【オフィシャル連載コラム 第1回】モータースポーツの“もうひとつの主役” オフィシャル

コラム オフィシャル

2026年10月19日

オフィシャルとは、競技会の運営をさまざまな立場から支える人々の総称

 オフィシャルとは、モータースポーツの競技会を安全かつ公平に進行させる係員です。コースの監視や車両・競技の確認、タイム計測、事故対応、ルール違反の判定などを行い、選手が安心して競技できる環境を支えています。

 競技会で必要とされるオフィシャルの数は、その規模が大きくなればなるほど増えていきます。ビッグレースを観戦した際に大会プログラムを購入すると、その競技会に携わったオフィシャルの氏名が掲載されていますが、何百人にも及ぶその数の多さに驚いた経験がある人もいるのではないでしょうか。

 モータースポーツのオフィシャルというと、まずコースサイドで旗を振る人の姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、コースに近い場所で業務を行う人々だけでなく、さまざまな立場のオフィシャルが競技に関わっています。

 例えばコントロールタワーには、タイムを記録する計時担当や、競技中に起こるさまざまな出来事を判定するオフィシャルがいます。また、医務室では緊急事態に備えてメディカル担当のオフィシャルがコース上のアクシデントに備えて待機しています。

コントロールタワーにはタイムを記録する計時担当のほかに、競技中の出来事を判定する大勢のオフィシャルがいます。

公正なレースを成立させる

 モータースポーツは、公正と安全を確保した上で行われる競技スポーツです。公平な競技を成立させるためには、定められたルールが適正に運用されているかを見守る人々が必要になります。

 例えばレースのスタート時には、フライングをすることなくグリッドを離れたかどうかを判定するオフィシャルが必要です。また、レース車両がピットに入って作業を行う際には、決められたルールに則って給油やタイヤ交換などが行われているかを確認するオフィシャルがいます。

 レース中に車両同士の接触が起きた場合には、それがいわゆるレーシングアクシデントなのか、それともペナルティの対象となる行為なのかを判断するオフィシャルもいます。

 さらにレース終了後には、上位入賞車両に規定違反がないかを確認する再車検を行う技術担当のオフィシャルも、重要な役割を担っています。

スタート前とレース終了後には車検が行われます。競技車両が規定通りの仕様になっているか検査するのが、技術担当の主な役割です。

安全を守るのもオフィシャルの重要な仕事

 アクシデントによって競技車両がコースサイドに衝突して停止してしまった場合には、現場に迅速に駆けつけて車両を撤去したり、ドライバーが負傷した場合に救助したりするオフィシャルもいます。

 このように、競技が最後まで公正かつ安全に運営されるために、オフィシャルは欠かすことのできない存在なのです。

安全な運営にオフィシャルは欠かせません。負傷したドライバー救助の後には、事故車両の迅速な撤去が求められます。

多くのオフィシャルは「本業」を持つアマチュア

 現在、国内でのJAFオフィシャルライセンスの発給数は約2万にも及び、多くの方が競技会の運営に携わっています。

 その多くは、平日はサーキットとはまったく関係のない職場で働く会社員や自営業者、学生など、いわばアマチュアの立場の人々です。それでもレースウィークになるとサーキットに集まり、プロフェッショナルとしての意識を持って業務をこなしています。

 中には、ドライバーとして競技会に参加する傍ら、自分が出場する競技会のない週末にオフィシャルを務めたり、競技活動を休止している期間はオフィシャルに専念したりする人もいます。

 また、ドライバーを引退した後もレースの世界に関わり続けたいと、オフィシャルを始める人もいます。そうした人々が培ってきた参戦経験者としての視点を踏まえた判断が、スムーズな競技会の運営につながることもあります。

オフィシャルの大半は学生や会社員、自営業者などモータースポーツの競技会とは直接関係のない環境に身を置く人たちです。

臨場感とともに、大きな責任を担う

 言うまでもなく、モータースポーツは危険を伴うスポーツです。

 オフィシャルは、観客席から見ているだけでは体験できないモータースポーツの臨場感を間近で感じられる仕事であることは確かですが、危険が伴うのも事実です。特に、走行する車両に近い場所で作業するオフィシャルには、高い緊張感と集中力が求められます。

 それでもなおオフィシャルを続ける人がいるのは、公正かつ安全な競技会を支えるという使命感と責任感を持って業務に当たることに誇りを感じ、その結果として得られる達成感が大きいからではないでしょうか。

危険とも隣り合わせだが、観客席からでは体験できないモータースポーツの臨場感を間近で体感できるのもオフィシャルの醍醐味です。

経験を重ねて、一人前のオフィシャルへ

 オフィシャルとして競技の運営に参加すると、サーキットのスタンドから観戦している時や、テレビでレース中継を観ている時には感じることのできない、モータースポーツのもうひとつの世界を体験することができます。

 こうしたオフィシャルならではの経験に魅力を感じ、大きな競技会のときだけオフィシャルとして参加し、モータースポーツの雰囲気を違った角度から感じてみたいという人もいるかもしれません。

 しかし、オフィシャルの業務は、スポットで参加してすぐにこなせるほど簡単なものではありません。多くのオフィシャルは、現場で長い経験を持つベテランから指導を受けながら経験を重ね、徐々にスキルを高めていきます。そして、経験を積む中で、やがて責任者的な立場を任されるようになっていきます。

 その過程で身につけていく、同じ現場で働く仲間との連帯感も、連携した作業が求められる緊迫したモータースポーツの現場では重要なものになります。

さらに上の階級を目指すべく、さまざまな知識を習得するため講習会に参加する現役のオフィシャルたち。

ドライバーとオフィシャルをつなぐ「信頼」

 モータースポーツに限らず、競技スポーツというものは、参加者とそれを支える人々との互いの信頼関係のもとに成り立っています。

 レース終了後、オフィシャルがコースサイドに並んで旗を振り、ドライバーが手を振って応える――。サーキットでは、そんな光景がよく見られます。それは、参加者とオフィシャルの間にある信頼関係の証でもあると言えるでしょう。

オフィシャルのサポートがあるからこそ、ドライバーたちは安心して競技会に参加できます。

 次回からは、オフィシャルが担うさまざまな業務の詳細や、オフィシャルライセンスの仕組みなどについて紹介していきます。さらに、実際にオフィシャルとして活動している人々のリアルな声もお伝えする予定です。

 モータースポーツを支える、もうひとつの主役である「オフィシャル」という立場に関心がある方は、ぜひご一読ください。

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] PRODUCTION COOPERATION/スポーツランドSUGO[SPORTSLAND-SUGO]、オートパラダイス御殿場[AUTO PARADISE GOTEMBA]、チームマグナスオートクラブ[TMAC]

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