日本ドリフト選手権総合部門は中村直樹選手がチャンピオン確定に

レポート ドリフト

2024年11月14日

中村直樹選手、日比野哲也選手、齋藤太吾選手、蕎麦切広大選手の4名が日本ドリフト選手権の総合部門チャンピオンを最後まで争う第9戦&第10戦の最終ラウンドお台場大会。第9戦では今年から参戦のルーキー、山中真生選手が初優勝を飾るなど波乱の展開となり、第10戦が単走/追走ともに文字どおり「最終決戦」となった。

2024年日本ドリフト選手権
D1グランプリシリーズRd9/Rd10
お台場大会

開催日:2024年11月8~10日
開催地:青海NOP地区(東京都江東区)
主催:株式会社サンプロス

 例年どおりD1グランプリ最終決戦の舞台となったのは、東京都江東区にある青海NOP地区のお台場特設会場。コースレイアウトは昨年から若干の変更が入り、ゾーンの位置や通過方法は今年の後半から採用されている「アウト側」「最初から最後まで通過すること」となった。

第9戦

単走部門

 ポイントリーダーの中村直樹選手(TEAM VALINO × N-STYLE)が、練習走行でクラッチトラブルによるリタイヤを喫した一方、A組出走の川畑真人選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT)が99.5点の高得点を叩き出す。得点もさることながら、進入速度もトップの116km/hをマーク。最終D組までこれを超える選手は現れず、川畑選手が久しぶりの単走優勝を決めた。

川畑真人選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT)が単走優勝。オートポリス大会から足回りのセッティングを変更しており、それが結果に結びついたのだろう。
2020年第3戦ぶり、そしてGR86では初の単走優勝となった川畑選手。2022年の単走シリーズランキングでタイトルを獲得しているが、その年も優勝は一度もなかった。

追走部門

 追走でシリーズ争いを面白くしたのは横井昌志選手(TEAM D-MAX RACING)だった。日比野哲也選手(SHIBATA RACING TEAM)、蕎麦切広大選手(SHIBATA RACING TEAM)に連続で勝利し、結果的にランキング上位の選手達が中村選手とのポイント差を縮められなかったからだ。しかし準決勝の齋藤太吾選手(FAT FIVE RACING)との対戦で、1本目にアドバンテージを取ったものの、2本目で駆動系を壊して横井選手は敗退。

 一方、トーナメントもうひとつの山の準決勝ではルーキーの山中真生選手(ウエインズトヨタ神奈川 × 俺だっ!レーシング)が藤野秀之選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT)を破って初の決勝進出を果たす。山中選手と齋藤選手は前戦オートポリスの準決勝で対戦しており、そのときは齋藤選手が勝利している。

 2度目の今回は山中選手に軍配が上がった。齋藤選手が最後の戦いに良い状態のタイヤで臨めなかったことが勝因のひとつではあるが、そのチャンスを確実に活かした山中選手の追走技術は予想以上に高かった。ここ一番で100%の走りを出せたメンタルは、ルーキーとは思えない堂々たるものである。そして2位の齋藤選手は同ポイントで並んでいた日比野選手を抜き去り、日本ドリフト選手権追走部門のポイントリーダーになった。

齋藤選手が先行した1本目、車両が隠れるくらいの接近で山中選手が圧倒。2本目の後追いでは齋藤選手は最後にややドリフトが戻り、山中選手を上回る得点を出せなかった。
D1ライツシリーズに挑戦した2023年はシリーズランキング2位で、今年からD1グランプリにステップアップした山中選手。ライツ時代は優勝がなく、これがうれしいD1での1勝目となった。ルーキーがステップアップの年に優勝したのは史上初の快挙だ。
第9戦の優勝は山中選手、2位は齋藤選手、3位は横井昌志選手、4位は藤野秀之選手、5位は川畑選手、6位は石川隼也選手、7位は蕎麦切広大選手、8位は松山北斗選手、9位はヴィトー博貴選手、10位は山本航選手、11位は森孝弘選手、12位は岩井照宜選手、13位は日比野哲也選手、14位はラタポン・キャオチィン(ポップ)選手、15位は松井有紀夫選手、16位は米内寿斗選手。

第10戦

単走部門

 単走は追走トーナメントの予選を兼ねているので注目されにくいが、追走と同じくシリーズ表彰があるため、単走シリーズチャンピオンを狙っている選手は多い。オートポリス大会終了時の日本ドリフト選手権における単走部門ポイントリーダーは中村選手で100ポイント、次に蕎麦切選手が98ポイント。その差はわずか2ポイントだ。

 だが第9戦の単走で中村選手がリタイアして、蕎麦切選手が5位となり13ポイントを獲得したことで暫定ランキングは逆転、差は11ポイントに広がった。この逼迫した状況で迎えた最終戦、まず最初のA組で出走した蕎麦切選手が98.3点をマーク。その後は第9戦よりもアベレージが高くなり99点台が数名現れる中、最終D組の中村選手が渾身の100点超えで暫定トップを奪取。

 8番手にいた蕎麦切選手がギリギリで逃げ切るかと思われたが、最後に出走した川畑選手が6位に入ったことで、蕎麦切選手の順位が9位にダウン。その結果、中村選手が120ポイント、蕎麦切選手が119ポイントと、わずか1ポイント差で中村選手が逆転して日本ドリフト選手権単走部門チャンピオンを確定させたのであった。

中村選手は1本目に予選通過を確定させるための“やや守った走り”で98.97点を出し、2本目で100点を上回る100.07点をマークした。
「第9戦ではほとんど走れなかったので、周りを研究して高得点が出る走りは理解できました。あまり自分が好きな走りではなかったですが、単走優勝のために気持ちを切り替えました」と走行後の中村選手。

追走部門

 想定外はポイントリーダー齋藤選手の予選不通過。結果、追走部門のタイトルの行方は齋藤選手が149ポイントのままで、日比野選手の最終順位を待つことになった。その日比野選手は川畑選手に敗れ、11ポイント加算の143ポイントでシーズン終了。この時点で齋藤選手の日本ドリフト選手権追走部門チャンピオンが確定した。

 勢いに乗った川畑選手は、決勝戦まで勝ち残ってきた脅威のルーキー山中選手との対戦で後追い14点をマークする快勝で、今年ここまで一度も優勝がなかったトーヨータイヤを最後の最後で優勝に導いた。前日の第9戦でトーヨータイヤの松山北斗選手、藤野秀之選手を破って決勝に進出した山中選手に、最後にきっちりと一矢報いたのがエースの川畑選手だったという結果は、まさに有終の美を飾ったと言えよう。

車両や搭載エンジンは違えど、古巣「俺だっ!レーシング」の新人ドライバーとの対戦は、D1グランプリシリーズを3度制した川畑選手としては負けられない1戦だった。
最後まで集中力を欠くことなく川畑選手が戦えた要因として、昨年のお台場大会でシリーズチャンピオンを決めたチームメイトの藤野選手についた“知るひとぞ知る名スポッター”を召喚したことが大きいと思われる。
第10戦の優勝は川畑選手、2位は山中選手、3位は三好隼人選手、4位は横井選手、5位は中村選手、6位は石川選手、7位は日比野選手、8位は藤野選手、9位は目桑宏次郎選手、10位は蕎麦切選手、11位は松山選手、12位はポップ選手、13位は松井選手、14位は田中省己選手、15位は田野結希選手、16位は陣野寿幸選手。

注目ドライバー・三好隼人選手

D1ライツではR34スカイラインで活躍し、今年からD1グランプリにステップアップした三好隼人選手(Team MJ STYLE VALINO)は、D1用のGR86のセットアップに苦戦。「本番は2025年」と宣言していたが、最終戦は運も味方してか3位入賞。
単走部門は中村選手がチャンピオン確定。「獲るならダブルで獲りたいと思っていました」と単走のタイトルを狙っていた中村選手。第1戦の奥伊吹大会、第3戦の筑波大会、第5戦のエビス大会、そして第10戦のお台場大会と、シリーズ4回の単走優勝を遂げた。
追走部門は齋藤選手がチャンピオン確定。第3戦と第4戦の筑波大会、第8戦のオートポリス大会を制した齋藤選手。全10戦中6回の表彰台登壇を果たした。
総合部門は中村選手がチャンピオン確定。開幕戦の奥伊吹大会での優勝を含む2勝で、2021年以来2度目の頂点に立った。昨年はヨーロッパで開催されるドリフトマスターズにフル参戦し、左足ブレーキの重要性など多くの技術を会得したそうだ。

フォト/SKILLD、サンプロス、小竹充 レポート/SKILLD、JAFスポーツ編集部

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