは1500cc以上で前輪駆動のPN・B車両および前輪駆動のAE・SA・SAX・SC車両、あるいは後輪駆動のPN・AE・SA・SAX・B・SC車両が競う。開幕第1戦こそ上久保伸哉選手に勝利を奪われたものの、今季は乗本佳樹選手が三連勝で王座争いをリードしている。

 第5戦で第1ヒートをリードしたのも乗本佳樹選手だった。更に、2番手以下がパイロンペナルティを犯す異常事態が発生。加えて、2番手の上久保選手の生タイムでも乗本佳樹選手には届かなかった。

 第2ヒートのハーフウェット路面では、第1ヒートの乗本佳樹選手に追いつけるスラローマーは現れず。ミスを抑えながら走り切った乗本佳樹選手は、第2ヒートでも圧倒的なタイムを記録しながらラッキーな展開にも助けられ、今季4勝目を手にした。

 初チャンピオンに王手をかけた乗本佳樹選手は、「2本目(雨が)あがるかと思ったんですが、路面が乾ききっていなくてタイムアップは難しかったですね。360度ターンのところで1本目はミスってしまったんですが、今回ターンが設定された中央部分はとにかくグリップが高くて、思いっきり(サイドブレーキを)引かないと回れないと思っていったのが良かったかもしれません。次勝てればシリーズが決まるので絶対獲りたいと思っています!」と語り、表彰式では上程競技長へ最終戦カムバックのラブコールを贈った。

少数精鋭による戦いとなったR2では、ND型マツダ・ロードスターを操る乗本佳樹選手(YHプロμロードスター堤車両)が一発勝負の第1ヒートでしっかりタイムを残して4連勝。初の地区戦王者確定まであと一歩に迫った。
R2の表彰は左から、2位の上久保伸哉選手(YH東広島フォレストS2000)と優勝した乗本佳樹選手、3位の大峡颯斗選手(YH☆蓮空八雲ロードスター)のトップ3が表彰台に登壇した。

R4クラス

 R4は4WDのPN・AE・SA・SAX・B・SC車両が対象となる。2025シーズンまでJAF四国ジムカーナ選手権のR4クラスで長年、絶対王者に君臨していた山下和実選手が転勤で中国地区にやってきた。開幕戦でいきなり勝利を挙げて更に前戦まで二連勝中、“中国R4に黒船襲来”となっている。

 絶対にタイムを残したい第1ヒートでは、第3戦から参戦を始めた迫谷政則選手がトップタイム、そして天満剛選手が2番手に続く。しかし、ミスコースとパイロンペナルティを犯すスラローマーが多く、ラストの山下選手を前に、彼ら二人以外はまともなタイムを残せず。更に、山下選手までもがアクシデントでタイムを残せない異常事態となった。

 仕切り直しとなったR4の第2ヒートは路面がセミウェットながら、徐々に路面が乾いていった。把握が難しい路面状況となってしまったが、そこで圧倒的な強さを見せたのはやはり山下選手だった。第2ヒートではタイムダウンとなった、2番手の迫谷選手に1.5秒近い差をつけるタイムでフィニッシュ、しっかりと今季4勝目を手繰り寄せた。

 山下選手は「いやぁ…… やっちゃいました(笑)。スタートした瞬間、『あっ! ダメだ』と思いました。2本目は路面も随分乾いてきて、ドライのようにいけました。ターンは大回りしてもいいからブーストをかけ過ぎないようにも気をつけましたね。2位でも3位でもいいから、確実にポイントを稼ごうと思って走ったのが良かったのかもしれません」と、波乱万丈の第5戦を振り返った。

 続けて「四国からやってきて、中国はサーキットがバラエティに富んでいてビックリです。特にタカタとかハイスピードなんで、ブレーキパッドが減って驚いています。次のラウンドで表彰台にのれればチャンピオンも決められそうなので、狙いにいきますよ!」と中国地区戦の印象とともに、新天地でのチャンピオン確定への意欲も示した。

JAF四国ジムカーナ選手権のR4クラスを5連覇中だった山下和実選手(T4ランサーエボ6)が今季、愛車の三菱・ランサーエボリューションVIとともに中国地区戦のR4に移籍。“四国からの黒船”の第5戦はまさかの第1ヒートノータイムから逆転優勝を果たし、王者確定に王手をかけた。
スバル・インプレッサWRX STIを駆る迫谷政則選手(吉田屋カピバラ農園インプレッサ)は第1ヒートトップで折り返したが、第2ヒートでタイムを上げられず2位となった(左)。2024シーズンまでR4を二連覇していた川上智久選手(ミズモYHオレンジランサーQ)はランエボIXをドライブして、第1ヒートでのパイロンペナルティから3位まで挽回した(右)。
R4は4位までのスラローマーが表彰された。左から4位の三木健太郎選手(GLASS岡山GRヤリス)、2位の迫谷選手、優勝した山下選手、3位の川上選手。

PN2クラス

 PN2クラスは1500cc未満で2WD、前輪駆動はFIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2018年1月1日以降、後輪駆動は2010年1月1日以降のPN車両が対象。また、PNの3クラスでは、2026年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権 統一規則の第2章、第2条2)に適合したタイヤ、またはJMRC中国が認めたタイヤで競わなければならない。

 ND型マツダ・ロードスターのワンメイク状態となっているこのクラスは、中国地区がロードスターを製造するマツダのお膝元とあって、地区戦屈指の激戦クラス。今回の一戦は全日本と同日開催にも関わらず、実力派スラローマーが続々と参戦、第5戦最多タイの10選手を集めた。ここまで石井拓選手が2勝を挙げ、片山賢一郎選手と古田公保選手が1勝ずつ分け合い、王座争いは混戦模様となっている。

 ヒリヒリとした空気の中で、PN2の第1ヒートは始まった。JMRC中国ジムカーナ部会長で、今季からロードスターに乗り替えた馬場靖典選手は、まだセッティングの迷路から抜け出せないのか、タイムは低迷。そして、ターゲットタイムを大きく押し上げたのは、今季初参戦の第4戦で3位を獲得した西村優輝選手だった。1分10秒457は壁となり、第1ヒートは西村選手がトップで折り返した。

 これで勝負あったかと思われたが、第2ヒートではR4が走り始めるとともに路面はダンプに変わっていった。PN2ファーストゼッケンの馬場慎太郎選手がベストタイムを0.7秒以上更新し、ライバルもタイムアップの期待がかかる。しかし、トップタイムを更新するには路面のコンディションが整っていないのか、西村選手もタイムダウンを犯す中、トップは変わらない。

 しかし、ラスト前ゼッケンの片山選手がターンセクションに課題を残した西村選手のウィークポイントでタイムを稼ぎ、トップタイムを0.85秒更新。ラストの下山昂晃選手は苦手意識を持っている360度ターンで落としたタイムが最後まで尾を引き、トップに0.132秒届かず2位に終わった。

 今季2勝目を手にした片山選手は「もう1本目の雨を気にせずに『2本目やるしかない!』と思ってガンガンいったのが良かったみたいです。サブロクも近く回れたのが良かったかもしれませんね。もちろんシリーズチャンピオン目指していきます」と、シリーズ首位に立った勝因を語った。

 一方、今季は未だ勝利がないもののシリーズ2番手につけた下山選手は「今回は、自分の課題でもあるサブロクが上手くいきませんでした。進入から決めることができず、とにかく上手くいってないですね。コース系がわりと得意なんですが、やっぱり低速が課題です。残り3戦勝てるように、訓練を重ねてリベンジします」と悔しさをにじませた。

ND型ロードスターのワンメイク状態となっているPN2クラスでは、第1ヒート6番手だった片山賢一郎選手(YHフォーチュンロードスター)が3秒近くタイムアップを果たし逆転、開幕戦以来の勝利を収めた。
PN2の下山昴晃選手(BS☆SSS☆人鳥ロードスター)は第2ヒートで、優勝した片山選手を上まわる3.5秒以上のタイムアップを果たすも0.132秒勝利には届かず、2位となった(左)。第1ヒートを制した西村優輝選手(十升505素ロードスター)だったが第2ヒートでタイムを上げられず、2戦連続の3位となった(右)。
PN2は5位までのスラローマーが表彰された。左から4位の竹村穣選手(DLウェッズJTロードスター)、2位の下山選手、優勝した片山選手、3位の西村選手、5位の中嶋竜成選手(DLスノコTAPSロードスター)。

PN3クラス

 1500cc以上で2WD、FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2010年1月1日以降のPN車両で競うPN3クラスは、PN2と同じく10名のスラローマーが集った。昨季は開幕三連勝も果たして王座奪還した内田敦選手が、今季は未だ未勝利。池澤亮太選手と松村正吾選手が2勝ずつ分け合って今回の一戦を迎えたが、松村選手は全日本に参戦して不在。池澤選手と内田選手が勝利を争うことが予想された。

 走行直前でいきなり雨が降り始めた第1ヒートでトップタイムをマークして有利な展開を掴んだのは、スズキ・スイフトスポーツを駆る池澤選手だった。滑りやすい路面で前輪駆動の優位性を生かし、グイグイとフロントを入れていく力強い走りを見せた。一方、ロードスターRFが武器の内田選手は、グリップを探りながらの走りで2番手に留まり、対照的な走りが約0.1秒のタイム差に現れた。ZN8型GR86をドライブする伊達佑希選手が二人と同じく1分13秒台に入れて3番手につけ、第2ヒートに期待を持たせた。

 PN3の第2ヒートは路面がほぼドライとなり、第1ヒートよりも良い状態でのアタックとなる。ファーストゼッケンの黒田有一選手がいきなりトップタイムを上回り、第2ヒート勝負に。1分11秒台が連発する中、高杉和成選手がトップタイムを更新してラスト2の出番となった。

 ラス前の内田選手は、第1ヒートの不安そうなブレーキングとは一変。ターンセクションでもしっかり車両を飛び込ませ、最小回転半径で前へと進めていく。更に最後のスラロームに異常な速度で突っ込むと、リアがブレイクする寸前のギリギリの状態でクリア。一気にターゲットタイムを1分10秒179に押し上げた。

 ラストの池澤選手は「路面がドライになって、もう内田さんに追いつかれると思って走りました。リアが暴れるかどうかのギリギリでした」と、大きなプレッシャーの中でわずかにコースセクションでの遅れが響き、0.192秒届かず2位に終わった。

 内田選手は「池澤選手はウェットがとにかく速いので『やられた!』と思っていました。しかも、2本目はレイン用のタイヤと空気圧で準備していたんです。タイヤ交換は間に合わないと思ったので空気圧だけ調整したのですが、並んでいる最中ずっとドキドキでした。これで負けたらチャンピオン権がなくなってしまうところだったので、本当に勝てて良かったです」と、今季初勝利を掴んだ第2ヒートでの裏側を明かし、胸をなでおろした様子を見せた。

PN3クラスは今季未勝利で、チャンピオン防衛に背水の陣で今回の一戦を迎えた内田敦選手(DLXPLロードスターRF)がロードスターRFを武器に、第2ヒートで3秒以上のタイムアップを果たして逆転優勝、王座争いに踏みとどまった。
スズキ・スイフトスポーツを駆って今季3勝目を挙げて、チャンピオン確定への流れを引き寄せたかった池澤亮太選手(DLJT鴎ワークスSOスイフト)だったが、内田選手の鬼気迫る走りにおよばず2位に終わった(左)。第1ヒートは6番手だった高杉和成選手(DLJT1889GR86)がGR86をドライブして3.5秒以上タイムアップ、2戦連続で3位を奪取した(右)。
PN3も上位5選手が表彰を受けた。左から4位の柳知志選手(DL☆防長☆キイロスイフト)、2位の池澤選手、優勝した内田選手、3位の高杉選手、5位の伊達佑希選手(DLJTS+SOGR86)。

BC2クラス

 2WDのB・SC車両で競うBC2クラスでは、全日本BC2クラスでも活躍する藤井雅裕選手が、前戦まで三連勝で王座争いをリード。しかし、藤井選手は全日本参戦のために今回の一戦を欠場。開幕戦を制したシリーズ2番手、坂本稔和選手も主催にまわった。

 シリーズトップ2不在により、今季3人目のウィナーを決めることとなった第5戦、第1ヒートはR2から転向してきた五葉風雅選手がウェットの中でトップタイムをマーク。BC2初優勝を賭けて第2ヒートに臨んだ。

 しかし、若手の大躍進を簡単に許すまじと、第1ヒートはパイロンペナルティに泣いた影山幸輝選手が1分9秒484を記録して逆転。五葉選手も3秒近くタイムアップしたものの1.527秒届かず、2位の宮部貴盛選手を挟んで3位に終わった。

 影山選手は、「1本目は完全にウェットでグリップなかったんで、ちょっとだけ抑えたつもりでいったんですが、周りから『ビビりすぎやろ!』と言われてしまいました。(第2ヒートは)もう、これは負けてもいいから攻めてやろうといきました。でも、コーナーで曲がりきらんで膨らんでいって、体感的にはタイムとのギャップが……」と、今季初優勝を掴んだ走りに手応えが少なかったことを明かした。

 続けて「今年、SタイヤのBCクラスに移籍してきたんですが、やっと開幕した感じですね。感覚が合ってないのでまた同じような走りができるか分かりませんが、残りも楽しんで走ります」と、王座を争う2選手も復帰するであろう次戦以降を見据えた。

マツダRX-7をドライブする影山幸輝選手(山愛プロミューYH RX-7)が第1ヒート5番手からBC2でただ一人、1分10秒の壁を破る好走を披露して逆転、R2で挙げた2024シーズン第3戦以来の地区戦優勝を遂げた。
スイフトを操って第1ヒートをBC2の2番手で折り返した宮部貴盛選手(URG☆DL☆ATIKスイフト)は第2ヒートで4秒近くタイムアップを果たすも、今季2度目の2位となった(左)。第1ヒートのトップタイムをマークして地区戦初優勝が近づいた、マツダRX-8を駆る五葉風雅選手(トーマス☆DL卍ごよごよRX8)は逆転を喫して3位となったが、シリーズ2番手につけた(右)。
BC2は左から、4位の乘本和子選手(P,MU乗ロードスター堤車両)、2位の宮部選手、優勝した影山選手、3位の五葉選手の上位4選手が表彰された。

BC3クラス、PNAクラス

 BC3クラスは4WDのB・SC車両およびPN2とPN3に該当しない、FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2010年1月1日以降のPN車両で競われる。昨季は佃真治選手が満点チャンピオンを決めたが、今季は開幕戦と第4戦を多田淳選手が、第2戦は石原秀晃選手が、第3戦を佃選手が制して毎戦のようにウィナーが変わる展開だ。安定した成績を挙げる佃選手がシリーズ首位に立っている中で、2番手の多田選手と3番手の石原選手は今回の一戦を欠場した。

 1分12秒56で第1ヒートをトップで折り返したのは、やはり佃選手。2番手以下に2秒以上の差をつけた佃選手が更にタイムを上げるかと思われたが、第2ヒートでまさかのパイロンペナルティ。着実に走り切って4秒以上のタイムアップを果たした田伏雅樹選手が、0.777秒差で佃選手を抜いて今季初優勝を手にした。

「1本目はウェットで2本目は逆に完全ドライ。全然路面が変わってしまったので、その違いに合わせこむのが難しかったですね。とにかく(王座争いで)後がないので、思い切り良く走ったのが良かったです。今回の優勝でシリーズの芽が出てきて、ランキング3位以内は十分に狙えると思うので後半戦頑張ります」と、今季4人目のウィナーとなった田伏選手が王座争いに加わった。

 自動変速機およびEPB(電動パーキングブレーキ)を搭載するP・PN・AE・B車両が対象のPNAクラスは、今回の一戦では不成立となってしまった。その中でも唯一エントリーした木下裕司選手が両ヒートとも走り切り、第1ヒートのタイムがベストとなった。

BC3クラスでは昨季のR4王者、田伏雅樹選手(DL☆トーマス☆S+GRヤリス)がGRヤリスを駆って第1ヒート3番手から4秒以上のタイムアップで逆転、クラス転向後初優勝を達成した。
GRヤリスを操りBC3クラスをトップで折り返した佃真治選手(ADVAN☆GRヤリス)だったが、第2ヒートでパイロンペナルティを犯して今季2勝目はならず、2位となった(左)。昨季のJAF九州ジムカーナ選手権B5クラス王者の金子立選手(DLセラメタMSHランサー)はランエボXをドライブして、第1ヒートのミスコースから3位まで挽回した(右)。
BC3はトップ3が表彰を受けた。左から2位の佃選手と優勝した田伏選手、3位の金子選手。
フォルクスワーゲン・ポロGTIをドライブする木下裕司選手(TGMダイキチPOLO)のみ参戦で不成立となったPNAクラスだったが、木下選手は両ヒートを駆け抜けた。

2026年JMRC中国ジムカーナ チャレンジシリーズ第5戦

チャレンジクラス、クローズドクラス

 中国地区の若手スラローマーの登竜門となっているチャレンジシリーズは、チャレンジクラスのみの設定。P・PN・AE・SA・SAX・B・SC車両が対象で、エントリーシリーズらしくJMRC中国が指定したシード選手は参戦できない。また、第1ヒートの前に慣熟走行が設けられて三本走行でき、ジムカーナ初心者が実戦経験をより多く積めることも魅力のシリーズだ。

 開幕戦こそ落としたものの広島工業大学の現役学生、藤原卓司選手が三連勝中でシリーズを支配。ここまでは、中国地区のベテランドライバーたちも太鼓判を押す実力を発揮している。しかし、藤原選手は第1ヒートでパイロンペナルティを犯してしまい、前戦で2位の八木陸斗選手がトップで折り返した。

 藤原選手による第2ヒートでの逆転に期待がかかったが、八木選手も負けてはいない。1分11秒758でトップタイムを4秒以上押し上げて、藤原選手の走りを待つ。緊張の中でスタートした藤原選手は、二連続360度ターンで圧倒的な速さを見せて大きくタイムを稼いで後半に突入。第1ヒートで犯したパイロンペナルティの影響でパイロンへの寄せが甘くなり、タイムを失ってしまう場面があったものの、八木選手を0.183秒かわして今季4勝目を掴んだ。

「元オーナーの原紺(康治)さんに指導してもらってて、姿勢づくりにまだまだ課題があるんですが、今日は勝てて良かったです。外周をはじめとしたコース部分は上手くいったと思うんですが、スラロームとターンがとにかくダメでした」と、厳しい勝利に反省を口にした藤原選手。「来年はチャレンジクラスからPN2へステップアップしたいと思っています」と語る目標に、一歩近づいた。

 クローズドクラスには近藤俊治選手がS660を武器に参戦、第2ヒートでは8秒以上もベストを更新する好走を見せた。

チャレンジクラスではND型ロードスターを駆ってシリーズ首位を走る藤原卓司選手(DLフォーチュンロードスター)が、パイロンペナルティによる背水の陣でプレッシャーがかかる第2ヒートで見事な走りを披露、逆転で4連勝を達成した。
チャレンジは新旧ロードスター使いが4位までを占めた。ND型を武器に第1ヒートをトップで折り返した八木陸斗選手(DLプロμTUACロードスター)は藤原選手に0.183秒およばず逆転を許し、2位に甘んじた(左)。橋口大河選手(YHロードスター)はNC型をドライブして、八木選手と同じく4秒以上のタイムアップを果たして3位を掴んだ(右)。
チャレンジは5位までのスラローマーが表彰された。左から4位の木村悠大選手(NDロードスター)、2位の八木選手、優勝した藤原選手、3位の橋口選手、5位の楠昌樹選手(YUACパチパチヴィッツRS)。
クローズドクラスは近藤俊治選手(S660)がS660を駆って孤軍奮闘、第2ヒートで大きくタイムアップを果たして両ヒートを駆け抜けた。

 第5戦を終えて上程競技長は、「今日は本当にコロコロ天気が変わって大変でした。難しいコンディションでしたが大きな事故もなく無事に終われてホッとしています。ムシムシするこんな天気の中、コースで一日中外に立ってもらったコースオフィシャルの皆さんには本当に感謝です。よく頑張ってくれました、ありがとうございます」と、労いの声をかけた。

 また、TAMADAのオーナーであり、第5戦は審査委員を務めた玉田敬司氏は「今日は参加していただいた皆さん、本当にありがとうございました。フレッシュマンの若い選手たちの走りには毎回ドキドキします。今、中国地区は次々と全日本に若手を送り出しています。ぜひ、(今、地区戦を戦う)みなさんも全日本へ挑戦してほしいですね」と語った。

 TAMADAに地区戦が戻ってくる第7戦では更に王座争いが佳境となり、激戦が期待される。備北Bコースが舞台となる最終第8戦まで、目が離せない戦いが各クラスで繰り広げられそうだ。

スポーツランドTAMADAのオーナーで、ジムカーナを中心に中国地区のモータースポーツ、地元・広島のスポーツ振興に尽力する玉田敬司氏が地区戦スラローマーへの期待を語った。

スポーツランドTAMADAが地元のスポーツ振興に募金を寄付!

 2026年7月22日、TAMADAを運営する株式会社タマダ代表取締役社長の玉田氏は全日本第4戦で募った募金をスポーツ振興のため、地元・広島市安佐北区に寄付した。「広島で開催されている全日本ジムカーナをもっとメジャースポーツにするには地域との連携、地域への貢献も必要です。僕らの地元、広島市安佐北区のスポーツ振興にお役に立てればと思い、全日本ジムカーナでみなさまのご協力の下集めることができた寄付金をお渡ししました」と、玉田氏は活動に懸ける想いを語った。

玉田氏(右)は広島市安佐北区役所を訪問し、全日本第4戦で募った寄付金を立石哲夫区長(左)に手渡した。

PHOTO/鈴木あつし[Atsushi SUZUKI] 、株式会社タマダ[Sports Land TAMADA] REPORT/鈴木あつし[Atsushi SUZUKI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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