弱冠24歳の宮田莉朋選手が最終戦3位フィニッシュ、自身初のスーパーフォーミュラチャンピオン確定!

レポート レース

2023年11月9日

2023年のシリーズ王者が確定する全日本スーパーフォーミュラ選手権 第9戦。決勝レースは2番手から抜群のスタートを切った太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が終始レースをリード。終盤、逆転チャンピオンを目指すリアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)からのプレッシャーも跳ねのけ、自身初のトップチェッカーを受けた。注目のチャンピオン争いは、3位フィニッシュの宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM'S)が自身初のスーパーフォーミュラチャンピオンを確定させた。

第22回JAF鈴鹿グランプリ
2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第9戦

開催日:2023年10月29日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:NRC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

 前日に行われた第8戦は、クラッシュによる赤旗終了という結末となった全日本スーパーフォーミュラ選手権。幸い、笹原右京選手(VANTELIN TEAM TOM'S)、大津弘樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)の2名のドライバーは無事だったものの、マシンの損傷が激しく、この第9戦は2台そろって欠場に。シーズン最終戦は20台で争われることとなった。

全日本スーパーフォーミュラ選手権 第9戦にかけられたタイトル“JAF鈴鹿グランプリ”は2023年で22回目を数える。晴天のもと、最終戦に相応しい舞台が整った。
Enjoy Honda 2023の併催もあり、大会期間中は多くの観客が鈴鹿サーキットを訪れた。決勝直前になるとグランドスタンドはファンで埋め尽くされ、会場の熱気が高まっていく。

 公式予選は、Q1のA組で野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が、B組ではローソン選手と宮田選手が出走。野尻選手はA組のトップタイムで順当にQ2へ進出し、ローソン選手もB組のトップタイムでQ2へ。宮田選手もローソン選手にタイムを上回られてしまったものの、0.13秒差の2番手でQ2進出を果たした。

 2戦連続で予選ノーポイントは避けたいローソン選手は、Q2でのアタックに全力を注ぐ。セクター1の全体ベストタイムはチームメイトの野尻選手に譲ったものの、セクター2、セクター3でベストタイムを奪うと、野尻選手のタイムを0.3秒近く塗り替えてトップタイムに躍り出た。

 野尻選手はその後、太田選手にもタイムを破られて3番手にドロップする。宮田選手はその後のアタックで、コース前半では自己ベストタイムを並べるものの、スプーンカーブでわずかにアウトにはらんでしまいタイムロス。野尻選手のタイムにも届かず4番手という結果になった。

 これでポールポジションはローソン選手に決定。ここまでシーズン3勝を挙げていたローソン選手だが、意外にもポールポジションは初めて。予選3ポイントを獲得したローソン選手は、宮田選手とのポイント差をわずかに縮め、逆転タイトル獲得に望みをつなげたのだった。そして2番手は第7戦もてぎ大会に続き自己ベストタイグリッドとなる太田選手、3番手は野尻選手となった。

リアム・ローソン選手が初のポールポジションを獲った。タイトル争い首位の宮田選手とのポイント差を3点縮めることに成功する。
第9戦の決勝を直前に控え、JAF四宮慶太郎副会長による開会宣言でJAF鈴鹿グランプリが華々しく始まった。
スタート前のセレモニーでは、動画配信サービスでスーパーフォーミュラ広報大使を務める日向坂46の富田鈴花さんが国家独唱を行う。

JAF鈴鹿グランプリ・トピックス

GPスクエアのSF NEXT50ステージで行われた、ドライバー・オブ・ザ・イヤー2023のトークイベント。JAF四宮副会長を始め、JAFモータースポーツ振興小委員会の鈴木亜久里委員とピエール北川委員が、2023年の候補者を紹介するとともに、10月末時点の中間結果を発表。一般投票期間の締め切りが11月11日に迫る中、サーキット来場者へ投票を呼びかけた。
大会両日ともに実施されたSF NEXT50ステージでのSF監督トーク。29日のステージはTEAM IMPULの星野一義監督、VANTELIN TEAM TOM'Sの舘信秀監督、TCS NAKAJIMA RACINGの中嶋悟監督が集い、興味深いトークをファンの前で展開した。
GPスクエアにはトヨタ/ホンダ/スーパーフォーミュラの合同ブースを始め、出場チームのブースが並んだ。また、モータースポーツを身近に体験できることをコンセプトとしたJAFブースも出展、多くの来場者で賑わう。鈴鹿サーキットが体験走行できるシミュレーター、モータースポーツが模擬体験できるスロットカーなど、JAFブースでは大会両日ともに楽しめるコンテンツが盛りだくさん。
29日はJAF会員証を所持している人が参加できる抽選会が大盛況! 鈴鹿サーキットグッズが用意されたほか、ドライバーのサイン入り色紙を手に入れるチャンスとあって、スーパーフォーミュラの決勝レースとは異なる異様な盛り上がりを見せた!?
ピットウォーク時には現行車両SF23の開発で使われた赤寅と白寅によるデモンストレーションランを実施。TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパの中嶋一貴副会長と、レーシングドライバーの佐藤琢磨氏がステアリングを握り、トークでも会場を沸かせた。
決勝レース終了後、ホームストレートに展示された車両を見て回ることができる「ストレートパルクフェルメ」。その中でもJAF会員を対象とした、本来では立ち入れない最終コーナーエリアを開放する優待が好評を博した。

 迎えた決勝は、予選同様に晴天が広がった。今大会は「Enjoy Honda」イベントとの併催という効果もあり、第8戦に1万75,00人が、この第9戦には2万5,500人のモータースポーツファンが集まり、伝統のJAF鈴鹿グランプリを楽しんでいた。

 注目のスタートは、前日に続いて太田選手が目の覚めるようなスタートダッシュを見せる。ポールシッターのローソン選手は野尻選手の動きをマークしていたためか、太田選手の先行を許してしまう。その野尻選手はスタート直後にイン側からローソン選手をかわそうとしたがブロックにあい、さらにアウト側にチャンスを見出そうとするも再びローソン選手に阻まれてしまう。

 その間に4番グリッドの宮田選手が並びかけ、2コーナーで野尻選手をかわして3番手に躍り出る。宮田選手はダミーグリッドに向かう際にもピットロード出口でスタート練習をするなど、この1チャンスにかけている様子が見られたが、それを見事にものにして、チャンピオンシップで直接対決している野尻選手より前に出ることに成功。オープニングラップは太田選手、ローソン選手、宮田選手、野尻選手の順で通過した。

 序盤は上位陣に大きな動きはなく、義務づけられているタイヤ交換が可能な10周が完了したところで、まずは宮田選手が先陣を切ってピットへと向かう。これを見て2番手走行のローソン選手が動き、宮田選手のアンダーカットを阻止する。

 TEAM MUGENのピットクルーはほぼVANTELIN TEAM TOM'Sと同等の作業時間でローソン選手をコースへと送り出し、ローソン選手は宮田選手の前で復帰。すでにタイヤに熱の入っている宮田選手はコールドタイヤのローソン選手に一気に近づいていき、デグナーカーブでテール・トゥ・ノーズのところまで接近する。ヘアピンコーナーでもアウト側から襲いかかるが、イン側をきっちりと守り切ったローソン選手がポジションを死守。宮田選手のアンダーカット成功はならなかった。

 この2台に続いてピットインしていったのはトップを快走する太田選手。14周を終えるところでタイヤ交換に向かうと、チームは宮田選手やローソン選手と比べて1秒以上速い作業時間で太田選手はピットを後にする。まだタイヤは冷えているものの、ローソン選手の前でコースに復帰した太田選手は、同一周回の車両トラフィックに引っかかりながらもこれらを丁寧にかわし、事実上のトップをキープ。アウトラップでローソン選手に隙を与えず後半スティントをスタートしていった。

 前方3台がピットインを選択して視界がクリアになったのは野尻選手。ここから自身のピットインに向けてペースを上げていきたい野尻選手だったが、得意の鈴鹿でなかなか切れのある走りを見せられない。23周までピットインを引っ張った野尻選手はタイヤ交換後、事実上の4番手でコースに復帰。

 だが野尻選手は後方の松下信治選手(B-Max Racing Team)に逆バンクで捕えられ、5番手に後退する。タイヤが温まってからは自己ベストタイムも更新しながらプッシュし、26周目のシケインで松下選手を捕えて4番手を取り戻したが、すでに3番手の宮田選手との差は15秒以上に開いていた。

 トップ争いは太田選手が変わらずポジションをキープしていたが、終盤に入りローソン選手がじわじわと差を縮めてくる。残り2周のところで0.7秒差に詰め寄られた太田選手は、最後まで集中力を切らさずに踏ん張り、ローソン選手の猛追をしのいでトップチェッカー。スーパーフォーミュラデビューイヤーに初優勝を飾った。2位にはローソン選手、3位には宮田選手が入り、宮田選手のチャンピオンが確定。

第8戦で初表彰台を獲得した勢いそのままに、自信を持ってレースに臨んだ太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が第9戦を制した。
パルクフェルメで出迎えたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの村岡潔チームプリンシパルと初優勝を喜ぶ太田選手。
レース終盤には先行する太田選手にプレッシャーをかけ続けたローソン選手(TEAM MUGEN)だったが、あと少しが届かず2位入賞。
後に「苦戦した」と語るローソン選手。逆転チャンピオンは叶わなかったが、良いシーズンだったと振り返る。
タイトル争いは順位を上げなければ厳しいと思っていたという宮田莉朋選手。野尻智紀選手をかわしてポジションをキープ、3位を獲得した。
マシンを降りて力強く両拳を上げた宮田選手。初戴冠が確定したうれしさを全身で表現した瞬間だ。
JAF鈴鹿グランプリのウィナーである太田選手には、JAF四宮副会長よりJAFグランプリトロフィーが授与された。
第9戦の表彰式。左から2位のローソン選手、1位の太田選手、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの村岡チームプリンシパル、3位の宮田選手が登壇した。

 宮田選手はスーパーフォーミュラフル参戦開始から3年目での初戴冠となった。シリーズ2位はローソン選手。野尻選手は第8戦の優勝で一旦はローソン選手を上回っていたが、0.5ポイント差で3位に後退。国内トップフォーミュラとしては中嶋悟氏以来2人目となる3連覇には、残念ながら届かなかった。

2023年のシリーズチャンピオン確定となった宮田選手は、高々と全日本スーパーフォーミュラチャンピオン杯を掲げた。
シリーズ表彰では2位のローソン選手、1位の宮田選手、3位の野尻選手にそれぞれトロフィーが贈呈された。
チームチャンピオンは、野尻選手とローソン選手を率いるTEAM MUGENに確定。
ドライバーが一堂に会してシーズンエンドセレモニーが執り行われた。
フォーミュラ・ニッポン時代を含め、トップフォーミュラ参戦100戦を迎えた国本雄資選手(Kids com Team KCMG)。TOYOTA GAZOO Racing ヨーロッパの中嶋副会長より花束が贈られる。
数回宙を舞った宮田選手の胴上げで2023シーズンのスーパーフォーミュラは幕を閉じた。
大会終了後にVANTELIN TEAM TOM'Sのピット内で行われた記念写真。宮田選手を中央に、チーム関係者らが囲んでタイトル確定を祝った。

フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部

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