中国ダートラ開幕戦はSCD2古屋慶己選手が両ヒートとも制して復帰初戦を飾る!

レポート ダートトライアル

2024年3月27日

2024年JAF中国ダートトライアル選手権の開幕戦となる第1戦が3月10日、広島県安芸高田市のテクニックステージタカタで開催された。2023シーズンとほぼ同時期に開幕戦を迎えた、2024シーズンの中国地区戦。今季は全7戦のスケジュールが組まれており、第2戦と第6戦が山口県の楠ハイランドパークで、この一戦も含めた残り5戦がタカタで開催される。今季のクラス分けは、昨季までのAEクラスはATクラスに統合されるかたちとなり、地区戦の全8クラスに加えて、この一戦では成立しなかったJMRC中国チャンピオンシリーズのチャレンジクラスを設定。開幕戦ではさらに選手権対象外のオープンクラスとクローズドクラスも設定され、72名のエントリーとなった。

2024年JAF中国ダートトライアル選手権 第1戦
2024年JMRC中国ダートトライアルチャンピオンシリーズ第1戦
CCN/HMCエキサイトダート

開催日:2024年3月10日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:CCN、HMC

 コースは、かつてJAF全日本ダートトライアル選手権で採用された設定で、長いストレートと高速コーナーが主体のダイナミックなレイアウト。コースコンディションは、両ヒートともに基本的にはドライ路面だが、コーナーにはぬかるみが残ったところもあり、タイヤ選択を含めて如何に路面を読み切るかが、勝負の分かれ目となった。

 そして昨季同様、今季も2024年JAF九州ダートトライアル選手権の第1戦と併催となり、パドックには100台近い競技車両が並び、活気あふれる開幕戦となった。

コースは併催した2024年JAF九州ダートトライアル選手権 第1戦と同じレイアウトを採用。長大なテクニックステージタカタを端から端まで使った、高速レイアウトで競われた。

ATクラス

 ATクラスは、昨季のチャンピオン行友優太選手が第1ヒートから好タイムをマーク。第2ヒートでも2位以下を大きく引き離し、圧勝となった。

「昨年末にCVTがブローして、載せ替えての今日が初戦だったので不安な面はありましたが、しっかり動いてくれて良かったです。昨年のチャンピオンということでプレッシャーもありましたが、“アクセルはマントルまで踏む”という言葉を胸に頑張りました(笑)」と、山口大学自動車部の伝統をしっかり守り、開幕戦を制した。

クラッチペダルを有しない2WDのAE・PN・N・SA・SAX車両が対象のAEクラスは行友優太選手(YUAC☆DXLゆくデミオ)がディフェンディングチャンピオンの速さを見せて勝利を挙げた。
ATの豊島優凜選手(YUAC508デミオ)は2ヒートで30秒以上タイムアップ、1ヒートの4番手から逆転で2位を獲得した(左)。豊島選手とダブルエントリーした北村一貴選手(YUAC借り物デミオ)が3位に入った(右)。
タカタが建つ広島県が地元のマツダが造ったデミオを駆るドライバーが独占したATの表彰台。左から2位の豊島選手、優勝した行友選手、3位の北村選手。

PN1+クラス

 PN1+クラスは、1ヒートでトップタイムをマークしたのが、昨季ランキング5位の藤原祐一郎選手。タイムは2分11秒台で、2番手にはディフェンディングチャンピオンの南優希選手が約0.3秒遅れでつけた。

 藤原選手のタイムは、2ヒートになっても後半ゼッケンまで更新されることなく進んだが、藤原選手自ら2分08秒51まで更新してトップをキープ。しかし、昨季ランキング2位の山谷隆義選手が藤原選手のタイムを0.01秒更新しトップが入れ替わる。これで上位陣は2分08秒台の戦いになるかと思われたが、勝負を決めたのがラストゼッケンの南選手。一気に2分04秒25を叩き出し、逆転勝利を収めた。

「昨年までは勢いだけで攻めてた所を、今年は丁寧な操作で走るよう心掛け、それがタイムにも繋がったと思います」と、走りを振り返った南選手。今季は全日本に注力するということで、それに向けての好スタートを切った。

PN1+クラスを制したのは、南優希選手(DLWMクスコスノコ藤スイフト)。「昨年から少しセッティングを変えたのですが、練習する時間がなくて今日がシェイクダウンという感じになってしまいました」と言う愛車だったが、王者の貫禄を見せた。
PN1+は、2WDで排気量1600cc以下のPN車両と排気量1500cc以下のB車両(ラリー車両規定のRPN車両限定)が競うクラス。2位は昨季7戦中4戦で2位に入った山谷隆義選手(ベックワークスフィット)が、3位は1ヒートでトップタイムをマークした、全日本ドライバーの藤原祐一郎選手(田中自動車DL岡歯科29FIT)と、ホンダ・フィットRS使いが獲得した。
PN1+で表彰された、上位6選手。左から4位の岩田直也選手(阪大☆FUAC☆まちかねデミオ)、2位の山谷選手、優勝した南選手、3位の藤原選手、5位の井上翔太郎選手(藤原大学鴎ワークス505ヤリス)、6位の宗正勝吉選手(EB上殿マークススイフト)。

NPSAクラス

 6車種で争われたNPSAクラス。1ヒートをトップで折り返したのは、マツダ・デミオを駆る西隆司選手。2番手にはトヨタ・スターレットの谷口成治郎選手、3番手にホンダ・インテグラの岩坂有洋選手と続く。

 そして2ヒート、谷口選手が2分13秒台までタイムを詰めてトップに立つが、その直後に岩坂選手が2分10秒68で逆転。再逆転を狙った西選手は、0.01秒届かず2番手どまり。そしてラストゼッケン、三菱・コルトを駆る小野守選手は2分12秒台で3番手タイムとなった。

「古いクルマなのでセッティングというよりも修復に追われて、切れてたエンジンマウントを直したら、ギアもしっかり入るようになりました(笑)。第2ヒートは路面の食い付きも良く、気持ちよく走れました」という岩坂選手が、100分の1秒を争う接戦を制した。

2WDのN車両及び排気量1500cc未満の2WDで、2005年式以降のAE・PN・N・SA・SAX車両(ラリー車両規定のRJ車両含む)が対象のNPSAクラス。昨季ランキング2位の岩坂有洋選手(スピリットエクセスインテグラ)が昨季第5戦以来の優勝を挙げた。
NPSAの1ヒートでトップだった西隆司選手(RスポーツWESTデミオ)は2ヒートで4秒近くタイムアップを果たすも、トップタイムには0.01秒及ばず2位となった(左)。小野守選手(TWINⓇコルト≫FORTEC)はヒート2で7秒以上タイムアップ、順位もひとつ上げて3位を獲得した(右)。
NPSAで表彰された、上位5選手。左から4位の谷口成治郎選手(谷口左官工業スターレット)、2位の西選手、優勝した岩坂選手、3位の小野選手、5位のハンター大谷ヒロシ選手(DLトタル三洋ドライ☆スイフト)。

SA1クラス

 NPSAと同じく、様々なFF車両で争われるSA1クラスは、インテグラを駆る中畑有貴選手が1ヒートでトップタイムを刻む。2ヒートになると、三菱・ミラージュの坂本幸洋選手がトップタイムを更新するも、中畑選手は更に2秒以上更新してトップを奪回し、後半ゼッケンの走りを見守る。

 昨季のランキング3位、コルトのラリーアート・バージョンRを操る丸本淳二選手は約0.6秒及ばず2番手どまり。そして昨季はランキング2位で、ZC33S型スズキ・スイフトスポーツに乗り換えた松岡修司選手は4番手タイムに終わり、中畑選手が逃げ切った。

「昨年はよくシフトミスをしてたのですが、原因はエンジンマウントがちぎれてて、それを強化品に変えたら調子が良くなりました」と、同じ車種でNPSAを制した岩坂選手と同じ症状が出ていたようだ。

「今回は昨年のチャンピオンの北野(壱歩)選手がいなかったのと、松岡選手もスイフトに変わって間もないということで運が良かったです」と語った中畑選手は25歳。若手ドライバーがこのクラスを制した。

SA1クラスで両ヒートを制して勝利を挙げた中畑有貴選手(ADVAN匠RIZEインテグラ)だが、「タイム的にもPN1+クラスの南選手に負けているので、まだまだですね」と速さには反省しきりだった。
2WDのSA及びSAX車両で競われるSA1の2位と3位は、チェリッシュの三菱車ドライバーが占めた。2位の丸本淳二選手(チェリッシュ・YH・SOコルト)は1ヒートで6番手に沈んだが、2ヒートで8秒以上タイムアップする挽回を見せた(左)。3位の坂本幸洋選手(チェリッシュKTKLミラージュ)は1ヒート2番手、2ヒートで一時トップに立ったが、中畑選手と丸本選手の逆転を喫した(右)。
SA1で表彰された、上位6選手。左から4位の松岡修司選手(SPクスコDLWMOLスイフト)、2位の丸本淳二選手、優勝した中畑選手、3位の坂本幸洋選手、5位の坂本達哉選手(チェリッシュYH川上スイフト)、6位の坂上直博選手(スピリットオブマツダアクセラ)。

RWDクラス

 RWDクラスは、昨季チャンピオンの畑窪琢巳選手が両ヒートともにトップタイムをマークして完全優勝を飾った。「今日が今年初めてのダート走行だったので、第1ヒートはちょっとあたふたした所がありましたが、第2ヒートは路面も想定していた通りで、それに合わせた走りができました」と、ディフェンディングチャンピオンらしい勝利となった。

後輪駆動のPN・N・SA・SAX・SC・D車両で競われるRWDクラスは、畑窪琢巳選手が優勝。「タイムも予想以上に良かったです」と、今季ダートラ初走行とは思えない、王者の貫禄も見せた。
1ヒートではRWDの4番手に甘んじた丸本光選手(チェリッシュ・YH・BRZ)だが、2ヒートで挽回。2つ順位を上げて2位を獲得した(左)。昨季のランキング3位で復帰組のベテラン、大竹公二選手(NAO86)が3位を獲得。息子の大竹直生選手は2024年JAF全日本ラリー選手権のJN2クラスにドライバーで参戦中だ(右)。
RWDは左から、2位の丸本光選手、優勝した畑窪選手、3位の大竹選手が表彰された。

NS1クラス

 NS1クラスは1ヒートで昨季チャンピオンの川戸惟寛選手とランキング2位の西田ツカサ選手が、1分57秒台で0.3秒差の接戦を展開する。第2ヒートになってもトップ2のタイムは塗り替えられず西田選手の出番となるが、ここで1分56秒56を叩き出して川戸選手を逆転。しかし、勝負を決めたのはラストゼッケンの川戸選手。一気に1分53秒99まで詰めてトップを奪回し、優勝した。

「今回はストレートが長いので、晴れ用のタイヤという選択肢もあったのですが、絶対に失敗したくないコーナー2カ所がヌタヌタだったので、そこだけを見据えて雨用タイヤを選択したのが結果的に良かったと思います」と勝因を語った川戸選手。

 そして、車両については「セッティングは昨年から特に変わってませんが、カラーリングを変えました(笑)。周りの子どもたちも寄ってきますし、自分の子どもも好きなのと、将来はモータースポーツをやって欲しいというのもあって」と、カラーリング効果も相まって幸先の良いスタートとなった。

NS1クラスはライバルの西田ツカサ選手との熱戦を制した王者、川戸惟寛選手(YHチェリッシュ稲光猫ランサー)が優勝。相棒に施した、子どもたちに人気があるクルマのキャラクターを模した新カラーリングのデビュー戦を飾った。
4WDのN・SA及びSAX車両が集うNS1の西田ツカサ選手(上殿DLカジオカACAランサー)は昨季最終第7戦から続けての2位獲得。今季も川戸選手と白熱の王座争いが期待される(左)。昨季のランキング7位の清岡毅選手(河野M☆ADVAN☆ランサー9)が3位を獲得。NS1のトップ3は、ヒート1から順位が変わらなかった。
NS1は上位4選手が表彰を受けた。左から4位の片岡学選手(渡辺自動車・タカタ・ランサー)、2位の西田選手と優勝した川戸選手、3位の清岡選手。

SCD1クラス

 2WDのSC及びD車両で争われるSCD1クラスは昨季、悲願の初チャンピオンを獲得した重松良輔選手が、2分06秒台で1ヒートをトップで折り返す。そして2ヒートになると、坂井秀年選手が2分03秒15でトップタイムを塗り替え、更にラス前の一柳豊選手が2分02秒39を叩き出す。一柳選手は昨季も重松選手とコンマ数秒差の接戦を繰り広げてきたが、ラストゼッケン重松選手は、一柳選手を0.29秒更新しトップに返り咲き、今回も僅差で勝利となった。

「昨年の最終戦で攻めた走りができたので、そのレベルを開幕戦から出したいという意識で挑みましたが、路面のワダチやギャップが想像以上で、ちょっと戸惑った部分もありました。途中でドライブシャフトが折れたかなと、探りながら走ったのが適度に抑えられて良かったのかなと思います」と戦いを振り返ったディフェンディングチャンピオンの重松選手が、開幕戦からコンマ数秒を争う接戦を制した。

SCD1クラスは昨季、初の中国地区戦チャンピオンを獲得したEK9型ホンダ・シビックを駆る重松良輔選手(DLよしだやKSGシビック)が両ヒートを制して優勝したが、0.1秒の差を競う接戦を展開。今季もアツい王座争いが繰り広げられそうだ。
新旧シビックを操るドライバーがトップ3を占めたSCD1。1ヒート4番手から7秒以上タイムアップを果たしたEG6型を駆る一柳豊選手(DLテクノBSTシビック505)が2位を獲得(左)、EK4型をドライブし、全日本SC1クラスでも常連の坂井秀年選手(MARKS藤井R DLシビック)が3位を獲得した。
SCD1もNS1と同じく、上位4選手が表彰を受けた。左から4位の鈴鹿浩昭選手(DL-SPIRITインテグラ)、2位の一柳選手、優勝した重松選手と3位の坂井選手。

SCD2クラス

 4WDのSC及びD車両で争われるSCD2クラスは、約5年振りに競技に復帰した古屋慶己選手が1ヒートでトップタイムをマークし、2番手にはディフェンディングチャンピオンの西元直行選手がつけた。古屋選手は、2ヒートで更に1.45秒更新して1分56秒06でトップをキープ。後続の今川正樹選手、上田強選手も同じく1分56秒台まで迫るも僅かに届かず。そしてラストゼッケン西元選手もタイムアップは果たすも6番手タイムに終わり、古屋選手が逃げ切って優勝となった。

「5年くらい前まではスポットで全日本戦に出ていて、金銭的に厳しくなって競技は休んでたのですが、その間に少しずつ車両製作をして昨年末に完成しました。今回はタイヤ選択でミスがありましたが、クルマ自体は仕上がりも良く、今後のセッティング次第で伸び代は感じてます」と、復帰のいきさつとこの一戦の走りを振り返った古屋選手が開幕戦を制した。

古屋慶己選手(DL速心テイン藤井Rランサー)は約5年のブランクも衰えていない速さを見せて勝利を挙げると、「今シーズンは地区戦のチャンピオンを目指しつつ、全日本戦も視野に入れて活動する予定です」と、更なる活躍を誓った。
三菱・ランサーエボリューションIXの改造車を駆るドライバーがトップ3を占めたSCD2。1ヒートは2分切りを果たせず4番手だった上田強選手(フジイレーシング ランサー)は、ヒート2で古屋選手に0.2秒差に迫る速さを見せて2位を獲得(左)。3位を獲得した今川正樹選手(IBP田中自動車ランサー)は2ヒートで3秒近くタイムアップを果たしたが、順位は変わらなかった(右)。
SCD2で表彰された、上位6選手。左から4位のアキマただゆき選手(㊆WURTケノールランサーDL)、2位の上田選手、優勝した古屋選手、3位の今川選手、5位の塚本哲彦選手(ルーフセンター塚本インプレッサ)、6位の西元直行選手(BST建将BK★AWKランサー)。

OPクラス、CLクラス

 OPクラスは全日本トップドライバーから往年のドライバーまで6台が参戦した中、梶岡悟選手が1分51秒23という全クラスでトップの圧倒的なタイムをマークした。

 CLクラスは、トヨタ・ヴィッツを駆る近藤大介選手のみの出走。近藤選手は2ヒートで10秒以上タイムアップする走りを見せて完走した。

梶岡悟選手(アナ西元・レンタル・ランサー)OPクラスに出走すると、全体トップタイムをマーク。全日本で8度もチャンピオンに輝いている速さを見せつけた。
近藤大介選手(OUAC91ヴィッツ)の孤軍奮闘となったOPクラス。両ヒートとも近藤選手はタイムを残し、完走を果たした。

 フォト/友田宏之、山口貴利 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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