94名が集った北海道ジムカーナ第2戦、H-PN1はロードスターの米澤匠選手が躍動!

レポート ジムカーナ JAFWIM

2023年5月15日

2023シーズンは6月にオートスポーツランドスナガワ ジムカーナコースで初の1大会2戦で開催される、2023年JAF全日本ジムカーナ選手権 第4戦・第5戦が予定されている北海道地区。さらに、10月には2023年JAFカップオールジャパンジムカーナの開催も控えている。そのJAFカップの開催地となる、千歳市に建つ新千歳モーターランドで、2023年JAF北海道ジムカーナ選手権 第2戦が開催された。

2023年JAF北海道ジムカーナ選手権 第2戦
2023年JMRC北海道SPARCOアウティスタ ジムカーナシリーズ第2戦
2023年JMRCオールスター選抜第2戦
コクピットチャレンジジムカーナ

開催日:2023年5月7日
開催地:新千歳モーターランド(北海道千歳市)
主催:C.S.C.C.

 独自のクラス区分で競われている北海道地区戦は、排気量区分なしの2WDのPN車両及び全てのP・AE車両はH-PN1クラス、H-PN1以外のPN車両によるH-PN2クラスでくくられる。N・B・SA・SAX・SC車両の2WDはH-BC1クラス、4WDがH-BC2クラスの4クラスで競われる。

「今年はSAクラスにB車両を加えたBCクラスにそのまま移行、PNクラスも1クラスあたりの参加台数が多くなるように2WDと4WDでのみ区分しました。また、ミドルシリーズに関しても86/BRZだけのクラスを設けて使用タイヤの制限を設けています。」と教えてくれたのはJMRC北海道ジムカーナ部会の石川和夫部長。

「ただ、前モデルの86/BRZと、GR86や新型BRZを区別はしていません。このクラス分けもあってか、今年は開幕戦から少し台数も増えてくれています」とのことで、新しいクラス区分の効果は発揮されているようだ。

 全日本のような排気量による区分が無いことに関して選手から不満もありそうだが、選手側からは「新千歳のようなサーキットになれば小さい車両の方が有利ですし、コース設定で格上のマシンとの差はほとんどなくなりますから気になりません」という声も。

 非常にアットホームな雰囲気で開催される北海道地区戦は、主催者と選手たちの距離がとても近い様子だ。

この一戦を主催した、カースポーツクラブコクピット(C.S.C.C.)の代表も務める、JMRC北海道ジムカーナ部会の石川和夫部長が、2023シーズンの北海道地区のジムカーナのクラス区分を解説してくれた。

 第1戦と同じ新千歳が舞台となった第2戦では、やはり第1戦と同じくミドルシリーズも併催。さらにこの一戦では北海道学生自動車連盟に所属する学生ドライバーも招かれて、総勢94名が参戦した。

 コースはジムカーナの基本要素がギュッと詰め込まれたようなシンプルなレイアウト。前半セクションの島回りを回り込む大きなS字や、後半セクションの強烈な6つのスラロームや360度ターンなど、しっかりと基礎的動作が試されるレイアウトだ。

「走り慣れている人を有利にさせないように、島回りにはいくつかパイロンを置いて規制しました」という主催者の狙いも当たったようで、慣熟歩行ではギア選択に迷うドライバーが続出。確実に1速で行くのか、それとも2速で攻めるのか、ドライバーを非常に悩ませるレイアウトとなった。

フラットで特徴がなさそうに思われるが、微妙なカントやパイロン配置の自由度の高さが特徴の新千歳モーターランド。この一戦はスタートから加速して、前半は中速で奥の島々を回り、後半は手前の広場に設置したパイロンを使った、テクニカルなスラロームとターンが続くレイアウトが採用された。

H-PN1クラス・H-PN2クラス

 第1戦でのH-PN1は、過去に幾度となくチャンピオンを手にしてきた、ND型マツダ・ロードスターを駆る米澤匠選手を打ち破った、アバルト124スパイダーをドライブするディフェンディングチャンピオンの金内佑也選手が優勝。さらにZC32S型とZC33S型の新旧スズキ・スイフトスポーツや、新旧のトヨタ86/スバルBRZも加わり混戦模様だ。

 この一戦はシンプルなレイアウトなだけに、多くのドライバーがギリギリのラインを狙ったためか、ヒート1からパイロンタッチが続出。ランキングトップの金内選手もパイロンタッチで沈むと、2番手を2秒近く離すぶっちぎりのトップタイムをマークしたのは、米澤選手だった。

 しかし、勝負はヒート2。気温こそ10℃前後で低かったものの、ヒート2に入り路面コンディションもどんどんと好転していく。しかし、各車タイムアップするものの、米澤選手のタイムを誰も抜けないまま本人の出番となった。

 1本目よりも全体的にパイロンに寄せてくるも、全体的にスピードの乗りが悪くなってしまったのか、タイムダウン。そしてクラス最終ゼッケンの金内選手が、米澤選手のタイムを塗り替えるべくスタートを切った。

「このコースだと前半で上回ってこないと、後半セクションでロードスターに絶対負けますから、前半が勝負ですね」という言葉どおり、中間タイムは米澤選手を上回った金内選手。しかし、スラロームで意識しすぎたか、2本目もまさかのパイロンタッチ……。生タイムでは米澤選手を抜いていただけに悔やまれる結果となった。

 一方、優勝した米澤選手は「開幕戦でスパイダーの金内選手にやられ、昨シーズンも持病で途中から参戦できなくなって、ずっと獲ってきたシリーズチャンピオンも獲られてしまい、なんとかこの新千歳は勝ちたかったんですね。でも、生タイムで抜かれてしまったのでどう喜んでいいか悩んでいます」と必勝を期した一戦での優勝も、複雑な心境の様子。

 しかし「自分の走りを振り返ると、及第点の走りはできていると思っています。車格では負けていても、ずっとロードスターでパワーのないマシンでも格上のクルマに勝ってきたので、北海道のテクニカルなコースなら勝てると思っています。今年は金内選手を打ち負かしてシリーズチャンピオンを奪還します」と今季への意気込みを語ってくれた。

 なお、H-PN2はGRヤリスを駆り、サーキットトライアルにも参戦している木村司選手がエントリー。2本目でパイロンタッチを喫してしまい、1本目のタイムがベストタイムとなった。

H-PN1クラスは2016シーズンから2021シーズンまで王座を守っていた米澤匠選手(シンシアAZURロードスター)が優勝。ランキングトップに立ち、王座奪還に向けて狼煙を上げた。
H-PN1の上位5選手。左から4位の扇圭一選手(BSディライトBWロードスター)、2位の細谷斉昭選手(シンシアDLボッシュスイフト)、優勝した米澤選手、3位の小野寺俊選手(シンシア★ワコーズDL★BRZ)、5位の河原浩幸選手(シンシア☆ラブカアクレBRZ)。
H-PN2クラスは第1戦に続き木村司選手(T-BOX★北極光★WMヤリス)が孤軍奮闘。ヒート1でベストタイムをマークした。

H-BC1クラス

 H-BC1はディフェンディングチャンピオンの成瀬悠人選手が2本目でパイロンタッチを喫するも、1本目に叩き出した52秒262の総合トップタイムで逃げ切り、開幕二連勝を達成した。

「1本目は1コーナーでタイヤが食わないだろうと進入したら、やっぱりアンダーを出してしまったんですが、ターンは上手く回れて、PN1の米澤選手や金内選手よりも速かったので驚きました」とのことだ。

 そして「2本目は逆にタイヤが食いすぎてパイロンを触ってしまいました。1本目、少し埃ぽかったことを考えると、2本目の方がタイムは上がったと思います。満点チャンピオンを決められるようにすることと、今年はJAFカップで良い成績を収められるように頑張りたいですね」と自身の走りを振り返った。

 H-BC2は第1戦に続き残念ながらエントリーがなく、不成立となった。

ヒート1の上位3選手が、揃ってヒート2でパイロンタッチを喫してしまったH-BC1クラス。ヒート1で2番手以下を1秒以上離す圧倒的なタイムを叩き出していた成瀬悠人選手(AIM・URG・YH・シビック)が逃げ切り、2022シーズンの第4戦からシリーズ6連勝を達成した。
H-BC1の上位3選手。左から2位の岩田聖選手(YH JUMPOIL Vitz)、優勝の成瀬選手、3位の宮本雅樹選手(SCENEXPLエリアYHスイフト)と、異なる車種を操る3選手が登壇した。

86/BRZクラス

 10台が集った、ミドルシリーズの86/BRZクラスはディフェンディングチャンピオン、ZC6型BRZの小石翔太選手を中心に競っている。1本目でトップタイムをマークしたのは2022シーズンもコクピットチャレンジジムカーナを制し、新千歳を得意とするZN6型86の高野一徳選手だった。

 これに肉薄したのは、ZD8型BRZのオートマチック車両でクラス転向してきた伊藤大将選手。高野選手と約0.1秒差に迫った。一方、小石選手は大きくタイムを落とし、クラス最下位に沈む。

 勝負の2本目では、高野選手はベストタイムを更新できず、後続の結果を待つことに。そして伊藤選手が抜群のスラロームで高野選手を0.036秒上回る。クラス最終ゼッケンの小石選手に注目が集まったが、小石選手は高野選手には届かず3番手。伊藤選手が嬉しい転向後初優勝を手にした。

ZD8型スバルBRZのオートマチック車両で競技車両を仕立てて、マニュアルが主流の86/BRZクラスに挑む伊藤大将選手(シンシアDLコサ犬AT-BRZ)。クラスデビューとなった第1戦は7位だったが、転向2戦目で優勝を果たした。
86/BRZの上位3選手。左から2位の高野一徳選手(GRG札幌カロリン☆86)、優勝した伊藤選手、3位の小石翔太選手(GRDLHKSTFサピカBRZ)。

R-2クラス

 ミドルシリーズのR-2クラスは1本目でトップタイムをマークし、2本目はさらに1秒近く更新したGRB型スバル・インプレッサWRX STIの笠原康彦選手が制した。「1本目はそつなくいったんですが、最後のパイロンでリアが流れすぎてしまったんで、2本目はそこを修正していきました。トータル的にはロスがあるかもしれないが、安パイかなと思い最後は無難にまとめました。今年の目標は5勝ですね! 5勝でチャンピオンですね!!」とチャンピオン獲得を宣言。

 一方、3年連続チャンピオンでGDB型WRX STIを駆る逸見将吾選手は、三菱・ランサーエボリューションⅧの伊藤健太選手に続く3位。「今回は完敗です。練習不足と準備不足です。とりあえず、残りの大会は笠原選手にひとつも負けずにチャンピオンを守りたいですね!」と王座防衛への逆襲を誓っていた。

R-2クラスで昨季は1勝を挙げてランキング2位だった笠原康彦選手(スバルインプレッサ)が今季初優勝。第1戦での3位からポイントを積み上げてランキングトップに立った。
R-2の上位3選手。左から2位の伊藤健太選手(Pガレランサーエボ8)、優勝した笠原選手、3位の逸見将吾選手(DL☆タクミ☆蒼インプ)。

R-1クラス

 12台を集めたミドルシリーズのR-1クラスを制したのは久しぶりの実戦だという、ホンダS2000を駆る木村朝基選手だった。

「1本目は360でサイド不発だったので、2本目はそこをしっかり修正していきました。今回のコースは1速と2速で迷うところが多かった印象ですね。個人的にはあまり順位は気にせず、慣熟歩行から自分に集中して納得のいく走りをすることを重視しています。大会に出るのが5年ぶりで、今年は自分の走りの納得度を重視して戦っていきたいですね」と振り返った。

R-1クラスは木村朝基選手(SINCERE S2000)が2ヒートともトップタイム。久しぶりの実戦とは思えない速さを見せて優勝した。
R-1の上位4選手。左から2位の三好翔大選手(シンシア★DL★あかロードスター)、優勝した木村選手、3位の梶靖博選手(μ☆エリアS☆浅野自工スイフト)、4位の小林滉季選手(TS-SCENEインテグラ」)とH-BC1と同じく、異なる車種を駆る4選手が揃った。

R-Ecoクラス

 ミドルシリーズのR-Ecoクラスは平成10年アイドリング規制以降の適合認定を受けた、ロータリーエンジンなど一部を除く排気量1586cc以下のP・PN・N・SA・AE車両で競われる。第2戦ではNCP91型トヨタ・ヴィッツを駆る、加藤亮騎選手が見事優勝を勝ちとった。

R-ECOクラスはヒート1では2番手だった、昨季ランキング2位の加藤亮騎選手(TBOX・JUMPヴィッツST)が逆転優勝。第1戦に続き開幕二連勝を果たした。
R-ECOに参戦したドライバーたち。左から2位の佐々木稀星選手(北科大スイフト)、優勝した加藤選手、3位の森本里美選手(シンシアDL・ヒロ・ロードスター)。

R-ATクラス

 ミドルシリーズでATやCVTを搭載した、いわゆるオートマチック限定免許で運転できる全ての車両で競えるR-ATクラスを制したのは、トヨタ・プログレで参戦した猿川仁選手。このクラスならではのクルマが優勝を掴んだ。

R-ATクラスの猿川仁選手(プログレ★ツインカム)はヒート2でパイロンタッチを喫するも、ヒート1のタイムで逃げ切り優勝を果たした。
R-ATに参戦したドライバーたち。左から2位の吉原友貴選手(アウトバック2.5XT)、優勝した猿川選手。

Fクラス・FU-1クラス・FU-2クラス

 軽自動車の三菱・アイやSUVのトヨタ・ハイラックスなどが集い、異種格闘技的な様相となったクローズドクラスとなるFクラス。NB型ロードスターの二木大地選手が逆転でトップタイムをマークした。

Fクラスはヒート1でミスコースを喫した二木大地選手(売り出し中!ロードスター)がヒート2で見事な挽回を見せて制した。
Fに参戦したドライバーたち。中央がトップタイムをマークした二木選手。

 道学連に所属する学生ドライバーで競われるFU-1クラスもクローズドとして開催し、33名が競った。

 ミスコースが相次ぐ中、しっかりとコースをトレースしてタイムを残したのは三木硬太選手。2本目は大きくタイムを落としてしまうものの、1本目の三木選手のタイムを誰も抜くことができず、逃げ切って制した。

33名の学生ドライバーたちによる、激戦のFU-1クラスを制したのはトヨタ・セリカを駆った三木硬太選手(北大BOSHE大好きコゲセリカ)。ヒート2では1分7秒台と失速するも、ヒート1で残した59秒334のタイムで逃げ切った。
FU-1の上位11選手。中央奥が33名のトップに立った三木選手だ。

 道学連に所属していない学生ドライバーが対象となるFU-2クラスは、坂爪勝吾選手が1本目のノータイムから立ち直り、トップタイムを奪取した。「やっと優勝できました! 1本目ばっちりミスコースしたんですが、2本目慣熟歩行をしっかりして勝てました!」と喜びを露わにした。

チームメイト対決となったFU-2クラスはNA型ロードスターを駆った坂爪勝吾選手(室工大老害★大和澄崋亜烈斗道)が制した。
FU-2に参戦したドライバー。右がトップタイムをマークした坂爪選手。

 第2戦を終えて、この一戦を主催したカースポーツクラブコクピット(C.S.C.C.)の代表も務める石川部長は「台数も多く、天気も良かったのが良かったですね。去年は雨でいろいろ大変だったので……。台数が多いのでしっかりラップ走行ができるコースにできたのも良かったですね。今年はJAFカップも全日本もあるので、どちらも参加してくれた選手に悪い想いをせずに帰ってもらえるような大会にしたいですね」と振り返った。

 第3戦は6月11日。全日本の開催を二週間後に控えたスナガワで、熱戦が再開される。

この一戦に参戦した女性ドライバーたちには、これからの時期には嬉しい日焼け止めなども配られた。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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