梅雨知らずの十勝スピードウェイ、N0-Vitzは山田浩選手が初優勝を飾る!

レポート レース サーキットトライアル

2021年8月5日

7月11日に、十勝スピードウェイで「北海道クラブマンカップレース第2戦」が開催された。全国的にはまだ梅雨時ながら、そこは梅雨のない北海道。初夏の爽やかなコンディション……に恵まれるまでには至らなかったが、ほぼ雨の心配のない中、各レースで熱戦が繰り広げられた。

2021年JMRC北海道レースシリーズ
2021北海道クラブマンカップレース第2戦

開催日:2021年7月11日
開催地:十勝スピードウェイ(北海道更別村)
主催:TOSC、MSF株式会社

 今年から設けられたN0-Vitzは、昨年までNetz Cupヴィッツレースで使用されていた排気量1500ccのトヨタNCP131型ヴィッツによるクラス。エントリー5台とまだ少ないこともあり、同じ台数のエントリーを集めた排気量1000ccのSCP10型ヴィッツによるN1-1000と初めて混走で競われることとなった。

 興味深いのは500ccの排気量差があるにも関わらず、ベストタイムはともに1分45秒台で、ほとんど変わらないこと。その理由はナンバーつきかナンバーなしか、という以上に、タイヤと車重の違いによりそうだ。

 N1-1000はSタイヤの使用が可能で、最低重量は660kg。N0-Vitzはヴィッツレース同じ、銘柄指定の市販ラジアルタイヤのワンメイクで、最低重量は1020kg。片やコーナーで稼ぎ、片やストレートで稼いでいるのは明らかだ。話は前後するが、そういった走りの質が異なることから、クラス別にグリッドを分けて間隔を空けることもしっかり検討されたが、最終的にはタイム順にスタートすることとなった。

 予選で総合トップタイムをマークしたのは、N1-1000の安藤義明選手だった。計測1周目からターゲットタイムをクリアし、そのまま周を重ねるたびタイムを短縮。早々に走行を終了する余裕さえ見せていた。「1周目のタイムを見たら、これは行くしかないと思って頑張りました。タイヤもしっかりグリップしてくれましたし、良かったです。前回は2位でしたから、今回は頑張って優勝したいです」と安藤選手は意気込んでいた。

 面野一選手、三浦稔呂選手が総合2番手、総合3番手に続き、第1戦のウィナーである中村高幸選手が彼らの後塵を拝す総合4番手となったのは、優勝すると次戦では30kgのウエイトハンディを課せられるためだ。

混走となったN1-1000とN0-Vitzの総合ポールポジション(PP)は、N1-1000の安藤義明選手(真狩モッコリ馬並昭和トラックSTEP Vitz)が獲得。第1戦で中村高幸選手が出したPPタイムを1秒以上上回る記録を叩き出した。

  一方、N0-Vitzは加藤由記選手がトップで、総合では5番手に。「ちょっと手探りでしたけど、1周目、2周目とポンポンと上げられたのに、3周目にはもう伸びなくなって。この感じだと決勝で楽勝というわけにはいかないでしょう」と加藤選手。2番手は佐久間進選手が獲得した。

N1-Vitzのトップタイムは開幕戦に続き加藤由記選手(アッシュランド33Vitz ED)が獲得。第1戦のタイムからタイムアップも果たしたが、決勝への不安が残り、その不安は的中してしまった。

 決勝では、心配されたスタート直後の1コーナーでの混乱はなく、まずトップで飛び込んで行ったのは安藤選手。これに面野選手が続き、1周目こそ一騎討ちだったものの、2周目には三浦選手が急接近。その勢いのまま三浦選手は3周目には2番手、そして5周目にはトップに躍り出る。

 だが、そのまま逃げることは許されず、3台が一列に連なっていく。6周目に安藤選手が再びトップに立つも、7周目に三浦選手がストレートで再逆転。ラスト2周は安藤選手と面野選手が激しく競う間に三浦選手が逃げ、最後は1秒435の差をつけてトップでフィニッシュ。

「けっこうギリギリでした。楽になったのは最後だけ。1コーナーのギリギリの入りですね、それが勝負の決め手になりました。ありがとうございます!」と三浦選手は接戦での勝利を喜んだ。

N1-1000では開幕戦は4位だった、深紅のヴィッツを駆る三浦稔呂選手(三浦としなが歯科クリニック・Vitz)が総合3番手スタートから逆転優勝を果たした。
N1-1000の表彰台には、左から2位の安藤選手、優勝した三浦選手、開幕戦に続いて3位獲得の面野一選手が登壇した。

  一方、N0-Vitzは予想外の結果となった。絶妙なスタートを決めた山田浩選手が、クラス4番グリッドからいきなりクラストップで1コーナーに飛び込んだからだ。しかも続いていた加藤選手がスタート違反のペナルティで、ドライビングスルーを課せられてしまう。ただし、山田選手はその後も楽をさせてもらえず、佐久間選手と田村康隆選手がピタリと食らいついて離れなかった。

 そんな緊迫した膠着状態が最後まで続いたものの、山田選手はなんとか逃げ切りに成功。「まさか勝てるなんて全然考えていなくって、表彰台に立てれば、っていう感じでした。今までに培ってきた、レースのプレッシャーの耐え方が役に立ったと思います。これが初優勝です」と勝利をかみしめていた。

クラス4番手スタートから見事なスタートダッシュを決めた山田浩選手(ワコーズμ北乃カムイVitz)が後続を抑えきって初優勝。表彰台で喜びを爆発させた。
N0-Vitzの表彰台。左から連続表彰台を獲得した2位の佐久間進選手、優勝の山田選手、3位の田村康隆選手は初参戦でいきなり表彰台に登壇した。

 十勝で初めて開催されてから、ちょうど10年目となるVITA-01は、実に14台ものエントリーを集めた。トップから9番手までが1秒差という群雄割拠の中、ポールポジション(PP)を獲得したのは佐藤元春選手。「タイムを出しに行った周に、きれいにクリアラップ取れました。できればポール・トゥ・ウィンで、このまま逃げたいですね」と午後の決勝に向けて語ってくれた。

 2番手には平中繁延選手、3番手には古井戸竜一選手がつける中、昨年のチャンピオンで、第1戦のウィナー坂野研選手はミッションとブレーキの不調を抱え、4番手に留まっていた。

VITA-01のスターティンググリッドはPPに佐藤元春選手(恒志堂レーシングVITA12号機)、2番グリッドは平中繁延選手(HDC 日本平中自動車VITA)のフロントローとなった。

 決勝ではフロントローのふたりが好スタートを切って、早々に後続を引き離しにかかる。しかし、2番手の平中選手は反則スタートによるドライビングスルーペナルティを課せられて、大きく順位を落としまうと佐藤選手の完全な独走態勢となった。

「もし、後ろが近づいてきて、バトルになっても大丈夫なようにタイヤを温存して走っていました」と語るも、難なく逃げ切りを果たした佐藤選手が今シーズン初優勝を挙げた。2位は2周目の2コーナーで古井戸選手を抜いていた、坂野選手が獲得。一方、平中選手は11位で入賞を逃したものの、ファイナルラップにファステストラップを記録して意地を見せた。

混走となったVITA-01とザウルスジュニアのスタート。ホールショットを決めた佐藤選手がポール・トゥ・ウィンを決めた。
VITA-01の表彰台には、左から2位は予選での不調を乗り越えた坂野研選手、優勝した佐藤選手、3位は今シーズン初参戦の古井戸竜一選手が登壇した。

 そして混走のザウルスジュニアは3台がエントリー。予選トップだった吉田哲也選手が、3周目に吉田拓未選手の逆転を許すも、1周で抜き返して優勝し、「本当に頑張ってきたというか、皆さんのおかげで結果がついてきて良かったと思います」と語っていた。

ザウルスジュニアは予選トップタイムを記録した吉田哲也選手(十勝レーシングスクールJr.2、手前)が2位の吉田拓未選手(十勝レーシングスクールJr.3、奥)との同姓対決を制して優勝を果たした。
ザウルスジュニアの表彰台。左から2位の吉田拓未選手、優勝した吉田哲也選手、3位の久保田尚裕選手。

 十勝サーキットトライアルは、5台がエントリー。総合優勝を飾ったのは、気筒容量3500cc以上のB車両を対象とするTB-6クラスの笠原康彦選手だった。ジムカーナにも使用するスバル・インプレッサで、ヒート1の計測1周目から好タイムを記録し、その後はクールダウンをしっかり行って、タイムアップに成功。

 ヒート2でもやはり計測1周目からアタックするも、ヒート1のタイムを上回ることはできなかったため、早々に走行を終了していた。「1台だけなので、自分との戦いというか。いつもはジムカーナに出ていて、そこはサーキットでも同じで、『自分の出せるタイムを出す』と思って走っています」と笠原選手は語ってくれた。

 総合2位は、1601〜2400ccのFFを対象とするTB-3クラスでNCP13型ヴィッツを駆る、後藤祥平選手。ヒート1の計測2周目に記録したタイムがベストタイムとなり、2ヒートとも計測時間をフルに走り続けたものの、その後のタイムアップを果たせなかったため、やや無念そうではあった。

「ちょっと慣れないうちに終わってしまったという感じで。去年1回出て、今回で2回目なんですが、クルマの仕様を変えて出たのは初めてだったので、探り探りのうちに終わってしまいました」と後藤選手。

 唯一バトルがあったのは、1600cc以下の車両を対象とするTB-2クラス。NCP131型ヴィッツの長澤紀幸選手が第2ヒートの最後の1周でベストタイムを記録した。「今年初めての十勝なので、楽しんで走れました。タイムはまだまだですけれどもね」と長澤選手。2位はダイハツ・コペンのRIE選手だった。

十勝サーキットトライアルTB-6クラスの笠原康彦選手(スバルインプレッサ)は今シーズン初参戦でオーバーオールウィンを飾った。
TB-3クラスはオレンジの車体が鮮やかな後藤祥平選手(ヴィッツ)がオーバーオールでも2位となるタイムを記録した。
長澤紀幸選手(NCP131リハビリ中ヴィッツ)は楽しんで走る中でも最後の最後に自己ベストタイムを更新して、TB2クラスを制した。

 2レース開催となったN-ONEオーナーズカップは、予選をレースごとに分けて競った。第8戦のPPは、「昨日までこんなタイム出るとは思ってなくて、ちょっとびっくりしました。十勝初めて来たんですけど、すごく楽しい」と語ったHIROBON選手。2番手には塚原和臣選手、3番手には松本恭典選手がつけた。

 第9戦は塚原和臣選手がPPを獲得し、2番手に弟の塚原啓之選手が続いた。塚原啓之選手は第8戦の予選開始直後に横転するも、持ち込んでいたTカーに第9戦に向けて入れ替えた、チームの期待にも応えた。塚原和臣選手は「1本目は(HIROBON選手に)行かれちゃったので、ちょっと頑張りました」とPP獲得を振り返った。

 一方、HIROBON選手は3戦連続PPならず3番手。タイヤトラブルが発生するも、2レース開催のため8本までマーキングが許されているため、交換は可能でことなきを得たはずが……。

朝一番で競われたN-ONEオーナーズカップ第8戦の予選は、N-ONE初優勝を狙うHIROBON選手(アンダーレ東野R N-ONE)が第7戦に続きPPを獲得した。
第8戦の予選からVITA-01とザウルスジュニアの予選を挟んで競われた第9戦の予選では、PPを兄の塚原和臣選手(ツカハラ N-ONE)、2番手は弟の塚原啓之選手(ツカハラレーシング#N-ONE)が獲得、兄弟でフロントローを独占した。

 第8戦のスタートに、またも出遅れてしまったHIROBON選手は、1コーナーで塚原和臣選手の逆転を許したばかりか、4コーナーで3回転!リタイヤを喫してしまった。「替えたタイヤが変にグリップして」ハイサイトのような状態を起こしたようだ。

 これで塚原和臣選手はオープニングの1周だけで約2秒のリードを奪い、後方で競い合う松本選手、そして阿久津敏寿選手を一切寄せつけず。今季8人目のウィナーに輝き、「スタートが良かったです!トップには1コーナーでもう出ていました。その後、まさかの展開で!最後は八分目で走りました」と会心のレースに大喜びしていた。

第8戦、ピットクルーたちに迎えられて優勝のフィニッシュラインに向かう塚原和臣選手。第9戦もポール・トゥ・ウィンで制して、一気にチャンピオン争いの主役のひとりに躍り出た。
第8戦の表彰台には、2位の松本恭典選手、優勝の塚原和臣選手、3位の阿久津敏寿選手が登壇した。

 勢いに乗る塚原和臣選手は、第9戦の決勝でも好スタートを決めて、トップで1コーナーに。塚原啓之選手が続くも、阿久津選手が4コーナーでインを刺し、2番手に浮上。再び逃げる塚原和臣選手に対し、阿久津選手と塚原啓之選手、松本選手による三つ巴での2番手争いが激しく繰り広げられた。8周目には松本選手が塚原啓之選手をかわして3番手に浮上してそのままフィニッシュ。2戦ともに同じ顔ぶれで表彰台が飾られることとなった。

 塚原和臣選手は今季初めて2勝目をマークしたドライバーとなり、ランキングでもトップに浮上。このレースウイークでの強さの理由をたずねると、「タイヤを90本持ってきて、兄弟ふたりで金曜日から10本練習しました。ここはタイヤ減るんで。かなり練習しました、練習は大事ですね」と教えてくれた。

第9戦の表彰台は、順位は異なるが第8戦と同じ顔ぶれとなった。左から2位の阿久津選手、2連勝を果たした塚原和臣選手、3位の松本選手。

フォト/加藤和由、JAFスポーツ編集部 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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