モータースポーツの楽しさを体験。1DAYキッズカートスクール第1回が開催
2026年8月26日
カート未経験の子供を対象に、モータースポーツの楽しさと基礎的な運転技術を学ぶ1DAYキッズカートスクールが、8月15日に東京都江東区のシティサーキット東京ベイで開催。第1回は15名の子供たちがカートに乗ってサーキット走行を初体験し、レーシングドライバーへの第一歩を踏み出した。
1DAYキッズカートスクール
開催日:2026年8月15日
開催地:シティサーキット東京ベイ(東京都江東区)
主催:JAF、TOM’S
1DAYキッズカートスクールは、2016年1月1日から2018年12月31日までに生まれた子供を対象とした、国際自動車連盟(FIA)が提唱するFIA Funding Programに基づいて企画されたカート体験・上達イベントであり、今回が初開催となる。主催は一般社団法人日本自動車連盟(JAF)と、シティサーキット東京ベイ(CCTB)を運営する株式会社トムス。
これはカート走行経験の有無に関わらず、カートで走ることを通じてモータースポーツファンを増やすことを目的としたプログラムであり、スクールの修了者はJAF公認競技のカート競技会に参加・出場が可能なジュニアBのカートドライバーライセンスを取得することができる。
全5回(8月15日、9月5日、9月26日、10月10日、11月21日)の開催が予定されており、会場はいずれも全日本カート選手権 EV部門の開催コースであるCCTB。参加者のスキルに応じて、カート経験のない子供のための初心者クラスと、ソディやビレルなどエンジンつきのジュニアカートに乗ったことがある子供のための経験者クラスが設けられている。
さらに5回のスクールに加えて、11月23日にはスクール修了者の中から選抜された成績上位者(12名)による特別模擬レースが、全日本カート選手権 EV部門の最終大会である第7戦/第8戦の併催イベントとして予定されている。
株式会社トムス・谷本勲代表取締役社長
「2026年の春先からトヨタモビリティ東京さんとのジョイントでキッズカート体験会を何回もやらせていただいた経験から、認知さえうまく広まれば、興味を持ってもらえる方は多いだろうと思っていました」と1DAYキッズカートスクール開催の経緯を語る谷本氏。「多くの方が参加してくださってホッとしていますし、1回目を無事に開催できたことをうれしく思います」と胸をなでおろした。
「トヨタモビリティ東京さんとのキッズカート体験会でのアンケートでは、また参加したいという方が9割くらいだったので、まず初心者クラスをしっかり開催して、今後の経験者クラスにつながる道をつくっていきたいです」と、基礎固めに注力したことを明かした。
また「初心者クラスから経験者クラスへ、さらには特別模擬レースへというステップの意義を証明させてもらい、全国的にこういうイベントを開催していただければ、カートをやろうという子は早くに増えていくと思います」と、そのモデルづくりを意識したイベントであることを強調した。
初心者クラスでは電気モーターとバッテリーで走るEVキッズカートを講習車として使用。フォーミュラレースなどで活躍した経歴を持つ、CCTBキッズ走行体験会レギュラー講師の松村啓太郎氏が講師を務める。また経験者クラスでは、よりレーシングカートに近いエンジン駆動のビレルN32を講習車として使用。こちらは2025年全日本カート選手権 EV部門チャンピオンの三村壮太郎選手が講師を務める。
イベントが行われる時間は全5回のスクールすべて、17時~20時30分を予定。とりわけ夏真っ盛りの時期に開催される今回の第1回は、昼間の厳しい暑さが和らいだ参加しやすい時間帯の催しになっている。それでも熱中症に注意が必要な8月半ばとあって、CCTBにはエアコンを備えた休憩スペースのコンテナがふたつ新設されていた。
1回目のイベントとなる今回は、初心者クラス10名の募集に対して16名の応募があったという。こちらを手厚くフォローするため、初心者クラスのみが開催されることに。これに伴い、初心者クラスは2グループに分割され、講師陣も三村氏と松村氏の2名体制になった。
大会当日は1名の欠席があり、15名の子供たちが保護者とともにCCTBに来場。内訳は7歳が2名、8歳が4名、9歳が6名、10歳が3名で、平均年齢は8.6歳。男子が12名、女子が3名だ。参加者には座学で使用するテキストが渡されたのに加えて、フェイスマスクとグローブのレーシングギアがプレゼントされた。
16時30分の参加受付の30分ほど前にCCTBには雨が降り始め、屋外施設はたちまちびしょ濡れに。雨は開会式が始まる17時までにはほとんど止み、幸いなことに屋外でのプログラム実施に影響を及ぼさなかった。夕刻ながらまだ明るい会場で、いよいよ第1回の1DAYキッズカートスクールがスタートした。
最初に行われるのは座学。屋内施設に参加者全員分のテーブルと椅子が着席位置を記して並べられ、参加者と付き添いの保護者1名がそこに着席。残る家族は後方の椅子から様子を見守っている。子供たちは緊張のせいかまだ表情が硬いのだが、早くもフェイスマスクをかぶってやる気を見せている生徒もちらほらいた。
壇上に立った松村先生がまず話したのは、このスクールでは怪我なく安全に過ごして楽しい一日にすることの大切さ。続けて子供でも分かりやすいように大きな文字で記された画像をスクリーンに映しながら、カートとはどんな乗り物か、EVカートの各部の呼び方は、といった初歩の知識をレクチャーしていく。
次に屋内コース(LIGHTNING TRACK)に置かれたEVキッズカートの実車の前へ移動して、カートの各部の呼び方を改めて説明。参加者たちはあらかじめ配られたカートのイラスト問題に各部の名称を書き込みながら、走行レッスンで必要になる知識を身につけていく。講師から「ここの呼び方が分かる人、いるかな?」の問いかけに、生徒からは「シートです」と元気な答えが返ってきた。
それを終えた参加者たちは、親子そろって屋外へ移動。全日本カート選手権が行われる屋外コース(SKY TRACK)に足を踏み入れ、講師ふたりの先導でコースウォークを行った。雨はすっかり上がり、SKY TRACKはもうほとんど乾いている。
このころになると生徒たちもイベントの雰囲気に慣れてきたのか、「あのコーナーってヘアピン?」などと自ら積極的に講師に質問を投げかける姿が見られた。中にはコースの勾配について尋ね、専門的な質問で講師を慌てさせる子供もいたほどだ。
親子がSKY TRACKを1周歩き終わったところで、イベントは一旦10分ほどの休憩を挟み、いよいよ実技へと移った。ここから参加者たちはA/Bふたつのグループに分かれてカリキュラムを体験していく。屋内施設でのプログラムは、シミュレーターによるブレーキ練習、フォーミュラカー乗車体験、屋内コース走行、シミュレーターによるフリー走行の4項目だ。
屋内プログラムで重点的にレクチャーされたのは、ブレーキをしっかり踏んでカートを止めることだった。これは安全にカートを楽しむために、何より大切なスキルだ。シミュレーターによるブレーキ練習では、講師の「ブレーキ!」の合図で走行していた全員がフルブレーキをかけて一斉にストップ。
続くEVキッズカートに乗ってのLIGHTNING TRACK走行でも、同じブレーキ練習が何度も繰り返された。さらに実車での走行では、コース内にパイロンを置いてスラロームを練習。生徒たちはコースの先を見据えたステアリング操作を学んでいった。
フォーミュラカー乗車体験は、屋内施設に展示されているFIA-F4車両のコックピットに座ってレーシングドライバー気分を味わえる時間。その写真を撮ろうとスマホを構える保護者の中にはモータースポーツファンも少なくないと見え、中には子供以上にわくわくした表情を浮かべている保護者もいた。1DAYキッズカートスクールは、家族そろって楽しめるイベントと言えそうだ。
シミュレーターのフリー走行で屋外コースの走行を学んだ生徒たちは、このイベントのクライマックスともいえるSKY TRACKでの走行にチャレンジする。時間は19時30分。全長約400mの広いコースは、先のLIGHTNING TRACKとはまったく違う本物のレーシングトラックだ。
路面はすっかり乾いて良好なコンディションになっている。車両はLIGHTNING TRACK走行と同じEVキッズカートなのだが、モーターのコントローラーの調整により、最高速度は7km/hから10km/hに上がっている。
SKY TRACKの走行でも、最初に学ぶのはブレーキだ。最終コーナーに並べられたカートに乗り込んだ生徒たちは、メインストレートに設置された2か所のコーンを目印に、フルブレーキでマシンを止めることを練習。そこから1コーナー先のパイロンスラロームを経てコースを1周し、また最終コーナーにマシンを止める。これを繰り返して、レーシングコースを走るための基礎技術を習得していった。
走行の合間には、一般の来場者がなかなか立ち入ることのできないVIPルームの見学時間が設けられた。すっかりリラックスして気分が盛り上がった生徒たちはふかふかのソファに腰を下ろし、「先生のカートって何キロ出るの?」、「ヘアピンはどうやったら速く走れるの?」と我先に講師へ質問を浴びせていた。
走行レッスンの締めくくりは、この一日の集大成となるSKY TRACKのフリー走行だ。先の走行で設置されていたコーンやパイロンは取り除かれ、生徒たちは本物のレーシングコースを全力で駆け抜けた。ヘルメットのシールド越しに見える目は、みんな真剣。中にはVIPルーム見学の時間に教わったアウト・イン・アウトの走行ラインにトライする子もいる。走行終了の合図は、実際のレースさながらのチェッカーフラッグだった。
すべての走行レッスンを終えた生徒と家族は、再びVIPルームでしばしの休憩。ここでJAFのスタッフからドライバーライセンス取得についての説明と、申込書の配布が行われた。これには多くの家族が真剣な興味を示し、ライセンス取得の意向を示した家族も少なくなかったようだ。
生徒たちは最後に講師が操縦するタンデムカートの助手席に座って、SKY TRACKでレーシングドライバーの全開走行を体験。その後、参加した家族全員がSKY TRACK内に集まって笑顔のあふれる集合写真を撮影し、この日の全プログラムを終了した。
三村壮太郎先生
「今まで子供にカートを教える機会は多かった一方で、今回のようにカート未経験のまっさらな子供たちに教えることはほとんどありませんでした。このように講師を務めてみて、ブレーキって大切なんだなということを改めて実感しました」と改めて気づきがあったという三村先生。
「僕たちは忘れがちなことだけれど、初心者がちゃんとブレーキを踏めるとは限らないので、フリー走行までにしつこいくらいブレーキを練習してもらいました。このメニューはすごく良かったと思います。まっさらの子供でもステップを踏んで教えれば、危険なく走れるレベルまですぐに持っていけるんだということが分かりました」と安全を最優先にしたカリキュラムの重要性、そして吸収の早い子供たちの成長ぶりに笑顔を見せた。
一方で「中には今回のスピードに物足りなさを感じていた子もいたように感じました。そういう子が経験者クラスに上がって、今度は競技としてのカートに触れていくのが、健全に競技人口を増やしていく上でも大切な流れなんだと思っています」とモータースポーツの裾野を広げる活動の大切さを感じていた。
松村啓太郎先生
「何より無事にスクールを終えられたことに安心しました。3時間半というイベントの時間は結構な長丁場ですので、怪我をする人もなくそれを終えられて本当に良かったです。今回とくに気を配ったことがふたつあって、ひとつは事故を起こさないこと。これは絶対条件です。そのために、ブレーキ練習を繰り返しやりました。もうひとつは、このイベントを楽しんでいただくことです」と松村先生。
「一日の終わりに子供たちの笑顔を見て、第1回は成功だったと思えました。今後もさらに安全性を高めて、進行の方法もさらに向上させて、楽しいイベントをつくっていきたいです。まずモータースポーツを楽しいと思ってもらって、そこからJAFのライセンスを取得して競技に入っていく子供たちが増えればうれしいです。その中から将来F1ドライバーが現れるようなことがあったら、泣いちゃうでしょうね(笑)」とスクールの感想を述べた。
この日、カート競技への第一歩を踏み出した15名の小さなドライバーたちが、数年後にレーシングカート、さらには自動車レースの世界で、大きな花を咲かせることに期待したい。
参加者の声/M・Iさん&H・Iさん親子
「カートのことをよく知ることができて楽しい一日でした。最後の自由に走る時間がいちばん楽しかったです。ブレーキとアクセルを上手に踏めるようになったと思います。またカートに乗りたいし、レースにも出てみたいです」(お子さん)
「私はもともと自動車レースが大好きで、友人とカート場を貸し切ったりしてカートを楽しんでいたところ、会社の上司にこのスクールのことを教えてもらって、今回参加することになりました。ペダル操作などの基本的なことをしっかり教えてもらえましたし、周りをちゃんと見て安全に走る意識はしっかりできていたと思うので、参加してすごく意義がありました。それに、EVカートの全日本チャンピオンのタンデム走行は、望んでも経験できるものではないのですよね。できれば私が三村選手の横に乗りたかったくらいです(笑)。娘は経験者クラスに参加する気満々ですので、また参加を申し込むつもりです」(お父さん)
参加者の声/H・Aさん&S・Aさん親子
「スクールに申し込みをして、抽選で参加できることになったと分かったときは、うれしくてびっくりしました。カートをちゃんとやるのは初めてなので、わくわくドキドキが止まりませんでした。最後の方は自分も速く走れるんだという気持ちが湧いてきて、うれしかったです」(お子さん)
「数日前に息子が「僕は将来F1ドライバーになりたいんだ」と言い出して、だったらまずはカートだという話になりました。それで、私の家から近くにあってレースを観に来たこともあるこのコースのことを思い出して、ホームページを見てみたところ今回のスクールの告知を見つけて、だったら申し込んでみようということになりました。好きなことをやっているときは、表情が生き生きしていますね。宿題をやっているときの顔とは違います(笑)。楽しそうで良かったです。チャンスがあれば、ぜひまた参加してみたいと思っています」(お父さん)
PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]



