雨の山間地が舞台の中部近畿ラリー第2戦で逆転劇ラッシュ!
2024年7月19日
全6戦が組まれる中部・近畿ラリー選手権は、中部、近畿ともに3戦ずつの開催が予定されているが、今年は開幕から2戦続けての中部開催。第2戦となる今回の「いなべ東近江ラリー2024」は、今年も三重・滋賀県境に跨る山間地がラリーのフィールドとなった。
2024年JAF中部・近畿ラリー選手権 第2戦
2024年JMRC中部ラリーチャンピオンシリーズ 第2戦
2024年JMRC中部ラリーチャレンジシリーズ 第2戦
「いなべ東近江ラリー2024」
開催日:2024年6月22~23日
開催地:三重県いなべ市、滋賀県東近江市周辺
主催:ON!
中部・近畿ラリー選手権 第2戦/JMRC中部ラリーチャンピオンシリーズ 第2戦
いなべ東近江ラリーの名物ステージとして定着している石榑(いしぐれ)峠のステージは、昨年は三重・滋賀双方から峠に至るふたつの林道ステージが用意されたが、今年は滋賀県側からスタートして峠を越えて三重県側に至る石榑峠西SSのみが設定された。
この方向で使われる場合は、前半の上りは道幅も確保された良好な路面が峠の頂上まで続くが、三重県側に入って下り出した直後は、一転して道幅も狭まったタイトなコーナーが続く。しかしその後はまた上り同様、ライン取りも可能な比較的広い道が待ち受け、時に速度が乗るコーナーもクリアしてゴールという設定だ。
また今回のラリーの主催者であるトライアルスタッフオン!(ON!)は、毎回工夫を凝らしたギャラリーステージを用意することでも知られるが、今回は東近江市にある永源寺が選ばれた。もっとも、ラリーカーは寺の中を疾走するわけではなく、寺に沿って走り、永源寺ダムに至るターマックがSSとして設定された。境内を辿ってこのターマックロードに行き着くポイントがギャラリーエリアとなり、競技車の迫力の走りを間近で観戦できるという形だ。
ラリーは、この永源寺ステージ2.11kmと石榑峠西10.22kmを、サービスを挟んで走る計4SS、24.66kmで競われた。梅雨時の開催とあって、天候は前夜の雨が残る中、ラリーはスタート。午前中のセクション1は、一旦雨が止むひと幕もあったが、午後のセクション2は雨が降り出し、最終の石榑峠西のSS4は途中から本降りとなるコンディションとなった。
DE-1クラス
DE-1クラスは参加4台とやや寂しい台数となったが、永源寺のSS1から蒲生裕一/前田健吾組と八瀬誠/尾ノ上雅則組がコンマ差のバトルを展開。2度目の永源寺となるSS3を走り終えた段階でもトップの蒲生/前田組に八瀬/尾ノ上組が0.8秒差で食らいつく接戦となり、石榑峠西の最終SS4での決戦に臨んだ。
しかしこのSS4では、蒲生組から12.6秒も水を開けられていた1番ゼッケンの伊藤淳郎/廣嶋真組がスパート。「1ステ(セクション1)での走りがひどかったので、2ステは気合を入れました」という伊藤/廣嶋組は、このステージで蒲生/前田組を1.8秒しのいだ八瀬/尾ノ上組をさらに16.0秒も突き離すタイムでゴール。一気に2台を抜き去って大逆転を果たし、開幕2連勝を決めた。
DE-2クラス
DE-2クラスは12台が参加した。今年、全日本ラリー選手権のサブカテゴリーで展開されるMORIZO Challenge Cupで華々しい活躍を見せた山田啓介選手など、活きのいい若手を輩出してきたこのクラスは、中部・近畿地区戦でも激戦区として知られている。開幕戦ではホンダ・インテグラ(DC2)を駆る松村智/谷内壽隆組が2位以下を1分以上も引き離す走りを見せて、抜群のスタートダッシュを決めた。
松村/谷内組はこのラリーでも実績を残してきているだけに優勝候補の一台に挙げられていた。だが、今回は開幕戦で屈辱の2位に終わった下口紘輝/小林一貴組のトヨタ・86、そして今季初参戦となった中部・近畿地区戦話題の一台、シトロエン・DS3の大江毅/田中大貴組が速さを見せて松村/谷内組との三つ巴に持ち込んだ。
セクション1を終えてトップでサービスに戻ってきたのは下口/小林組。SS2で下口/小林組を4.1秒差で下すベストタイムを奪った大江/田中組が0.5秒差で続き、松村/谷内組はトップから2.9秒差の3番手でラリーを折り返した。2度目の永源寺ステージとなったSS3は、下口/小林組がコンマ差ながら大江/田中組と松村/谷内組を抑えてベストタイムを奪取。わずかながらもリードを広げて最終のSS4へ臨んだ。
今回のラリーは松村/谷内組がクラス1番手でスタート。下口/小林組が1分後に2番手でスタート。そこから4分後に大江/田中組がスタートというオーダーだったが、SS4は徐々に雨脚が強まるコンディションに。結果は、大逆転を狙った松村/谷内組がベストで上がるも、下口/小林組も1.8秒遅れの2番手でフィニッシュして首位を死守。一方、大江/田中組は強まった雨が影響したか、松村/谷内組から3.4秒遅れでゴールとなり、2位を譲り渡す結果となった。
「石榑峠は、かなり好き(笑)」という下口選手は、「今回同様、雨だった開幕戦よりもウェットに振ったセッティングが当たった」と勝因をひとこと。「松村さんが雨が得意なので、今日はSS1からプッシュしないと勝てないと思って攻めました。セカンドベストでしたが、自分の中では納得できるタイムだったので、そのリズムを午後の雨の中でもキープできたのが、安定した好タイムにつながったと思います」と振り返った。
DE-5クラス
参加16台と今大会最大の激戦区となったDE-5クラスも、最終のSS4で大どんでん返しが待ち受ける劇的な展開となった。まずSS1でベストを奪ったのは長野から参加の亀高秀也/松尾俊亮組のトヨタ・ヤリスだったが、SS2では開幕戦優勝の藤原友貴/宮本大輝組ヤリスが1.5秒、亀高/松尾組を振り切って1.7秒後方に迫る。SS3は、両車まったくの同秒でその差は変わらず、勝負のSS4へ。
ここは藤原/宮本組が、「セッティングの変更が効いてプッシュできた」という走りで、亀高/松尾組に大差をつけてゴール。勝負あったかと思われたが、SS2で藤原/宮本組を1.2秒差で抑えてベストをマークしていた伊藤祐悟/船木淳史組のマツダ・デミオが、雨の中前走のSS2から7.4秒も削り取るスーパーベストをマーク。トップの2台を一気に抜き去って優勝を飾った。
地区戦初優勝を達成の伊藤選手は、「SS4は特に順位のこととかは考えずに、SS2でダメだった所を改善することだけに集中して走りました。サービスに帰ってきて初めて優勝したことを知ったので、自分でもびっくりです」とビッグサプライズの1勝だった様子。「ただ同じ方向で走った一昨年のイメージが残っていたし、雨が降り出したことでタイヤがバッチリ合ってくれたことも大きかったですね」と勝因を振り返った。
開幕2連勝を阻まれた藤原選手は、「亀高選手との一騎打ちだと思っていたので、伊藤選手のデミオは正直、ノーマークでした」と無念の表情。開幕戦で乗ったヤリスとは別の、より戦闘力の上がったヤリスを駆った藤原選手は、「違和感なく乗れたつもりでした。勝てなかった理由があるはずなので、次戦までにはしっかりと突き止めたいと思います」とリベンジを誓っていた。
DE-6クラス
DE-6クラスは、松原周勢/HARU組と小川由起/木村裕介組がSS1でベストタイムを分け合い好スタートを切るが、SS2では開幕戦のウィナーでこのラリーの優勝経験を持つ南久松奈々/坂井智幸組が、後続に大差をつけるベストタイムをマークしてトップに立つ。SS3では松原/HARU組がこの日、2度目のベストをマークするが、南久松/坂井組がトップを維持したまま、SS4を迎えた。
フルウェットの中で各車スタートとなったこのSS4で、南久松/坂井組は大きくペースダウン。一方、チームメイトの松原/HARU組はSS2から30秒以上もタイムを詰める快走を見せ、16.5秒あった南久松/坂井組との差を一気に逆転して優勝を果たした。
TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジでは86で参戦中の松原選手は、今回が3回目のアクアのドライブ。このラリーは初参加だったが、「石榑峠は滅茶苦茶怖かったですけど、楽しく走れました(笑)」と名物ステージを攻略できた様子。「SS3までは、まだタイヤの限界を使い切れていない感じがあったので、SS4はどこで攻めるというのではなく、全体的にボトムスピードを上げることを心掛けて走りました。雨でしたが、ゴールした時点でタイムアップできたと確信できました」と会心の走りを振り返った。
オープンクラス
オープンクラスには4台が参加したが、ともに北海道でモータースポーツのキャリアを積んだ白尾泰/高橋芙悠組のホンダ・S2000が全SSベストの走りを見せて快勝した。
JMRC中部ラリーチャレンジシリーズ 第2戦
中部地区で開催される中部近畿ラリー選手権と併催されるJMRC中部ラリーチャレンジシリーズはシリーズ第2戦を迎えた。初級者対象のシリーズとあって、地区戦よりSSの距離が短縮されるのが慣例となっており、今回もSS2までの2本となった。
SS1は入川瞬/白崎清之組が、北陸から参戦の松本真/南部徳之組に8.1秒差をつけるベストタイムをマークして好スタートを切るが、SS2では松本/南部組が入川/白崎組を11.9秒差で下すタイムでゴールして逆転。トータル3.8秒差で入川/白崎組を振り切ってシリーズ初優勝を達成した。
ダートトライアル出身の松本選手は、昨年からラリーにスポット参戦を始めた30歳。今年からチャレンジシリーズを追う。「ダートラドライバーですが短い距離のSSが苦手で、TGRラリーチャレンジでは、“ここから行くぞ!”という時にSSが終わる感じなんです(笑)。今日は距離の長いSSがあったので勝負できました」という松本選手。「そのSS2は上りでコースアウトしかけたり、エンストしたりしたので、“下りで取り返すしかない”と思って、後半イケイケで攻め切ったのが良かったと思います」と、石榑峠の激走を振り返っていた。
フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部