大会名“スピリッツテクニカルジムカーナ”に恥じない究極のパイロンワーク決戦。JG13クラスは中村光範選手が早々にタイトル確定!
2022年7月22日
関東屈指のテクニカルコースである筑波サーキットジムカーナ場で、シリーズ最難関のコース設定!? JAF関東ジムカーナ選手権ならではの超絶テクニカルバトルが勃発した!!
2022 JAF関東ジムカーナ選手権 第6戦
JMRC関東オールスターシリーズ 第6戦
JMRC全国オールスター選抜 第6戦
スピリッツテクニカルジムカーナ
開催日:2022年7月10日
開催地:筑波サーキットジムカーナ場(茨城県下妻市)
主催:T-SPIRIT
全日本選手権にもエントリーする選手が数多く出場するJAF関東ジムカーナ選手権。今年は全9戦で開催されているが、7月10日に早くも後半戦の幕開けとなる6戦目を迎えた。会場は関東でも屈指の超低速パイロンコースが設定される筑波サーキットジムカーナ場だ。なお本大会は新型コロナウイルス感染症の感染対策を講じた結果、エントリー台数を100台に絞っての開催となった。
筑波サーキットジムカーナ場に集まった関東の精鋭100台で争われた真夏の決戦。コースはその大会名に恥じない超テクニカルぶりだ。ほとんどの区間を1~2速で走る超低速区間に、180度ターンが5回、270度ターンが3回、そして360度ターンが1回というハードスタイルなコース設定となっている。
ターンとターンの間に姿勢をつくれる加速区間はあるものの、その幅が不等長で非常に間合いが取りづらい上に、セクションごとのリズムも微妙に変化し、エントラントを悩ませるタフなコースだ。主催者も「地区戦ドライバーならできるコースを設定しました」とその難易度の高さを認める。
まず大会の口火を切ったのはJG14クラスだ。2L以下のPN車両で争われるクラスだが、厳しいタイヤ規制がかけられ、UTQG(統一タイヤ品質等級基準)のトレッドウェアが280以上のタイヤを使用することが義務付けられている。そのため、この規制のかかるJG12~14クラスはほぼシバタイヤワンメイクの状況。
そしてこの日の筑波サーキットの予想最高気温は34度。路面温度は優に50度を超え、多くのエントラントが1本目勝負を前提にアタックを開始する。そんな勝負の1本目でトップタイムをマークしたのは、ここまでシリーズランキング2番手の大江光輝選手。
「今回はとにかくターンが多かったので、それをしっかり決めていくことを心がけました。全てのターンが難しくて、全部が勝負どころですね……」とコメント。ラスト2の吉澤久選手は痛恨のパイロンタッチに泣き、最終ゼッケン幅信太郎選手は1本目で路面を読み違えてしまい、果敢にアタックするも大江選手には届かず2番手に留まった。
慣熟歩行を終えての2本目、予想通り気温がグングン上昇するコンディション。軒並みタイムダウンが続く中、1本目でトップタイムをマークした大江選手もタイムダウン。最終ゼッケンの幅選手が自身の中間タイムを更新して大幅なタイムアップを果たすも、大江選手には届かず2位でフィニッシュとなった。
「この路面温度ならグリップが高いと思って走ったんですが、滑り出すと止まらないので、2本目は滑るのを前提にアタックしたんですが……届きませんでしたね。1本目で2本目の走りができればトップを狙えたかもしれません」と幅選手。
優勝した大江選手は「1本目にイメージ通りの走りができたのがこの結果につながったと思います。自分のクルマは超柔らかいクルマなので、いつものように切り返しをずっと使い続けるだけでした。2本目は少し突っ込みすぎてタイムダウンしてしまいました」と振り返った。
JG13クラスは8台のエントリー。こちらもUTQGのトレッドウェア280以上のタイヤを装着する、2L以上の2WDマシンで争われるクラスだ。ここでランキングトップをひた走るのは、ここまで5戦中4勝を挙げている中村光範選手。GR86やBRZがひしめくクラスにスイフトスポーツで頭一つ抜きんでた速さを誇示している。
早くもシリーズチャンピオンに王手をかけて臨んだ本大会だったが、コースはまさにFF有利のレイアウト。中村選手は水を得た魚のように、GR86やBRZといった後輪駆動勢を圧倒的なタイム差で跳ねのけ、1本目からトップタイムをマークする。2番手につけた鈴木勇一郎選手とはなんと1秒差。
この差を跳ね返そうとする鈴木選手だったが、2本目はタイムダウン。そんな鈴木選手と中村選手の間に飛び込んできたのは、マキタスピードSTスイフトμを駆る清澤裕介選手だった。自身の1本目のタイムを1秒近く上げてスイフト使いの面目躍如。
「同じスイフトの中村選手がぶっちぎりのタイムを出してるんで、僕もなんとかしなきゃと思って走りました」と清澤選手。一方、1本目のタイムで優勝を決めた中村選手は「上手くいきました。2本目はかなり路面温度も上がってタイヤもグニャグニャでした。このコースはターンがしっかりできるかが肝でしたね。1本目から確実にターンを決めることに集中して、無難にまとめたのが功を奏した感じですね」と勝因をまとめてくれた。なお中村選手はこの優勝で6戦5勝、2位1回獲得でシリーズタイトルを手繰り寄せた。関東で一番乗りの2022チャンピオンが確定した。
大会はここから全日本と共通のJG8クラスへ。JMRC関東では全日本規定のクラス分けに、PN車両のクラスにのみタイヤ規制がかけられている。ひとつは1銘柄で単一コンパウンドであり、30サイズ以上のラインアップを有するタイヤであること。そして、もうひとつがUTQGのトレッドウェアが200以上であることだ。そのため、このクラスは横浜ゴムのアドバンが主力タイヤとなっている。
そんなJG8クラスは大混戦。ここでランキングトップの杉谷伸夫選手が優勝すれば、このクラスもシリーズチャンピオンが確定してしまう。なんとか杉谷選手の優勝を阻止したい1本目、トップに立ったのは大ベテラン山口晃一選手だった。
「今まで練習でやってきたことができたのが良かったですね。100分の1秒差でしたがトップタイムをマークできました」と1本目を振り返る山口選手。本人としては回しきれないターンがいくつかあったと言う。これをコンマ差でランキング2番手の上野山肇選手らが追いかける展開に。
前の2クラスで2本目は軒並みタイムダウンが続いたこともあり、多くのエントラントがタイムアップは難しいと半ば諦めのような空気が漂う中、想像以上の走りでタイムを伸ばしてきたのは上野山選手だった。山口選手が2本目タイムダウンしたのを確認すると、鬼人のようなパイロンワークを見せる。
結果、上野山選手が山口選手のタイムを見事抜き去り、今季初優勝を手にした。2位はこちらも2本目に大きくジャンプアップを果たした杉谷選手だ。自身のタイムをコンマ6秒上回るも、上野山選手のタイムには及ばず2位が確定した。
「1本目はゴール前のターンで回しきれずにタイムを落としていたので、2本目はそこをしっかり修正していこうと思いました。路面は厳しいと思っていましたが、とにかくタイムを上げなくちゃいけないので、2本目も1本目と同じ感覚で行って、行ってダメだったら修正しようと決めていきました。しっかりターンを回しきることを考えて走って、スラロームはアクセル全開で行ってタイムアップ。やっと勝てました!」と上野山選手は喜びを語った。
シリーズチャンピオン確定を逃してしまった杉谷選手は「1本目はサイドターンが全体的にまとめられず、2本目はラバーののりを考慮してサイドターンをひとつずつこなせていけたのでタイムアップができました。1本目に実力が出せなかったのが敗因ですかね……。中間の後の外周の最後をもう少し丁寧に進入できれば良かったです。次の茨城中央サーキットは準地元のようなサーキットなので、次でチャンピオンを決められたらいいですね」とまとめた。
本大会最多台数を集めたJG7クラス。ここまでシリーズをリードする安藤祐貴選手と、日本を代表するスラローマー岡野博史選手に、FFのスイフト勢がどこまで肉薄するかに注目が集まった。シリーズタイトル争いではアバルト124を駆る安藤選手が3勝、リジッドBRZの岡野選手は2勝を挙げている。そこに食らいついているのはスイフトの梅澤高志選手だ。
第1ヒートで先手を取ったのは岡野選手。そこまで梅澤選手がマークしていた1分10秒台のタイムを大きく上回り、一気に9秒台へ突入。それに負けじと攻めの走りに出た安藤選手だったが、パイロンに寄せきれず、ターンセクションでミスが目立つ走りとなり、コンマ2秒届かず2番手に終わる。
逆転優勝をかけた第2ヒート、半分以上の選手が1本目のタイムを抜けないでいる状況だ。まずは梅澤選手がスタートするも、路面温度の上昇からかターンセクションで苦しんだ様子。タイム更新ならずで3位が確定する。
次いで名手、岡野選手は「走り的に1本目の方が良かったですね。2本目はスタートして奥に行くまでにパイロンを見失ってしまい、奥のパイロンもリズムが悪くてパイロンタッチをしてしまいました。最初、コース図を見たときに走りづらいかと思いましたが、そうでもなかったですね。ただ、1速と2速で迷うところが多く、横Gがかかってるところでシフトアップとか、微妙に迷わせるコースでした。2本目、路面は悪くなってはいない感じですね。あれだけミスってもタイムアップしていたので……」と自身の走りを振り返る。
最終ゼッケンの安藤選手はこの岡野選手のパイロンタッチを確認してからのスタート。「前半のセクションでBRZに差をつけなくちゃいけないんですけど、そこでタイムを稼げませんでした。走り方をそんなに変えていなかったのに、中間タイムも落ちてしまっていたことから、熱でパワーが落ちてしまっていたのかもしれないですね。1本目でしっかりまとめきれなかったのが厳しいです」と安藤選手。
124スパイダーにアドバンテージがある茨城中央サーキットに向けて、岡野選手は「1勝1勝を積み重ねていくしかないですね。ラスト3戦はテクニカルばかりなので厳しい戦いになることが予想されますが、安藤君が速いので頑張るしかないです」と展望を語った。
旧型86/BRZとロードスターRFの戦いとなっているJG6クラス。アドバン一強のこのクラスで先手を獲ったのは、T2R YH GT86の山本哲也選手だった。前半ゼッケンながらターンに入ってからの絶妙なスピードコントロールを見せて1分12秒081をマークする。
だが、このタイムを更新したのが原史孝選手だった。「ターンで少しミスっちゃいました」と言うものの、同じ86に乗りながら圧倒的なターンの旋回速度。立ち上がりこそ山本選手に分があったものの、その差をもって余りある切れ味鋭い旋回を見せ、ひとり11秒台に突入する。
運命の2本目、路面温度のピークは過ぎて徐々にコンディションが向上し始めると、タイムアップする選手が散見されてくる。しかし、トップ3のタイムを更新する者は現れない。2番手の山本選手もパイロンタッチに沈み、3番手の藤田選手も自身のタイムに100分の6秒届かない。
トップ原選手も攻めすぎた結果、パイロンタッチ。1本目でパイロンタッチに泣いた、最終ゼッケンの高橋真二選手に期待がかかるも、トップタイム更新はならず。原選手が開幕戦に続いてうれしい今季2勝目を挙げ、ランキングでも2番手に浮上した。
「2本目も頑張ったんですけど、きつかったですね。ちょっと路面も厳しかったかもしれません。1本目に失敗していた前半セクションを修正できれば、タイムはもっと伸びると思ったんですけどね……。1本目にややセーブしすぎたところは悔いが残りますね」と自分の走りをまとめた。
毎戦のように勝者が入れ替わるJG5クラスは、アルファ対決に全日本ドライバーの片山誠司選手が割り込む形となった。ここまでシリーズをリードするのはベテラン小野田了選手。そこに同じくアルファの大脇理選手と新井範正選手が続く。アルファ勢はそれぞれ1勝で、唯一ランキング4番手の片山誠司選手のみがここまで2勝を挙げている。
そんなJG5クラスの第1ヒート、まずターゲットタイムを記録したのは片山誠司選手だった。この気温でWエントリーというハンデを負いながらも、ひとり1分8秒台を記録する。そんな片山誠司選手のトップタイムを奪ったのは大脇選手だった。前半セクションはスムーズにターンをそつなくこなしたものの、後半セクションはターンを回しきれずにタイムを失う。それでも片山誠司選手を1000分の4秒かわしてトップタイムを更新した。
勝負の2本目、まずは片山誠司選手の出走。Wエントリーの2走目で逃げるフロントタイヤを抑えての見事なタイムメイク。一気にトップタイムを7秒台に押し上げる。そして、ここからタイムアップする選手が続出。だがラスト2まで片山誠司選手のタイムを抜くものは現れず。
1本目トップの大脇選手が出走し、「1本目の良かったところはそのままに、後半セクションを修正しました。1本目で自信のなかった回しこむターンをしっかり止めてから回しきったのがタイムアップにつながりました」というコメント通り、タイムアップでの大逆転。今季2勝目を獲得した。
大脇選手は「今回2勝目を挙げられたので、今年シリーズチャンピオンを獲れるように、小野田さんを攻略していきたいと思います」と次戦への抱負を語った。
今大会5台と少し寂しい参加台数になってしまったものの、全日本ドライバーも参戦するJG4クラス。回頭性に勝るCR-Xが圧倒的に有利な中、全日本選手権にCR-Xで参戦する合田尚司選手はあえてEK9シビックでの参戦だ。しかし、近藤岳士選手や合田選手といった全日本組を押しのけたのは新潟の若き彗星、小平勝也選手だった。
1本目から同じCR-Xを操る近藤選手を置き去りにすると、2本目でも自身の持つトップタイムを更新。非の付け所のない圧勝で今季3勝目をマークした。その小平選手は「1本目はターンでの細かいミスが目立っていたので、2本目はそんなミスを修正しようとアタックしました。速度を乗せるところは修正できたんですが、ターンはラバーが乗ってしまって引っかかってしまいました。Wエントリーの後走だったので、スタートからタイヤのグリップが落ちていたこともあり、タイヤを縦に使うことだけに集中したのが良かったのかもしれませんね」と自分の走りを振り返った。
DC2インテグラのワンメイクとなったJG3クラスは、堀井紳一郎選手が2勝、石澤一哉選手が2勝で一騎打ち状態。タイトル争いでも重要なこの一戦は意外な形で決着がつく。
1本目にトップタイムをマークしたのは石澤選手。ひとり1分7秒台で2番手以下に大きな差をつける余裕の走り。この走りにプレッシャーを感じたのか、最終ゼッケンの堀井選手は痛恨のミスコース。しかし、JG6クラス辺りから2本目にタイムアップする車両が続々と現れ、2本目逆転の可能性も期待される状況に。
石澤選手は自身のタイムをさらに1秒短縮してひとり6秒台へ。最終ゼッケンの堀井選手に期待がかかったが、まさかのWパイロンタッチ。生タイムでも7秒台をマークしたがペナルティに泣いた。
「1本目はとにかく前半でしっかり踏んで、後半もミスがないように意識して走りました。いくつかパイロンへの寄りが甘いところもあったので、2本目にそれを修正して走れたのが良かったですね。自分でも大きなミスもなく、スタートした瞬間に『タイムが上げられる』と確信したので攻めました。次のICCは苦手なサーキットなので、ラスト2戦で勝負に出ようと思います」とまとめた石澤選手。
JG5クラスに次いで15台のエントリーを集めたJG2クラス。JG5~8クラスにかけられたタイヤ規制もあって、全日本選手権に参戦するダンロップユーザーとブリヂストンユーザーが押し寄せる過密なクラスだ。
1本目に強烈なインパクトを残したのは全日本ドライバーの奥井優介選手だった。スタートして奥の3連続サイドターンでパイロンまでわずか数センチというキレキレターン。外周を戻ってくるスピードも目に見てわかる異質な速さ。しかし、わずか数センチのところでパイロンタッチ。PN車両にも関わらずゴールタイムではひとり1分7秒491という異次元なタイムを記録するもペナルティに泣く。
それを横目にトップタイムを叩き出したのは、EXIGEを駆るランキングトップの金子進選手だった。ターンを得意としないEXIGEでBRZの大坪伸貴選手にコンマ8秒の差を付けて1本目を終了する。そして逆転の予感がする2本目に、金子選手のタイムを抜きん出たのは伏兵の太田代明大選手だった。
「暑くて自分でもどんな走りをしたのか覚えてないんです……」という太田代選手、不発だった1本目のサイドを修正すればもしかすると……と思われたが、2本目は見事にこれをまとめきっての9秒120。トップタイム更新の期待がかかった金子選手だったが「もう暑さで体力的にも限界でしたね……」という言葉の通り集中力を欠いてしまいWパイロンタッチ。太田代選手が地元筑波でうれしい凱旋勝利を飾った。
そして大会はJG1クラスへ。CT9Aランサーの戦いになっているこのクラスを制したのは、1本目にパイロンタッチで沈んだ大野航選手。ランキングトップの高瀬昌史選手の居ぬ間に今季3勝目を挙げてランキングトップを奪い返した。
「1本目、結構タイヤが引っかかってしまいタイムも出せなかったんですが、2本目は自分の運転に近づけるよう走ることだけに集中しました。路面とタイヤの相談ができたこともあり、タイムを上げられました。本当は高瀬さんと直接対決で戦いたかったんですが、これもシリーズの中の1戦と捉えて、後半戦もしっかり頑張りたいと思います」とコメントを残した。
最後となったJG11クラスは3台の出走。1本目はミスコースでタイムを残せなかった関谷光弘選手が、盤石の走りでオーバーオールタイムの1分6秒928をマークして大会を締めくくった。
「こんなコテコテのジムカーナらしいコースは関越がなくなって以来で久しぶりでしたね。この暑さもあって年寄りには最後ハンドルの手が回らなくて、完走できただけで御の字です」と笑顔で感想を述べた。
大会主催者のテクノプロスピリッツ代表・熊倉俊夫氏は「暑い中にも関わらず、オフィシャルやエントラントの皆さんが頑張ってくれたおかげで良い大会になりました。コースも関東選手権らしいテクニカルな良いコース設定で良い走りが見れた大会になったと思います」とこの大会を締めた。
フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部
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