蕎麦切広大選手が完全覚醒でエビスで2連勝。車両の戦闘力を100%発揮して勝利!

レポート ドリフト

2024年10月1日

第3戦と第4戦の筑波大会で連勝した齋藤太吾選手(FAT FIVE RACING)がシリーズランキング首位に立ち、迎えたシリーズ後半戦。舞台となった福島県二本松市のエビスサーキット西コースはレイアウトこそ例年どおりだが、指定ラインやゾーン通過のルールが大幅変更された。選手たちはこれまでにない苦戦を強いられた中、蕎麦切広大選手(SHIBATA RACING TEAM)がパーフェクトとも言える単走部門優勝を含む追走部門2連勝を決めた。

2024年日本ドリフト選手権
D1グランプリシリーズRd5/Rd6
エビス大会

開催日:2024年9月27~29日
開催地:エビスサーキット西コース(福島県二本松市)
主催:株式会社サンプロス

第5戦&第6戦

追走部門

 エビス大会の2戦は、終えてみれば蕎麦切選手の圧倒的勝利だった。昨年の筑波ラウンドで初優勝したQ60(インフィニティ)から、今年はGR86にマシンチェンジしてセットアップに苦しんでいた感もあったが、ここへきて屈指のハイパワーエンジンのポテンシャルをフルに発揮できるようになったと言える。車両の完成度も高まり、第5戦は単走部門2位から追走部門優勝、翌日の第6戦は単走部門優勝からの追走部門優勝とまさにほぼ「パーフェクトウィン」の結果となった。

 まだ参戦4年目にして「昨年の優勝からずいぶん時間も経って、もうD1GPでは優勝できないのではと不安だった」というほどの苦悩を抱えたていたようだ。これは、前戦筑波大会での予選落ちが響いたそうで、得意なコースでの不調、そして不得意なエビスでの連戦を迎えるにあたり、シミュレーターでのトレーニングに加え、マシンの性能面に関しても、これまで自分には不必要と考えていたアンチラグやフラットシフトを使えるようにしてきた。

 その結果、予選では2番手、1番手と高得点で追走に進出し、決勝戦ではエビス西を得意とする松山北斗選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT2)と中村直樹選手(TEAM VALINO×N-STYLE)の二大巨頭を撃破する無敵状態。エビス2戦で57ポイントも稼いでシリーズランキングは4番手に浮上。チャンピオン争いへ大きく前進した。

第5戦の決勝戦は、シリーズランキング上位の日比野哲也選手や中村直樹選手を単走部門12位から倒して勝ち進んだ松山北斗選手(GRカローラ)と、単走部門2位の蕎麦切広大選手(GR86)の対戦。1本目の後追いで蕎麦切選手のアドバンテージが大きく、蕎麦切選手は1年ぶりの優勝となった。
第6戦の決勝戦は、単走部門2位から勝ち上がった中村選手と、藤野選手や日比野選手といった強敵を単走部門1位から連続で破った蕎麦切選手の対戦。1本目に後追いの中村選手がコースアウトして、後追いポイントがほぼ獲れなかったことで勝負が決した。
優勝の蕎麦切選手は、2020年にD1GPデビューした28歳。昨年のシリーズランキングは5位。今回でD1GP3勝目を挙げた。ちなみにドライバー体重(装備も含め)は57kg。参加選手の中で最軽量だ。
第5戦の優勝は蕎麦切選手、2位は松山選手、3位は中村選手、4位はヴィトー博貴選手、5位は日比野選手、6位は藤野秀之選手、7位は齋藤太吾選手、8位は森孝弘選手、9位は田野結希選手、10位は米内寿斗選手、11位は村上満選手、12位は石川隼也選手、13位は岩井照宜選手、14位は山中真生選手、15位は久保川澄花選手、16位は加納広貴選手。
第6戦の優勝は蕎麦切選手、2位は中村選手、3位は日比野選手、4位は山中選手、5位は村上選手、6位は松山選手、7位は田中省己選手、8位は藤野選手、9位は森選手、10位は上野高広選手、11位は米内選手、12位は横井昌志選手、13位は川畑真人選手、14位は岩井選手、15位は中田哲郎選手、16位は笹山栄久選手。

大排気量至上主義が激化!! もう2JZ改は「必勝エンジン」ではない!?

 D1GP参加車両の約8割が搭載するエンジンが、トヨタの2JZ-GTEエンジンの排気量アップ(3.4Lや3.6L)バージョン。しかし、今大会では蕎麦切GR86が搭載するV35GT-RのエンジンVR38改4.3Lや、中村シルビアが搭載するコルベットのV8エンジンLSX改7Lスーパーチャージャーが大活躍。ここまで成績の良かった2JZユーザーが「トルクじゃ勝てない」と口を揃えて言うのは、D1GPが最高速での1発振り進入するようなコースから、ややテクニカルなコースレイアウトになってきたからかもしれない。

蕎麦切GR86が搭載するVR38改4.3Lツインターボ。今回からアンチラグ&フラットシフトの制御を使うようになったおかげで、ストレートでの加速力が見るからに速くなった。
中村シルビアが搭載するLSXエンジンはV8スーパーチャージャーの7Lだ。1000馬力超という数値だけでなく、ターボラグとは無縁のフレキシブルさが武器だ。

第5戦

単走部門

 ストレートにライン規制ができ、第1ゾーンと第2ゾーンがともにアウト側に配置されたことで、昨年のエビス西コースの攻め方がまるで通用しなくなった今年のエビス大会。ベスト16のボーダーが95点台と低い中、98.8点を出した中村選手が今季3度目の単走優勝。「練習日から99点台が出ていたから予選通過は余裕かと思ってたけど、2本に1本はうまくいかなかった。1本目で95点台だったのにはかなりアセった」とホッとしていた。

1コーナー進入では両側に規制ラインが引かれ、真っ直ぐ飛び込むというよりS字を描くようなスタイルが高得点のカギとなった。
第5戦の単走部門優勝は中村選手。第5戦の追走部門は3位、第6戦の追走部門は2位でシリーズランキングはトップに返り咲いた。

第6戦

単走部門

 本大会は中村選手VS蕎麦切選手の様相となった。前日の単走部門で2位だった蕎麦切選手が、1位だった中村選手を上回る99点台を出してリベンジを決め、さらに決勝で撃破したのだから。V8スーパーチャージャー7Lの中村シルビアのフレキシブルさは、それまで参加者全員の脅威だったが、VR38改4.3Lの蕎麦切GR86は単走でもそれを上回るポテンシャルを発揮したのだ。

蕎麦切選手は1本目に98.3点、2本目で99.2点と「まず予選を通って、2本目で思いっ切りいく」と狙った通りの結果を出した。2戦通してマシントラブルがまったく発生しなかったのも強みだろう。

海外勢のマシンメイクにも注目!

エクストリームモータースポーツの世界的なスター、マッドマイクことマイク・ウィジェット選手が、開幕戦の奥伊吹大会ぶりに参戦。2戦とも予選通過はならなかったが、NAの4ローターを搭載するRX-3ワゴンは前回よりも大きく角度をつけられるように改善されていた。最終戦のお台場にはまた出場するそうだ。
タイから参加しているD1GP常連のラタポン・キャオチィンことポップは今ラウンドから出場。VR38改4.3Lを搭載したBMWのF22を投入。シェイクダウンからそこそこの走行に留めたためか予選通過はならなかったが、今後に期待がかかる。

フォト/SKILLD レポート/SKILLD、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ