残り3戦の関東ダートラ、第5戦は各クラスで白熱の王座争いを展開!!

レポート ダートトライアル

2023年7月14日

2023シーズンも全8戦のスケジュールが組まれたJAF関東ダートトライアル選手権。既にシリーズ前半を終え、多くのクラスで熾烈な王座争いが展開されているが、その第5戦が、7月9日に丸和オートランド那須にて開催された。

2023年JAF関東ダートトライアル選手権 第5戦
JMRC関東ダートトライアルシリーズ
<JMRC全国オールスター選抜戦>
プラムカップin丸和

開催日:2023年7月9日
開催地:丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催:M.S.C.うめぐみ、360R

 第1戦と第2戦に次いで、今季3回目の舞台となった丸和。この一戦では、後半区間に新たに整備された島回りセクションを設定。また、つくるまサーキットの舗装区間は、スタートとゴール付近以外は横切る設定が多かったが、その舗装区間も一部競技ラインに組み込まれるなど、新たな攻略要素が加わったレイアウトで争われた。

 第5戦当日の天候は、雲が多めながらも晴れたが、午後からは雨の予報が出ていた。しかし、第1ヒートで小雨がぱらつく時間帯があったものの、路面に影響を与えるほどではなく、天候は持ちこたえて両ヒートとともにドライ路面での勝負となった。

コースは丸和オートランド那須の奥の島回りまで、目一杯使ったレイアウト。後半にさしかかったところで舗装区間を走る2カ所と、直後に3番ポスト付近の島を回ることが新要素だ。

S2クラス

 第3戦、第4戦と二連勝中の宮地雅弘選手がランキングトップに立つS2クラス。その宮地選手は、「大ヘアピンの手前、舗装のシケインを3速全開のいい感じで抜けたのですが、その後ダート路面になるはずなのに、何故か舗装路面が見えて(笑)」と、第1ヒートはミスコースを喫してしまう。

 迎えた第2ヒート。第1ヒートをトップで折り返した中盤ゼッケンの中村雅之選手は、1分43秒995で再びトップに返り咲き、後続の走りを見守る。そして迎えた後半のシードゼッケン。先ずは中島明彦選手が中村選手のタイムを0.331秒上回り暫定トップに立つ。続く大橋邦彦選手は中村選手のタイムは抜くものの、中島選手には0.068秒届かず2番手止まり。

 残すは宮地選手とディフェンディングチャンピオンのSam Iijima選手の二人となったが、ここで宮地選手が一気に1分42秒646までタイムを詰めてトップに踊り出る。今季からGRヤリスで参戦しているラストゼッケンのSam選手は1分46秒508と振るわず、宮地選手が第2ヒートの一発勝負で逆転優勝を決めた。

「第1ヒートで新規のコース後半区間を走れなかったので、やはり慎重になってしまいましたね。今回は第2ヒートで雨の懸念もあったので、半ば諦めかけていたのも正直なところですが、結果的に優勝できて良かったです」と今季から三菱・ランサーエボリューションXを投入している宮地選手。チャンピオン奪回に向けて大きな三連勝を飾った。

2022シーズンはS2クラスのランキング2位だった宮地雅弘選手(YHワコーズ・ボーエムランサー)。第1ヒートでのミスコースによって一発勝負となった第2ヒート、プレッシャーがかかる中で見事トップタイムをマークし、三連勝でランキングトップを保持。2019シーズン以来のチャンピオン奪回に一歩前進した。
丸和で開催された第2戦以来の参戦となったS2の中島明彦選手(YHワカバボーエムランサー)は第1ヒート5番手から、第2ヒートでは一時トップタイムをマークする好走を見せて2位。2023シーズン初表彰台を獲得した(左)。第1戦を制し、ランキング2番手で宮地選手を追う大橋邦彦選手(YH大翔SRSボーエムランサー)は中島選手と僅差で3位を獲得。今季3回目の表彰台登壇となった(右)。
S2の上位6選手。左から2位の中島選手、優勝した宮地選手、3位の大橋選手、4位の中村雅之選手(ベストスポーツランサー 雅之)、5位の豊崎純任選手(ALEX.更科.シンエイWRX)、6位の矢内浩選手(ホリベスピードRYPどランサー)。

Dクラス

 ディフェンディングチャンピオンの星野伸治選手と、2022シーズンはランキング2位だった森正選手が2勝ずつ分け合っているDクラス。ランキングトップに立っているのは2位が1回多い森選手。しかし、僅か3ポイント差と、両者一歩も引かずといった状況でこの一戦を迎えた。

 第1ヒートでトップタイムを刻んだのは森選手。しかし星野選手も2番手につけ、勝負は第2ヒートへ。序盤に熊川嘉則選手が第1ヒートの森選手のタイムを塗り替えて進行していくが、戦況を大きく変えたのがラスト3の國政九磨選手。第1ヒートでは7番手と大きく出遅れていたが、熊川選手のタイムを2秒以上更新する1分40秒735をマークして、今季初優勝に向けて期待がかかる。

 続く再逆転を狙う森選手は1分41秒048にとどまり、トップに返り咲く事が出来ない中、ラストゼッケンの星野選手がスタート。第1ヒートでは森選手に約0.8秒の遅れをとっていたが、ここで王者の貫禄を見せつけ、國政選手のタイムを0.627秒更新。逆転で優勝を決めた。

「毎年のことながら、森選手と勝ちを分け合う感じでシリーズを戦ってますね(笑)。先に3勝目を挙げるには、何か仕掛けないと無理だと思い、第2ヒートはタイヤをA036にしたのが良かったと思います」という星野選手がランキングでも森選手を逆転し、トップに立った。

Dクラスの星野伸治選手(ヤタガワMSジールインプレッサ)は第1ヒート2番手から、第2ヒートで逆転を賭けたタイヤ選択が見事に的中し、今季3勝目を獲得。4連覇を狙う王座争いでも首位に立った。
第1ヒートではDの7番手とタイムが伸びなかった國政九磨選手(BSCフジノインプレッサYH)は第2ヒートで躍進。1分40秒台突入の口火を切る好タイムで2位、3位だった第3戦以来の表彰台に上がった(左)。星野選手と王座を争う森正選手(ベストYH Moty’sランサー)は第2ヒートで1分41秒の壁を破れず3位。ランキングでは星野選手にトップを奪われたが、僅か5ポイント差で追う(右)。
Dの上位6選手。左から2位の國政選手、優勝した星野選手、3位の森選手、4位の熊川嘉則選手(ザッパーDLワコーズランサー)、5位のカジロ タダシ選手(RS未来ADVANFTO)、6位の下屋敷勝弘選手(RYP・ホリベSPスイフト)。

S1クラス

 欠場した第4戦以外、第1戦から三連勝と今季全勝のS1クラスのディフェンディングチャンピオン、小山健一選手。ランキングトップで迎えたこの一戦、第1ヒートは2番手で折り返す。

 勝負の第2ヒート、クラス序盤からトップタイムが続々と塗り替えられ、上位陣は1分48秒台の争いとなるが、その均衡を破り、1分46秒83をマークしたのが、第1ヒートで3番手につけていたラス前ゼッケンの松栄吉彦選手。今季はここまでランニング7番手と、やや出遅れた感があったが、ここでトップに立ち今季初優勝を狙う。

 そして逆転を賭けた小山選手だったが、「今回はタイヤ選択をミスったね。ウェットでいけると思ったんだけど、天気が読み切れなかった」とタイムは1分47秒096で2位。松栄選手が昨季の第7戦以来の優勝となった。

「昨年も勝ててたとはいえ、スイフトのポテンシャルを出し切れてなかったので、ターボ車の特性を理解し、ターボラグをなくすために左足ブレーキをかなり練習しました」と、小山選手の4連勝を阻止した松栄選手。ランキングも一気に2番手まで上げる、貴重な1勝となった。

S1クラスの松栄吉彦選手(KMS木輪舎YHスイフト神速)の今季は第2戦から参戦。前戦で3位を獲得して調子を上げていたが、ついに今季初優勝を果たした。2023年JAF筑波サーキットトライアル選手権のCT7クラスにもトヨタ・ヤリスで参戦する、路面を問わず挑むドライバーだ。
優勝した松栄選手には0.266秒及ばず、S1の2位となった小山健一選手(アクションDLベリティーEK9)。天候の読みとタイヤ選択のミス、と反省しきりだったが、ランキングトップは守った(左)。第2ヒートで5秒以上のタイムアップを果たし、第1ヒートの4番手からひとつ順位を上げた平川慶一選手(メープルYHビエノミラージュ)。3位で今季初の表彰台に上がった(右)。
S1の上位6選手。左から2位の小山選手、優勝した松栄選手、3位の平川選手、4位の向井冬樹選手(FASワコーズSPアクセラYH)、5位の武石裕二選手(Rasch・DL・CEスイフト)、6位の鈴木陵太選手(TinkプロμDLスターレット)。

N2クラス

 王座争いはランキングトップの影山浩一郎選手と、ランキング2番手、岡田航選手の一騎討ちとなっているN2クラス。今季すでに3勝を挙げている影山選手を、1勝の岡田選手が追う展開だが、この一戦で影山選手が優勝すると、チャンピオンに王手がかかる。岡田選手にとっては何としても阻止したい一戦だ。

 1分49秒台で第1ヒートのトップタイムを刻んだのは岡田選手だが、影山選手も約0.4秒遅れで2番手につけ、僅差の戦いが繰り広げられる。そして第2ヒート、岡田選手は1分44秒385まで自己ベストを更新し、再びトップに返り咲く。終始追う展開となった影山選手は、第2ヒートでも岡田選手に0.644秒及ばず2位となり、岡田選手が今季2勝目を挙げ、影山選手の王手に待ったをかけた。

「今回は、新たに設定された島回りで失敗もありましたが、今年イチバン気持ち良く走れました。シードゼッケン“031”が獲れるよう、シリーズ後半も頑張ります」と力強くコメントした岡田選手。残り3戦の首位攻防戦に注目したい。

昨季戦った2WD車両のN1500&PN1クラスから4WD車両のN2クラスに転向し、いきなり王座を争っている岡田航選手(RIC FUACランサー)。初チャンピオンへの崖っぷちとなったこの一戦で、今季イチバンという走りを披露して今季2勝目を挙げ、王座争いに踏みとどまった。
N2の4連覇に王手をかけるべく、この一戦に臨んだ影山浩一郎選手(itzzDLホリベSPランサー)は、岡田選手の奮闘に及ばず2位。王手をかけた戦いは次戦以降も続く(左)。今季は2度の4位が最上位だった安藤輝明選手(YHオリジナルBOXランサー)は、第1ヒートから約6秒タイムアップ、順位もひとつ上げて3位表彰台を獲得。今季の最上位を更新した(右)。
N2の上位6選手。左から2位の影山選手、優勝した岡田選手、3位の安藤選手、4位の神保俊宏選手(JパワーYHコサリックヤリス)、5位の田尻雄一選手(BSCフジノYHインプレッサ)、6位の細谷光弘選手(メープルセラメタYHランサー9)。

PN3クラス

 昨季のPN2&PN3クラスから独立し、新旧のトヨタ86/スバルBRZが主力となっているPN3クラス。そのランキングトップは、今季3勝を挙げている森戸亮生選手だ。

 森戸選手は第1ヒートから2番手のいりえもん選手に1秒以上の差をつけてトップで折り返す。しかし、いりえもん選手は第3戦で森戸選手に土を付けているだけに、油断ならない状況で第2ヒートを迎えた。

 いりえもん選手は、1分51秒872のトップタイムを刻んでいた小関高幸選手を0.269秒上回り、トップに立つ。続くランキング2番手につけている齋藤考太選手は、小関選手のタイムに届かず3番手タイムで終わり、森戸選手のスタートとなった。

 森戸選手はいりえもん選手を0.321秒上回りトップを奪回。続く後続のシードゼッケン勢は森戸選手のタイムを破る事ができず、逃げ切って優勝となった。

「丸和は地元なのですが、今回は初めて走行する箇所もあり若干不安な要素もありましたが、慣熟歩行で得た情報を走りにアジャストできました。車両製作も自分でやってまして、昨年から大幅にセッティングを変えて、それも今シーズンの結果に繋がってますので、走り、セッティングともにスキルアップを感じてます」と、森戸選手は今季の好調を分析。

 続けて「目指しているのは、全日本ドライバーの竹本(幸広)選手で、実際に竹本選手からレクチャーも受けているのですが、いつか勝ちたいですね(笑)」と笑顔で語ってくれた森戸選手。今季4勝目を挙げてチャンピオンに王手をかけた。

第4戦まではPN3クラスで3勝と1回の2位でランキングトップを独走中の森戸亮生選手(ネクサス・ミツバ・ベスト86)は、両ヒートともにトップタイムをマーク。次戦で7位以上に入れば初のチャンピオンが確定する、大きな勝利を得た。
第3戦以来のPN3参戦となったいりえもん選手(岡本梨園☆まかいの牧場86)は、森戸選手には及ばなかったものの、両ヒートとも2番手タイムをマークして2位を獲得。第3戦を制した速さを垣間見せた(左)。2023年JAF全日本ダートトライアル選手権でも同クラスに参戦する、小関高幸選手(RJ2023DLKITBRZ)は鮮やかなカラーリングが施されたスバルBRZを駆って3位を獲得。11月16~19日に開催される「Rally Japan 2023」もPRした(右)。
PN3の上位6選手。左から2位のいりえもん選手、優勝した森戸選手、3位の小関選手、4位の齊藤孝太選手(K’sBRIG86YH)、5位の鈴木義則選手(YHファジーFORTECBRZ)、6位の飯田太郎選手(エイチケイサービス・デビル86)。

N1500&PN1クラス

 第1戦と第2戦を制し、N1500&PN1クラスのランキングトップに立っているのが佐藤羽琉妃選手。ランキング2番手には第4戦で優勝した清水涼矢選手がつけ迎えた第5戦。第1ヒートは清水選手がトップタイムを刻み、佐藤選手は2番手で第2ヒートに挑んだ。

 クラスファーストゼッケンからトップタイムが更新され、完全に仕切り直しとなった第2ヒートでは、目まぐるしくトップタイムが入れ替わっていくが、北原栄一選手が刻んだ1分52秒948がベンチマークとなって進んだ。

 再逆転を狙った清水選手は1分53秒224でトップ奪回ならず、後続のシードゼッケンへと移っていくが、ここで佐藤選手が北原選手を0.239秒上回りトップに立つ。続く川島靖史選手は佐藤選手に0.004秒届かず2番手。このまま佐藤選手が逃げ切りかと思われたが、勝負を決めたのは栗原まさき選手。1分51秒148を刻み、ラストゼッケンの貫禄を見せて優勝を決めた。

「今シーズンは全日本のサービスに専念してます。地区戦は半年振りなので、第1ヒートはつまらないミスをいくつもやらかしましたが(笑)、第2ヒートはほぼノーミスで走れたと思います」と、今季初出場ながら、昨季ランキング3位の実力を見せた栗原選手。

 一方、「栗原選手は速かったですね。今日は(両ヒートともに)2位のタイムしか出せない日でした(笑)」と、最後に逆転されてしまった佐藤選手だが、ランキングトップの座は死守した。

N1500&PN1はシードゼッケンながらもスポット参戦の、栗原まさき選手(M’S・YHスイフト)が第2ヒートで2位以下を1秒以上離し、PN3勢を上回る1分51秒台のタイムで優勝。昨季ランキング3位の実力が衰えていないことを見せた。
今季はS1500&PN1で開幕二連勝を果たして好調の佐藤羽琉妃選手(DIVASセラメタYHスイフト)は第1ヒートの2番手から逆転を狙うも、この一戦の主役は栗原選手に譲ることになり、2位を獲得。それでもランキングトップの座はキープした(左)。全日本では第1戦のPN1クラスで優勝を果たしている川島靖史選手(YHSPMワイズSRSスイフト)は第1ヒートで10番手に落ち込むが、第2ヒートでしっかり巻き返して3位を獲得した(右)。
S1500&PN1の上位6選手。左から2位の佐藤選手、優勝した栗原選手、3位の川島選手、4位の北原栄一選手(YHテインFTセラメタNOTE)、5位の清水涼矢選手(ブルーポイントデミオ)、6位の田代純士選手(ワークス岩﨑ワコーズスイフト)。

N1&PN2クラス、CL1クラス

 PN3とともに今季から改まったN1&PN2クラスは、ダイハツ・ストーリアX4を駆る杉谷永伍選手が第1ヒートから快走し、トップタイムをマーク。第2ヒートでもその手を緩める事なくクラス唯一の1分51秒台までタイムを詰め、完全優勝を果たした。

「今回、新しく設定された区間は結構難しかったですね。その他は、普段と変わりなく走れました(笑)」という杉谷選手は第2戦に続いて今季2勝目、参戦した2戦全てで勝利を挙げている。

 クローズドのCL1クラスに参戦した遠藤広基選手は、1分51秒08の好タイムをマークして完走を果たした。

昨季のN1クラスと、PN2&PN3クラスからPN2が合わさり新設されたN1&PN2クラス。第2戦以来の参戦となった杉谷永伍選手(杉谷興業自動車部ストーリア1号)が2ヒートとも制して優勝、参戦した2戦で全勝の速さを見せた。
第3戦での勝利と2回の2位でN1&PN2のランキングトップを走る松坂元樹選手(YHアングル2&4インテグラ)は第1ヒートの4番手から第2ヒートで2位まで挽回し、ランキングトップを守った(左)。ラリーにもドライバーで参戦する鈴木正人選手(スマッシュSRP33スイフト)は、今季初参戦だった第4戦に続く二連勝はならず、2ヒートとも3番手タイムで3位を獲得した(右)。
N1&PN2の上位5選手。左から2位の松坂選手、優勝した杉谷選手、3位の鈴木正人選手、4位の島村茂選手(DMR 2&4 AZURシビック)、5位の鈴木良信選手(TOTAL 2&4 YHレビン)。
クローズドのCL1クラスには遠藤広基選手(アクションFMインテグラ)が参戦。第2ヒートではPN3勢のタイムを凌ぐ速さを見せた。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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