序盤に大きなアクシデントが起きた波乱のもてぎラウンドを野尻智紀選手が制す!
2023年8月25日

多重クラッシュが発生した波乱のスタートとなった2023年スーパーフォーミュラ選手権の第7戦もてぎ大会。随所で激しいバトルが繰り広げられたが、ポールポジションの野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が終始レースをリード。今季2勝目をマークし、4位フィニッシュの宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM'S)、13位フィニッシュに終わったリアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)とのポイント差を大きく縮め、タイトル争いは混戦の様相に。
2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第7戦
(モビリティリゾートもてぎ2&4レース内)
開催日:2023年8月19~20日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:M.O.S.C.、ホンダモビリティランド株式会社
恒例となった真夏のもてぎラウンドは、今大会も猛暑の中で開催された。昨年は1大会2レース制のフォーマットが採用されたが、今年は土曜日に予選、日曜日に決勝の1大会1レース制となっている。今大会を前に、シリーズランキングでは宮田選手が86ポイントで首位につけ、1ポイント差でローソン選手が追いかけている。野尻選手は3番手につけているものの、宮田選手とは25ポイントと大きく差をつけられていた。

公式予選は、前戦の富士大会でも速さを見せていたホンダエンジン勢が好調さを維持。2グループに分けられるQ1は、A組が牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、B組はケガからの復帰参戦となる大湯都史樹選手(TGM Grand Prix)がそれぞれトップタイムをマークした。野尻選手はB組で大湯選手に0.27秒差の3番手通過する。
その野尻選手はインターバルのアジャストがピタリとハマったか、続くQ2では大きく自己ベストタイムを削り、唯一の1分31秒台を記録して堂々のトップタイムをマークした。これで今シーズン3度目のポールポジション獲得となる。
2番手は0.22秒差で太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入り、3番手はローソン選手となった。4番手の大湯選手まで、トップ4をホンダエンジン勢が独占する。トヨタエンジン勢の最上位は関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の5番手で、ポイントリーダーの宮田選手は8番グリッドからのスタートととなった。

一夜明けた決勝日も気温が30度を超える真夏日となった。ただし、昼を過ぎたころには分厚い雲も張り出し、いくらか日差しは遮られるように。気温33度、路面温度46度というコンディションで37周の決勝レースがスタートした。
ポールポジションの野尻選手は抜群の蹴り出しでスタートしたが、フロントローの太田選手はスタートを失敗してしまい、その横を3番手スタートのローソン選手がすり抜けていく。野尻選手とローソン選手は並んで1コーナーから2コーナーへと入っていくが、アウト側に位置どっていたローソン選手が縁石の外にはみ出してしまったことから挙動を乱し、コースを横断するような形でスピンしてしまう。
後続はなんとかローソン選手を回避しようとステアリングを切ったが、関口選手と9番手スタートの牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がローソン選手のマシンに乗り上げる形で接触。2台は宙を舞いながらコースサイドへとヒットしてしまった。
レースは即座に赤旗が提示され中断。このクラッシュには13番手スタートの松下信治選手(B-Max Racing Team)も巻き込まれ、3台がリタイアとなった。ローソン選手のマシンもリアウイングにダメージを負い、そのままピットイン。チームは迅速な作業で破損パーツを交換し、レース再開までに修復を完了してピットスタートが叶ったが、赤旗中のピットインによるドライブスルーペナルティを科されることになった。
車両回収後にセーフティカー(SC)先導のもと、レースが再開。2周のSCラン後にリスタートが切られた。野尻選手のトップは変わらず、ローソン選手の後退で2番手に上がったのは大湯選手。その後方に平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、小林可夢偉選手(Kids com Team KCMG)と続いた。
大湯選手はアンダーカット作戦を採り、タイヤ交換が可能となる10周を終えたところでピットイン。その翌周には小林選手も同じくアンダーカットを狙ってピットに入ったが、タイヤ交換に時間がかかってしまい、大幅なタイムロスを喫してしまった。
この2周で半数以上のマシンがタイヤ交換を済ませたが、トップの野尻選手と大湯選手がピットインしたことで、暫定2番手に上がった平川選手はステイアウト。その後ろに山本尚貴選手(TCS NAKAJIMA RACING)、宮田選手らが続き、ピット作業を済ませた組でトップの大湯選手は暫定7番手につけている。
野尻選手は25周を終えたところでピットイン。大湯選手に対しては十分なギャップを築いていたために、大湯選手の前でコース復帰に成功した。翌周にピットインした平川選手はタイヤ交換にやや時間がかかり、大湯選手の逆転を許してしまった。
さらに、アウトラップで後ろから山本選手が平川選手に急接近。2台は90度コーナーで接触し、山本選手は左フロントの足回りにダメージを負ってリタイアとなり、平川選手もこれでスピンを喫してしまう。しかしフレッシュタイヤで猛プッシュすると、終盤のS字コーナーで大湯選手を捕えてポジションを取り戻した。
最後までタイヤ交換を引っ張っていた宮田選手が29周を終えてピットに向かうと、野尻選手がトップに返り咲く。大湯選手を捕えた平川選手がトップをうかがうが、10秒以上のギャップを逆転することはできず、野尻選手が堂々のトップチェッカー。野尻選手がシーズン2勝目をマークした。2位の平川選手は第3戦鈴鹿以来の表彰台獲得、3位には大湯選手が入った。




ポイントランキングは、このレースを4位で終えた宮田選手が8ポイントを加算して94ポイントでランキングトップをキープ。ランキング2番手のローソン選手は予選での1ポイントを加算して86ポイントとなるも、決勝レースではペナルティが響いてノーポイントとなり、宮田選手との差は8ポイントに。そしてポール・トゥ・ウィンを飾った野尻選手は23ポイントを加算して、宮田選手に10ポイント差の84ポイントに迫り、この3名が自力優勝の可能性を残している。


フォト/石原康 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部