D1第4戦筑波はTOYO勢が表彰台を独占!

レポート ドリフト

2025年7月8日

前回大会の奥伊吹ラウンドで2連勝した目桑宏次郎選手(VALINO TEAM G-Meister)を誰が止めるのか。チャンピオン経験者の中村直樹選手(TEAM VALINO×N-STYLE)や斎藤太吾選手が海外大会出場のため欠場し、シリーズランキング争いに大きな影響があると見られる中、シリーズ屈指の高速コースで争われる筑波サーキット連戦。ドライバーにもマシンにも負担が大きい気温34度を超える中での開催となった。

2025年日本ドリフト選手権
D1グランプリシリーズ 第3戦 第4戦
筑波大会

開催日:2025年6月27~29日
開催地:筑波サーキット コース2000(茨城県下妻市)
主催:株式会社サンプロス

コース2000の最終コーナーからヘアピン脱出までを5つのセクターに分けて審査。DOSS(D1オリジナルスコアリングシステム)の得点と審判員のライン判定を合わせて単走の得点となる。なお、スタート位置は最終コーナーの途中。ストレートでのいわゆる「3発振り」は、ストレートが始まるEXゾーンからとなる。
審判員はコントロールタワーのコース監視カメラに加え、ゾーン監視用の追加カメラを見て走りを審査する。今回は副審役を務めた神本寿審判員がヘアピンのポストに常駐し、カメラの死角をカバーしていた。
気温34度を超える猛暑だが、クールスーツ着用は定番となっており、これによりドライバーの負担はかなり低減されているようだ(写真左はTEAM D-MAX RACINGの横井昌志選手)。決勝時の気温は35度を超え、路面温度は60度近かった。使用タイヤの性能差も大きく出たようだ。

第3戦

単走部門

 今大会の審査区間は去年と同様だったが、ゾーンの配置にやや変更があった。特に1コーナーは去年のアウト配置に対しイン配置に変わり、コースアウトは減ったがこのゾーンを外すシーンも多かった。審査区間の全体で「いつもの筑波必勝ラインで走ると点数が出ない」と困惑する選手も多かったようだ。

 95点台でも予選通過ができるほどアベレージが低い中、最後のグループで出走した前日練習で99点を出して期待が高まっていた山中真生選手(ウエインズトヨタ神奈川×俺だっ! レーシング)が唯一の98点台をマークして優勝。参戦2年目、昨年のデビューイヤー最終ラウンドお台場で優勝&2位の快挙を成し遂げた大型新人は、単走でも初優勝を遂げた。今年も台風の目になるはずだ。

第3戦単走部門優勝は山中真生選手(ウエインズトヨタ神奈川×俺だっ! レーシング)。
SIM育ちの大型新人、山中選手が唯一の98点台をマークして単走部門勝利となった。

追走部門

 3連勝が目前の目桑選手と初決勝戦の石川隼也選手(広島トヨタ team DROO-P)の決勝対決は、お互いに追走ポイント10.7をマークする接戦でサドンデスに突入。しかし、その後の結果は打って変わって目桑選手の圧倒的な勝利となった。この結果にはタイヤの残り溝が大きく関係していた。

 D1グランプリには使用タイヤの本数制限があるとはいえ、決勝戦用に必ず新品が使えるルールになっている。しかしそれを使い切りサドンデスとなってしまい、お互いにここまで戦ってきたタイヤの中から溝の多い2本を使わざるを得ない状況となった。

 そこで不運にも使えるタイヤの残り溝がほとんどなかった石川選手に対し、目桑選手は準決勝の上野高広選手(TEAM VERTEX)とのバトル1本目で、上野選手がトラブルによるコースアウトで走行不能に陥り勝ち上がりとなったため、幸運にもその時のタイヤに半分ほど溝が残っていたのだ。このため先行後追いの2本ともバーストを恐れてまるで踏めない石川選手を目桑選手は落ち着いて倒すことができたというわけだ。

第3戦追走部門優勝は目桑宏次郎選手(VALINO TEAM G-Meister)。
タイヤを温存できた目桑選手が勝利。開幕3連勝でシリーズチャンピオン候補の最右翼となった。
写真左は目桑BMW(E92)のリアタイヤ。手前がこれから交換するヴァリノペルギア08Rで、まだ半分ほど溝が残っている。今回のラウンドではほとんどのマシンが2周でタイヤがボウズになる状況だった。写真右は石川GR86のリアタイヤ。交換するタイヤは溝がほぼゼロの状態。走行後に「ウェットのように滑った」と石川選手。
左から、2位の石川隼也選手(広島トヨタteam DROO-P)は自身最上位を獲得。1位の目桑選手。3位の横井選手は準決勝で対戦した石川選手のプッシングにより走行を中断したため大きく得点を失い決勝進出ならなかった。
第3戦の優勝は目桑選手、2位は石川選手、3位は横井選手、4位は上野高広選手、5位は山中選手、6位は蕎麦切広大選手、7位は村上満選手、8位は藤野秀之選手、9位は田中省己選手、10位は松山北斗選手、11位は田野結希選手、12位は加納広貴選手、13位は稲岡拓也選手、14位は和田賢志郎選手、15位は川畑真人選手、16位は石井亮選手。

第4戦

単走部門

 前日に続き、またしても最後のDグループから高得点が連発した。まず川畑真人選手(TEAM TOYO DRIFT 1)が98.11でここまでのトップに立つと、そのあとの走行の村上満選手(Repair Create×Result Japan)が98.21でそれを上回る。川畑選手の2本目でそれがひっくり返るかと周囲は期待するも1本目を越えられない。

 それを知らず単走優勝を確実なものにするためスタートした村上選手は、タイヤ温存を考えず2本目も全開アタックをかけた。しかしこれは自身を超えられなかったものの、結果的に1本目の得点で村上選手が単走優勝。GR86によるD1グランプリ参戦3年目、D1グランプリではベテランではあるが、これが自身初の単走優勝となった。

第4戦単走部門優勝は村上満選手(Repair Create×Result Japan)。
追走決勝の入場セレモニーの先頭で整列する村上GR86。2JZ改3.4L仕様で2023年から投入。助手席には抽選で選ばれた小学生が同乗してコースを1周した。

追走部門

 前日の第3戦のベスト16で対戦した藤野秀之選手(Team TOYO TIRES DRIFT 1)と松山北斗選手(Team TOYO TIRES DRIFT 2)が決勝戦で再戦することとなった。

 第3戦では藤野選手に追いつけなかった松山選手は、トラクションアップの方向でセッティングを変更。これが成功して後追いでポイント8、先行で逃げ切って後追い点2以下に抑えて自身3勝目、GRカローラに乗り換えてからの初優勝となった。

第4戦追走部門優勝は松山北斗選手(Team TOYO TIRES DRIFT 2)。
使用タイヤでみると、第3戦はヴァリノ、ダンロップ、トーヨーと表彰台を3社が分けたが、第4戦ではトーヨーが表彰台を独占した。
第4戦の優勝は松山選手、2位は藤野選手、3位は横井選手、4位は中村龍選手、5位は村上選手、6位は蕎麦切選手、7位は稲岡選手、8位は田野選手、9位は川畑選手、10位は目桑選手、11位は山中選手、12位は岩井照宜選手、13位は森孝弘選手、14位は加納選手、15位は松井有紀夫選手、16位はLattapon Keawchin(ポップ)選手。

今大会で注目のルーキー

前年チャンピオン中村直樹選手の長男・中村龍選手(TEAM MORI)は、普通免許取得後すぐにD1ライツに参戦し初年度でD1グランプリ権利を獲得、今年からデビューした18歳だ。今回の第4戦では初の予選通過を果たし、そのまま森選手、田野選手に勝利しベスト4に進出した。ここまでは相手のミスに助けられた感が否めなかったが、松山選手との対戦では9.7の後追い点をマークするほどの快走。敗退したとはいえ204.5対201.9と善戦し、父が欠場のラウンドを大いに沸かせた。

車両コンディションやセッティングが勝敗を分けることも

第4戦でベスト8止まりとなった蕎麦切選手。単走時から「ブーストが正常にかからない」とコメントしていたが、ベスト8の1本目の終了後でピットイン。完全にブーストがかからなくなり(S字でインタークーラーから圧が一気に抜けたようだ)リタイアとなった。VR38改は通常2.0kgf/cm2以上のブースト圧をかけて1000馬力オーバーを発揮する。
第3戦優勝の勢いで第4戦の単走3位通過の目桑選手は、このラウンドで終始パワステの不調に悩まされていた。第4戦の練習走行前にもスペアと交換したがそれでも解決ならず。高速コースで懸念されていた弱点が露呈したようだった。
第4戦で予選アタック1番目の田中選手は1本目のS字で後輪に問題が発生して走行不能に。前日にはプロペラシャフトがネジれてTTIのミッションケースまで破損(内部も甚大なダメージ)しており、急遽載せ換えてきたが前日のダメージが残っていたようだ。
第3戦・第4戦共、追走に進出したものの、追走の後追いのS字でコントロール不能に陥った田野選手。今年から投入したGR86には自身が設計&製作したナックルが装着されている。しかし挙動の乱れの原因はまるで別の部分にあるそうで、足回りそのものは「GR86の弱点を払拭できるセットアップが完成しそう」とのことだ。
今年デビューの石井亮選手(TEAM WELD)のJZX100マークⅡのリアサスペンションはツインショック仕様。「難しいと言われてきたけど、ダンパーの性能が上がっているから効果的なセットアップになるかも」とはマシン製作者のウエルド伊藤氏。第3戦では初の予選通過を果たした。

PHOTO/SKILLD、小竹充[Mitsuru KOTAKE] REPORT/SKILLD、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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