ヘビーウェットの奥伊吹開幕2連戦は横井昌志選手が連覇!

レポート ドリフト

2023年5月29日

2001年からシリーズが開催され、今年で23年目を数えるD1グランプリ。その開幕戦が奥伊吹モーターパークの特設コースで行われた。この奥伊吹を皮切りに、筑波、エビス、オートポリス、そしてお台場へと舞台を移し、2023年は全10戦で争われることとなる。

2023 D1グランプリシリーズ 第1戦/第2戦「2023 OKUIBUKI DRIFT」
開催日:2023年5月13~14日
開催地:奥伊吹モーターパーク(滋賀県米原市)
主催:株式会社サンプロス

 昨シーズン、シリーズチャンピオンの横井昌志選手と同4位の末永正雄選手を擁するD-MAX RACING TEAMは、マシンに変更はほぼないものの、今年からタイヤメーカーをナンカンからグッドライドに変更。また、同2位の川畑真人選手と同6位の藤野秀之選手を擁するTEAM TOYO TIRES DRIFTは、昨年同様の体制でチャンピオン奪還を狙う。

 一方、2021年チャンプで昨年は3位の中村直樹選手(TEAM VALINO×N-style)は、サポートを受けていたバリノタイヤのワークスドライバーとなり、新規製作のトヨタ・GR86を与えられた。そして今年の注目はシバタイヤの存在だ。タイヤサポートだけでなく、ワークス体制として強力なドライバー3名をそろえ、他サポートドライバー6名という大所帯でエントリーしてきた。

 このように、個人の闘いから始まったD1グランプリも、いよいよチーム戦の様相が濃くなってきたと言える。その他、下部リーグのD1ライツからステップアップしたのは3名。マシン変更やチーム移籍、しばらく参戦していなかったかつての活躍チーム・ドルーピーが復活するなど、開幕戦に相応しい注目ニュースがもりだくさんで、今年も1戦1戦目が離せないシリーズとなることは間違いないだろう。

関西最大級のスノーリゾートである滋賀県の奥伊吹スキー場の駐車場は、シーズンオフの時期にモータースポーツ会場としても利用され、D1グランプリは2020年からシリーズの1戦を担っている。
今年は審判員が増強され、これまでの神本寿氏に加えてD1GPチャンピオン経験者の高橋邦明氏、元D1GP選手の春山隆氏と古口美範氏の4名となった。D1・オリジナル・スコアリング・システム(DOSS)がチェックできない部分の審査やペナルティの判断、追走のアドバンテージ判定、そして万一のDOSSエラー時にも対処できる万全の体制だ。

第1戦

 予選はドライ。最初のAグループで横井選手が98.89をマークして頭ひとつ抜きん出ていると思われたが、今年からSHIBATIRE RACING SEIMI STYLE Dに所属する、ボディカラーも一新したCグループの田中省己選手がそれを上回る98.96をマーク。ひさしぶりの単走優勝となった。

田中省己選手の単走優勝は2014年の第6戦、2017年の第2戦、2020年の第2戦に続き4度目だが、まだ総合優勝の経験はないだけに追走の走りに期待がかかる。
タイヤの性能について「グリップは最高レベル。マシン自体は昨年からほとんど変更がないけど、今年は常に優勝に近い位置にいられると思う」と田中選手は好感触の様子。

 決勝前に雨が降り出し、路面は完全にウェット。半数以上がニューマシンでの初ウェットコースとなったため、苦戦は必至。ベスト16でそのほとんどが敗退となり、熟成されたマシンが進出することになった。その中でもとくに横井選手の走りは群を抜いており、高いDOSS得点をマークする追走を連発した。

 そしてトーナメントを勝ち上がって決勝に進んだのはD-MAX RACING TEAMの2台。エースドライバーは横井選手だが、彼が2018年、2019年にシリーズを連覇したときのマシンを与えられてチーム入りした末永正雄選手も、昨年のエビス最終戦で2連勝してランキング4位。実力差は大きくない。

 ゆえにチームオーダーはおそらくないと思われ、追走が始まったときにそれは確信となった。先行でアドバンテージを取られた末永選手の後追いの迫真の接近は、ポイントをひっくり返そうとする気迫に満ちていた。しかしそれが裏目に出て後半で近づきすぎ、インからノーズを出して失速してしまう。

 横井選手のドリフトは刺激的かつトリッキーな進入&角度ではなかったが、安定したラインコントロールを披露し、チームメイト対決を制して優勝を飾った。先行/後追いこだわらず、DOSS得点90台をキープし続けていたのが印象的だ。

赤いリップスポイラーのマシンが横井選手。「それほど気負っていないのにも関わらずDOSSの得点が良かった」とコメント。
昨年までのナンカンタイヤからグッドライドタイヤに変更となり、路面との相性は未知数だったはずだが、結果的にマッチングがいいことが証明された。
第1戦の優勝は横井選手、2位は末永正雄選手、3位は松山北斗選手、4位はヴィトー博貴選手、5位は田中選手、6位は藤野秀之選手、7位は中村直樹選手、8位は岩井照宜選手、9位は齊藤悠史選手、10位は北岡裕輔選手。

第2戦

 ヘビーウェットで開始された第2戦の単走予選は、コースコンディションの変化が予想不能なために全体を4グループに分け、各グループのトップ4が決勝進出となる変則方式が探られた。DOSSの得点は状況に合わせて都度補正が入り、審査の均一が図られる。

 Aグループトップが藤野選手、Bグループトップが蕎麦切広大選手(SHIBATIRE RACING)、Cグループトップが末永選手と続く。最終組で横井選手が走行すると、1本目でいきなり全グループトップとなる95.34をマーク。単走優勝を決めた。

前日からDOSS得点を高くマークしていた横井選手はこの日も危なげなく高得点をマーク。グッドライドタイヤを履いての初勝利となる。
横井選手は速度と角度の関係性を研究しているのはもちろん、ライバルとの得点差も考慮したクレバーな攻めを身につけている。
2位はD1GP復帰の日比野哲也選手、3位には同じSHIBATIRE RACINGの蕎麦切広大選手が入り、シバタイヤのポテンシャルの高さを証明。両選手とも前日の予選はマシンにトラブルを抱えていたが、修復して好調を取り戻した。

 前日午後からの雨は止まず、さらに第2戦予選途中から天候は暴風雨。ピットやブースエリアのテントが飛ばされる危険な事態となったため、観客と出場チームの安全を考慮して単走終了の時点で競技中止が決定した。

競技中止のアナウンス後、ファンサービスとしてコース上に全出場車が整列し、観客に囲まれる形で第2戦の表彰式が行われた。

■2023年若手注目株

2021年のD1ライツのチャンピオンを経て、昨年からD1GPにデビューしたヴィトー博貴選手が、ドリフトスタータイヤのサポートのもと、ボディカラーも一新。ベスト8で藤野選手とのバトルを制し、2年目で早くもベスト4に進出。準決勝では横井選手に負けるも、これが自身最上位となり、好調の滑り出しを見せた。続く第2戦も単走5位に食い込み、現在ポイントランキング4番手と健闘が光る。

フォト/SKILLD レポート/SKILLD、JAFスポーツ編集部

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