新たなJAF公認コース「いなべモータースポーツランド」で中部ダートラが初開催!!

レポート ダートトライアル

2024年9月20日

開催日未定のまま延期となっていた、2024年JAF中部ダートトライアル選手権の第1戦「MONZEN M.S.P CUP 2024」だったが、新たにJAF公認ダートトライアルコースに加わった「いなべモータースポーツランド」にて、9月15日に「いなべMSLダートトライアル」として開催された。JAF公認競技会初開催となる記念すべき一戦に、80名のダートトライアラーたちが挑んだ。

2024年JAF中部ダートトライアル選手権 第1戦
2024年JMRC中部ダートトライアル選手権 第1戦
いなべMSLダートトライアル

開催日:2024年9月15日
開催地:いなべモータースポーツランド(三重県いなべ市)
主催:M.S.C.MONZEN

 今年の元旦に石川県を襲った令和6年能登半島地震の影響により、第1戦の開催が予定されていた輪島市門前モータースポーツ公園は使用不可となっており、再開の目処はついていないそうだ。中部地区ではすでにオートパーク今庄も閉鎖されており、代替地を含めて日程に苦慮していた。しかし、いなべが新たに公認コースに加わったことにより、晴れて第1戦の開催を果たすことができた。

 いなべは1967年に二輪のオフロードコースとして開業、2011年から現オーナーの岡田文明氏が引継ぎ、コースを広げていかれた。四輪にも使用されるきっかけとなったのは、コロナ禍中に自動車メーカーより「海外での開発テストが出来なくなったので、テストができないか」と打診があり、ラリー車両やクロスカントリーラリー車両の開発に寄与してきた、とのことだ。

 また、2023年12月からはダートラの練習コースとしての使用も開始された中、今年いっぱいで近畿ダートラの主戦場である、コスモスパークが閉鎖されることとなった。近畿地区のメインコースとして、もちろん地元中部のコースとしてもJMRC中部ダートラ部会からの打診も受けて快諾、コース公認を取得することになったそうだ。

 コース査察では安全に走れるコースづくりを伝えられ、コース幅の拡張や盛土づくり、大きな石の除去など少しずつながらコースのかたちになってきた、とのことだ。そして7月に晴れてコース公認を受け、この一戦がJAF公認ダートトライアル競技会のこけら落としとなった。

 過去、練習会に参加していたドライバーたちからは「今回のコースは見違えるほど路面が良くなった」と語るぐらい、改修に努力されたようだ。まだ一部では、路面のうねりや柔らかいために掘れてしまうところもあったが、今庄やコスモスも走ることによって改善されてきたコースだ。2025年はJAF全日本ダートトライアル選手権が近畿と中部の主催クラブにより2戦予定されており、今年の西日本フェスティバルの開催も検討中とのこと。

 岡田氏も「今後どういう風にしていけば良いのか、いろんな方の指導を受けながらレイアウトも色々できるようにコースを広げて、ドライバーの皆さんに喜んでもらえるコースづくりをしていきます」と力強く語ってくれた。いなべは東海環状自動車道の大安インターチェンジから、クルマで15分ほどの位置にあり中部はもとより、近畿からのアクセスも良い。今後への期待も大きいコースが新たに公認を受けた。

いなべモータースポーツランドのダートトライアルコースとしてのJAF公認取得には、オーナーの岡田文明氏の尽力なくしては語れない。コース整備などに使用する重機も岡田氏自らが操縦し、更なるコースの発展に努めていかれるそうだ。
受付には、新コースでの戦いを楽しみにしているドライバーたちが列をなした。奥に見えるのが事務所で、コースを見渡せる位置に建っている。
2024年JAF中部ダートトライアル選手権の第1戦では、スタート直後にフラットトラック(広場)の脇から下り、南エンデューロコースに向かうレイアウトがとられた。フィニッシュ手前でフラットトラックに戻る際には、豪快に土煙を上げながら勾配を駆け上がることになり、見応えある走りとなった。南エンデューロには5つの“島”があり、多彩なレイアウトを組むことができる。今回の一戦では最も奥の島は使われなかったが、中低速コーナー中心のレイアウトで競われた。南エンデューロは起伏にも富んでいることが、写真からも伺える。
左写真のフラットトラックと、右写真の南エンデューロでは路面の質が異なることが、写真からでも分かる。今回の一戦ではウェットタイヤで挑んだドライバーが多数を占めたようだが、コース攻略のカギを握るヒントが隠されているかもしれない。
記念すべき初のJAF公認競技会の舞台となるレイアウトの勝負どころは、南エンデューロ一番奥の右コーナーでのライン取りと、駆け上がってきてフラットトラックでの3本パイロンからなる360度ターンだ。ハイスピードながら細かいテクニックも要求される難レイアウトに80台が挑んだ。

2Pクラス

 ツーペダルの車両、いわゆるオートマチックやCVTなどを搭載する車両で競う2Pクラスは、大ベテランで前戦の第5戦ウィナーでもある村瀬秋男選手が優勝候補の筆頭。しかし、第1ヒートで村瀬選手は「エコモードにエアコンをオンして走ってしまった」とのことで、まさかの3番手タイム。

 しかし、第2ヒートで村瀬選手は挽回。「第1ヒートは“なんで走らんのかな?”と思ったけれど、第2ヒートはちゃんとして走って勝ててホッとした」と2連勝を飾った。2位は「(いなべは)初めて走ったけれど楽しく走れて、ひょっとしたら(優勝)イケたかな? と思ったけれど……」と、振り返った川崎浩一選手が獲得。最終第7戦を残してチャンピオンを確定させた。

2Pクラスはディフェンディングチャンピオンでホンダ・フィットハイブリッドを駆る村瀬秋男選手(DL・ワコーズ・フィットHV)が2連勝を果たした。
トヨタ・アクアを駆って第1ヒートで2Pのトップに立った川崎浩一選手(RINKEIアクア)だったが、第2ヒートで村瀬選手に逆転を喫して2位にダウン。しかしながら、チャンピオン確定は逃さず手にした。
2Pで表彰されたトップ3選手。左から2位の川崎選手、優勝した村瀬選手、3位の山根勤選手(IBS-2P-スイフト)。

RWDクラス

 15台で争われたRWDクラスは全日本のNクラスでGRヤリスを駆る三枝光博選手が、息子・聖博選手が全日本PN3クラスで駆るGR86を借りてエントリーしてきた。第1ヒートで早速、ランキングトップの上角好孝選手に1秒近い差をつけてトップに立つ。第2ヒートでは更に1秒以上タイムアップしてトップタイム更新。結局このタイムは最後まで破られず、優勝を果たした。

「来年全日本が開催されるので、下見を兼ねて出てきました。コースは楽しかった! 轍やうねりが適度にあってうまく使うことも出来ました。小さく回ってタイムが出る、攻め過ぎない走りが勝因です」と、三枝選手は語ってくれた。

 2位は第1ヒート5番手の山崎裕汰選手が逆転で獲得した。「近畿の開幕戦でコケて、復帰3戦目、やっと表彰台に立てて良かったです。今できる中では満足ですが、次回はもう少し上を目指して頑張ります」と力強い言葉を残した。3位は山崎選手に逆転された上角選手が入り、「第2ヒートはタイムアップしてるし、大きなミスは無かったと思うのですが……」と悔しそうに呟いた。

後輪駆動の車両が競うRWDクラスは、地元中部の全日本ドライバー、三枝光博選手(DL・M2・セラメタ86)が全日本でのGRヤリスとは異なりGR86を駆って参戦して優勝。車種を問わない速さを見せた。
RWDの2位と3位は白いGR86を駆るドライバーが占めた。第1ヒート5番手から2秒以上タイムを上げてジャンプアップした、山崎裕汰選手(TクスコWmDLVTXGR86)が2位(左)。3位を獲得した上角好孝選手(アンテロープGR86)はランキングトップを守った(右)。
RWDは5位までが表彰された。左から2位の山崎選手、優勝した三枝選手、3位の上角選手、4位の前田蔵人選手(ライズWMクスコDLuce86)、5位の折口智史選手(TガレージベルテックスBRZ)。

PN1・S1500クラス

 PN1・S1500クラスは岸貴洋選手が目下3連勝中、チャンピオン確定に王手をかけてこの一戦を迎えた。この大一番でも、第1ヒートから岸選手は絶好調。2番手以下に約2秒の大差をつけてトップに立つと、第2ヒートでさらに2秒以上タイムアップを果たし、完全優勝で満点チャンピオンを確定させた。

「前のRWDクラスで走ったチーム員から路面の悪いところを聞いて心構えをしていたので、変に姿勢を乱すことなく走れました。65扁平のタイヤもコースにマッチしてましたし。一戦一戦確実に集中して走った結果が、チャンピオンにつながったと思います」と笑顔で勝因を語った。

 2位には第1ヒートでミスコースを喫した西畑蒼選手が入賞。「ミスコースからの巻き返しなので、嬉しい2位ですね。ただ、岸さんが速くてそこは少し悔しい。どこで差がついているのか知りたいです」と語っていたが、ランキング2番手を奪取。この一戦は3位だった深谷文彦選手と最終戦でランキング2位確定を賭けることになった。

 その深谷選手は「悔しい3位です。スタート直後のギャップで飛ばされて、その後はどこを走っているのか分からなくなって……。クルマのセットを含めて見直します」と悔しそうに走りを反省していた。

排気量1500cc以下で2WDのB車両と1600cc以下で2WDのPN車両、そして全てのAE車両が参戦できるPN1・S1500クラスは岸貴洋選手(ベルテックス黒スイフト@Tガレ)がZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆って両ヒートとも圧倒。4連勝でチャンピオンを確定させた。
PN1・S1500の2位もZC32S型スイフトを駆る西畑蒼選手(IBSスイフト)が第1ヒートのミスコースから復活の2位を奪取(左)。深谷文彦選手(AMフカミ狐様デミオ)はマツダ・デミオを操り3位を獲得、シードゼッケン勢の意地を見せた(右)。
上位5選手が表彰を受けたPN1・S1500。左から2位の西畑選手、優勝した岸選手、3位の深谷選手、4位の水野司選手(AMフカミ コスモス スイフト)、5位の天野佳則選手(オートリンクス☆タクミ☆デミオ)

Nクラス

 3連勝中の村松俊和選手が不参戦のNクラスは、来年開催される全日本の下見も兼ねて参戦したと語る、全日本ドライバーの大橋邦彦選手が大暴れ。散水直後の先頭ゼッケン、という不利な状況にもかかわらず、第1ヒートでトップを奪うと、第2ヒートは更にタイムアップを果たして逃げ切った。

「路面が荒れていると聞いていたのですが、思っていたより良かったです。コース的にはドライバーの走りに改善の余地がありましたが、過去の練習会では逆のレイアウトばかりで、初のレイアウトになって運の差で勝てたかな」と、笑顔で振り返った。

 2位の小倉正也選手は第1ヒートでパイロンペナルティを受けたが、巻き返した。「第1ヒートはフロントが穴にハマりパイロンタッチとなったので、第2ヒートは修正したのですが、全日本選手にやられちゃいましたね。次はコスモスでリベンジします」と、逆襲を誓っていた。

 3位も下見組の一角、近畿から参戦の久保川裕之選手が獲得した。「来年は近畿戦がこちらで開催されるということで走りに来ました。様子を見るって感じだったので気負いが無く、それが良かったかな。3位は満足ではないけれど、今日はこれでもいいのかな」と笑顔を見せた。

 王座争いの行方は、ランキング2番手の鈴木悦司選手が6位に終わったことで、村松選手が不在ながらもチャンピオンに確定した。

4WDのN車両が競ったNクラスでは関東地区から遠征してきた大橋邦彦選手(YH大翔SRSボーエムランサー)が、三菱・ランサーエボリューションIXを駆って両ヒートとも制して圧勝した。
第1ヒートで喫したパイロンペナルティを克服して順位を上げた小倉正也選手(カムガレージDLランサー10)がNの2位を奪取し、3位は近畿地区から参戦の久保川裕之選手(K&Sテックドックランサー)が獲得。ランエボXを駆る2選手が占めた。
Nもトップ5選手が表彰を受けた。左から、2位の小倉選手、優勝した大橋選手、3位の久保川選手、4位の山内友和選手(シロキヤランサー#3)、5位の三輪智広選手(樋口鍼灸モティーズ寺勝ランサー)。

S1クラス

 3連勝中で勢いに乗る松原功治選手が第1ヒートでトップタイムを出し、4連勝かと思われたS1クラス。

 しかし、松原選手は第2ヒートで「下の左クランクでインが持ち上がって」と大きなミスを犯し、タイムアップこそ果たしたものの3位に甘んじ、連勝が止まった。それでもチャンピオンは確定したようで、「出来れば勝って決めたかったのですが、ワンミスが悔しいですね」と複雑な表情を浮かべていた。

 優勝したのは門前を得意とする広上徹選手。「第1ヒートはショートカットのヘアピンでインに乗り上げ、その後アウトにはらみダメでした。2本ともドライタイヤで走ったんですがトラクションがかなりあり、今回はタイヤチョイスの勝利です」とウェットタイヤを選択するドライバーが多い中での、タイヤ選択がカギになったようだ。2位は「1秒ちぎられて悔しい。なんか不完全燃焼です」と語った加地真志選手が獲得した。

2DWのN・SA・SAX・SC車両を駆って競うS1クラスは広上徹選手(クアトロドゥエYHインテグラ)がドライタイヤを履いたホンダ・インテグラを操り、クラス唯一の1分25秒台を叩き出して逆転優勝を飾った。
S1は“旧車”のインテグラを駆る広上選手に優勝はさらわれたが、その両脇は“現行車両”のZC33S型スイフト勢が固めた。2位は加地真志選手(M2セラメタ スイフト)が獲得し(左)、3位には開幕3連勝中だった松原功治選手(DLたまご足VTスイフト)が入り、チャンピオンを確定させた。
S1は4位までのドライバーが表彰された。左から2位の加地選手、優勝した広上選手、3位の松原選手、4位の矢本裕之選手(河童YACCOミラージュ)。

S2クラス

 最多エントリー、18選手が集ったS2クラスは開幕からここまでの3戦、全てウィナーが異なる混戦模様となっている。この一戦は昨年のチャンピオン、松原実選手とランキング2位の鈴木信地郎選手が今年初めてエントリーしてきた。

 第1ヒートは鈴木選手がトップタイム、松原選手が2番手に続いた。しかし、第2ヒートではラストゼッケンの松原選手が、直前に走った鈴木選手を2秒以上ちぎって逆転優勝を果たした。「第1ヒートが1位だと油断して勝てないことが多いけど、今日は2位だったことが良かった。奥のターンで大きくアウトにはらみタイムロスしてたから、第2ヒートはそこをうまくまとめられたのが良かったね」と、笑顔で逆転を決めた走りを語った。

 2位に敗れた鈴木選手は「松原選手に完敗、悔しいです。第1ヒートがトップで夢見ちゃいましたね」と悔やんでいた。3位は伊藤祥充選手が入賞し「第2ヒートはバーストしたと思い走っていたので、不安を抱えた走りになりました。バーストしてなかったのですが、鈴木選手と競れたのは良かったですね」と、明かしてくれた。

 ランキングトップでこの一戦に臨んだ服部雅士選手が4位になったため、ランキング2番手の伊藤選手が3ポイントに迫った。最終戦は服部選手と伊藤選手の一騎討ちで、王座争いの最終局面を迎えることになった。

4WDのSA・SAX・SC・D車両が競うS2クラスのディフェンディングチャンピオン、松原実選手(DLプロテック男義ランサー)がランエボIXを駆って、2024シーズン4戦目にしてついに参戦。いきなりこの一戦で唯一となる1分20秒台の壁を破って優勝を果たし、その速さを見せつけた。
18位までのうち、7位までをランエボ勢が占めたS2。2位はランエボXを操る鈴木信地郎選手(オセロット・ダンロップランサー)が昨年ランキング2位の実力を見せて獲得(左)、3位の伊藤祥充選手(CMSC☆ZEAL☆ランサー)はランエボIXを操り、第1ヒートから順位をひとつ上げた(右)。
S2は左から、2位の鈴木選手、優勝した松原選手、3位の伊藤選手、4位の服部雅士選手(MRS DLランサー エボIX)、5位の小宮僚選手(辰SP☆Tガレ洞海ランサー)が表彰された。
全クラスの表彰が終わった後には、じゃんけん大会を開催。走ることには欠かせないタイヤなど、賞品の数々が勝者たちに贈られた。

フォト/山口貴利 レポート/山口貴利、JAFスポーツ編集部

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