奇跡の大逆転!藤野秀之選手が最後の勝利をつかみシリーズ制覇確定!

レポート ドリフト

2025年11月21日

D1グランプリシリーズは、チャンピオン争いが3名に絞られ、首位の蕎麦切広大選手と藤野秀之選手が20ポイント差で迎えた最終ラウンド・お台場。参戦6年目の蕎麦切選手が悲願の初戴冠となる可能性が高いものの、お台場を得意とする藤野選手が奇跡の逆転で3度目のチャンピオンとなる可能性もゼロではない。文字通り最後の1走までタイトルの行方が分からない、最終戦にふさわしい伝説的な2日間となった。

2025年 日本ドリフト選手権
2025 D1グランプリシリーズ 第9戦 第10戦
お台場大会

開催日:2025年11月15~16日
開催地:お台場特設会場(東京都江東区)
主催:株式会社サンプロス

D1最終決戦の舞台、お台場特設会場には多くのファンが詰めかけ、D1人気の高さをうかがわせた。会場にはブースやマシン展示など多彩なコンテンツが用意されていた。

第9戦

単走部門

 舞台となったお台場特設会場のコースは、基本的なレイアウトこそ去年と変わらないが、ゾーンの数を増やして難易度がアップした。横井昌志選手(TEAM D-MAX RACING)、川畑真人選手(Team TOYO TIRES DRIFT 1)、村上満選手(Repair Create × Result Japan)、齋藤太吾選手(FAT FIVE RACING)、田野結希選手(Team TOYO TIRES DRIFT 2)ら表彰台経験者が軒並み苦戦して予選不通過となる中、中村直樹選手(TEAM VALINO × N-STYLE)、日比野哲也選手(SHIBATA RACING TEAM)が98点台で1、2位に立つ。しかし、最後の組で出走した藤野秀之選手(Team TOYO TIRES DRIFT 1)は、それを上回る得点で単走優勝を奪取して貴重な4ポイントを加算。蕎麦切広大選手(SHIBATA RACING TEAM)は10位で通過はしたもののノーポイント。この時点で両者のポイント差は16に縮まった。ギリギリまだチャンピオンの希望を残す目桑宏次郎選手(VALINO TEAM G-Meister)も98点台で予選通過した。

第9戦単走部門優勝は藤野秀之選手(TEAM TOYO TIRES DRIFT 1)。
ここお台場では単走優勝した経験もある藤野選手。チャンピオン争いに関しては「周りが言うほど意識していない。取れるときには取れるし取れないときには取れないものだから」と冷静だった。2年前のお台場最終ラウンドでチャンピオンを決めたときも単走優勝しているので、周囲はその再現を信じたに違いない。

追走部門

 決勝戦は中村直樹選手と山中真生選手(ウエインズトヨタ神奈川 × 俺だっ! レーシング)の対決。去年ここでデビューイヤーでの驚異的な初優勝を果たした山中選手は中村直樹選手に後追い点13.3を取られ敗北。中村直樹選手はここ数年お台場ラウンドの“追走時のDOSS点の低さ”で最後まで勝ち切ることができなかったが、今回は常に10点以上の後追い点をマークして勝ち進み、接触寸前の巧みなコントロールテクニックでアピールした結果となった。

第9戦追走部門優勝は中村直樹選手(TEAM VALINO × N-STYLE)。
「やっぱりナイタードリフトは最高ですね!全部フルマークを目指していましたけど、進入のリスクが高すぎて。でも、もう研究できたので明日はイケると思います」と優勝後にコメント。去年チャンピオンを獲得した相棒で「今まで乗ったマシンでもっとも勝てる仕様」と気に入っていたV8シルビア(しかし去年のお台場ではマシントラブルでノーポイント)から今年の中盤に2JZ仕様GR86に乗り換え念願のお台場優勝を果たした。
追走ベスト16戦で藤野選手、目桑宏次郎選手(VALINO TEAM G-Meister)、蕎麦切広大選手(SHIBATA RACING TEAM)は勝ち進み3名によるチャンピオン争いは緊張の連続となったが、ベスト8戦で藤野選手に勝った目桑選手がベスト4戦で山中真生選手(ウエインズトヨタ神奈川 × 俺だっ!レーシング)に敗れ、この時点で開幕から3連勝してチャンピオン獲得を期待されていた彼の戴冠は完全に潰えてしまった。
ランキングトップの蕎麦切選手は、チームメイトの日比野哲也選手(SHIBATA RACING TEAM)に勝ったものの、準決勝で中村直樹選手に負けて4位。藤野選手は5位(ベスト8敗退の中で予選順位が最高位のため)だった。蕎麦切選手と藤野選手のポイント差は19に縮まった。
第9戦の優勝は中村直樹選手、2位は山中選手、3位は目桑選手、4位は蕎麦切選手、5位は藤野選手、6位は日比野選手、7位は和田賢志郎選手、8位はLattapon Keawchin(ポップ)選手、9位は田中省己選手、10位は畑中夢斗選手、11位は中村龍選手、12位は石川隼也選手、13位は玉城詩菜選手、14位は松山北斗選手、15位は石井亮選手、16位は上野高広選手。

第10戦

単走部門

 翌日の第10戦。コースレイアウトは変わらないが「ラバーが乗って昨日よりもグリップがいい」と各選手はやや困惑気味に。だが、それは好条件となったようで、ゾーンを外す選手が減って予選通過得点は高くなった。単走トップは99.27点の日比野哲也選手。同じく99点台で村上選手、藤野選手が続いていく。蕎麦切選手は98.73点の9位でノーポイントながらも、単走シリーズチャンピオンを確定させた。

 藤野選手は3位で2ポイントを獲得してその差を詰めたものの、得点差はまだ遠く、蕎麦切選手が追走1回戦を勝てばチャンピオン確定。藤野選手の逆転条件は蕎麦切選手が負けてノーポイントに終わり、なおかつ自分が優勝しなくてはならないという厳しい条件となった。

第9戦単走部門優勝は日比野選手。VR38改を搭載する蕎麦切GR86とウリ二つだが、こちらは2JZ改を搭載する。
日比野選手は「正直言って蕎麦切の上は狙っていなかった」と、チームメイトをサポートする立場だったが、練習走行で99点台を連発していたコース攻略能力で他を圧倒した。
単走前セレモニーでの中村直樹選手&蕎麦切選手。一度連敗した相手に対して「倍返し」を必ず果たす中村選手の研究能力は相当に高く、ヴァリノタイヤのエースとシバタイヤのエースの対決としても今後のライバル関係は激化していくだろう。

追走部門

 負ければ蕎麦切選手がチャンピオンという張り詰めた空気が漂う中、藤野選手は快進撃を続けた。ルーキーの稲岡拓也選手(VEHIQL RACING × VALINO)、ポップ選手(Nexzter drive to drift academy)、畑中夢斗選手(DRIFT STAR Racing)に勝ち決勝進出。負けられない戦いのプレッシャーに打ち勝ち、あと1勝というところまできた。そしてその相手は、蕎麦切選手に続き彼のチームメイトの日比野選手も撃破、準決勝では第8戦「史上初の親子対決」の再来となった長男・中村龍選手(TEAM MORI)に圧勝し、勝ちに貪欲な姿勢を貫いてきた中村直樹選手だ。

 決勝、冷静さを保った藤野選手は平均以上の後追いをしつつDOSS得点もキープ。対する中村選手は後追い点で勝るもののDOSS得点が想像以上に低かった。その結果、奇跡とも思える大逆転で藤野選手はシリーズ制覇確定。2位確定の蕎麦切選手とのポイント差は1という大接戦であった。

第10戦追走部門優勝は藤野選手。両者とも決勝用の新品タイヤは残っておらず、使用済みタイヤを装着しての勝負となった。
藤野選手が奇跡の大逆転を決めた瞬間。相手を追い詰めた自信のあった中村直樹選手はDOSSの得点の低さに困惑した表情だ。
最終戦の運命のベスト16戦。蕎麦切選手は勝てばシリーズチャンピオン確定だが、相手は昨日の第9戦で敗れた中村直樹選手。そして今回も勝てなかった。こうなるともうただ藤野選手の結果を待つしかない。ちなみに、中村直樹選手は第5戦と第6戦のエビスラウンドで蕎麦切選手に連敗した後、オートポリスの第8戦のベスト8戦でリベンジを果たしそのまま優勝している。今回は、さらに連勝(最後はほぼフルマークの後追い点13.7)して圧倒的な強さを見せつけた。
藤野選手の第10戦及びシリーズ表彰の模様。トロフィーのプレゼンターは、FIAドリフティングコミッションの村田浩一プレジデント。
第10戦の優勝は藤野選手、2位は中村直樹選手、3位は中村龍選手、4位は畑中選手、5位は日比野選手、6位は山中選手、7位はポップ選手、8位は田中選手、9位は村上満選手、10位は蕎麦切選手、11位は多田康治選手、12位は松山選手、13位は石川選手、14位は松井有紀夫選手、15位は稲岡拓也選手、16位は横井昌志選手。

藤野選手&GR86の必勝体制

お台場のナイトステージは、50才を超える藤野選手にとって「暗くて視力的にツライ」ということで、ヘッドライトにはイエローフィルムが貼られ、視認性アップの工夫が施されていた。
D1グランプリ参戦にあたり長年使ってきたDG-5車高調ダンパーは、前ラウンドのオートポリス戦から別体タンクを備える減衰力4ウェイ式調整にアップデート。お台場特設会場の荒れた路面への追従性が格段にアップしたそうだ。
DG-5製作者の北澤氏がスポッターを担当。2年前のお台場ラウンドでもヘッドセットをつけて藤野選手をチャンピオンに導いた。氏はこれまで何人ものチャンピオンにスポッターとして帯同した、いわば必勝請負人と言える存在だ。

2025年ルーキーオブザイヤー

2025年ルーキーオブザイヤーは中村直樹選手の長男、中村龍選手(TEAM MORI)が獲得。まだ19才にして第4戦4位、第5戦3位、第8戦2位と成績を上げ、最終戦では昨年のお台場第9戦で優勝した山中選手(ルーキーオブザイヤーも獲得)をサドンデスの末破り今期3度目の準決勝に進出。さらに2度目の親子対決でD1グランプリを盛り上げ最終的にシリーズランキング7位と大健闘。今期のMVPとすら言えるかもしれない。

PHOTO/SKILLD、小竹充[Mitsuru KOTAKE] REPORT/SKILLD、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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