ハイラックスも走った!北海道ラリー地区戦が開幕

レポート ラリー

2022年2月21日

2022年のJAF北海道ラリー選手権が、1月30日、北海道千歳市を拠点とした「EZO ENDLESS RALLY」で開幕した。

2022年 JAF 北海道ラリー選手権第1戦
2022年 JMRC 北海道TEINラリーシリーズ第1戦
2022年 XCR スプリントカップ北海道 第1戦
2022年 北海道スノーチャレンジカップ第2戦
第36回 EZO ENDLESS RALLY

開催日:2022年1月30日
開催場所:北海道 千歳市、苫小牧市
主催:EZO

 北海道地区は本格的なモータースポーツシーズンインの前に2戦、スノーラリーを開催するのが、すっかり通例となっており、モータースポーツクラブ・エゾ(EZO)が主催する今回のEZO ENDLESS RALLYと、AG.メンバーズスポーツクラブ北海道(AG.MSC北海道)のブリザードラリーは、冬の風物詩として北海道のモータースポーツ界には欠かせないお馴染みのラリーとなっている。

 昨年はブリザードラリーが開幕戦を受け持ったが、今年はENDLESS RALLYが第1戦として開催され、ブリザードラリーは第2戦に回った。ここ数年は、両ラリーとも新千歳モーターランドに拠点を置いており、同モーターランド内のふたつのコースと1本の林道ステージを使用した設定でラリーを行っている。

 今回も新千歳のカートコースとジムカーナコースを跨ぐ形で設定された「Shin Chitose A」0.85kmと、隣接するダートの広場である「Shin Chitose B」1.00kmを、セクション1、2でそれぞれ1本ずつ走行。セクション3は新千歳モーターランドを出て移動した後に、林道SSの「Uenae Kita」2.01kmを、「Shin Chitose B」を挟んで2度走る、計7本、トータル8.72kmのSSが勝負の舞台となった。

 新千歳のふたつのコースは下地の路面が異なるため、雪が覆ってもグリップが微妙に違うというのが選手達の講評だ。ここ数年は、雪不足のため、人工降雪機を使用してコースを作った例もあったが、今年は例年になく千歳市周辺は雪が降り積もったため、全面、“自然降雪”による路面となっている。一方、林道SSの「Uenae Kita」もここ数年は継続使用されているステージで、こちらも今年は十分な降雪があったため、一部では“雪壁走行”も可能な路面が用意された。

 なお今回はJMRC 北海道 TEIN ラリーシリーズと、今年から始まる新シリーズであるXCR スプリントカップ北海道の開幕戦も併催された。また1月16日にひと足先に開幕した、ラリー入門者向けのシリーズである北海道スノーチャレンジカップの第2戦も行われた。なお北海道スノーチャレンジカップについては、林道SSは走らず、新千歳のみを舞台とするふたつのセクションで競う形としている。

1週間前に開幕したダートトライアル地区戦に続いてラリーの北海道の地区戦も、恒例のスノーラリーでいよいよスタートした。
当日は無観客開催としたほか、受付、車検時も主催者と参加者の接触を極力避ける方向で行うなど、感染拡大防止のための措置が取られた。
今年は積雪が多かったこともあり、新千歳のふたつのコースもラリーに適したスノートライアルコースが用意された。
林道SSは中高速コーナーが続く前半をクリアした後に、後半は下りを駆け抜けるというレイアウトが待ち受ける。

 RA-1クラスは昨年のチャンピオンで、地元開催のJMRCオールスターラリーフェスティバルも制した山田健一/竹下紀子組がSS1でベストを奪って順調な滑り出し。SS3でも2度目のベストで上がって、セクション2をトップで終える。一方、対抗馬の松波克知/佐野公彦組はSS4でこの日初となるベストを獲るが、序盤の2本のSSで山田組に7.3秒もの遅れを取り、苦しいスタートとなった。

 林道SSで挽回を狙った松波組は、そのSS5で山田組を1.9秒差で下す2度目のベストを奪取。新千歳に戻ったSS6でも山田組を3.3秒差で下して山田組に詰め寄ると、SS5の再走となった最終のSS7も、荒れた路面に各選手、大きくタイムを落とす中、0.4秒落ちに留めて4連続のベストで締め括った。一方、山田組はエンジン不調に見舞われて松波組から4.9秒遅れる4番手でフィニッシュ。結果、土壇場で山田組を2秒逆転した松波組が初戦を制した。

「最初は思いのほか滑ったので、冬のラリーを走る感覚が戻らなかったこともあって、ダメでした。SS2が終わった段階では、今日はもう勝負できる圏内からは外れたな、と」思っていたという松波選手だが、「昨年のこのラリーはまったく逆の展開になって、後半の林道で山田選手に逆転されて負けたので、今回は大きくセッティングを見直してきたんです。林道でその辺りを確かめたかったし、冬のラリーは特に何が起きるか分からないので、最後まで諦めずに走ろうと気持ちを立て直しました」と振り返った。

「今年のクルマは、去年と違って林道でもちゃんと曲がってくれました(笑)。SS7も結構、頑張りましたよ。ちょうどハンドルを切る所が滑ったので、早めに姿勢を作って何とか対処しました」という松波選手は、かつては地元オートスポーツランドスナガワで開催の全日本ダートトライアル選手権で、全日本の強者達を返り討ちに遭わせて優勝も飾った実力者だが、ここ数年はすっかりラリー屋の看板を掲げている。地区戦のチャンピオンもすでに獲得済みだが、「北海道のレベルが上がっているので、たまに出るぐらいではもう勝負に絡めないと実感しています。今年はまだ未定ですが、できる限り参戦して、“ラリー勘”を絶やさないようにしていきたい」と意欲を見せた。

RA-1クラスはラリー後半の4SSですべてベストタイムをマークした松波克知/佐野公彦組が優勝。
RA-1クラス上位入賞の各選手。

 RA-2クラスは、86、インテグラ、ヴィヴィオによる三つ巴のバトルとなったが、冬のラリーでは滅法強い、谷岡一幸/吉川利組のヴィヴィオが今年も快走を見せて3連続ベストで先行する。SS4では坂本直毅/東郷純一組のインテグラがベストを奪うが、林道ステージに入ると谷岡組が再び、ライバル達を突き離して独走。50秒近い大差で坂本組を下し、今年も、ヴィヴィオ健在をアピールした。

RA-2クラスは今年もヴィヴィオの速さを見せつけた谷岡一幸/吉川高利組が快勝した。
RA-2クラス優勝の谷岡/吉川組。

 一方、RA-3クラスは前半の4本のSSを3組がベストを奪い合うという混戦となる。セクション2をトップで終えたのはデミオを駆る岡直貴/和田誠組だったが、3.4秒差でスイフトの泉祐悟/小池征寛組が続き、関東栃木から北海道地区戦を追う藤田幸弘/藤田彩子組も岡組に4.3秒差の3番手で折り返した。

 林道のSS5では藤田組がベストを獲って泉組を抜いて2番手に浮上するが、新千歳のSS6でコースアウトを喫してしまい、痛恨のスタック。このSSでこの日2度目のベストを奪って泉組とのリードを広げた岡組が、最終SSもしっかり走り切ってフィニッシュし、トータル7.4秒の差で泉組の追撃を退けて幸先の良いスタートを切った。

 岡選手はダートトライアルにも並行して参加しているモータースポーツ歴30年の大ベテラン。「地がグラベルのSS4とSS6は路面が掘れて荒れましたが、ダートラもやっているので苦にはなりませんでした。ワダチにタイヤを入れてオン・ザ・レールで走ったのが正解だったと思います。最後のSS7も藤田選手がリタイヤした後でしたが、だらけないようにそれまでと同じテンションで走りました」と、経験を存分に活かせたラリーだったようだ。

 今回は、ラリー、ダートラの地区戦で何度もチャンピオンを獲得し、スノー&グラベルのスペシャリストとして知られる、同じチームの和田誠選手にコ・ドライバーを務めてもらったのが大きかったという。「走りだけではなくて、ラリーで勝つための戦略というものを一度見直したかったので、経験豊富な和田さんに乗ってもらいました。リーディングのタイミングもバッチリで、運転に集中できましたが、その他にも色々とアドバイスをもらったので、次戦以降でそれをフィードバックしていきたいですね」と、収穫の多かった一戦を振り返った。

接戦となったRA-3クラスは岡直貴/和田誠組が制して、幸先の良いスタートを切った。
RA-3クラス上位入賞の各選手。
JMRC 北海道 TEIN ラリーシリーズのJr RA-2クラスは、小野寺浩史/小野寺由起子組が優勝した。
Jr RA-2クラス優勝の小野寺/小野寺組。
JMRC 北海道 TEIN ラリーシリーズJr RA-3クラスは、前半で築いたマージンを守り切った中西貴晃/佐竹尚子組が優勝した。
Jr RA-3クラスを制した中西/佐竹組。
今回の一戦には、今季2戦目を迎えた北海道スノーチャレンジカップが併催された。CL-AWDクラスは伊藤貴弘/菊地紀秋組が優勝した。
CL-AWDクラス上位入賞の各選手。
CL-2WDクラスでは渡部康太/渡部麗組が優勝した。
CL-2WDクラス上位入賞の各選手。

注目のXCR スプリントカップ初戦は、
番場/保井組のハイラックスが優勝

 今回の一戦では、北海道を舞台とする新たなラリーシリーズ、XCR スプリントカップ北海道も開幕した。このシリーズはXC(クロスカントリー)車両及びSUV車両を対象としたシリーズで、今年は全7戦の開催が予定されている。

 今年のシリーズは北海道地区戦や北海道で開催される全日本ラリー選手権に併催される形となり、ARKラリーカムイやRALLY HOKKAIDOといった日本を代表するグラベルラリーも舞台になる。最終戦は昨年、JMRCオールスターラリーを併催した地区戦の最終戦、とかち2022となる。

 クラスは2クラス設定されており、XC-1クラスは車両重量2,000kg以下のXC車両及び車両重量区分なしのSUV車両。XC-2クラスは車両重量2,000kgを超えるXC車両となっている。ランドクルーザー、ハイラックス、サファリ、パジェロ、ジムニー等のXC車両、CH-R、エクストレイル、アウトランダー、ヴェゼル、CX-5等のSUV車両の参加が想定されている。なおタイヤに関しては規則書に明記されている指定タイヤを装着する形となっている。

 今回の開幕戦には、XC-2クラスに3台のハイラックス、XC-1クラスには1台のジムニーの参加があった。XCR スプリントカップは地区戦とまったく同じアイテナリーに沿って走り、7本のスノーSSによって競われた。XC-2クラスは番場彬/保井隆宏組が7SS中6SSを制する速さを見せて、記念すべき第1回のウィナーに輝いた。

 2011年から2年連続でFIAアジア・パシフィックラリー選手権ジュニアカップチャンピオンを獲得している番場選手は、アルトワークスで全日本ラリー選手権に参戦した2016年以来となる本格的なラリー参戦。スノーラリーは実に10年ぶりに走ったという。

「今まで競技でXC車両を乗ったことはありません。ハイラックスはラリーで最後に乗ったアルトワークスの3倍の車重があるので(笑)、最初は難しかったですけど、トラクションの凄さには驚きました」と番場選手。「タイヤも合っていたし、雪でも氷でもよく加速してくれる印象です。ただ重たいので滑り出すと止まらない。新千歳は特に丁寧な操作を心がけました。このボディサイズですから当然、ワダチは合わないのでグラベルラリーになればまた違った難しさが出てくると思いますが、通常のラリーカーにはない走破性を持っているので、その辺をどうタイムに繋げていくか、という勝負になると思います」と新たなシリーズを展望してくれた。

 XC-2クラスの2番手には昨年、ランサー・エボリューションXでJAF九州ラリー選手権チャンピオンを獲得した津野裕宣選手と、全日本ラリー選手権のチャンピオンを獲得した藤田めぐみ選手のコンビが入賞。津野組はSS4で番場組を下すベストタイムをマークし、一矢報いた。XC-1クラスにジムニーで参戦したレディスの阿部千織選手と加勢直毅選手のクルーも、ステージを走る毎にタイムアップを重ねるなどマシンの習熟に努め、完走を果たした。

 9月のRALLY HOKKAIDOではアベレージスピードが100km/hオーバーの超高速ステージも走ることになる、このXCR スプリントカップ。これまで日本のラリーシーンでは誰も見たことのない、迫力の光景が繰り広げられることになるだろう。今後のシリーズの発展が期待されるところだ。

XC-2クラスは3台のハイラックスが開幕戦に参加した。
番場彬/保井隆宏組が記念すべきXCRスプリントカップ北海道XC-2クラスの初戦を制した。
ともにアジパシではチャンピオンを獲得した実績を持つ、番場彬/保井隆宏組がXC-2クラスで優勝。
XC-2クラス上位入賞の各選手。
XC-1クラスはジムニーを駆った阿部千織/加勢直毅組が優勝した。
XC-1クラス優勝の阿部/加勢組。

フォト/加藤和由、JMRC北海道 レポート/JAFスポーツ編集部

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